trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On ゼニス エル・プリメロ A384 リバイバル 

あまり知られていない1969年のエル・プリメロに敬意を表した、新たな遺産となる時計。

ADVERTISEMENT

ゼニスが1969年に発表したクロノグラフであるエル・プリメロは、今日ではブランドとしてのゼニスそのものと言っても過言ではない。このムーブメントについての物語は、長く語り継がれるだろう。エル・プリメロの製造に必要な工具類が故シャルル・ベルモ(Charles Vermot)の手で保管されていなかったら、ゼニスはどんなブランドになっていただろうか。あるいは今日そもそもブランドとして存続しているだろうか、と考えてみるのは興味深い。その発売から50年目を迎え、ブランドは最も重要なキャリバーにふさわしい記念モデルとして、ボックスセットや限定版、さらには1970年代半ばの製造中止を前にした時計たちを忠実に再現したモデルを発表した。

当然ながら、今回ゼニスはブランドを代表する時計――A386を第一弾として発表した。あの時計に対して私はこれまでずっと、デザインの観点から1960年代後半と70年代初期のいい橋渡しをしているという印象を抱いていた。ポンプ式プッシャーを備え、派手なトリコロールのダイヤルを持つ古典的なラウンド型のクロノグラフである。同じ1969年にゼニスが発表した2つめのケースは、角のついたトノー型で、こちらの方がその後に訪れる70年代を大いに予感させる。このトノー型のケースはA384やA385、後にはA3817や「カバーガール」として知られるA3818などのモデルにも見られる。マンフレッド・レスラー(Manfred Rössler)の著作『Zenith: Swiss Watch Manufacture Since 1865』によると、1969年から1971年にかけて製造されたA384は2600本を数えたという。このケースの形を見るだけで、ゼニスのデファイシリーズにどれだけのインスピレーションを与えたかが分かるだろう。

ADVERTISEMENT

一週間ほど前にニューヨークのイベントでお披露目されたエル・プリメロA384リバイバルは、細部まで正しく再現されている。コンパクトなトノー型のケースは、オリジナルのA384と同一の直径37mmで、プッシャーとリューズはオリジナルと全く同じ位置に同じサイズで配される。A384リバイバルがヴィンテージから単純にインスパイアされた時計ではないことは、ひと言触れておくべきだろう――過去から想起された時計という意味では、例えばエル・プリメロ クロノマスターならば、より的を得ているといえる。A384リバイバルは、フロントとバックのサファイアクリスタルを除くと、歴史的なモデルを正確に再現した時計なのである。

白のラッカー仕上げのダイヤルと黒のサブダイヤルの、パンダを思わせる配置がある。タキメーターベゼルは、オリジナルのA384と全く同じで、大きめのサブダイヤルはクロノグラフの30分カウンター用と通常の秒針用である。12時間カウンターはオリジナルのA384と同じく6時の位置にあるやや小さなサブダイヤルで、赤いクロノグラフの秒針も1960年代後半や70年代初期のゼニス エル・プリメロからそのまま持ってきたかのようだ。また、現在のエル・プリメロのクロノグラフのほとんどが持つ特徴として、過去を想起させる意図を持ったクロノマスターにも見られる「星型」カウンターウエイトは、採用されていない。アプライドアワーマーカーも過去を踏襲している。ただし、当然のことながら、そうしたマーカーの蓄光塗料には、淡い緑の色合いを持つ新しいスーパールミノバが使用されている。日付表示の窓も4時と5時の間という正しい場所にあり、1969年のオリジナルと同じく立体的な形にくりぬいてある。

ADVERTISEMENT

内部にあるのはエル・プリメロ 400 自動巻きムーブメントで、オリジナルのエル・プリメロのキャリバー3019PHCを受け継ぐ現行版である。50年が経った今もなお、このムーブメントは十分に魅力的で、真の意味でクラシックな逸品があるならばまさにこれがそうなのだが、評するにはもっともな理由がある。つまり、この時計は最初の自動巻きクロノグラフのひとつであったということだ。しかも、3万6000振動/時という高振動を取り入れたモデルとして着想・製造された。改めて考えてみると、50年後の今でも、エル・プリメロに匹敵する製品は数少ないし、その比較的手ごろな価格での競合製品はまずないと言っていいだろう。この時計は82万円(税抜)で入手できる。

私はこの時計を実際にはめる時間が数分しかなかったが、原型となったヴィンテージ時計と同じように、手首にとてもよくフィットした。12.6mmの厚さは決して薄くないが、直径がわずか37mmだということを考えるとなおさらそう思える。このA384リバイバルのケースのファセットとラインのスマートさは非常に気に入っており、そこがこの復刻版の主なセールスポイントのひとつに違いないと思う。A384リバイバルは下の写真にあるようなレザーストラップ仕様だけでなく、もともとはゲイ・フレアー社(Gay Frères)がゼニスのために製作した昔ながらのラダーブレスレットを再現した仕様も発売される予定である。何て素晴らしいことだ!

ゼニスが角のついたトノーケースを復活させたとなると、他の復刻版デザインにも多くの可能性が生まれる。この記事を読んでいる方の多くは、例えばA3817やA3818のリバイバルに前向きな考えを抱くのではないだろうか。ゼニスのジュリアン・トルナー レ(Julien Tornare)CEOが先週HODINKEEのオフィスを訪れた時、私はこのトノーケースが提供する可能性について質問をした。彼は、ゼニスには今後数年間で模索すべきことが数多くあり、それはこのシリーズに限った話ではなく、パイロットのような他のコレクションにも関連してくる、と答えてくれた。

 詳細についてはゼニス公式サイトへ。