Introducing “レインボー”デイトナ、気をつけて！　パテック フィリップがジェムセットのアクアノートを出してきた

　例えば、この珠玉のクロノグラフがそうだ。

　今回ご紹介するのは、アクアノート・ルーチェ《レインボー》クロノグラフ Ref.7968/300R-001だ。レインボー、ユニコーン、レアなポケモン、この時計が時計界でどう呼ばれることになるかはわからないが、とにかく50個のバゲットダイヤモンドと52個のカラーサファイアで覆われている。そしてそれは素晴らしいものだ。

　レインボーウォッチというコンセプトは新たなものではない。まれでもなく、この領域に参入しているブランドは複数ある。しかしレインボー旋風を正しく巻き起こしたといえるのは、今のところひとつの時計に限られる。ロレックスの“レインボー”デイトナだ。2012年以来レインボー デイトナは、コレクター界隈でカルト的ステータスを築き上げ、宝石をあしらったジェムセットウォッチ市場に連鎖反応を起こしてきた。他ブランドの参入例は、ウブロのビッグ・バン サファイアレインボー、シャネルのJ12 エレクトロ、オーデマ ピゲの宝石をあしらったロイヤル オーク オフショア ミュージック エディションなど、そのほかにも数々ある。しかし今、それが主要な立役者2社のゲームになったのだとひしひしと感じる。“パテックさんがチャットに参加しました”という感じだ。

　アクアノート・ルーチェは、宝石をあしらった“レディス向け”のアクアノートだ。そして私は小型のアクアノート、“ミニルーチェ”とも呼ばれるRef.4961Aがお気に入りなのだが、サイズがそれよりやや大きめになったとしても許せる。それによってこの時計がいくぶんジェンダーニュートラルに近づくことになる。手首に宝石を散りばめていることをそう呼ぶのであればだが。

　驚くことに、このアクアノートはパテック フィリップが初めて作った自動巻きレディス用クロノグラフになる。アクアノート・ルーチェのラインナップとしては初の複雑機構だ。

　クロノグラフには自動巻きCal.CH28-520が搭載されている。6時位置に大きな60分のミニッツカウンターがあり、クロノグラフ用スイープ針も常時動く秒針として使うことができる。4時位置のプッシュボタンを押せば、たとえクロノグラフ用スイープ針がすでに何らかの時間を測定している最中であっても、あるいは常時動く秒針として使われていたとしても、フライバック機能がいつでも新たな時間の測定開始を可能にしてくれる。フォーマットは従来式だ。クロノグラフのスタート・ストップボタンは2時位置に、クロノグラフのリセットとフライバック機能のプッシュボタンは4時位置にある。

　さあ、次は宝石の話。これには仰天した。バゲットカットを施した宝石が八角形のベゼルを2列に埋め尽くしている。内側の列は無傷のレアなホワイトのトップウェセルトン・ダイヤモンド（2.05ct）が40個、外側の列はレインボーカラーのサファイア（2.31ct）40個からなっている。工場で宝石を設置することにかけては秀でたパテック フィリップのことだ、少なくとも1個ずつ手作業で宝石を選り分けているだろうことは期待できる。レインボーカラーの配色の移り変わりを滑らかにしなければならないことを考えれば、これは至難の業だ。

 “インビジブルセッティング”なる技法が使われており、宝石はケースの外側からは見えない“メタル製レール”に設置されている。ダイヤルはアクアノートのモチーフがエングレービングされたマザー・オブ・パールで、そこに18kローズゴールドのアプライド型アラビア数字と、バゲットカットを施したレインボーカラーのサファイアと18kRGからなるアプライド型アワーマーカーもついている。 RGのバトン針には夜光が施してあり、何時何分かが素早く簡単に読み取れる。

　この時計がもう少しだけ小さければとも思うが、常に望むものがすべてそのまま得られるというものでもない。ケースは39.9mmだが、宝石をあしらうにはこのサイズが必要なのだろう。個人的には宝石は多ければ多いほど心が浮き立つ。ふたつのクロノグラフ用プッシュボタンはサテン仕上げがされており、Cal.CH28-520ムーブメントにも丹念な仕上げが施してある。サファイアクリスタルのシースルーバックから少しだけその素晴らしい眺めが得られる。

