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Introducing パテック フィリップ グランドソヌリ6301P、プチソヌリと特許取得のジャンピング・セコンドも搭載

パテックとして初めて、グランドソヌリとプチソヌリを単独で搭載したモデル。


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パテック フィリップ Ref. 6301は、私にとっては、ちょっとした驚きの時計だ。もし誰かに何気なく「パテック フィリップがこれまでグランドソヌリとプチソヌリを備えたミニッツリピーターを搭載した腕時計を作ったことがあるか」と質問されたとしたら、私は何も考えずに「はい」と応えていただろう。もちろん同社は、確かにこの複雑機構を以前入れたことがある。最も注目すべきは、グランドマスター・チャイム スーパーコンプリケーションだ。これはパテックが2014年にリリースした信じられないほど複雑な時計で、複雑機構の博物館のようなものだ。複雑機構を搭載した時計の中でも多くの革新をもたらした時計といえる。

2014年製グランドマスター・チャイム。

 グランドマスター・チャイムは、合計1580の部品から構成され、2つのダイヤルと20種類の複雑機構(日付、リピーターを含む)を搭載。250万スイスフラン(約2億8733万円)のオリジナルから、依頼人はそれ以上の変更を期待すべきではない複雑さだ。グランドマスター・チャイムの導入以来、パテックはF1のレーシングカーの技術革新が、最終的に生産モデルへと浸透するトリクルダウン理論のように、より複雑ではない時計に技術を配分してきた(この例えは不正確だが、技術革新が浸透する時計は、プロレタリアートのデイリードライバーではない)。その独創性という恩恵の一部を享受した時計の一つが、本日パテック フィリップから発表されたRef. 6301 グランドソヌリだ。これは同社において、チャイミングコンプリケーション(グランドソヌリ、プチソヌリ、そしてミニッツリピーター)だけが一つの時計に搭載された初のモデルなのだ。

 グランドソヌリは、腕時計では非常に珍しい複雑機構だが、その途方も無い複雑さのためにそもそもそれ自体も稀な存在だ。このような複雑機構を腕時計のサイズに縮小するのは困難であり(最終的に顧客にとっても非常に高価であることは言うまでもないが、時計史に登場するのが遅かったというのもその複雑さが関係しているかもしれない)。フィリップ・デュフォーが1992年に製作するまで登場しなかったのだ。それ以来、これを作ろうとするメーカーはほとんどなく、リピーターと同様にグランドソヌリはあまり工業化されてこなかった。製作しようにもあまりにも多くの手作業と調整を必要とするため、当面の間はそうなることはなさそうだ。

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 グランドソヌリとプチソヌリは、時計製造では通常、ミニッツリピーターと組み合わせられるものだ。フルストライクモードでは、毎正時および15分ごとに、時とクォーター(15分)の数を自動的に知らせる機能である。スモールストライク(プチソヌリ)モードでは、毎正時のみ作動(15分、30分、45分には鳴らない)。腕時計のリピーターには大抵、チャイムを鳴らさないサイレントモードも搭載されている。対象的にミニッツリピーターは、ケース内のスライドまたはボタンが押される度に“オンデマンド”で鳴らすことができる機構だ。2013年にニューヨークで開催されたイベントで我々HODINKEEは、会場にあったパテックのリピーターコレクションを全て動画に収める機会があった。これは我々のコンテンツの中でも最も魅力的なものの一つだ(少なくとも私にとっては)。

チャイム・モードを選択するスライドピース: 中央に設定されている場合は、グランドソヌリ・モード。左に押すとプチソヌリ・モード、右に押すとサイレントモードだ。

 新作の6301Pの見た目は、かつてのパテックに少し戻った印象だ。同社は近年、デザインの実験を(パテックにしては)かなり行っているのだが、6301Pには、例えば華やかに装飾が施された初代グランドマスター・チャイムとは異なり、余分な装飾がほとんどない。正直なところ、時計の複雑さを考えると私は少なくとも気にならなかった。しかし、繰り返しになるが、私はこの種の時計の顧客ではないということで、何も口出しはできないのだが(可能性が全くなくはないと言いたいが)。プラチナケースに施されたディテールは、多かれ少なかれ必要なものだけに限られており、リューズにはリピーター用のボタン、ケースバンドにはストライクモードを選択するためのスライドがある。

