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Watching Movies トム・ハンクス、映画『ターミナル』でヴィンテージのオメガを身につけ空港に住む。

さらに今週の時計関連映画では、彼は驚くほどの速さで英語を習得するのだ。

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映画の歴史を振り返ると、有名な俳優と監督のペアが数多く存在する。スクリーン上で相乗効果が発揮され、何度も繰り返される組み合わせだ。スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスは、まさにオールスターペアだ。『プライベート・ライアン』、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』、『ブリッジ・オブ・スパイ』、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、そして今回ご紹介する『ターミナル(The Terminal)』(2004年)など、数々の作品でタッグを組んできた。主演のハンクスは、架空の国クラコジアからの旅行者ビクター・ナボルスキーを演じている。短い旅行のためにニューヨークのJFK空港に到着した彼は、自国の政府がクーデターによって消滅し、パスポートが無効になり、空港から出ることができなくなったことを知る。ハンクス演じるナボルスキーは、めったに見られないオメガの腕時計を身につけ、JFK空港の国際線ターミナルのなかで暮らすことになる。

空港で静かに座っているビクター・ナボルスキー。『ターミナル』では、ジャケットの下からオメガ メモマチックのブレスレットがのぞいている。Image courtesy Dreamworks SKG


注目する理由

 夏真っ盛りだ。夏至も過ぎて、世界はゆっくりと、しかし確実に再び開きつつあり、飛行機の旅も復活しているようだ。空港を舞台にした映画を見直すには絶好の機会かもしれない。

 『ターミナル』は、パスポートを剥奪された後、フランスのシャルル・ド・ゴール空港の第1ターミナル内で18年間生活したイラン人難民、マーハン・カリミ・ナセリ(通称アルフレッド・マーハン卿)の実話に基づいている。この映画はそこまではいかない;ナボルスキーは10年以内に脱出している。愛すべきナボルスキーは、亡き父が集めた有名ジャズミュージシャンのサインが詰まったプランターズ・ピーナッツの缶を持ち歩いている。彼は最後のサインをもらうためにニューヨークに行こうとしているのだが、もちろん空港から出ることはできない。家にも帰れない。その代わり、彼は空港のスタッフと友達になり、建設作業に加わり、キャサリン・ゼタ=ジョーンズをデートに誘うのだ。

『ターミナル』でメモマチックを身につけ空港の新しい仲間とポーカーをするビクター・ナボルスキー。Image courtesy Dreamworks SKG

 最後の5分ほどを除いてこの映画はすべて空港内で展開されるが、ロケは行われなかった。その代わりスピルバーグ監督は、撮影をより彼のやりやすいようにするため、飛行機の格納庫の中に3階建てのターミナルをそっくり作ってしまった。スタッフはそこに、ヒューゴ・ボスからバーガーキングまであらゆる店舗を建設した。時計愛好家ならスウォッチの店舗、そして公衆電話の後ろにハミルトンの原寸大の広告があるのがわかるだろう(覚えているだろうか?)。

『ターミナル』のために作られた巨大なJFK空港のセット。 Image courtesyDreamworks SKG

 では、このオメガの時計についてはどうだろう? これはシーマスター メモマチックと呼ばれるもので、1969年に作られた、60年代後半から70年代前半にかけての時計デザインの名残だ。同時代のチューダーのアドバイザーやジャガー・ルクルトのメモボックスのように、アラーム機能を搭載した時計だ。非常に厚みのあるクッションケースで、ナボルスキーはスティール製ブレスレットで装着している。デザイン上の大きな特徴は3つのリングを持つダイヤルで、画面上でこの時計を見たときにはっきりとわかる。

『ターミナル』でトム・ハンクスが着用していたものと同型のオメガ メモマチック。Image courtesy: Christie's.

 一番外側のリングは、アプライドマーカー、オメガのロゴ、そしてそのほかのダイヤル上のテキストからなる。内側の2つのリングはアラーム機能の設定に使用される。さらに、41.5mmのケース側面にはクイックセットデイトを操作するためのプッシャーが付いている。リューズは4時30分の位置に配置されている。この時計にはオメガのCal.980が搭載されており、正確な分単位でのアラーム設定が可能だ(ジャガー・ルクルトなどの競合モデルでは、おおよその時間設定しかできない)。

メモマチックをつけたナボルスキーが床を磨く。Image courtesy Dreamworks SKG

 映画は、ナボルスキーの父親への愛と、父の夢を叶えるための行動に焦点が当てられているため、この時計は彼の父親がかつて所有していたものか、ビクターへの贈り物だったのではないかと考えたい。いずれにしても、東欧の架空の国(おそらく冷戦時代の)から来たキャラクターにぴったりの時計で、時が止まったような感じがする。ハンクスはそれを上手くつけこなしている。

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見るべきシーン

 JFK空港で暮らし始めたばかりのナボルスキーは、空港の生活についてさまざまなことを学び、ダーウィンレベルのサバイバル戦術を実践する。そのひとつが「Smarte Carte(手荷物カート)」。家族連れが荷物を積むために借りるカートのことだ。捨てられたカートを返却すると、25セントの報酬が得られることがわかった。収入源のないナボルスキーはこのチャンスを逃さず、一度に10台のカートを返却し、バーガーキングのチーズバーガーを買う。小銭を回収しているシーンのアップで、SS製のブレスレットをつけた大振りなメモマチックがよく見える。

スクリーンショット:Dreamworks SKG

 残念ながら、彼の創意工夫と幸運は長くは続かない。ナボルスキーは、フランク・ディクソン(スタンリー・トゥッチ演じるJFK空港の税関長)のお気に入りの空港利用者というわけではなかったのだ。ナボルスキーがジョージ・ワシントンのコインを使ってかなりのお金を集めているのを見たディクソンは、彼の痛いとことを突くことにした。25セントの報酬はもう手に入らない。その直後、立ち直りの早いナボルスキーは塩味のクラッカーでマスタードのサンドイッチを作っていた。多くの乗客がお金を払って食事をしているフードコートのなかで、彼がその悲しい食べ物を口に運ぶ時、トープ色のセーターを着た彼の手首にはレトロなオメガが見えている。それは、このシーンのなかで唯一の希望の光のようだった。

スクリーンショット:Dreamworks SKG

『ターミナル』(出演:トム・ハンクス、スタンリー・トゥッチ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)、監督はスティーブン・スピルバーグ、小道具はダグ・ハーロッカー、音楽は伝説のジョン・ウィリアムズが担当。Netflixでストリーミング配信されているほか、iTunesやAmazonでもレンタルできる。

Lead image courtesy Dreamworks SKG