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Introducing ヴァシュロン・コンスタンタン リファレンス57260と57個のコンプリケーション(これまでで最も複雑な時計)

発表から5年以上経た今でも最も複雑な、計57の機能を搭載した独創性あふれる作品を、改めて振り返る。

※本記事は2015年9月に執筆された本国版の翻訳です。 

 これから紹介する時計は、ヴァシュロン・コンスタンタンによると、8年間にわたって開発が進められてきたものであり、プロジェクト全体を担当した3人の熟練した時計職人の才能が結集されたものだ。しかし、それだけではない。この時計は美術品であると同時に、未来への扉でもあるのだ。

 かつての時計は本当に複雑なものであった。計時は人類と同じくらい古いもので、何万年も前から機械ではなく天文学、つまり天空のシステムの観測に基づいていた。医学用語にラテン語やギリシャ語が残っているのと同じように、一見奇妙な、あるいは全く想像に反するような多くの時計学における伝統は、我々のほとんどが忘れてしまっている長い過去の事実に根ざしている。機械科学が進化するにつれ、我々は太陽、月、惑星、星の動きを歯車やバネ、レバーで表現することを覚えたが、それでは根本的に解決できない問題に直面することになった。そして、この問題はヴァシュロン・コンスタンタンのリファレンス57260と、そのムーブメントであるCal.3750にその核心がある。

Vacheron Constantin Reference 57260

 問題は、異なる天体の周期がお互いにぴったりとは合わないということだ。最も単純な例として、何世紀にもわたって天文学者、暦の発明者、時計職人の創意工夫が試されてきたのは、地球の公転周期と自転周期だ。地球が毎年常に整数回転しているとしたら、カレンダーのデザインはシンプルになるだろう。だが、そうではない。実際には、地球は太陽の周りを1周するごとに、その軸の上で約365と4分の1回転しており、だからこそ我々は4年ごとに暦に1日余分な日を加えなければならない。そうしないと、暦と季節は徐々にお互いの同期から外れていくからだ。 - 多くの重要な祝日や祭事、宗教的行事の日付は、特定の季節のイベントと一致しているため、大きな問題となる。

Vacheron Constantin Reference 57260

 暦の製作者にとって、もう一つの大きな問題は、太陰月(朔望月)と1年の周期(太陽年)の違いだった。これが問題である理由は、月(月に関連する)と日と年(太陽に関連する)の両方が時間を計算するための自然の基盤であるためだが、そもそも暦が作られるようになったのは、天空でのそれら自然の動きが周期的であったからである。しかし、繰り返すが、月と太陽 - 月と年 - のサイクルは、お互いにきちんとフィットしない。実際には、月の端数を加えた数ではなく、太陰月の数だけを累加するには、合計19年かかり、19太陽年=235朔望月となる。多くの伝統的な暦は、太陰暦と太陽暦を組み合わせたものが多く、例えば、伝統的な中国の暦、ユダヤ暦、その他多くのアジアの暦だけでなく、多くの古代の暦(仏教やバビロニアの暦など)は“太陰太陽暦”であり、これを考慮しなければならない。この周期は、紀元前5世紀にそれを指摘したアテナイのメトンにちなんで、メトン周期として知られている。一般的に、伝統的な暦は、グレゴリオ暦に閏日を追加して実際の季節との調和を保つのと同じように、閏月を追加することでこの不一致に対処している(古代では、天体観測に基づく不規則な、その場しのぎの調整を行っていた)。

Vacheron Constantin Reference 57260

 ヴァシュロン・コンスタンタンのリファレンス57260に話を戻すと、時計製造の創造力を表すこの記念碑にはヴァシュロンは合計57の機構があると言っているが、これは驚異的な数だ。同社はこれが世界記録だと主張している。しかし、よくあることだが、この数字だけに注目すると、もしかしたらこの時計の面白さの大部分を見失う危険性がある(そして、いずれにしても実際の複雑機構とは何かということは、時計製造の中でも最も意見の分かれるテーマの一つだ;多くの伝統主義者は、トゥールビヨンを複雑機構と呼ぶことを今だに拒み、調整装置と呼ぶことを好む)。