2015年発表のラトラパンテクロノグラフ 5370P。

 ケースの縁には、ラグから途切れること無く流れるように、わずかな凹みがある。これは少しだけ奥行き感を与え、本来重厚に見えるデザインに対して、視覚的に軽やかにするのに役立っている。このデザインは熱心なパテックファンたちにとってはお馴染みのように見えるかもしれないが、それには理由がある。6301Pのプラチナケース、本黒七宝(グラン・フー・ブラック)文字盤、ブレゲ数字、シュマン・ド・フェール分スケール、そして凹みのあるベゼルやサテンと鏡面を組み合わせた仕上げは、スプリットセコンドクロノグラフ5370Pを彷彿とさせるからだ(5370Pと6301Pが2つの時計コレクションを構成していると思わずにはいられない)。

 44.8mm × 12mmと直径はやや大きいものの、その複雑機構を考えると厚みのある時計ではない。ムーブメントは、37mm x 7.5mmのサイズで新開発のCal.GS 36-750 PS IRMだ。ケースにはもう一つ小さなディテールがある。それはラグの間にダイヤモンドがセッティングされていること。これは今日の、パテック製プラチナケースの時計では一般的なものだ。通常は6時にあるが、もちろんその位置はスライドピースが占めている。文字盤はとても素晴らしいものだ。ゴールドをベースに光沢仕上げの本黒七宝文字盤で、長く繊細で先細りのリーフ針を備えている。驚くべきことにそれらには夜光が塗布されている。

 これには本当に驚いた。結局のところ、歴史的に見るとチャイミングコンプリケーションにおける重要なポイントは、暗くなった後も所有者に時間が知らせることだった(このポスト白熱灯の時代には、電灯の前の時代に日が落ちると深い暗闇に包まれていたことを忘れがちだ)。これは伝統主義者たちから怒りの声があがるかもしれない意思決定だ。
「チャイムが鳴る時計に夜光塗料、一体何を考えているんだ?」
 しかし、同時に考えてみれば、それは奇妙な意味をもつ。結局人は、暗闇の中で時間を知るためにチャイムシステムだけに頼らなくてもいいかもしれないし、12時15分から12時30分までの間にリピーターを作動させずに時間を知りたいかもしれないし、何かの拍子にリピーターを作動させたくなるかもしれない。要するに選択肢があるのはいつでも嬉しいことで、どんな場合でも(確かに昼間の時間帯であれば)夜光はほとんど目立たないため、時計の美学を楽しむ上では、ほとんど支障は無いのだ。現代の便利な機能を全て揃えようではないか。

 話をムーブメントに移そう。Cal.GS 36-750 PS IRMは、ムーブメント自体は3日間、チャイム機構は24時間のパワーリザーブを実現している。グランドソヌリを備える時計に一般的に見られるように、チャイム機構用と時刻用とで別々の香箱をもっている(押し込まれた位置でリューズを時計回りに回すとムーブメント用、反時計回りに回すとチャイム機構用のツインゼンマイが巻き上げられる)。ムーブメント用とチャイム機構用に2組のツインゼンマイがあり、合計4つのゼンマイを搭載。ムーブメントは、低、中、高音にチューニングされた3つのゴングによって鳴らされる。グランドソヌリ・モードでは、時は低音の数で知らせ、クォーター(15分、30分、45分)は高低中音からなるメロディの数で知らせ、最初に今が何時かを低音の数で知らせるようになっている(なぜって、最後のストライクが午後3時45分だったかなんて覚えている人はいないだろう?)。プチソヌリモードでは、正時に今が何時かを低音で知らせる。なお、グランドソヌリ・モードでは、24時間の間に1056回のストライクがあり、当然のことながら全てが正確なものでなければならない。グランドソヌリを搭載した時計をテストするためには、24時間の間、全てのチャイム、全ての時間、全てのクォーターを聞かなければならず、一つでもずれたらケースバックを外すのだ(きっと悪態をつきながら)。

