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Hands-On ロリエ ヒュドラ SIIIを実機レビュー

このお買い得なオールラウンダートラベルウォッチを持って、空や海に出かけよう。


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ここ数年、新しいムーブメントが次々と登場し、GMTウォッチの市場は急速に拡大している。これらの新しいムーブメントのなかでも、少なくとも僕たちのあいだで頻繁に飛行機を利用する人にとって最も魅力的なのは、ローカルジャンピングGMT機能を備えた機械式自動巻きムーブメント Miyota 9075である。かつては高級機だったトラベルコンプリケーションを、信じられないほど手の届きやすい価格帯で実現した同ムーブメントを搭載した新しいロリエ(Lorier) ヒュドラ SIIIは、ミッドセンチュリー風のスタイルに競争力の高い信じがたい価格を実現した。

ロリエ ヒュドラ SIII

 ニューヨークを拠点とする小さなブランドのロリエは、ロレンツォ(Lorenzo)とローレン・オルテガ(Lauren Ortega)の夫婦が運営している。またヒュドラ SIIIは、(バージョン的に)彼らの最初の腕時計とは程遠いものの、ブランドとして初めてMiyota 9075を使用し、ダイバーズGMTのフォーマットに沿って製造したものだ。これはベゼルが24時間のGMTベゼルではなく、経過時間を計測するダイバーズベゼルであり、200mの防水性を備えていることを意味する。3地点のタイムゾーンを必要としない場合や、むしろ経過時間ベゼルが便利だと思う人(僕もそうだ)なら、このスタイルはダイビングや旅行、その他あらゆるレジャーに最適な機能を提供してくれる。

 時計自体のサイズは幅が41mm、厚さは14.6mm(そのうちケースが12.2mmで残りが風防)、ラグからラグまでの長さは46mmだ。クリスタルはヘサライト製(しかもドーム型)で、20mm幅のラグにはドリル加工を、さらに裏蓋は堅牢かつ衛生的で200m潜水用防水を確保している。

ロリエ ヒュドラ SIIIのサイド
ロリエ ヒュドラ SIIIの裏蓋
ロリエ ヒュドラ SIII

 ヒュドラ SIIIは、アドミラルティグレーの文字盤と、2色の特殊夜光処理を施したヘサライト製ベゼルを装備した、単一のバージョンで展開する。驚愕の希望小売価格(このまま読み進めて)には、この写真に写っているソリッドなスティール製ブレスレットも含まれている。同ブレスレットにはクイックリリースや工具不要のマイクロアジャストシステムなどはないが、片側にネジが付いているためサイズ調整は簡単に行える。

 ダークブルー、ホワイト、レッドの配色は、クールでミッドセンチュリーな美学が反映されている。これは現代のセリカで見られる方法と同じ、ヴィンテージオメガのデザインノートを引用したかのようだ。ヒュドラ SIIIはケースサイドにすっきりと収まるリューズに加えて、ベゼル、24時間目盛り、内側のダイヤルが一連の同心円状を形成。そのケースに見合うだけの適切なダイヤルを備え、スペックの数値から想像したとおりのつけ心地を提供する。

ロリエ ヒュドラ SIIIの夜光

 コントラストが強く、鮮やかな赤色のGMT針、時刻表示を囲む24時間リングもはっきりしていて視認性は良好だ。また6時位置に日付表示を備え、文字盤、針といったほぼすべての白い要素に夜光処理を加えている。ロリエはセカンドタイムゾーンとその24時間目盛りにグリーンのC1、ダイバーズベゼルとローカルタイム表示にブルーのBGW9を使用した、2色の夜光をオプションで用意する。ベゼルのマークが細いため、夜光塗料を塗布するスペースはあまりないが、文字盤の処理は非常に明るく、特に24時間リングは長持ちしていた。

 この文字盤のもうひとつの魅力は、ドーム型のヘサライトクリスタル越しに見える夜光である。クリスタルのエッジは角度がつけられたボックスカーブを描いており、文字盤の見え方が歪んだりするときがあった。最初は気が散ってしょうがなかったディテールだが、ヒュドラ SIIIを手首に装着して数日ともに過ごしてみると、サファイアクリスタルの時計のほうが好きだと思っていても、この変化が好きになった。