 しかしながら、どのような議論であれ、57260は本当に注目に値するだけでなく、多くの点で極めてユニークだ。その複雑さにまずは驚かされるが、何が起こっているのかを理解するには、まず、機構には基本的に4つの大まかなカテゴリーが存在することを最初に認識しておくと良いだろう。天文学に関連した機構、暦に関連した機構(いずれにせよ基本的には天文学に関連した問題だ)、時を打つことに関連した機構、そしてクロノグラフに関連した機構だ。

 多くの非常に複雑な懐中時計と同様に、57260も2つのフェイスをもつ。まずは、時計の表側と呼ばれる、現在の時刻を表示する部分から見ていこう。


レギュレーター時・分表示、分離型レトログラード・スプリットセコンド・クロノグラフ、アラーム、グラン・ソヌリ/プチ・ソヌリ付きリピーター、ユダヤ暦永久カレンダー
Vacheron Constantin Reference 57260

 針の基本的な配置はレギュレータークロックのもので、中央に分針、インダイヤルの中に時針がある。時針のインダイヤルには、ムーンフェイズ(ムーンフェイズは1027年で1日の誤差という正確なものだ)と月の満ち欠けも表示される。これは、クロノグラフのダイヤルと針を表示する時計の顔でもある。古典的な“グランドコンプリケーション”時計では、これはスプリットセコンド・クロノグラフと予期されるもので、それはまさにリファレンス57260にあるものだが、(伝統的なスプリットセコンド・クロノグラフのように)クロノグラフ秒針の上で作動するのではなく、秒針と分離した極めて珍しいものだ。加えて、このモデルはレトログラード式の秒針をもち、それぞれがダイヤルの反対側にある円弧状の扇を横切って移動する。私の知る限りでは、このようなシステムが開発されたのはこれが初めて(機械式時計学の分野で何でも“初めて”と呼ぶのは危険なことだが)であり、それが機能するために合計で3つのコラムホイールを必要とする。

 ヴァシュロン・コンスタンタンでは、これを“分離型”スプリットセコンド・クロノグラフシステムと呼んでいる。スタート、ストップ、リセットは全てリューズの1つのボタンで行われ、スプリット機能は11時(時計の表側を見た場合)のプッシュボタンで作動する。分表示と時間表示はそれぞれ9時と3時のインダイヤルにあり、これらのインダイヤルには他の機能も搭載されている。

Vacheron Constantin Reference 57260

 本機は、チャイム機能に関する全ての通知を備えたフェイスをもつ時計でもある。リファレンス57260はこれらの完璧なリスト、すなわちグラン・ソヌリ/プチ・ソヌリ、ミニッツリピーター、アラームを備えている。合計で6つのゴングをもち(ミニッツリピーターは2つだけを使用する)、そしてグラン・ソヌリ・パッシングストライクモードでは、ウェストミンスター宮殿のエリザベスタワーの鐘によって再生されるように、一般的にウェストミンスター・チャイムと呼ばれる4つの音符のメロディを使用して、時および15分単位の時間をチャイムする。(愛好家の友人を悩ませたいなら、話題が出るたびに、ビッグ・ベンは時計ではなく、エリザベスタワーの大鐘の名前であり、さらにウェストミンスター・チャイムは、元々ケンブリッジ大学の大聖母マリア教会のタワークロックとして使用されていたため、本来はケンブリッジ・チャイムと呼ばれるべきであると教えることができる)

 このような全種類チャイム機能をもつことは非常に稀であり、中でもウェストミンスター・チャイムを使用するのはより一層に稀なことだ。リファレンス57260は、さらにいくつかの追加機能を備えている。
 第一に、アラームは普通のアラームではない。ウェストミンスター・チャイムをフルに使用するグラン・ソヌリ、または他の5つのチャイムとは異なるメロディを単一ゴングで鳴らす通常モードの2つからいずれかで鳴るように設定することができる(念のために言っておくが、手作業でチューニングされたスティールゴングが鳴るアラームウォッチは、特に変わった何かがあるわけではないが、この機能はユニークではないものの、それを使用すること自体珍しいだろう)。アラーム用の独立した香箱を巻くことは、この時計の所有者にとっても楽しいことだろう。アラーム用の巻き上げリューズはケースと同じ高さにあり、時計のボウ(チェーンを引っ掛けたりする輪の部分)を4分の1回転させることによって解放すると、リューズは4時半位置にスライドする。アラームのパワーリザーブとモード表示は、ダイヤルの2時位置にある。

