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Business News スイス時計産業は、アメリカ市場がリードして過去最高の年となった

スイスでは銀行までもが満足そうな笑顔を浮かべている。

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毎年1月、スイス時計協会(FH)は市場別、価格別、輸出額別など、想像できるほぼすべての項目ごとに前年度の数字を発表している。ビジネスおいては少し厳しいと思われるかもしれないし、2020年についての話であればそれは正しいだろうが、慌てないで欲しい。スイス時計協会によると2021年はスイス時計産業にとって過去最高の年だった。

 2021年のスイス時計の輸出総額は223億スイスフラン(約2兆7660億円)で、2014年に記録した222億5000万スイスフラン(2014年当時の年間平均レートで換算して約2兆6000億円)を上回り、過去最高となった。主導的な市場となったのはアメリカで、どうにかしてスイスウォッチは31億スイスフラン(約3846億円)の増収となり、これは2020年比で55%の増加となった(パンデミック前の年である2019年比でも28%増というのはさらに驚くべきことかもしれない)。

 しかし、この増収と同じくらい興味深いのは、輸出された時計が前年よりも大幅に少なかったということだ。

 2020年の時計輸出総数は1378万本と貧弱であった。一方、新型コロナウイルスの影響を受けずに生産・出荷が行われたその前年(2019年)を代表して見てみると、スイスの時計輸出総数は2064万6000本だ。そして、2021年は収益が過去最高となる年であるが、時計の総輸出数は2020年を上回ったものの、2019年を大きく下回る1572万5000本となった。

 少ない時計の生産・輸出で、より多くの利益を得るにはどうしたらよいだろうか? そのヒントは、時計の価格帯別売上構成比にある。記事「高級時計の価格と品質は和解し難い不和に陥ってしまったのか?」で、価格のプレミアム化が収益に関する一連の結果を強力に引っ張るエンジンになっていることを紹介した。輸出の総本数が減ったのは事実だが、生産量の減少のほとんどは低価格帯のものだった。例えば2019年、200スイスフラン未満のレンジでは1162万7000本の時計が輸出されたが、2021年の同カテゴリーの輸出は803万本にとどまった。

Patek Philippe headquarters, Geneva.

パテック フィリップ本社、ジュネーブ。

 記載されている価格カテゴリーのうち、実際に出荷本数が増えているのは3000スイスフラン以上の価格カテゴリーだけで、2019年に輸出した時計は168万8000本だったが、2021年には178万7000本に増えている。

 2000年以降、協会は200スイスフラン未満、200-500スイスフラン、500-3000スイスフラン、そして3000スイスフラン以上と同じように価格カテゴリーを分けているため、高額になるほど数字の意味を正確に把握するのが難しく、これは見直すべきと思われる。そして3000スイスフラン以上の数字が2000年と2021年で同じ意味にはならないはずだ。

 かつてないほどの需要があり、多くの高級時計ブランドが生産量増加の兆しを見せていないことから、高級時計の世界はますます高価で高級なものになり続けるようだ。 オーデマ ピゲのCEOであるフランソワ-アンリ・ベナミアス(François-Henry Bennahmias)氏は年間5万個の上限をはるかに超える増産計画はなく、そして同社は新しいRef.16202のスティールバージョンについても同様であると述べており、2022年の生産本数は合計でもわずか1000本となる予定だという。

Baselworld 2019

バーゼルワールド 2019 

 2019年、HODINKEEの創業者ベン・クライマー(Ben Clymer)はバーゼルワールドの現地からロレックスのプロフェッショナルモデルに対する未曾有の需要を例に挙げて、すでに需要が供給を劇的に上回っていることを観察した。「ご存じの通り、スティールのGMTも、スティールのデイトナも手に入らないし、レインボーデイトナは見ることすら困難で、過去3年間に出たカタログの半分も見つけることは難しい」と彼は言っていた。これはフル稼働で年間100万本の時計を生産している会社についての話だ。

 これ以降、もちろん、実際に小売店で高級時計を購入する機会はさらに少なくなっている。これが新常態となるとき、希少価値はもはや希少価値ではなく、(非常に収益性の高い)ただのビジネスに過ぎないのである。