 チャイム機構の速度は、遠心ガバナーによって制御されており、ゴングやハンマーと同様にケースバックからも見ることができる。実際の打鍵は文字盤側にあり見ることは出来ない。しかし、もし見せてしまうと時計の視認性が大幅に損なわれることになってしまう。いずれにしても舞台裏を見るのはいいことかもしれないが、人生にはもう少し謎があっていいのではないかといつも感じている。
 もっと謎を多くしたいという方のために、本機にはソリッド・プラチナ・ケースバックも同梱されている。ムーブメントには、シリコン製(Spiromax製)ヒゲゼンマイなどの現代的な特徴があるが、ケースバックから見えるのは、丸みを帯びた面取り、鏡面仕上げ、ジュネーブストライプ、ブラックポリッシュされた受けなど、伝統的な仕上げがトップレベルで施されている。

 さてグランマスター・チャイムの二つの特許が、Cal.GS 36-750 PS IRMにも採用されている。通常グランドソヌリ搭載の時計では、サイレントモードでも機構が連結されているが、グランドマスター・チャイムや本キャリバーでは、これらが完全に分離されているため、エネルギー消費を削減し72時間のパワーリザーブに貢献している。もう一つは3つのストライクモードを全て選択できる単一のスライドピースの特許だ。

 最後にご紹介する非常に珍しい機能の一つは、秒表示だ。このムーブメントのためにパテックは、ジャンピング・セコンド機構(デッドビート・セコンドとしてより知られているかもしれない)を採用した(この言葉を恐れるのは馬鹿げていると感じるが、トゥルービートをもつロレックスを含め多くのブランドは、婉曲表現によって複雑さを表わしているようだ)。この複雑機構は、一見シンプルに見えるが、実装するにはかなり複雑で、本機の控えめな性質によく似合っているように思う。もちろんあなたが楽しみにしているのは、秒針が59から60に変わった瞬間に始まるチャイムだからだ。

時、分、秒のジャンピング表示機構をもった2014年のRef.5725P。

 ジャンピング・セコンド機構は、ムーブメントの4番車から駆動し、シリコン製部品がいくつか搭載されている。この場合は、潤滑油なしで機能する性能と低質量であることが採用されている理由だが、そのどちらもこの複雑機構にとって重要だ。動作は非常に高速だ(その2つのコンポーネントに注油すると抵抗が発生する)。ジャンピングセコンドのためのこの特定のメカニズムは、以前2014年にも見られた。ジャンピング・アワー、ジャンピング・ミニッツ、ジャンピング・セコンドを搭載したアワーストライクウォッチ Ref.5275だ。パテックによるとCal. GS 36-750 PS IRMに病表示を組み込むことは、この時計を設計する上で大きな技術的課題の一つであることが証明されたのだ。

 パテックは、この価格を“リクエストにより”と発表。彼らのチャイム機構は複雑機構の頂点にあるため...まぁ私はそれを推測したくはない(そして、したとしても意味がないだろう)。これはパテックからリリースされた最も魅力的な新しい複雑機構の一つだ。非常に洗練されたデザイン、控えめでエレガントであり、その一部である希少なカテゴリー内でもそれを高める多くの機能(ジャンピング・セコンドを含む)を備えている。プラチナ製の新しいチャイムコンプリケーションを発表することにも大きな自信が必要だ。なぜなら密度と構造が音を弱める傾向にあるため、通常時計メーカーがチャイム機構を作る際に最初に選択することはないのだ。しかしパテックは、音響的に言えば、この扱いにくい素材を最大限に活用してきた豊富な経験をもっていることは事実だ。その壮大さの全てについて、ある意味で、パテックの過去への誇りの明確な表現と、伝統主義者の楽園でもあるパテックの未来への自信を明確に表現している。

パテック フィリップ  Ref. 6301P グランドソヌリ: ケースは950プラチナ製、44.8mm x 12mm。非防水(湿気・ほこりにのみ対応)。表裏にサファイアクリスタル、ソリッドケースバックが付属。ムーブメント Cal. GS 36-750 PS IRM。手巻き機械式ムーブメント、合計703の部品。グランドソヌリ、プチソヌリ、ミニッツリピーター搭載(ゴングは3つ)。ジャンピング・セコンド。チャイムモードを選択するスライド・ピース(プチソヌリ、グランドソヌリ、サイレント)。ムーブメントとチャイム機構のパワーリザーブインジケーター。37mm x 7.5mm、ムーブメントは72時間パワーリザーブ、グランドソヌリは24時間パワーリザーブ。振動数2万5200振動/時。95石。Gyromaxテンプ、Spriomaxヒゲゼンマイ。限定ではないが非常に限られた生産本数。価格はパテック フィリップ公式サイトから要問合せ