ロリエ ヒュドラ SIII

 ヴィンテージウォッチの感触に近い雰囲気を提供するかどうかを目的としているため、ブランドにとってヘサライトクリスタルを選ぶのは意図的なものだ。ブランドはこのオプションを哲学的なものと考えており、公式ウェブサイトにクリスタルに関するページを設けているほどだ。

 たしかに傷つきやすくはあるが、さっと磨いて傷を消すことができる(ヒュドラ SIIIにはポリウォッチのチューブと研磨用クロスが付属している)。ヘサライトのもうひとつの利点はサファイアと同程度の反射を起こさずに、ドームのすべてを味わえることだ。実際に手に取ってみると、クリスタルの外観はクリアで非常に素晴らしく、写真撮影のなかでも反射を最小限に抑えられた。

 腕に装着すると、フラットリンクスタイルのSS製ブレスレットが、ラグ部分の20mmからクラスプ部分の15.8mmへとテーパーをつけていた。ケースのラグ位置には絶妙なカーブがあり、厚みの調整にひと役買っている。ヒュドラ SIIIはクリスタル付きだと15mm弱の厚さで、決して薄い時計ではないが、特段厚いというわけでもない。ケースの厚さは12.2mmと、NATOに装着してもバランスとプロポーションが美しくまとまるだろう。僕の手首のサイズに合わせたブレスレットだと総重量は132gだった。

ロリエ ヒュドラ SIII

 仕上げは、この価格の時計にありがちなシンプルでわかりやすいもので、ブレスレットの表面とリンクの側面はサテン仕上げ、ケースサイドにはポリッシュ仕上げを施している。ベゼルの動作もよく、120クリックの軽量な動作は制限された振動と良好な位置の調整のおかげであまり不満もない。同様に、リューズも見事なまでに仕上げられていてねじ込み動作も簡単。ムーブメントが正確にコントロールできた。

 このムーブメントは間違いなく、ヒュドラ SIIIの美しい外観要素以外の最大の特徴だ。前述のとおり、この時計はMiyotaの自動巻きGMTムーブメントである9075を搭載した小規模ブランドの数少ない初期のモデルのひとつである。

 僕が書いたGMT関連の記事をほとんど読んでいる人は、ここから先まで読み進められると思うが、トラベルウォッチに詳しくない人はある程度のコンテクストが必要だと思う。できるだけ簡潔に説明しよう。トラベルコンプリケーションウォッチには無数のフォーマットがあるが、今日の伝統的な“GMT”の時計は、ふたつのフォーマットのうちのひとつである。ひとつめは低価格帯で流通しているスタンダードなもので、24時間目盛(通常はベゼル)上の第2時間帯を示す24時間針を、ユーザーが独自に調整できるもの。もうひとつはロレックス GMTマスターIIによって広まったフォーマット(チューダー ブラックベイによってさらに認知された)で、ユーザーがホーム(またはローカル)の時針を個別に調整できるというものだ。

ロリエ ヒュドラ SIIIのサイド

 前者は、ホームから別のタイムゾーンを追跡するのに非常に便利(国際電話をするときなど)なため、通称“コーラー ”GMTと呼ばれる。後者は新しいタイムゾーンに到着した際、時刻変更の作業を大幅に簡素化できるため、こちらは“フライヤー”GMTと呼ばれている。フライヤーGMTの場合は秒針を止めることもなく、最上の例としては、午前0時を過ぎて時針がジャンプするたびに日付が前後に更新されることだ。

 9075は、自動巻きのMiyota 9015の系譜であり、完全なフライヤーGMT(ローカルジャンピングと日付修正)の機能を提供している。9015は低価格帯のカテゴリのなかで長い実績を誇り、9075は2万8800振動/時(4Hz)で時を刻み、ハック機能、自動巻き(手巻き付き)、約42時間のパワーリザーブを備えている。

ロリエ ヒュドラ SIII

 9075のメリットは、小規模ブランドが選択できるほかの多くのムーブメントよりも低コストであるだけでなく、ロリエ(およびその他のブランド)のような小さなブランドに市販ムーブメント、しかもフライヤーGMT機能を提供する非常に数少ないもののひとつであることだ。ETAはCO7.XXXの名称でフライヤーGMTを製造しており、それはミドー オーシャンスター GMT LEなどに搭載されている。しかし僕がミドーを好きなのと同じくらい、もしあなたが低価格帯の優れたGMTウォッチを探しているのであれば、ヒュドラ SIIIは依然として半分以下の価格である。

