Hands-On グランドセイコー　SBGY026 エレガンスコレクション 花筏（はないかだ）を実機レビュー

　もしあなたがグランドセイコーの“中の人”だとして、ベストセラーのSBGA413 “春分”をさらにいいものするにはどうしたらいと思うだろうか？　それはもちろん、ローズゴールドにすることだ。

　それこそまさにグランドセイコーの新作SBGY026 “花筏（はないかだ）”が行ったことであり、おなじみの淡いピンクの文字盤を特徴とするこの新しい100本限定モデルでは、ローズゴールドケースで表現した。グランドセイコーを知っている人なら、きっと自問自答していることだろう。“グランドセイコーは、日本の美しい自然のなかにあるどんな淡いピンク色から、この楽しい新作限定モデルのインスピレーションを得たのだろうか？”と。

　そう、“春分”のあとに本当の春がやってくるのだ。「暖かい風が日本の桜の木をなびかせ、淡いピンクの花びらを舞い上がらせる」とグランドセイコーは語る。これが“4月の雨は5月の花を咲かせる”ということわざの日本版だとしたら、日本人はアメリカ人よりもずっとロマンチックに物事をとらえる傾向にある。

　そして、このロマンチックな心模様は、新しい花筏（はないかだ）のすべてのディテールに反映されている。ローズゴールドのケースに合わせることで、淡いピンクの文字盤の効果はより高まる。光や角度によっては、“春分”のピンク色はあまり目立たなくなるが、花筏（はないかだ）のピンクはとたんに見逃せないものとなるのだ。

　ヴィンテージコレクター、特にヴィンテージパテックのコレクターは、“ピンク・オン・ピンク”の時計に目がないが、それは多くの場合、死ぬほど豪華に見えるからだ。ピンク・オン・ピンクのヴィンテージウォッチの魅力を現行の時計で再現することは困難だが、グランドセイコーはSBGY026において、それ自体で成り立つような独自の豪華さを実現させた。

　ドーム型風防を備えている影響で、光が当たるとSBGY026の文字盤には陰影が生まれる。これにより、文字盤に独特の質感が描き出されるのだ。チタン製の“春分”よりも湾曲しているように見える。また、この文字盤には刻印や、日付表示、パワーリザーブインジケーターもない。つまり余計なものがないのだ。そのため文字盤の仕上げが存分に発揮されている。

　このSBGY026の内部には、手巻きのスプリングドライブキャリバー9R31が搭載されている。最も注目すべきは、ふたつの主ゼンマイを持つデュアル・スプリング・バレル機構により、72時間のパワーリザーブを実現している点だ。ムーブメントの裏側にはパワーリザーブ表示用の小さなインジケーターがあり（サファイアクリスタルのシースルーバックから見える）、パワーリザーブ表示には最適な場所といえる。月差±15秒の精度を誇り、スプリングドライブムーブメントであるため、秒針は柔らかなピンクの文字盤の上をスムーズに、流れるように移動する。

　ローズゴールドのケースは、38.5mm×10.2mmだ。ポリッシュ仕上げで、手首にスリムにフィットし、アプライドインデックスとマッチしたインデックスを備えている。グランドセイコーは今週も印象的なスポーツウォッチを発表した。これらについては近日中に紹介しよう。しかし私にとってSBGY026のような時計は最も純粋な形のグランドセイコーなのだ。スリムでドレッシーな時計であり、美しいテクスチャーの文字盤、スプリングドライブキャリバー、そしてそれ以上の余計なものはない。ブラウンのクロコダイルストラップには、（もちろん）ゴールドの3つ折れクラスプが付属している。

　この新しいSBGY026の小売価格は363万円（税込）だ。確かに100本しか作られないというのは少し寂しいし、大量に出回ることもないだろう。しかしグランドセイコーについて私たちが知っていることがひとつあるとすれば、このあとも、ほかの限定モデルが続けて登場するということだ。