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POINT/COUNTERPOINT シャネルの新作J12 Cal.12.1にはホワイトがいい、あるいはブラックもいいかもしれない

ご意見番の編集者ふたりが語り合う。

Photos by Tiffany Wade

スタイルエディターとして、シャネルのJ12が本格的にルネッサンスを迎えていることをお伝えしよう。

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 ホワイトセラミックのJ12は、私の高校時代の憧れの時計だった。2005年の1年間、私は母にねだって買ってもらおうとした。答えはノーだった。そして今、すっかり大人に成長した私は、彼女が当時駆け引きの余地すら与えなかったことに尊敬をしている。

 それでもノスタルジーはなかなか消えない。そこでJ12の最盛期である、2000年代前半から半ばにかけての記憶を辿る旅にぜひ同行してほしい。

 リンジー・ローハンがシャネルのフロントロウ(ショーの最前列)に座り、ショーのあとにカール・ラガーフェルドとポーズをとっていた時代のこと。そしてパリス・ヒルトンはニコール・リッチーとともに、大ヒット番組の『シンプル・ライフ』に出演し、ガリアーノが手掛けたラップアラウンドシールドタイプのディオールのサングラスをかけていたとき。そして、ジェニファー・ロペスがジャ・ルールの“I'm Real”のミュージックビデオで、ジューシークチュールのピンクのスウェットを着て隣で歌っていた時代のことだ。J12はY2Kファッションに身を包んだ若い女の子たちの手首に巻かれ、やがてそのほかのトレンドと同じようにそのサイクルは廃れていった。ベイビー・ファットのボンバーズや、バレンシアガのモーターサイクルバッグと一緒に、あちこちのクローゼットの奥にしまわれていったのだ。

 しかし2023年の現在、ノスタルジーとはまったく関係のない理由で、J12は再びフレッシュに感じられるようになった。そして最もアンチファッションな時計コレクター、つまりカール・ラガーフェルドとカール・マルクスの区別がつかないような人たちですら手首に全神経を集中させて、この時計に注目する価値がある。

 J12はセレブリティの世界と密接な関係を結んでいるものの、機械式時計であるということは評価されるべきポイントである。もしJ12のその核となる部分が、本物の、正統派の時計ではなかったら、再び注目を集めることになるとは考えにくい。

 しかもJ12のパワーと魅力は、単にロゴに基づくものではなく、独自のデザインコードも持っている。シャネルは長年にわたってそのルックスをテストして微調整するなど試してきたのだが、多くの“真面目な”時計ブランドと同様に、主力製品の基本的な構造要素はそのままに、その完全性は維持してきた。J12は1999年に発表され、その名前はヨットレースの世界(具体的にはJクラスの12mレーシングヨット)に由来している。洗練されたエレガントなデザインであり、性別に関係なく身につけられるが、その根底にあるのは丈夫さとスポーティさである。むしろ注目すべきは、シャネルがセラミックを採用したことだろう。J12は20年以上前に作られたものであり、当時はセラミックが今日ほど広く普及していなかったことは確かだ。

J12のヴィンテージ広告

J12のヴィンテージ広告。Image: Courtesy of Ad Patina

 そしてJ12ルネッサンスはすぐそこまで来ている。ペネロペ・クルスとマーゴット・ロビーという、超有名でとても美しい女性ふたりを起用した新しいキャンペーンが行われる予定だ。彼女たちはある意味、リンジー・ローハンが自宅監禁されたときのパパラッチ的な雰囲気とは正反対の立ち位置にある。2019年のキャンペーンでは、キーラ・ナイトレイ、アリ・マッグロー、ナオミ・キャンベルなど、いずれもシャネルの世界の一員、あるいはかつてそうだった、洗練されたシンボリックな女性たちの手首にJ12が装着されていた。

 この時計はもはや、早熟なティーンエイジャー(かつての私のような)をターゲットにしているわけではない。ファッションも時計も真剣に取り組む(今の私のように)、大人の女性のための本物の時計なのである。

 新しいJ12には、従来と同じくオールホワイトセラミックとオールブラックセラミックのバージョンがある。どちらのモデルにも、アクセントとしてイエローゴールドを使用し、さりげない変化を加えている。いずれも直径は38mm、ケニッシ社の自動巻きムーブメントである新型Cal.12.1を搭載。パワーリザーブは約70時間で、防水性能は200mを確保している。

シャネル 新型J12の横置きイメージ
シャネル 新型J12に搭載されたCal.12.1

今週の頭に、副編集長のノラ・テイラーと一緒にシャネルのブースを訪れた。バゲットセッティングされたダイヤモンドのJ12に目を奪われたあと、私たちは、このクラシックなモデルをより控えめにアップグレードさせたJ12に目を留めた。私はホワイトを、ノラはブラックを手に取った。

 たまに交わりながらも、往々にして好みが大きく異なる2人の女性が、同じ時計を試着したらどうなるのだろうか? 私の青春時代に流行した某テレビ番組のフレーズを借りれば、物事に対して礼儀を欠いていき、現実味を帯び始めるということだ。

ノラ・テイラー: 誰かに“J12”というと、勝手に白いほうを思い浮かべるでしょう? ブラックは過小評価され続けている。私の率直な意見としては、人生のこの時点で生きていると信じていた、よりシックでエフォートレスな初期のY2Kファッションが常にライフスタイルに適していると思う。

