Hands-On セイコー プロスペックス　SRPC44 懐かしの黄金時代

　当時はその魅力に気づかなかったかもしれないが、セイコーの大きなゴールドのスポーツウォッチには何かカッコイイと感じさせるものがあった。これはセイコーの人気ダイバーズウォッチ、“タートル”のゴールドバージョンであるSRPC44（日本未発売）にも受け継がれている（注：セイコーは、ゴールド仕上げにどのような処理が施されているか明確にしないが、メッキではなく、おそらくPVD仕上げだと思われる）。

　ジャック・フォースターが以前（よくできた記事だ）よく似たSRP775K1（海外版はSRP775）を取り上げていたため、簡単に概要を説明したい。SRPC44は、幅44.3mm、厚さ13.3mm、ラグtoラグが47.25mmある200m防水のスティール製ダイバーズウォッチだ。セイコーの自動巻きムーブメント 4R36を搭載しており、デイ/デイト表示、ハック機能、手巻き機能を備えている。このモデルでは、イエローゴールドカラーケースと同色のベゼル、ダークグレーのメタリックサンバーストダイヤルを採用している（SRPダイバーズによく見られるマットダイヤルとは異なる）。針はゴールドカラーで、マーカーは非常に繊細なゴールドメタリックで囲まれている。

　これは僕にとって2回目のゴールドウォッチへの挑戦だが、前回の記事で紹介したミドーとはまったく違うものを選ぶことができたと思う。このセイコーのデザインのベースは、70年代半ばに発売された6309ダイバーに遡る。僕の知る限り、セイコーは6309（または似たような）のゴールドカラーバージョンを発売したことはないが、SRPC44は成功した復刻版デザインを採用し、独自の雰囲気に仕上がっている。だが、気に入っているミドーとは異なり、僕はSRPC44についての態度をまだ決めかねているし、完全には納得してはいない。

　発売時に買って何度も潜り、しばらく所有したSRP777（機能に若干違いがあるが日本版のSBDY015に相当するモデル）のように、セイコー ダイバーズの本当の魅力は、まるでそのデザインが生まれた時代に自分も生きているかのような気分にさせてくれるところにある。それは、皆がちょっとジェイソン・ヒートンのようになる世界だ。どこかの島を巡っていると、緩やかな時間を追い求める熟練ダイバーの日焼けした腕に、こんな時計が巻かれていることがある。彼の名前はジェフだったかもしれない。空になったコロナビールと永遠の共存関係にあり、天使のようにダイビングするのだ。

　この大きなゴールドのセイコーは、変革の歴史があるにもかかわらず、オリジナルデザインの時代のレンズを通して見たような感じがする。レビューに掲載されている写真のほとんどは、1976年に時計愛好家が6309に向けていたであろうレンズを通して撮影されている。上の写真（問題のレンズが写っている）だけでなく、それらの写真はすべて70年代初期のスーパータクマー 55mm F2で撮影した。 ソニーのA6500に装着したこのレンズは、僕の時代より前の時代、つまりダイバーズウォッチが僕らの安全を守り、マニュアルフォーカスが当たり前で、セイコーの夜光が金曜夜の『トランザム7000（Smokey and the Bandit）』の上映まで持続していた時代を、ほんの少しだけ味あわせてくれる。

　このレンズで、そしてヴィンテージのマニュアルレンズ全般で撮影すればするほど、このレンズが好きになる。特にSRP777の素晴らしさと比較すると、SRPC44のコンセプトには完全に納得できないけれど、1週間ほど使ってみて、これが本当に好きになってきた。ブラック/グレーとイエローゴールドの組み合わせがとても良く、金具が付いた付属のラバーストラップは最高に快適で、トロピック調やゴールドカラーの金具のついたNATOストラップをつけても素敵だと思う。確かに、SS製のSRP777よりも歴史的な正確さには欠けるが、現代のデジタルカメラにヴィンテージのレンズを使うことも同様だ。SRPC44は僕のスタイルに合っていると思う（最終的にフィルムに移行するまでは）。

　SRPC44は本当に楽しくて、実際はとてもクールだ。ゴールドの処理は6309に似た外観にとてもよく合っていると思う。定価525ドル（約5万7750円）のSRP777のベース価格に30ドル追加するだけでゴールド仕上げになるのだ。すでにSKXを持っていて、777は似すぎていると感じている人には最適だ。SRPC44は、オリジナルモデルの人気要素を維持しながら、まったく異なる手首での存在感を実現している。古くて新しい、ロマンチックで機能的なこのモデルは、僕の手首にセイコーの黄金時代のノスタルジーをもたらしてくれたのだ。