Vacheron Constantin Reference 57260

 第二に、ソヌリにはもう一つのモードがある。伝統的なものとして、グラン・ソヌリ(15分毎に、時および15分単位の両方のチャイムが打たれる)とプチ・ソヌリ(15分毎に15分単位の、1時間毎に時単位のチャイムが打たれる)の他に、サイレントモードがあるのだ。この追加モード - これもまた他の時計では見たことがないものだが、このモードを起動すると、午後10時から午前8時までの間のチャイムが鳴らないようになる(これらの具体的な時間は、時計を依頼したクライアントによって選択されたものだ)。ヴァシュロン・コンスタンタンはこれをサイレンスナイトモードと呼んでいる。パワーリザーブはダイヤルの9時位置に、モード表示は10時位置に表示される。

 最後に、この時計の顔に表示されている別の複雑機構があるが、これもまた、我々が他のどこかで見たことがないものだ。ユダヤ暦永久カレンダーである。

Vacheron Constantin Reference 57260

 ユダヤ暦は非常に古く、何千年にもわたって進化してきたが、その間、構造、使用方法、解釈について無数の意見が出されてきた。しかしながら、基本的には太陰太陽暦であり、つまり月が一周するのにかかる時間に基づいて月を構成し、地球が太陽の周りを一周するのにかかる時間に基づいて年を構成している。前述のとおり、朔望月が太陽年にうまくフィットしないという問題があるが、ここで言及する必要がある別の問題として、朔望月が整数日ではなく、実際には29日半に近い日数であるということが挙げられる。後者の問題に対処するために、ユダヤ暦では29日または30日のいずれかの月を使用し、19年のメトン周期(整数の月数と整数の年数が同時に発生するまでの時間)の間に7回、余分な月が追加されるが、これにより、グレゴリオ暦の閏日と同様、ユダヤ暦が季節と同期していることが保証される。

 ヴァシュロン・コンスタンタンは、これら全てのサイクルを正確に表現できるようなギア、レバー、カムのシステムを設計することは非常に困難であったと主張するが、我々も本当にそう思う。この複雑さの一つの表れかもしれないが、興味深いことに、これまでに提供された表側と裏側のムーブメントの画像のどちらにも、カレンダーが実際にどのように機能するかは示されていないのである。我々が得た時計前面のダイヤルの下にある画像では、主に時打機構の輪列とクロノグラフ作動構造をうかがうことができ、背面の画像として提供されたものでは、主ゼンマイを収めた香箱、時刻表示輪列、ゴングとリピーターのための遠心調速機が見える。このような省略は、ヴァシュロンが時計の中で3つの永久カレンダーを同時に作動させる方法を明らかにしたくなかったからではないかと疑わずにはいられない(もちろん、単に地板の中で最も写真映えする部分だったからというだけの理由かもしれないが、時計製造においては、人を惹き付ける陰謀論はどこにでもあるものだ)。

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 ユダヤ暦は、聖典に基づいて導き出された天地創造の日からの経過年数を示した、いわゆるアンノ・ムンディに従って計算される。これはウィンドウに4桁の年を3つの回転ディスクで表示し、6時位置に表示される(ここでも提供されたムーブメントの画像にないのがはっきりと分かる)。1枚のディスクには1桁の数字が、2枚めには10桁の数字が、3枚めには数百と数千の数字が表示される。日付の範囲がどのくらい広いのかは不明だが、少なくとも数百年単位ではないかと思われる。

 実際の日付は6時位置の大きなインダイヤルに表示され、月は右側のウィンドウに、曜日は左側のウィンドウに表示される。いくつかの追加機能として、現在メトン周期のどこにいるか(これは楽しい追加機能だ)は、クロノグラフのための12時間積算計と共に、3時位置のインダイヤルに表示。また、9時位置のインダイヤルには、現在の月が29日または30日の月(12ヵ月となるか閏月を足した13ヵ月)になるかも表示される。そして最後に、6時位置のインダイヤルのレトログラード針は、現在の年のヨム・キプル(贖罪の日)の日付を示している(この日付はグレゴリオ暦に基づいて表示される)。この表示は機械的に複雑ではなく、針は年に1回、19年間(1メトン周期)ジャンプし、その時点で日付を示す部分が置き換えられる (3本の小さなネジで固定されている)。