シャネル 新型J12ブラックの文字盤アップ

マライカ・クロフォード: 確かに、私がホワイトモデルを好むのは、Y2K時代のノスタルジーに起因するのかもしれない。あの時計が欲しくて、フェアリーファッションの名付け親に毎日祈っていたのだから。当時はパフィーがハンプトンズで有名なホワイトパーティを開いて、パリス・ヒルトンやキム・カーダシアン、スコット・ストーチなどをゲストに迎えていた時代だった。もうこれ以上言うことはないでしょう。

 しかしそんな感情的な関係がなければ、今の私はブラックを選択肢として考えることに寛容になれたのではないかという気もする。なぜならケースカラー以上に、私が本当に心からハマっているのは、YGのアクセントだからだ。従来のJ12が持つ、クラシックなスティールのアクセントとはまったく異なる表情をしている。それに、私がYGにこだわるのは周知のとおり。

シャネル 新型J12ホワイトの文字盤

ノラ: これに関して私たちの意見は一致している。小さな変化でありながら、大きな効果をもたらしているように感じる。もしあなたが、この形で初めてJ12を見たのであれば、昔からこうだったんだと感じると思う。ワインクーラーからシャトーヌフ・デュ・パプに移行するような、そんな成長・熟成したような感覚に陥る。

 シャネルのプレビューに参加していた人たちはみんな、とてもシックかつ、こだわりを持って構成された、でもすごく派手ではないルックスをしていて、シルバーからゴールドに少しシフトするだけで装いは一変していた。この時計はそれを実現した、そんな顧客のための時計だった。

マライカ: シャネルのブースで働く人たちはみんな完璧な装いだった。あまりの素晴らしさに思わず声をあげてしまうほどに。手首から始まり手首で終わる服装が多いほかのプレビューとは対照的であり、まるで違う世界に飛ばされたような感覚になった。

 シャネルの環境に身を置くと、時計とブランドのプレタポルテの美学との圧倒的な結びつきを実感することができる。クチュリエール(お針子さん)からインスピレーションを得つつ、職人技を用いた、ブラックセラミックをふんだんに使用した“ピンクッション”のような文字盤など、彼らのデザイン的特徴やファッションの伝統に多く触れることができた。本格的な時計でありながら、すべてがシャネルらしいと感じたのだ。

ノラ: さて、もう合意し合うのはいい。私たちは戦うためにここにいるのだから。

 一般的にはブラックのほうがJ12をよりよく表現していると思うし、そしてこの新しいCal.12.1の場合はさらに文句なしにいい。ゴールドとブラックは本当によく映えるしね。そしてシャネルが、より大人の消費者に向けてターゲティングしているのであれば、ゴールドをアクセントにした繊細なブラックウォッチは欠かせないだろう。ベゼルではゴールドのほうが目立つし、そっちのホワイトよりも視認性が高いと思っている(とはいえ視認性はもっとシャープになるはずだが、この時計は飽和潜水をするような時計ではないから関係ない)。

シャネル 新型J12ブラックのリストショット

 ピンクッションウォッチやボーイフレンド、エクリプスコレクションなど、今年はブラックがコレクションを支配している。ココ自身がリトルブラックドレスで有名になったし、シャネルがこれからもシックな色に寄り添ったとしても私は驚かないだろう。

マライカ: でも私は、J12にはブラックが最適という意見に、残念ながら賛成できない。それもハマっているとは思うが、ホワイトのほうがずっと好きなのだ。私のファッションの直感は、完全にホワイトに向かっていった。試着してみると、日頃つけているアクセサリーとそろって一瞬でマッチした。私がデイリーユースしている、ホワイトエナメルとYGでできたキューバ製シガーバンドリングのカラーコンビネーションと呼応するほど、ホワイトとYGの相性は抜群だった。

 もしシャネルの時計を身につけるなら、シックでありながらも目立つような存在にしたいと思う。物静かなラグジュアリーを求めるなら、J12には目もくれないだろう。

シャネル 新型J12ホワイトのリストショット

ノラ: 正気とは思えない。ココ・シャネルが物静かなラグジュアリーを追求していて、派手なものを求めるなら頭からつま先までエミリオ・プッチをまとっているものだと思っていた。私はきっと、白い時計にちょっとした偏見を抱いているのだろう。ブラックにはない、Y2K的な印象があるように見えるからかもしれない。あなたはその古い時代性を好むのだろうが、私はそうではない。

マライカ: ノラの言いたいことはわかるし、実際に私はプッチをたくさん持っているからビンゴだ。でもココ・シャネルと私とでは、いろいろな点で意見が嚙み合わなかっただろう。彼女の有名な主張にこうある。“家を出る前に、鏡の前に立って何かひとつ外す”、そして“服装は常に簡素であることに越したことはない”とね。これらは基本的に、私の信奉していることとは正反対だ。私はもっと女の子なのだ。まさに過激的主義のね。私にとっては、アクセサリーをどのように重ねるかなど、頑張りすぎているように見えない、スマートに配慮したコントラストをどう作るかを重要視している。複数の指輪やブレスレットを身につけて墓場までいくつもりだ。そしておそらく、この時計のうちのひとつも。

ノラ: 素晴らしい指摘だ。もう喧嘩は終わり。仲直りしよう。シャネルはすべての人のために。

マライカ: J12ルネッサンスがここから始まりますように。

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詳細はシャネル公式ウェブサイトをご覧ください。