　私にとって、これはハレー彗星や金星の太陽面通過といった珍しい天体現象のように胸を躍らせる時計だ。レインボーの輝きに浸っていたいのだ。

 “レインボー”という命名はロレックスの商標であるかのように感じてしまうが、実際には単なるニックネームに過ぎない。多くのほかブランドがいくつものレインボーを作り出してきた。だが、このモデルはそれらとは別物だと感じる。膨大なラインナップのなかで、我々は今、真の挑戦者を見つけたのだと思う。間違いなく将来、収集価値が出ることだろう。

　アクアノート・ルーチェ《レインボー》クロノグラフ Ref. 7968/300R-001は、チームコンプリケーションの勝利でもある。チームコンプリケーションとは女性たちからなるグループで、正式な結成はまだで今はその名をプリントしたTシャツを作ろうとしているところだが、時計メーカーに対し、女性カスタマー向けに本物の複雑機構を備えた本物の機械式ムーブメントを作ることを要求して結集する集団だ。なぜその存在を知っているかというと、私もそのひとりだからだ。そして、こうした話題はよく上がってくるのだ。

　パテック フィリップはRef.7071やRef.7150/250R-001など、過去にもレディス用クロノグラフをいくつか出しており、それらは美しい時計ではあるものの、私は今回、同ブランドが本流文化の時代的精神にしっかりと則ったモデルを複雑機構付きの小さなサイズで発表してくれたことに対して感謝しているのだ。パテック フィリップは確かにレディス向けウォッチの分野に携わってはいるが、ほかの多くのブランドと同様、“レディス”サイズを作るとなるとクォーツムーブメントになることが多く、それだけに機械式ムーブメントと複雑機構を備えた今回の縮小版アクアノートは、その努力にA評価を与えたいのだ。

　我々はついに、ほかの高級ブランドもこの市場に参入するのを目にしている（今年の夏にリリースされたヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル パーペチュアルカレンダー ウルトラシンをご覧あれ）。そうとなれば、これがトレンドとなり、ゆくゆくは常識となることを期待しよう。その幸せな未来では、こうしたアクアノートのような時計が全サイズで展開されるのを見てみたい。現在は、多くの女性が解放のシンボルとして大型サイズの時計をつけているようで、それもカッコいいが、女性のなかには大きなサイズだとおかしく見えてしまう人もいる。少なくともケースサイズには、36mm、34mm、31mmの選択肢があれば素晴らしい。

　時流がこちら側へやって来たと私は感じている。今や自動巻きのレディス用レインボークロノグラフが、ほかならぬパテック フィリップから発売されるのだ。すごいことではないか。

　さあ、この調子で突き進もう。

　宝石は素晴らしいし多くの注目を浴びることだろうが、ここで重要なのはそれだけではない。この言葉を広めよう。「女性たちはもっと複雑機構を望んでいる！」

ブランド： パテック フィリップ（Patek Philippe）
モデル名： アクアノート ルーチェ「レインボー」クロノグラフ
型番： Ref.7968/300R-001

直径： 39.9mm
厚さ： 10.37mm
ケース素材： 18kローズゴールド
文字盤色：ホワイトのマザー・オブ・パール
インデックス： 18kローズゴールドのアプライド型アラビア数字、およびバゲットカットのカラーサファイアをあしらった18kRGのアプライド型アワーマーカーが12本
夜光： あり
防水性能： 30m
ストラップ/ブレスレット： 合成素材

キャリバー： CH 28-520
機能： 自動巻き機械式ムーブメント、60分のミニッツカウンター付きフライバッククロノグラフ。
直径： 30mm
厚さ： 5.3mm
パワーリザーブ： 45～55時間
巻き上げ方式： 自動巻き
振動数： 2万8800振動/時（4Hz）
石数： 32

価格： 2861万1000円（税込）
発売時期：今すぐ
限定： なし