グレゴリオ暦永久カレンダー, ISO 8601カレンダー, 天体カレンダー機能, ワールドタイム表示, “アーミラリ天球儀(天体図)”, 3軸トゥールビヨン
Vacheron Constantin Reference 57260

 この時計の裏には、非常に大きな3軸トゥールビヨンが搭載されており、その最外周部にはヴァシュロン・コンスタンタンが“

(天体図)”と呼んでいるものがある。アーミラリ天球儀(天体図)とは、透かし彫りの地球儀の一種で、赤道、黄道、天の北極と南極などの位置を示すものだ。卓上用のものから屋外用の記念碑的なサイズのものまで、天文学に興味のある人に人気のある装飾品だが、地球を基準とした天球の基本的な要素を明確に示す素晴らしい方法であることがその理由だ。ここには実際の球体はなく、ヴァシュロン・コンスタンタンは詩的許容(芸術的目的のために事実や形式から逸脱すること)を行使しているが、それ以上の資格を与えられていると感じる。ケージの設計とその回転は、惑星の動きを呼び起こすことを目的としているとヴァシュロン・コンスタンタンは言い、そしてこの時計の顔には、天文学的な表示をサポートする素晴らしい端役が揃っている。トゥールビヨンケージはアルミニウム製で、慣性力を下げ(トゥールビヨンでは時計の時刻表示輪列に加わる余分な慣性負荷は、最大の欠点の一つとなる)、ヒゲゼンマイは球形をしている。このヒゲゼンマイは、元々マリンクロノメーターの精度の安定性を向上させるために開発されたものだが、現在ではほとんど使用されていない(ジャガー・ルクルトのマスター・グランド・トラディション・ ジャイロトゥールビヨン 3に使用されているが、これは「The Road to Basel Episode 3」の第3回ビデオエピソードで紹介したものだ)。そしてリファレンス57260では、ダイヤモンドの爪を備えたレバー脱進機を採用している。

 天文学的な複雑さは、印象的なまでに対象範囲が包括的である。ちょうど真ん中には均時差は表示されており、覚えているかもしれないが、これは1年の任意の日における真太陽時の長さと、平均太陽時(1年を通し1日を24時間で区切った時間)との差を示している。天文学的には、1日は太陽が空のある特定の位置(太陽日)に戻るまでにかかる時間として計算される。平均すると約24時間だが、実際には地球の公転軌道の傾き(地球の楕円公転)や、軌道の平面に対する地軸の傾き(地軸傾斜)のため、程度の差はあるが約15分になる可能性がある。最も簡単に考えれば、日時計で見る時間と時計で見る時間の差だ。

Vacheron Constantin Reference 57260

 いくつかの天文機能は、オーナー側の特定の場所に合わせて計算する必要がある。これにはトゥールビヨンの左右の部分に表示されている日の出と日の入りの時刻、さらに昼の長さと夜の長さの表示(この機能も他では見たことがない)も含まれる。12時の位置には星図があり、その回転によって、その瞬間にどの星が見えるかが表示されている。本当に正確を期するためには、このような天空図は太陽日ごとに一度ではなく、恒星日ごとに1回転しなければならない。恒星日とは、太陽ではなく、特定の星が空の特定の位置に戻るのにかかる時間と定義されている。太陽が最も近い星よりもはるかに近いという事実により、太陽日は恒星日よりもわずかに長い(約4光年に対して約8光年)。

