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Bring a Loupe ジュネーブのオークションからお気に入りの1本を選ぶ〜メジャーから中小オークションまで

オークションカタログを眺めて、自分のコレクションに追加するものを夢想するのはとても良い。その場合の選ぶ基準は人それぞれだが、オリジナルの文字盤であったり、ケースが研磨されていなかったりするのはもちろんのことだ。

※本記事は2015年5月に執筆された本国版の翻訳です 。 

 5 月のジュネーブ ウォッチ オークション(およびその他の 5 月のオークション)が間近に迫っている中、最近お気に入りの時計について、または興味ある出品時計について聞かれることが何度かあった。各オークションの中から私の最も好きな時計を選び(同時に次点に相当する時計について語り)、カタログへのリンクを含めた詳細を提供してみるのも、面白い試みだと思った。

 では、私の基準は? それは個人的な好みの問題だ。私は、ホワイトメタルのケース(特にスティール)や、手首にフィットするサイズ(大きすぎず小さすぎず)、研磨されていない時計(オリジナルの文字盤であることは言うまでもない)を好むし、他よりアピールする特定のブランドもある。また、私は概して宝石が文字盤、ベゼルやブレスレットに付いているより、ムーブメントの中に存在する方を好む。そして可能であれば、メーカーのアーカイブから分かる、良い来歴と素晴らしいストーリーがあれば最高だ。

 今回の状況下ではお金は目的ではなく、時計をずっと保管する前提なので、その時計が属するクラス内の相対的な価値は考慮するが、第一の考慮事項ではない(よって、オークションで最も高価値のロットをただ選ぼうとはしない)。結局のところ時計収集とは、私を含む多くの者にとって、知的なものであると同時に感情や情熱を伴うものなのだ。オークション会場から持ち帰るとき幸せになれるものは何か、そして将来身に着けることを最も楽しめるものは何か、ということを思い描くようにした。

 これは難しい作業で、最初にカタログを見直すときにも、後から選んだ時計について考えるときにも、反省の時間が必要だった。好きな時計は年によって、あるいは日によってそのカタログごとに違うかもしれないが、私はこの時期に一番好きな時計を決めようと試みた。 これを書こうと思ってからも、何度も行ったり来たりして選択をやり直した。好みが時間と共にどのように変化していくのかを考えるのは面白い。5年前にこれらのカタログで同じ試みをしていたら、選択したリストの中には同じものも違うものもあっただろう。

 紹介する順番はオークション日程に基づいている。

 もし時間があるなら、あなたの自身のリストをまとめてここで共有してもらえれば素晴らしい(おそらく、本当に入札したいものをリストアップするのは避けたいかもしれないが)。


5月9日:フィリップス「グラマラス デイデイト」inジュネーブ
トップ賞: "ダッシュボード" (ロット45)

 プレスの注目はフィリップスのオークション「ONE」に集まっているようだが、今回、特別なデイデイトが一度に60本出品されるというこの前例のないセールは、それだけで画期的だ。そして、それらのデイデイトには名前がつけられていたが、これがなかなかのマーケティング・アイディアだった。個性あふれる時計に選ばれた名前を見て、カタログを読んでいる間、笑いが絶えなかったのだから。

 1986年製の18Kホワイトゴールド製バールウッド文字盤の「ダッシュボード」は、デイデイトのセールで最も希少価値の高い時計とは言えないが、魅力的な外観で(ダイヤモンドがないことや蛍光ではないスティック針、シンプルなスティックマーカーが気に入っている)、素晴らしいコンディションを保っている。ケースの裏にはオリジナルのステッカーすら残っている。私がここに絵文字を入れるとしたら、ブッチャーナイフかもしれない。それほどシャープなのだ。ダッシュボードの予想価格は1万5400ドルから3万700ドルだ。

次点:"ビッグ・カフナ"(ロット43)

 「ビッグ・カフナ 」は、カタログを見ていて思わず笑顔になった名前の一つだ。他に何と呼べばいいのか? そう、私はあまりダイヤモンドには詳しくないがこれは別格で、滑らかなベゼルを持つこの時計のダイヤモンドは素晴らしい。これはプラチナ製で知られている2つのリファレンス6612のうちの1つで、2つのシリアル番号は連続している。私にとってのハイライトは文字盤のサーキュラー仕上げで、これは時計の他の部分と調和している。ビッグ・カフナの予想価格は10万2000ドルから20万5000ドルだ。

