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Hands-On 時計愛好家が考えた究極のデイリースポーツウォッチ、VPC タイプ37 HWを実機レビュー

愛好家主導の新鋭ブランドが、日常使いに最適なスポーツウォッチの完成形を目指した。


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正式に発売されたのはほんの数カ月前であるが、これはVPC(Venustas Per Constantiam)という新ブランドのファーストモデル、タイプ 37HW(Type 37HW)だ。“どこへでも行けて、何でもできる(Go Anywhere, Do Anything)”時計を理想とすることを目指したタイプ 37HWは、時計愛好家による時計愛好家のためのマイクロブランド流アプローチを取り入れている。しかし特定の低価格帯を狙うのではなく、ディテールとデザインに特化することで、その常識を覆した。長年ブティック(マイクロブランド)シーンのファンである僕はタイプ 37HWを手に入れてじっくりと見たいと思った。

VPC Type 37HW

どんな名前であれ、ブランドはブランドである

 新しいブランドとその最初の製品をデザインする際には、細部へのこだわりがすべてである。まずは広い視野で見てみよう。ご心配なく、すぐに時計に焦点を当てるつもりだ。VPCという名は“Venustas Per Constantiam”の略であり、これは“大まかに言えば“節度/不変性を通じた美/魅力”を意味する。ブランドはトーマス・ヴァン・ストラーテン(Thomas van Straaten)氏が発案したものだ。彼は優れたフラテッロウォッチの時計ライターであり、またヴィンテージウォッチの時計ディーラーや作家としての経歴も持つ。つまり彼は僕たちの仲間であり、素晴らしい時計をつくるために多くの時間を費やしてきたということだ。

 タイプ 37HWが実現するまでのあいだ、このブランドはトーマス氏がフラテッロで発信していた“Building A Watch Brand”という素晴らしいシリーズをとおして、時計デザインの探求を続けていた。このリンクからシリーズの最新回と過去のエピソードの一覧が見れる。2023年1月にスタートしたこのシリーズは、トーマス氏と同様のプロジェクトに取り組もうとしている人、あるいはそのプロセスを深く掘り下げたい人にとっては素晴らしい読み物である。

VPC Type 37HW

 その課題を言葉にするのは簡単だが、実現するのは非常に難しいと思う。ここはトーマス氏自身の言葉で直接説明してもらおう。「私は妥協のない基準で夢の時計をつくりたかったのです。マイクロブランドでは競争力のある価格を目指すことは一般的であり、当然ながら妥協が生じます。その妥協のせいで、何度も時計に対する愛情を失ってしまうことが多かったのです」。それから1年以上の歳月を経て彼とそのチームが考案したもの、すなわち究極の“どこへでも行けて、何でもできる”時計であるタイプ 37HWを見ることができた。

 彼の願いを2度伝えた。それはトーマス氏が時計をつくりたいと思った背景と結びつくとき、この言葉は時計の哲学にとって重要に感じられたからである。この理念やブランディングが特段珍しいものでないことは確かだが、それでも驚くべき時計が生まれたのである。

VPC Type 37HW

細部へのこだわり(そして時計)

 デザインに関して言えばほぼオーソドックスなVPC タイプ 37HWは、時刻表示のみのスティール製ブレスレットウォッチだ。ケースのサイズは37.5mm径×9.8mm厚(サファイア風防を含む)、ラグからラグまでが45mm。3つのカラーバリエーションで提供され、各色100本の限定生産となっている。

VPC Type 37HW

 主なスペックをまとめると、裏蓋はソリッドで、ベゼルは固定、リューズはねじ込み式であり、防水性能は120mである。風防内部には反射防止(AR)処理を採用。ラグ幅は20mmで、クイックリリース式ブレスレットはクラスプ部分で16mmへとテーパーしている。ケースとブレスレットの両方には、1800HVの硬度を持つ特殊なハードコーティングを施している。

 内部には、名前の“HW”が示すように手巻きのセリタ SW216-1を搭載。このムーブメントは“真の”ノンデイトレイアウトを採用しており、2万8800振動/時で振動、約42時間のパワーリザーブを持ち、精度に関してはCOSC認定を受けている。気になる方のために補足すると、“ファントムデイトポジション(日付表示のあるムーブメントから日付を取り払っただけの場合に見られる意味をなさない表示調整アクション)”はなく、リューズはねじ込む際にムーブメントと噛み合わないように設計されている。ソリッドな裏蓋で覆われたこのムーブメントは、時・分と6時位置のスモールセコンドを表示。特別高級なムーブメントではないが、クロノメーター仕様で、パフォーマンス、信頼性、およびメンテナンスのしやすさの適切なバランスが取れていることから選ばれた。

VPC Type 37HW
VPC Type 37HW
VPC Type 37HW

 実物の時計は非常に完成度が高く、新ブランドの初めての試みとはまったく思えない。ケースは美しく、仕上げ分けされ、滑らかな曲線、短いラグ、そして手首にしっかりとフィットして快適さを保つカーブを備えている。ブレスレットはセミフーデッドデザインを通じてケースと一体化しており、両者が見事に調和し、ブレスレットがケースから滑らかに広がっている。これは既製のブティックブランドのデザインではあまり見られない特徴である。これらすべての要素は、イギリス人デザイナーであるマックス・レズニック(Max Resnick)氏によって、VPCのためにカスタムされたものである。