 1日の間に、地球は地軸を中心に回転するだけでなく、公転軌道に沿って移動する。この事実は、太陽が1日を定義するために使用される空の特定の位置に戻っているように見えるためには、実際には1回転よりもわずかに多く回転する必要があることを意味する。しかし、星は非常に遠くにあるため、この効果は発生しない。この差は小さく、恒星日は約23時間56分4.0916秒だが、恒星日を1日で回転させるためには、メインの時刻表示輪列とは別に恒星日用の駆動輪列を計算する必要がある(時計に恒星時を表示させるもう1つの方法は、テンプの振動数を調整して少し速く動作するようにすることだ。一部の恒星時時計は、一つは太陽時間、もう一方は恒星時が割り当てられた2つのテンプを備え、2つの駆動輪列を調整することで問題を単純化する)。

 もちろん、本当に正確な星図は実際には恒星時表示であり、現在の恒星時は星図の周りの24時間スケールから読み取れることを意味する(見る人の方向を決めるための方位点も表示されている)。

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 ダイヤルの周囲には月表示、そして太陽は、針が指し示す星座のシンボル表示がある。また、分点(昼夜平分時)と至点(夏至および冬至となる瞬間)表示もある。分点と至点の日付は季節に関連しており、その理由がここにある。太陽は、1年の間、地球の公転軌道と地軸の傾きの関係で、東から西に向かって高くなったり低くなったりするように見え、これが北半球と南半球の季節の移り変わりの原因となっている。太陽の軌道は、1年の約半分は天の赤道より上にあり、約半分は天の赤道より下にある。太陽が最も高い位置または最も低い位置にある日は、真夏または真冬に対応し、それが天の赤道を横切る日は春や秋の始まりに対応しており、それぞれ春分点または秋分点となる。実際にここでは触れないが、おそらくありがたく思う理由がここにあり、これらの日付は異なる場合があり、外側の天文リングには、それぞれの実際の日を示すマークが1つではなく、いくつかあしらわられている。

 季節ごとの表示もあり、これらの表示は全て年に1度回転する太陽の形をした尾をもつ中央の金色の針で示される。これは天文学的な表示のため、自転周期は365日ではなく、“太陽年”の実際の長さ、つまり季節のサイクル、例えば、ある春分点から次の春分点までの時間の中で、太陽が特定の位置に戻るのにかかる時間の長さであると仮定している。これは約365.24219日だ。

 永久カレンダーとは何か、どのように作られているのか、そしてどのように機能しているのかを厳密に説明する前に、ワールドタイム機能があることにも注目しておきたい。これは9時位置の小さなインダイヤルから読み取ることができる。ワールドタイム機能には24の基準都市があり、現在の基準都市はインダイヤルのすぐ上の窓に表示されている。伝統的な12時間表示ダイヤルのため、基準都市の窓のすぐ上にはデイ/ナイトインジケーター(小さな球体で、片面は金、もう一方の面は黒)があり、それが問題となる場所が午前か午後かを表示する。

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 しかしながら、時計のこちら側のフェイスで最も斬新な複雑機構は永久カレンダー、正確に言えば2つの永久カレンダーだ。 1つめは従来の永久カレンダーとして機能する。日付は12時位置のレトログラード表示で示され、左のインダイヤルには曜日、右のインダイヤルには月が表示される。また、ダイヤルの1時位置のあたりには閏年表示もある。

 2つめの永久カレンダーは、1つめの永久カレンダーと機械的に連動しており、それをベースにして1988年に初めて発行され、ISO 8601で規定された日付を示す永久カレンダーだ。ISO 8601では、表記法と特殊なカレンダーの両方を規定している。表記法自体は標準的なグレゴリオ暦を使用することができ、4桁の年、2桁の月、2桁の日付(YYYY-MM-DD)というフォーマットを使用している(バリエーションが認められており、これもISOによって指定されている)。この基本的な考え方は、特に伝統的な日付表記システムが異なる国の個人間で、日付表記の曖昧さの可能性を排除することにある。ISOはさらに、代替のカレンダーシステム、“週番号”カレンダーを規定している。このようなカレンダーでは月を使用しない。その代わりに、1年の各週に番号が与えられ、日付は年、週番号、曜日番号として与えられる。週番号情報はリファレンス57260の右側のインダイヤルに表示され、曜日番号はそのすぐ上の小窓に表示される。

