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A Week On The Wrist オメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペースを徹底レビュー

1962年10月3日、宇宙飛行士ウォルター・シラーが宇宙で着用した歴史的に重要なモデルにインスパイアされたこのモデルは、私たち皆が慣れ親しんでいるスピードマスターだ。

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※本記事は2014年5月に執筆された本国版の翻訳です  

今週、私の腕に巻かれたオメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペースは、1962年10月3日にアメリカの宇宙飛行士ウォルター・シラーが宇宙で着用した歴史的に重要なモデルにインスパイアされたもので、このモデルの名の由来となっている。我々は2012年に発表されたFOIS(編注:First Omega In Spaceの略称)を絶賛した。偉大な歴史をもった手頃な価格の手巻きクロノグラフで、ノスタルジーを感じた人にも、このブランドを初めて知った人にも共感してもらえたようだ。見た目は確かにそうだが、腕に着けたときの感触はどうだろうか?

 ウォルター・シラーは自分が5人目の宇宙飛行士になることを知り、マーキュリーアトラス8号計画の数ヵ月前にテキサス州ヒューストンに時計を買いに出かけたそうだ。おそらく、来る日のための記念だったのだろう。しかし、父と同じく飛行士であり、軍のパイロットでもあるシラーは、オメガとその比較的新しいレーシングクロノグラフに琴線が触れたのかもしれない。イタリアのスポーツカーのダッシュボードにインスパイアされたブラックのダイヤルをもったスピードマスターは、その強烈な外観がシラーの目に留まり、最終的にはCK2998に狙いを定めた(正確なケースリファレンスは謎のままだが、-4か-5が最も可能性が高い)。

 良いニュースは、オメガが、アイコニックな12時間計、3レジスターのレイアウト、細長い"アルファ"針、ベゼルのブラックタキメータースケールなど、最もコレクション性の高い、ムーンウォッチ以前のスピードマスターがもつ多くの特徴を維持しているということだ。このモデルでは、いくつかのマイナーチェンジが施されているが、これらの美的要素の多くが忠実に再現されている。

 ファースト オメガ イン スペースのスピードマスターを特徴的なものにしているのは、そのシンメトリーなデザインだ。直線的なラグとトップとサイドの間の薄い面取りは、CK2998から直接インスピレーションを得たもので、初期のムーンウォッチとなる前のスピードマスター共通の特徴だったが、1964年以降(スピードマスター プロフェッショナルの登場と共に)、オメガがアシンメトリーなツイストラグを採用することを決定するまで、このデザインはCK2998から直接インスピレーションを得たものだった。オリジナルのCK2998から復活したもう一つの特徴は、12時位置のロゴで、1968年以降のスピードマスターのロゴとは異なり、ダイヤルに立体的に取り付けられている。

FOISとCK2998-4 の2ショット。

 ステンレススティールケースのサイズは39.7mmで、現在生産されているスピードマスターより2~3mm小さく、時計自体のプロポーションも非常に良好。従来のスピードマスターと同様、着けていることを忘れてしまうほど快適な時計だ。

 タキメータースケールの保護機能がないため、傷がつきやすく(上のヴィンテージモデルをご覧のとおり)、ボックス型のサファイアクリスタル(ヘサライトとはお別れだ)は、角度が悪いとエッジを削ってしまう可能性がある。もちろん適度に注意して着用すれば、あまり問題とならないだろう。

 スピードマスターシリーズは、オメガが目指していたスポーティな外観を実現するために、ベゼル上に目盛りを配してデザインされた。FOISは、初期のスピードマスターシリーズを特徴づける、モータースポーツからのインスピレーションをその外観に今もなお多く残している。ブラウンのレザーストラップを加えれば、まるでモンツァで、335 Sスパイダー スカリエッティのハンドルを握っている気分になる。新しいストラップのレザーは年を重ねるごとに輝きを失っていくが、一方でエイジングによる艶は増していくことだろう。

