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Hands-On サーモンダイヤルのMB&F レガシー・マシーン パーペチュアル

マックス・ブッサーは、MB&Fのファンが望むものと、それを提供する方法を知っている。


Watches & Wondersの2日目。何十ものブランドによる数え切れないほどの新作リリース、延々と続くセキュリティの長い列からの情報過多により私の頭はクラクラし、気が狂いそうになった。なので、M.A.D.ハウス(精神病院)に自分を送り込もうと思ったのだ。

The entry to MB&F's studio

 それは文字どおりの意味だ。その日最初のアポイントを終えた私は、ジュネーブにあるMB&Fの新しい工房まで、約1時間半かけて出かけた。クルマでしばらく行くと、2022年末から同社が拠点としている、街の南端にある築300年以上も経た邸宅に到着した。

 この建物には当時の内装や木工細工が多く残されており、玄関にはらせん階段の親柱に彫刻が施されたクラシックな木製の階段があった。その階段を半分ほど上がると、かの名工、独立時計師ジャン・カゼス(Jean Kazés)による時計が吊るされている。しかし私が本当に見たかったものは、階段の下に展示されていたサーモン文字盤の新しいSS製レガシー・マシン パーペチュアルだった。そして、それは私が期待した以上のものだった。

MB&F Legacy Machine Perpetual Calendar in steel

 ささいな間違いを指摘したがる衒学者たちのために、まずこの点をはっきりさせておこう。MB&Fは、ダイヤルプレート(時計用語を最も美しい言語だと考える人々のためにこう記載しておく。ちなみにプラチナ製だ)のことを“ダイヤル”と呼んでいる。少なくとも、螺旋状に美しく広がるサーモンカラーのサンレイ仕上げのうえにムーブメントの約半分と主要な表示部分(およびラッカーダイヤルやサブダイヤル)が配置されているものを指す場合はそうだ。では、レガシー・マシンがダイヤルと呼べるものを複数持っているとしたらどうだろう? 同モデルは、あらゆる意味でサーモンウォッチなのだ。

MB&F Legacy Machine Perpetual Calendar

 サーモンとSSの組み合わせは、時計コレクターの世界では特別な存在であった。しかしながらこの組み合わせの魅力は、ことヴィンテージウォッチ界隈において極めて貴重な存在であることにも由来する。そして、貴重ということは必然的に、手に入れられなかった誰かが仲間外れになるということだ。この数日、ようやくブッサーと何回かにわたり対話することができた。その短い時間のなかで私が学んだのは、彼は誰も仲間はずれにしたくないと考えているということであった。

 まあ、18万ドル(約2385万円)の時計は予算的に懐が深いとは言い難い。だが、ブッサーの活動はそのほとんどにおいて、友人や家族、ファン、そして彼の“同類”であるオーナーたちが公平に扱われるようになっている。その最たる例が、マックスと彼の物語のファンに手の届きやすい価格で提供されたM.A.D.1だろう(そう、私は今なお抽選に当たらないものかと願っている)。

The M.A.D. 1

コール・ペニントンによるA Week On The Wristのビデオに登場する、M.A.D.1。

 初のSS製レガシー・マシーンにサーモンダイヤルを採用し、さらにそれを限定品にしないという選択は、純粋な時計ファンやサポーターへの究極の敬意といえるだろう。それは、とても素晴らしいことだ。

MB&F LM Perpetual Calendar

ダイヤルの構造がぶっ飛んでいる。

 これは、アイルランドの独立時計師スティーブン・マクドネルの設計による、581の部品からなる完全一体キャリバーと同じものだ。そのルックスを表す専門用語は、おそらく“奇跡”だろう。ムーブメントの各パーツはサーモンピンクのプラチナプレートの上でひときわ映え、一般的に想像されるよりも高いレベルで仕上げられている。特にブリッジ部分に施された面取りはよく見て欲しい。

Anglage on the MB&F LM Perpetual

MB&F LM パーペチュアルに施された面取り。

 幅44mm、厚さ17.5mmと、スペック上はかなり重厚なサイズだが、実際に手に取ってみると特に扱いにくいという印象はない。唯一、ストラップが硬く若干装着感に難があるものの、この時計はショーケースからそのまま取り出してきてまだほとんどなじんでいない状態だ。ラグを低めに配置しケースバックをフラットにしたことで、着用時、見た目以上に薄く感じられたことには驚いた。

MB&F LM Perpetual
MB&F LM Perpetual

 シースルーバックの下にはスティーブン・マクドネル氏により素晴らしいデザインが施されており、MB&Fがクラシックとフューチャリスティック、双方における最高峰を提供し続けていることを示している。

 しかしこのムーブメントは、デザインから受ける印象よりもその機能はシンプルだ。パワーリザーブインジケーターは文字盤の4時付近にあり、時・分・日・月・曜日表示については説明不要だろう。もしカレンダーを調整したいなら、時計の各コーナーにあるプッシャーを使用する。10時位置のもので日付、2時位置のもので曜日、4時位置のもので月、7時位置のものでうるう年を変更することができる。プッシュピンを使うより、ずっと簡単だ。

MB&F Perpetual steel

 この作品は全体をとおして、時計製造とそれを取り巻くコミュニティに対する真の愛を表していると思う。一部のブランドにおいて、Watches & Wondersの会期中、コレクターが実際に求めているものについて耳を傾けているのかと疑問を抱くことがあった。MB&Fは確かに創業者の特異な感性によって成り立っているが、常にファンフレンドリーであるように見える。そして、コレクター(および、これからコレクターになる人々)に対し、次は何が起こるのだろうと絶えず期待を抱かせるのである。

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詳しくはMB&Fのウェブサイトをご覧ください。