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私はトゥールビヨンについて、十分な知識はもちあわせていない。私はジャック・フォースターではない。しかし、Horageのトゥールビヨン 1を1週間ほど身につけてみて、なぜトゥールビヨンが時計愛好家を魅了してきたのか、その理由に一歩近づけた気がした。トゥールビヨンは、1795年にアブラアン-ルイ・ブレゲが、ムーブメントにかかる重力の影響を均一化し、精度を高めるために考案したものだ。それ以来、トゥールビヨンは高級時計とラグジュアリーの象徴となった。
私は普段、工業生産のETA-2824ムーブメントやセリタSW200、セイコー6R15などを搭載した、面白くてストーリーのある頑丈なツールウォッチに自然と惹かれる。安くてメンテナンスが簡単だから、気にせずどんどんつけることができる。時計版のAMC4.0直列6気筒エンジンのようなもので、シンプルで壊れにくいのだ。しかし、Horageの場合は、フェラーリの6.5リッターV型12気筒のようなもので、現代における驚異的な技術力を誇っているのだ。
Horageは、スイスの有名ブランドが行っていること(幅広い種類の時計を製造すること)を忠実に実行し、時計業界に旋風を巻き起こしている若いインディーズブランドだ。しかも、エンジニアリングにこだわって、驚くべき価格で提供している。例えば「トゥールビヨン 1」は、7490スイスフラン(約90万円)から。私たちにとっては決して安い買い物ではないが、スイス製のトゥールビヨンウォッチとしては破格だ。
ETA-2824を搭載した時計に同等の価格設定をしている会社もある。そのムーブメントの単価は100ドル程度なのにだ。価値提案という観点からも、Horageには誰もが興味をもつはずだ。
そしてこれが、ツールウォッチのコンフォートゾーンから抜け出してトゥールビヨンを身につけさせるほどの興味を、私に抱かせた理由だ。前回、私は4万9000ドル(約590万円)のトゥールビヨンをつけてニューヨークを歩いた。今回は1万2080スイスフラン(約145万円)で、ずっと気楽に楽しめたのだった。私が借りたHorage トゥールビヨン 1はゴールドケースを備え、スタンダードモデルよりもアップグレードしたものだ。時計の価値が明確にわかると、いつもその時計を身近に感じることができる。個人的にトゥールビヨン 1のデザインには惹かれなかったが、その価値の高さは明らかだ。このモデルは、"スターター"として最適なトゥールビヨンと言える。
Horageは、シリコン製脱進機の設計や独自の形状など、K1ムーブメントで培った技術をベースにトゥールビヨンムーブメントを開発。その結果として、1つの香箱で120時間のパワーリザーブを誇るキャリバーが誕生した。DLCコーティングされた自動巻きの香箱が一つであることで、ゼンマイの巻き上げすぎが避けられ、2万5200振動/時であることがパワーリザーブの長さに貢献している。1週間近く着用しても、1回しか巻き上げる必要がなかったことには驚いた。
私は機械式時計の巻き上げという行為を完全に受け入れており、毎日行うことは少しも苦にならないし、むしろ楽しみでもある。しかしこの時計を巻き上げなくてよかったことについては、別の体験もできたため、それほど悪くはなかった。それはチタン製のトゥールビヨン・ケージがぐるぐると回転する様子を見ることだ。ケージの片方の脚は先端に夜光のついた秒カウンターになっていて、その下には脱進機の歯車と青色のアンカーが見える。トゥールビヨンの複雑さをよく知らない人にとっても、パーツが色分けされていることで視覚的なグループ分けがなされ、見ていて面白い上に概念的にも理解しやすくなっていると思う。
このフライング・トゥールビヨンは、より高い耐衝撃性を実現するために、従来のピニオンと穴石ではなく、ベアリング構造を採用している。
格子状の地板(文字盤を兼ねる)とブリッジは、カジュアルかつ奇抜なデザインで、ムーブメントを容易に覗き込むことができる。フライング・トゥールビヨンはこの時計の主役であり、他の部分はそれを見事に支えている。ケースはゴールドだが、堅苦しさは全く感じられない。むしろ、ツールウォッチのケースに近い形状だと思う。Horageはまだ若い会社だ。このブランドのデザイン言語が、彼らの素晴らしいエンジニアリングのレベルに達するまでには、まだ何年かかかるかもしれない。
注文のプロセスは、Horageのアプローチ全体と一致している。ウェブサイトにログインして、コンフィギュレーター(車を組み立てるようなもの)に入り、地板の素材と仕上げを選ぶ。グレー、シルバー、ゴールドから選ぶことができる。さらに、PVDブルーの地板にアップグレードすることも可能だ。ケース素材はステンレススティールとゴールドの2種類で、合計160通りの組み合わせが可能になっている。
Horageは技術力を重要視し、コンフィギュレーターはそれを証明するものだ。さらに、ケースの価格は現在の金の価格に連動しているため、注文するときには製造コストよりも少しだけ高い金額を支払うことになる。これは無駄をそぎ落とした生産方式のノウハウをもつブランドだからこそできることだ。
手首につけてみてもこの時計は快適だ。トゥールビヨンは通常厚みが出るので、手首にスノータイヤをつけているような感覚を予想したが、ゴールドであっても薄くて軽やかだ。この時計は、光を反射するプレート上に施された30°の面取りや珍しい色の組み合わせによって確かに注目を集めるが、高級時計メーカーのトゥールビヨンのような注目の集め方とは違う。
正直なところ、レビューのために高級時計を身につけるとき、私はいつも自分らしくない感じがしてしまう。常に楽しいが、まるで似合わない衣装を着て歩いているかのように経験値が一致しないのだ。トゥールビヨン 1の外観にはあまり興味がないが、このブランドの哲学、信念、気軽さには深く心を打たれている。Horageは、通常立ち入れない時計の分野への入り口を作ってくれた。そこが素晴らしい。トゥールビヨンを楽しく身近なものにできる人は、正しいことをしていると思うのだ。
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Photography: Isaías Sánchez.
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