 予想のとおり、ファースト オメガ イン スペースは、半世紀以上前にシラーが購入した時計の忠実なレプリカではない。それは、私たちが願ってもないことだった。オメガの記録によると、シラーが宇宙で着用していた時計には、レジスター内の秒針はストレートなバトン型だったが、オメガはFOISには、リーフ型の秒針を導入することにした。考証学的には正しいと言い難いが、全ての計時機能(時、分、秒針)にリーフ針を採用したことは、そのステンレススティール製の外観と相まって、クロノグラフ機能作動時にのみ動作する白いバトン針との差別化を図る上で非常に合理的な方法だと感じられる。

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 しかし、オメガが見落としていた細かいディティールの1つは、タキメータースケールの「90」マークの上ではなく、その右隣に "ドット "を配置したことだ。そのディティールは重要でないことのように思えるかもしれないが、決して少なくない数の原理主義者にとっては、「正しいことが」多くの悦びをもたらすものなのだ。

 また、 ファースト オメガ イン スペースの心臓部となったムーブメントにも疑問符が付く。シラーのCK2998は有名なオメガCal.321を搭載していたが、これはこれまでに製造されたムーブメントの中でも最高のものであり、最もコレクション性の高いものの一つであった。しかし、このレマニアをベースにしたコラムホイール付きクロノグラフムーブメントは、比較的短い生産期間であったため、大量生産が容易で安価なムーブメントにすぐに取って代わられてしまった。ファースト オメガ イン スペースには、Cal.321の最新の進化形であるCal.1861が搭載されている。

 現代のスピードマスター プロフェッショナルとの繋がりを生み出しているこのムーブメントは、Cal.321のコレクターとは相容れないかもしれないが、しっかりとした実績のあるムーブメントだ。このムーブメントの見栄えには一見の価値があるので(FOISはソリッドケースバックなので見られないが)、ご心配なく。最近、コネチカット州グリニッジのマンフレディ宝石店でヴィンテージスピードマスターの修理中の様子を撮影した。

 ファースト オメガ イン スペースの何が素晴らしいかというと、この極上のムーブメントをリューズガードのないスピードマスターで操作するチャンスを与えてくれることだ。個人的には、それが時計を巻く楽しみを与えてくれることに改めて気付かされた。素晴らしいヴィンテージカーを駆るたびに、燃料を補給しなければならないことに文句を言う人がいるだろうか? かけがえのない経験もこの時計の価値の一部なのだ。

 ケースバックは、おそらくこのリエディションがオリジナルと最も顕著に異なるところだろう。過去への入り口となるこのケースバックは、シラー自身へのオマージュを表現している。このモデルは、ねじ込み式のケースバックに「First Omega In Space」の文字、シラーの宇宙飛行の日付、そして1962年のオリジナル「オメガ シーホース」がエンボス加工されている。

 オメガがよりシラーのCK2998をイメージした時計を作ることができたかどうかは、最終的にはさほど重要なことではない。採用された変更点はほとんどなく、専門家にしか気づかれない程度のもので、それによってFOISを日常的に身に着ける楽しみが減るということはない。ファースト オメガ イン スペースは、ヴィンテージスピードマスターのように見え、またそう感じられる。もちろんCK2998への歴史的な忠実さには若干欠けるが、この時計史に残るタイムピースの魅力は色褪せることはない。スピードマスターが他のクロノグラフとは一線を画すようにデザインされていたとすれば、ファースト オメガ イン スペースはその条件を満たしている。オメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペースは、シリアルナンバーが刻印されたモデルで、価格は53万円(税抜)、ブラウンのレザーストラップが付属している。ブレスレットは、別売で追加することが可能だ。

オメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペースは、スティール製、直径39.7mm、防水50m、ねじ込み式ソリッドケースバック。ダイヤル:ブラック、タキメーター:ブラック。ムーブメント:Cal.1861、ロジウムメッキ仕上げ、手巻き、パワーリザーブ48時間、18石、2万1600振動/時。時、分、秒表示、クロノグラフ。シリアルナンバー刻印。価格:53万円(税抜)。モデルの詳細についてはこちらから。