 ここではバーチャルでフルセールカタログを見ることができる。また、リストはこちら


5月10日:フィリップス「ジュネーブ ウォッチ オークションONE」inジュネーブ
トップ賞: ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.4178 (ロット91)

 この時計に何と言えばいいのだろう? 今シーズンの中で一番好きな時計かもしれない。これはヴァシュロンの美しいスティール製クロノグラフだ。リファレンス4178は、ヴァシュロン・コンスタンタンの象徴的なヴィンテージ・クロノグラフで、私はこれまでに作られたクロノグラフの中で最もエレガントなものの一つだと思っている。スティール製を見つけることは非常に稀だ。私の知る限りでは、オールスティールの4178は5~6本しか存在しない。現存するスティール製の4178の中で、私の目には、このモデルが最も美しく、最高の状態であると映る。

 均整のとれたアラビア数字を配したサーモン色の文字盤、ブルーのセンターセコンドと丸いカウンターバランス、その丸いカウンターバランス付きのミニッツレジスター針(ヴィンテージの4178では見たことがなく、それ以前のヴァシュロンのクロノグラフにあったが、それはおそらくオーダーによるものと思われる)、そして驚くべきパルセーションスケールが、この1本を今までに見たヴィンテージ・ヴァシュロンの中で、最も優れたモデルにしているのだ。ケースは研磨歴が無いように見え、ラグには適切なベゼルが施されており、摩耗も極めて少ない。

 実際、この4178は現存するヴァシュロンの中で、今私の一番のお気に入りだ。確かに、世の中にはこれより価値のあるヴァシュロンはあるし、フィリップスのオークションにはもっと貴重な時計が出ると思うが、私はこの時計を選びたい。シングルプッシャーのパテックRef.130クロノグラフやローズ570など、他にもたくさん欲しい時計が出されているが、それらの時計を現存するパテックの中で一番好きな時計とは言えないのだ。

 このヴァシュロンの予想価格は3万2000ドル~5万3500ドル。

次点:ゼニス エル・プリメロ プロトタイプ (ロット85)

 昨年、私は偶然にもこの時計をHODINKEEで取り上げ、「もしゼニスがこれまでに生産した時計から何か1つ選ぶとしたら、おそらくこれだろう」と述べた。時が経ってもこの時計への愛は変わらなかった。それは私のずっと好きなゼニスであり、ぜひ身に着けたい時計なのだ。2つの異なる会社によって製造された、私の絶対的なお気に入りの時計をオークションで見られる機会は、そうそうあるものではない。これらのプロトタイプは、25本が生産されたとされ、そのうちの2本だけが知られている。他のモデルが現存しているかどうかは全くの謎だが、もう存在しなくても不思議ではない。2つのうちの1つは数年前にゼニスがクリスティーズから購入し、最近の限定版のインスピレーションとして使用されている。

 このゼニスの予想価格は2万500ドルから3万700ドルだ。

 バーチャルのフルセールカタログはこちら。5月10日のフィリップスオークションのリストはこちら


5月10日:アンティコルム「重要なモダン&ヴィンテージ時計」inジュネーブ
トップ賞:ダグラス・マッカーサーのジャガー・ルクルト レベルソ (ロット201)とウィリー・エンガルのパテック フィリップ ノーチラス (ロット487)

 これが唯一の同時受賞だが、両方とも私には違った魅力がある。

 レベルソは、私の祖父が第二次世界大戦中に太平洋戦区に従軍していたことから、純粋にその起源と個人的なつながりに魅力を感じている。「DMacA」のブラックエナメルのエングレーヴィングは素晴らしいが、針がリリューム加工されているように見えるのが残念だ。黒文字盤も良いが、選択肢があるとすれば、数週間前にBring A Loupeで紹介したような、他の初期のレベルソ文字盤の方が好みだ。それでも、これは心を揺さぶる信じられないほどの時計であり、歴史の一端を表す比類ないものだ。

