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WATCH OF THE WEEK シュプリームコレクターが語る「絶対に売らないTIMEX」

「収集価値がある」時計が、時折マンション並みの値段で売られている。しかしこのTIMEXの時計は、価格によってではなく、購入が不可能なために非常に「収集価値がある」のだ。

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HODINKEEのスタッフや友人に、なぜその時計が好きなのかを解説してもらう「Watch of the Week」。今週のコラムニストは、ストリートウェアとソーシャルメディアを中心に、コレクターズカルチャーに精通した人物だ。

前置きとしてこれだけは言っておこう。私はこれまでずっと時計愛好家だったわけではない。コレクターズアイテムが好きなのだ。特にシュプリーム(Supreme)の大ファンで、ストリートウェアやスニーカーのカルチャーに興味がある。シュプリーム、ストリートウェア、スニーカー、コレクターズアイテムなどのコンテンツをソーシャル上で製作している。

 昔から腕時計は好きだった。いくつかのロレックスに注目しているし、大学のチームがNCAAサッカー全米大会で優勝したときの記念の腕時計も持っている。しかし、シュプリームがTIMEXとコラボレーションするまでは、どうしても手に入れたい時計に出会うことはなかった。

Two Timex watches

 私がシュプリームにハマったのは高校生のときで、2012年頃だ。いくつか好きなものがあった。楽しいと思ったし、カッコイイと思った。そして最終的に、この会社は需要と供給に関して本当に革新的なことをやっていると気づいたのだ。私はもともと起業家精神旺盛な子供だったから、そういうところに目が留まった。シュプリームは、単に運よく成功した会社ではない。彼らはやっていることすべてにおいて実に戦略的で、意図的に供給不足を作り出すという領域において、まさにイノベーターだった。HODINKEEの読者なら誰でも知っているように、時計業界はこのことに注目していた。そして、すぐに追随したのだ。

 多くの時計愛好家は、この転売という側面を嫌っている。しかし嫌ったからといって、それがなくなるわけではない。だから、それを理解し、その範囲で立ち回り、ビジネスの観点から評価する方がいいのだ。好むと好まざるとにかかわらず、転売は今や時計収集の一部であり、それはすぐに変わることはないだろう。ストリートウェアをよく知らない人のために、シュプリームの全盛期における典型的な仕組みをご紹介しよう。

A man and a dog crossing a street

 コレクターたちは毎週木曜日の午前11時、ラファイエットストリートにあるシュプリームのニューヨーク店に行列を作る。毎週この日が発売日だ。平均的な顧客は数時間列に並び、500ドル使ってレアなコレクターズアイテム(パーカーやジャケットなど)を購入し、それを数千ドルで転売する。列に並べなかったり並びたくなかったりした人たちにそのアイテムを売るのだ。彼らはこのプロセスを何度か繰り返す。そしてそれを聞いた仲間のひとりが、「おい、ここで何が起こっているんだ?」と言い出す。その新参者は、服にもシュプリームにも興味はないけど、お金儲けには興味があるかもしれない。だから友達と一緒に行って列に並ぶ。最初の週は300ドル稼ぐ。2週目には500ドル。3週目には400ドル。 そして4週目、彼らは列に並び「あのポロシャツが実際好きになった」と言う。そしてついに自分用にも買うことになる。

 そして、それが多くの人にとってのスタートとなるのだ。彼らはシュプリームが開拓したビジネスモデルによってこの世界に入り込む。十分な時間と興味を持つ人なら誰でも、そのビジネスモデルによって自分なりの行動を起こすことができる。そしてそれが、多くの人がブランド自体に興味を持つきっかけとなるのだ。

A timex watch

 このTIMEXは、2019年のドロップで最も話題になったアイテムのひとつだ。この時計を買えるかもしれない列に並ぶチャンスを得るためだけで一連のプロセスがあった。火曜日の朝、シュプリームのウェブサイト上で事前登録をする必要があり、そしてそれは約30秒で「完売」したのだ。その短い時間にすべての情報を入力しなければならない。そして、さらにそのなかから抽選で選ばれた人のみが、その列に並ぶことができるのだ。つまり、1万人が登録しても、列に並べるのは500人しかいない。さらにそこから先は、先頭から100人に入らない限り、いいものは何も手に入らないということになるわけだ。

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 TIMEXのドロップのために、そのすべてを実行してみた。登録はできたものの......列には並べなかった。ツキはないのかと思ったが、誰かがこの時計を手に店から出てきてその場で売ってくれることもあるかもしれない。そこで札束を持って店の外に立っていることにした。ゴールドとシルバーの2色展開だったが、店に入った人でも、それぞれ1本ずつを買うことはできないようになっていた。1色しか買うことが許されなかったのだ。

 やがて販売が始まり、顧客がどんどん店から出てきた。その場でつかまえないといけない。「売ってくれる?」「何色持ってる?」 この取引プロセスは万人向けではないが、私は楽しいと思った(この場合も文句を言うより、このシステムのなかで何かやれた方がいい。最近、ムーンスウォッチの売り出しでもそうだった。それが今の現実)。個人的には、追いかけるのが好きだ。スリルがある。1時間くらい外で待っていたら運よくふたりが売ってくれて、各色1本ずつ手に入れることができた。おそらく小売価格(68ドル)の2倍を支払って手に入れたと思う。私にとって、それだけの価値があった。

A Timex on a wrist

 そして肝心の時計はというと、これが実際に身につけた初めての腕時計になった。TIMEXのクラシックなモデルに、ちょっとだけ華やかさをプラスしたような時計だ。ブランドロゴはあまり見えず、インディグロライトに照らされるとシュプリームのボックスロゴが浮かび上がる。T78587をベースにしているので、ブレスレット、クロノグラフ、そして30mまでの防水性を備える。

 シュプリームの新作を買って、パッケージのまま日の当たらない部屋に置いておく人もいるだろう。私はその真逆だ。シュプリームがアイテムを作ったら、欲しければ買うし、使い倒す。時計は、たとえ転売用の時計であっても身につけるためのものだ。将来的にリセールするときのことは気にしない。身につけるときには身につける。ただそれだけだ。

Photos, Nick Pinto

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