 核心に触れるのが遅くなってしまったが、ロリエは現在、ヒュドラ SIIIを599ドル(日本円で約8万5000円)で販売している(編集注記:初回生産分は完売。次回は8月中旬から下旬のあいだに再入荷の予定)。ブレスレット、風防を磨くためのポリウォッチチューブと研磨用クロス、トラベルポーチ、そしてブレスレットのサイズを調整するためのドライバーを含んでこの価格だ。決して悪くない。むしろ実に素晴らしい。

ロリエ ヒュドラ SIIIのリストショット

 比較的新しいムーブメントの信頼性や性能を気にする人のために説明すると、ブローバやシチズンのブランドもこのムーブメントを採用しているし(ミヨタはシチズンの傘下にある)、ヴェールやトラスカ、ボルダー、ゼロスといった小規模ブランドも、新しい時計にこのムーブメントを搭載しているので、ロリエだけがこのムーブメントを使用しているわけではない。さらにこのロリエのサンプルを自分のタイムグラファーにかけたところ、6つのポジションで平均+8.5秒/日という結果だった。これはひとつのデータに過ぎず、5桁半ばの時計にCOSC程度の精度を期待していたわけではなかったが、僕はその計時に感服した。

 これらのモデルはどれも一見の価値があるが、競合のほとんどはコストが高いか、あるいは24時間ベゼルを持つ従来の、GMTのレイアウトを優先して形成されているものばかりだ。僕の好みからするとダイバーズGMTの位置づけは、複数の役割を持つ日常的なスポーツウォッチにとって理想的なレイアウトであり、それがフライヤーGMTでもコーラーGMTでも関係はない。繰り返しになるが、3タイムゾーンをトラッキングする場面はあまりないが経過時間のベゼルが大好きなのだ。

 ダイバーズウォッチとしての機能と、7インチ(約17.8cm)の手首で不自由なくつけられる汎用性の高いサイジングを備えた、低価格帯のフライヤーGMTカテゴリとして、このロリエはその価格に見合った価値を提供している。セイコー SSKシリーズのGMTの定価よりわずか125ドル(日本円で約1万7000円)高いだけで、より大きく、厚く、防水性が高く、そしてなによりフライヤーではなくコーラーGMTなのである。

 ヒュドラ SIIIが傑出しているのは、非常に完成度の高いパッケージでありながら(しかも35ドル/5000円 追加すれば裏蓋に刻印を入れることもできる)、この価格帯での提供を実現するために手を抜いた部分が見受けられない点である。もちろん気になる点を挙げるとすれば、ベゼルの夜光が少し暗いことと、ブレスレットを微調整する際に工具を使う必要があるということぐらい。

ロリエ ヒュドラ SIIIのリストショット
ロリエ ヒュドラ SIII
ロリエ ヒュドラ SIIIのリストショット

 価格はともかく、ヒュドラ SIIIは素晴らしい出来栄えかつよく考えられたデザインで、装着感も良好、特に1000ドル(日本円で約14万3000円)以下という、普通ではあまり見られないスペックを有している。あなたがヒュドラ SIIIを購入することについて、僕の予測に1点注意があるとすれば、それは手に入るまで待たなければいけないかもしれないということ。ロリエは小さなブランドだ。特にカジュアルな価格で時計を提供しつつ、しかもそれが特殊かつマニア的な特質であるという事実が多くの愛好家の目に留まれば、ヒュドラ SIIIはさらに多くの注目を集めるだろう。

 ヒュドラ SIIIは、9075を搭載したGMTが続々と発表されるなか、注目すべき価格帯で市場に出回ったことで、ほかを圧倒するのは間違いないだろう。GMTマニアたちはとても喜んでいるに違いない。ヒュドラ SIIIは次の冒険のために年間の旅行費用をそのまま残しながらベストが尽くせる、大変素晴らしいツールであるのだ。

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詳しくはロリエの公式ウェブサイトをご覧ください。