 ブレスレットは、ソリッドなリンク、真の3ピース構造、美しいフォールドオーバー(中折れ式)クラスプを備えた素晴らしいものだ。しかし、タイプ 37HWの多くの部分と同様に、その魅力はすべて細部に宿っている。どこも手を抜かず、すべてのディテールにこだわりが詰まっている。例えば、ケースにはふたつのラグ穴があるのだが、ひとつはブレスレットや細いストラップのためにケースの近い位置にあり、もうひとつは厚いストラップ用に少し余裕を持たせた位置に配されている。またクイックリリースを押す箇所は大きく、より簡単に操作できるようになっている。さらにブレスレットのサイズ調整が簡単に行える片側ねじ込み構造で、クラスプ内には工具不要のマイクロアジャストがあり、時計が緩すぎるまたはきつすぎる際はすぐにサイズの調整もできる。これらの細部へのこだわりは多くの時間をかけてほかの時計を評価してきた結果から生まれたものである。

VPC Type 37HW
VPC Type 37HW
VPC Type 37HW

 文字盤もまた、非常に考え抜かれたデザインである。ダブグレー、フォレストグリーン、デルフトブルーからなる3つのカラーバリエーションは、いずれもフロスト仕上げの表面にラッカー処理を施している。時計の薄さを保つために、文字盤と針のあいだのクリアランスは非常に狭く、分針はベゼルの一番低いところよりも高い位置にある。

 スモールセコンド表示の小さな針、および主針には余光塗料を塗布。またインデックスは基本的に余光塗料で作られており、日常での実使用に役立つ光り方を実現した(単なるあと付けの機能ではない)。文字盤のテキストは非常にミニマルだが、実はここも考慮された部分であり、VPCは文字盤と裏蓋用に独自のフォント“Venustas”を作成している。このフォントはサミュエル・ベイカー(Samuel Baker)氏によって、VPCのためにデザインされたものである。

VPC Type 37HW

 この記事の写真からも明らかなように、僕がVPCから借りたデモ機はデルフトブルーモデルであり、その色は非常に多用途であると感じた。この時計をしばらく使ってみた結果、発売時に提供される3つのバージョンのなかからどれを選ぶかはかなり難しい課題だと感じた。

 僕の7インチ(約17.7cm)の手首に合わせた場合、タイプ 37HWの重量は115gになる。VPCからのサンプル品には取り外し可能なリンクがすべて揃っていないため、ブレスレットの最小サイズを測定することはできなかった。製品版には追加で4つの取り外し可能なサイズ調整リンクが含まれており、広範なサイズ調整が可能である。

VPC Type 37HW
VPC Type 37HW

 もしテーマがあるとすれば、それはすべて細部にこだわっているということだ。これらすべての小さな要素が組み合わさったことで、非常に魅力的かつ素晴らしい高機能な時計が形成された。タイプ 37HWは、高度に進化したフィールドウォッチと、グランドセイコーのシンプルな側面を融合させたような印象を受ける。快適さは抜群で、視認性にも優れており、触れたり操作したりする部分はすべて超高品質に感じられる。エレガントだが、気取りすぎず、無駄に華美でもない。

 タイプ 37HWの価格はカラーを問わず、一律2479ユーロ(日本円で約40万円)である(消費税と送料含まず)。間違いなく、これは従来のブティック/マイクロブランドの価格帯のなかでも上に位置するが、実際に手首につけてみるとその価値が感じられる。安い時計ではないが、そのぶん安っぽさも感じられない。

VPC Type 37HW

 固定された無装飾のベゼルを持つほかのスポーツウォッチと比較すると、VPCは品質面でチューダーのレンジャー(税込で46万4200円)やブラックベイ 36(税込で54万5600円)に似た感覚があるが、それほど頑丈ではない。ただケースプロポーションやブレスレットのデザインは、少なくとも僕の手首にとってはロンジン スピリット 37mm(税込で38万6100円)よりも優れており、オリスのポインターデイト(税込で38万2800円)よりも洗練されていると感じた。実際、VPCの競合相手の多くは、ほかのブティックブランドになるだろう。というのもファラー、オーク&オスカー、モンタ、ヴァーテックス、アクアスター(ほんの一例にすぎない)など、価値重視の考え方を持つほかの優れた小規模メーカーと顧客層が重なるからだ。


情熱の数だけ

 ブティックブランドという大まかな(そしてしばしば拡大する)枠組みのなかで、素晴らしい日常使いの時計を製造するという目標を掲げたVPCは、タイプ 37HWで実にいい仕事を成し遂げたと思う。ここでのポイントは、この時計とブランドが、すべての条件を満たすものをつくりたいと望んだ時計愛好家によって生み出されたということである。

VPC Type 37HW

 最後に、ここでの核心は僕がしばしば触れるテーマである。それは可能な限り、熱意を持った人々から生まれた製品を選びたいということだ。かつて僕はお下がりのクライスラー・セブリングを所有していたのだが、それはまるでクルマを運転することによろこびを経験したことのない人々によって設計されたように感じた。だからこそ、そのよろこびが伝わる製品を選ぶべきなのだ。

 食べ物に関心がない人が作った料理を食べたくないのと同じように、何も感じずに書いた作家の本を読みたくないのと同じように、時計愛好家の心が反映されていない時計も欲しくないだろう。

 僕にとって、これこそが高機能なブティックブランドの核心的な価値だ。確かに、大手ブランドには時計を愛する人たちはたくさんいるが、ブティックブランドは時計に対する最初の夢から、最終的に手首に乗る製品までの過程を簡略化することで、あなたとブランドのあいだにある距離を縮めることができる。

VPC Type 37HW

 うまく運営できれば、ブティックブランドは、彼らが獲得したいと考える顧客とほぼ個人的なつながりを持つことを可能にする特別な力を得るだろう。VPCはタイプ 37HWを通じてその関係を尊重し、愛好家の視点から見た現代のスポーツウォッチの理念を反映した素晴らしいデザインであり、さらに日常的に着用しやすい時計を作り上げたのだ。

詳しくは、VPC公式サイトをご覧ください。