 ISO 8601 週番号カレンダーは、主に金融やビジネスの世界で使用されている。その最大のメリットは、1年の週数が常に整数の週であることと、表記が曖昧でないことだ。しかし、ISO 8601には欠点がある。第一に、週番号の年の始まりと終わりが常に1月1日と正確に対応しているとは限らないことで、というのも、週番号の年は常に52週後の最初の月曜日から始まるからだ。これは、少なくとも一部の年では、1月1日のグレゴリオ暦の日付はグレゴリオ暦の新年になるかもしれないが、ISOシステムでは旧年度となるかもしれないことを意味する(例えば、1月1日はグレゴリオ暦では2015年かもしれないが、週番号カレンダーでは2014年であるかもしれない)。もう一つの欠点は、ISO 8601システムでは、季節とグレゴリオ暦との相対的な整合性を保つため、グレゴリオ暦の400年周期で合計71週を追加する必要があるということだ。これら53週ある年は、ISOシステムでは“ロングイヤー”と呼ばれている。

 例えば、ISOでは2009年は52週の年ではなく、53週の年であった。57260には、53週めを表示する規定がないようで、そのような年には手動で調整する必要があると仮定し、週番号カレンダーは対応するグレゴリオ暦の日付に対して常に正しい週番号の日付を表示するという意味で永久的なものである。ヴァシュロン・コンスタンタンでは、このことを明確にしたいと考えているようだ。

 天体の複雑機構、特にカレンダーについて最後に考えておきたいことがある。原理的に、カレンダーの設計者あるいは時計師は、ある軌道システムと別の軌道システムの比(例えば、太陽の周りを回る月の軌道と地球の軌道の比)をエンコード化した歯車のシステムを設計したいと思っている。このような比は分数的な性質をもっているために難しいことを指摘してきた。しかし、この問題はそれ以上に深刻で、実際には本質的に解決不可能なのだ。

 実際には、これらのシステムの完全に正確な機械モデルを作成することは不可能だ。その理由は、惑星周期、太陽周期、月周期の実際の比率は無理数であり、歯付き歯車は無理数を“表現”できないからである。マーティン・グッツヴァイラーの著書『古典力学と量子力学のカオス(Chaos in Classical and Quantum Mechanics)』の中で、彼は「天体力学は、連分数(無理数)の最も古く、最も重要な実用的な応用を提供する」と記している。問題となっているのは、太陽、月、惑星の周期間の比率である。それらが単純であるべき理由はないが、古代のテキストの著者たちは、技術的な理由と哲学的な理由の両方から、常にこれらの比率を有理数で表現してきた。今日おいて、人は平均太陽日数で与えられた最高の観測から得られた関連期間を調べて、連分数を計算している。

 したがって、時計師の課題は、混沌とした物理システムの挙動を再現するのではなく、可能な限り近づけさせることだ。最も成功した機械的な解決策であっても、ある時点または別の時点で手動による再調整が必要になる。しかしながら、設計したシステムが所有者の生涯のかなりの期間、介入を必要としないシステムであれば、機械的な完璧さにこだわる人でさえ、あなたが何かを達成したことを認めてくれるだろう。57260のムーンフェイズ表示は、例えば1027年に1日の誤差で正確に表示されるが、これはかなり著しく個人の関心事の域を逸脱している!


この素晴らしきものの価格は?
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 当然のことながら、ヴァシュロン・コンスタンタンにこの時計の価格を尋ねたところ、匿名の依頼者のプライバシーを考慮して、具体的な数字は提示してくれなかった。このような信じられないほど複雑な時計製造には、そのあらゆる面において卓越した技術を発揮し、革新する能力が求められるため、もちろん安くはない。ヴァシュロン・コンスタンタンのオーダーメイド時計部門であるアトリエ・キャビノチエによって8年間にわたって製作されたこのモデルの価格は、間違いなく7桁万ドル半ばから後半以上の高額になると思われる。

