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Hands-On タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー 02

モダンタグ・ホイヤーの次世代を担うカレラの最新モデル。

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過去10年の長きに渡って、タグ・ホイヤーの現行コレクションは、クラシックとモダンとに二分されてきた。そのためヘリテージコレクションとは、全く対象的なコネクテッドウォッチやカラフルなフォーミュラ1、そしてマッシブなカレラ キャリバー ホイヤー02なども同時にラインナップされている。

 タグ・ホイヤーは、絶えず変化し続ける市場において、バランス感覚が問われるブランドだ。レガシーを元にプロダクトを生み出すだけでなく、同社のブランドヒストリーすら知らない新たな購買層に対してもプロダクトを生み出していく必要があるのだ。こうしたことも頭に入れた上で、タグ・ホイヤーのスタイルを一気に現代的に昇華させたカレラ キャリバー ホイヤー 02を見ていこう。

 さて、少々長ったらしい名前ではあるが、タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02という名前はこの時計を非常によく表している。まず「カレラ」だが、これはモータースポーツから生まれたスポーティなクロノグラフと同義である。次に「キャリバー ホイヤー 02」はこの時計に使われているムーブメントを表している。初代のカレラは、モータースポーツのスタイルを表現しつつ実際のレースで使用可能なクロノグラフとして、(当時としては)モダンに解釈されて、1963年にジャック・ホイヤーによって生み出された。ホイヤー02のムーブメントは、2015年のホイヤー01のそれを自社で丸ごとフォローアップしたものである。

 2018年に正式発表されたホイヤー02は、自動巻きで80時間のパワーリザーブを持ち、コンパックスレイアウト(3時、6時、9時位置にサブダイヤルを搭載)で4時半の位置に日付表示窓を配していた。また、最大で12時間を計測することが可能だった。

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 カレラ ホイヤー 02では、このムーブメントはタキメーターが配されたセラミックベゼル (ケースによく合う) を持つ、43mmのサンドブラスト・セラミックケースに搭載されている。エッジがたったモダンでスポーティなケースデザインには、初代のカレラにも見られた長く直線的なラグなどの意匠も残されている。また、3次元的なスケルトン構造のケースは、カレラのレガシーにも敬意を評しているように感じると共に、このクロノグラフ全体のアクティブな雰囲気によく合っている。

 僕の趣味とは違うが、若々しく、大ぶりで、おそらくきちんと計算された魅力を持つカレラ ホイヤー キャリバー02の在り方を非難することはできない。現代のF1ドライバーの腕にこれ以上マッチする時計があるだろうか? ケースは大きく、ブラックの仕上げとそれに合う黒いラバーストラップが、カジュアルでスポーティな雰囲気を発している。アスレジャーのバイブスが感じられるぐらいだ。カレラ ホイヤー 02はTシャツやジーンズに合わせてもいいだろうが、テクニカルウェアやスポンサーロゴに埋め尽くされたポロシャツにはもっと似合うだろう。

 カレラ ホイヤー 02は 私の7インチの腕には大きすぎるが、それなりの効果はある。たまたま大きくなってしまったというのではなく、あえてそのサイズを選択しているように見えるのだ。ケースの大きさが数㎜合わないと悩まれる方には、同シリーズで先にリリースされた兄弟分 (ケース径45mmのカレラ ホイヤー 01) がある。
 ラバーストラップとブラックPVDが施されたチタンバックルによって、カレラ ホイヤー 02はゆったりと包容感のある着け心地だ。重すぎたり、アンバランスな感覚は一切ない。スケルトンダイヤルの場合、大抵その視認性に難がある。しかし、このカレラの場合は、針の色やマーカーの仕上げが明るく、サブダイヤルにも同様に明るいシルバートーンが採用され、計時用の針には赤のアクセントまであるため、視認性もしっかりケアされている。

 機能そのものは脇におくとして、文字盤はレッド、シルバー、ブラック、ホワイトで非常に格好よく仕上げられている。私は4時半位置に日付表示があるのはあまり好きではないのだが、これはそれが全く気にならない稀なケースだ。そもそも何層もの複雑でメカメカしいスケルトンであるため、デイト表示の後付け感が全くないのだ。6時位置の秒針部分に日付表示があればビジュアル的にはもっと面白かったかな、と思わなくもないが、カレラ ホイヤー 02のデザインバランスにおいては、4時半位置の日付窓は読みやすいし押し付けがましい感じがしない。

 カレラ ホイヤー 02は、さまざまな国の多様な人々に訴求できるモデルだ。高級時計としては中価格帯に位置する時計で、価格は68万円だが、これはかなり競争の激しい価格帯だ。しかし自社製クロノグラフのセラミックモデルを検討しているのであれば、選択肢はかなり限られる。見逃されがちではあるが、チューダーはケース径42mmのファストライダー ブラックシールドを4975ドル(約54万円)で提供している。そしてもちろん、かの有名なオメガの44.25mmのスピードマスター ムーンウォッチ ダークサイドオブムーンもあるが、これは104万円だ。似たようなモデルとして、現在は生産中止となっているが、ジャガー・ルクルトのマスター・コンプレッサーシリーズのモデルを思い浮かべる人もいるだろう。そしてセラミッククロノグラフを語るなら、常に魅力的なパイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン (92万円) をはじめとするセラミック製スポーツウォッチを数多くリリースするIWCも忘れてはならない。

 ただ、この競合リストには問題がある。リストに挙げられる時計はどれも本当に頑丈で人気のある時計なのだが、見た目の美しさでタグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー 02に敵うものが一つもないのだ。同じような見ための時計を買おうとするなら、ずっと安いもの (例えばカシオ G-SHOCKのいくつかのモデルは似たデザインを持つ)か、ずっと高いウブロやゼニスの似たモデルを買うしかないのである。ただ、カシオは、クォーツムーブメントで、(大抵が)プラスチック製ケースで作られたエントリー向けの時計が多いため、競合相手としてはあまりふさわしくないだろう。
 一方でゼニスのデファイ エル・プリメロ 21(ラバーストラップバージョンは117万円)やウブロのビッグ・バン ウニコ ブラックマジック (42mm、200万円) と比較すると、タグ・ホイヤーのこのセラミック カレラがいかに傑出した存在なのかがよく分かる。 (上記いずれも税抜価格) 

 上述のゼニスやウブロを買おうと考えている人がそれをやめてカレラ ホイヤー 02に興味を持つかどうかは分からないが、ウブロは好きだがタグ・ホイヤーを買う予算しかない、という人たちはいるに違いない。そんな状況ならばカレラ ホイヤー 02は良い位置につけている。カレラ ホイヤー 02は単にタグ・ホイヤーの下位モデルを改良したものではない。より高級なブランドの野心作のデザインを彷彿とさせる、このクラスで最高の美しさを持つ時計なのである。

 カレラは、モナコやオータヴィアといったクラシカルなタグ・ホイヤーと対をなす現代版のタグ・ホイヤーである。マッシブで、現代的、そしてスポーティなタグ・ホイヤーは、確固たるメッセージ性を持ちながら、若さと野心に溢れた買い手へのアピールも忘れていないのだ。

詳細についてはタグ・ホイヤー公式サイトへ。