 ヴァシュロン・コンスタンタンは、このモデルがユニークピースであると言っているが、もちろん、開発された機械的なソリューションのいくつかが、今後数年のうちに同ブランドの他の時計に採用されていなかったとしたら、我々は非常に驚く。例えば、分離型スプリットセコンド・クロノグラフは、腕時計としても極めて魅力的だ。ヴァシュロン・コンスタンタンは、当然のことながら、これまでに製造された時計の中で最も複雑な時計であると宣伝しているが、それは、この時計に注ぎ込まれた真の創意工夫や、計時の歴史や宇宙における人間の観測者の位置に関わる多くのことを機械的にエンコードしたことによる強い感情的なインパクトに比べれば、結局のところ、あまり興味を引かれない。この作品は、他に類を見ない説得力のあるものであり、単なる階層化された複雑さの大作の域をはるかに超えている。我々HODINKEEはこの作品が、ハイエンドな複雑時計製造における新たなアプローチを示唆するものであること、これまで不可能とされてきた時計の問題を解決するための感情的な共鳴と革新が、最終的には空虚な数字の追求よりも優先されることを願っている。

全体的な寸法:  ムーブメント, 76mm×31mm;  ケース, 98mm×50.55mm.  


1から57までの機能
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計時機能 1. レギュレータータイプの時、分、秒表示(平均太陽時) 2. 球体ヒゲゼンマイを備えたトゥールビヨン・レギュレーター 3. 3軸トゥールビヨン 4. 12時間式の第二時間帯、時間および分表示 5. 世界24都市のワールドタイム表示 6. 12時間式ワールドタイム用の昼夜表示

パーペチュアルカレンダー機能 7. グレゴリオ暦永久カレンダー 8. グレゴリオ暦曜日表示 9. グレゴリオ暦月表示 10. グレゴリオ暦レトログラード日付表示 11. 4年周期の閏年表示 12. 曜日番号の表示(ISO 8601カレンダー) 13. その年における週番号の表示(ISO 8601カレンダー)

ユダヤ暦カレンダー機能 14. 19年周期のユダヤ暦永久カレンダー 15. ヘブライ語曜日名 16. ヘブライ語月名 17. ヘブライ語日付表示 18. ヘブライ語セキュラーカレンダー 19. ヘブライ語世紀、10年、年表示 20. ユダヤ暦年の月数表示(12ヵ月または13ヵ月) 21. 19年周期のゴールデンナンバー表示

天体カレンダー機能 22. 太陽針による季節、春分・秋分、夏至・冬至、12星座表示 23. 天文表示 24. 恒星時 25. 恒星分 26. 日の出時刻表示 27. 日没時刻表示 28. 均時差 29. 昼の長さ 30. 夜の長さ

ムーンフェイズ機能 31. 月相と月齢表示(1027年に1度の修正)

宗教暦カレンダー機能 32. ヨム・キプール(贖罪の日)日付表示

トリプル・コラムホイール・クロノグラフ機能 33. レトログラード式の秒針を備えたクロノグラフ機能(1つのコラムホイール) 34. レトログラード・スプリットセコンド・クロノグラフ(1つのコラムホイール) 35. 12時間積算計(1つのコラムホイール) 36. 60分積算計

アラーム機能 37. 独自のゴングと段階的なソヌリを備えたアラーム 38. アラーム・ストライク/サイレンス切り替え表示 39. ノーマルアラーム / チャイムポジション選択表示 40. チャイム機能と連結したアラーム機能 41. グラン・ソヌリ/プチ・ソヌリの選択が可能なアラーム・ストライキング 42. アラームのトルク表示

ウェストミンスター・チャイム機能 43. 5つのゴングを備えたウエストミンスター・カリヨン 44. グラン・ソヌリ・パッシングストライク 45. プチ・ソヌリ・パッシングストライク 46. ミニッツ・リピーター 47. 夜間モードのナイトサイレンス機能  48. 香箱のゼンマイ切れ時のソヌリのブロッキング機構 49. グラン・ソヌリまたはプチ・ソヌリ・モード表示 50. サイレンス/ストライキング/ナイトモード表

その他の機能 51. ムーブメントのパワーリザーブ表示 52. チャイムのパワーリザーブ表示 53. 巻き上げリューズポジション表示 54. アラーム停止時のブロックシステム 55. 2重香箱用巻き上げシステム 56. 2位置・2方向の針合わせシステム  57. 秘密の仕掛け(アラーム機構用埋め込み式)

Vacheron Constantin Reference 57260
Vacheron Constantin Reference 57260

詳細情報は、ヴァシュロン・コンスタンタンの公式サイトご覧ください。