 予想価格は1万500ドルから2万1000ドルだが、私はそれ以上の価格で売れると予想している。 

 カタログをめくっていたら、数年前から追いかけていた時計をみつけてあっけにとられた。パテック フィリップ ノーチラスで、文字盤にウィリー・エンガルのネーム、ベゼルにCBが刻印されているものだ。アンティコルムには「エンガル」と書かれていて、ハイビジョン画像では明らかに名前の「a」のように見えるが、それが間違いで「エンゲル」という意味だったのか? ウィリー・エンガル/エンゲルはパテックで腕利きの時計職人であり、息子たちのためにそれぞれノーチラスを購入し、ベゼル下部に彼らのイニシャル(CBとMVB)を刻印し、文字盤に彼の名前をプリントしていたという話が過去に伝わっていた。パテック フィリップの時計職人としては、前例がないとはいえないにしても、非常に珍しいことだ。

  しかし、別の説もある。宝石や貴金属を扱うスイスの町トゥンに「ウィリー・エンゲルAG」という小さな会社があるという話だ。これは完全な憶測だが、おそらく彼らは何らかの形でパテックに貢献し、2つの時計(あるいはもっと多く作られていた場合はそれ以上)は、感謝の気持ちを込めた贈り物だったのではないか。または、単にその会社の二人の重役のために購入されただけかもしれない。真相は不明。 

 個人的に、時計職人の話にはいくつかの点で少し疑問がある - "a "の付いたEngalという名前は実際には正しくないし、一般的ではない。それに、なぜ彼は名前の下に英語で "SWISS "と記したのか?

 私が確かに言えるのは、これらはおそらくこれまでのノーチラスの中で最も好きなモデルであり、現存する両モデルには、超レアで超クールで超貴重なコルク箱(これまでに製造された最もクールな時計の箱じゃないか?)と購入時の書類一式がついてくる。MVBの方はイタリアの敏腕コレクターの手に渡っていて、彼のそのモデルを長い間保管しているようだ。そして、私が見た写真では、実際"Engal "ではなく "Engel "と書かれているように見えるから面白い。CBの方は、アンティコルムで2009年に3万6000ドル、次に2011年に3万2500スイスフランで販売された。

 予想価格は3万5000〜5万5000ドルだ。

次点:ジャガー・ルクルト ディープシー アラーム

 さて、私は以前からルクルトのディープシー アラームが好きだったが、ザック・ノリスがフェニックスのグッドウィル・ストアでこれを見つけ、それが後にエリック・クーに売られたという話を書いた後、さらに好きになった。

 アンティコルムの話;「そのディープシー アラームは、若い頃カリフォルニアでライフガードをしていた元の持ち主からのもので、彼の高校卒業の際に両親から贈られた後長年にわたり忠実に使用され、持ち主を失望させることはなかったそうです。ベゼルの三角形が光らなくなってしまったので、持ち主は水中でも見えるようにグリーンにペイントしたそうです」グリーンは少しファンキーな印象だが、その来歴が好きだし、見た目も大好きになった。入札者も好きになるだろうか。

 予想価格は2万1000ドルから3万1000ドル。

入札者はご用心

 これはどうやら偽のエドックスのようだ。昨年ヘリテージ オークションに出品されて、私が以前に取材したものに似ている。


5月11日:クリスティーズ「インポータント ウォッチズ」inジュネーブ
トップ賞:スティール製ブラックダイヤルのロレックス クロノグラフRef.2508

 私はRef.2508をとても好きだが、よく考えてみると、カタログに記載された317の素晴らしいロットの中から2508を選んだというのは驚くべきことだ。それでも、これは信じられないほどの時計なのだ。私はこの時代の非蛍光のブラックダイヤルのクロノグラフが大好きで、この時計は素晴らしく良好に保存されている。この時計にもブッチャーナイフの絵文字をたくさんつけたい。正直言って、初期のロレックスのクロノグラフでこれ以上好きなものにはお目にかかっていない。

 予想価格は約3万1000ドルから6万2000ドル。

次点:ロレックス サブマリーナー Ref.6538 "サルタンの約束"

 これは夢のような発見だ - 完全にオリジナルで研磨されていないビッグ・リューズのサブマリーナーというだけでなく、驚くべき来歴とそれを決定づける資料まで付随するのだ。この時計は、少将H.H.サー・イブラヒム、ジョホールのサルタンからG.ウィリアム博士に贈られたものだ。それはサルタンからウィリアム博士への手紙も含まれている。「私はあなたに約束したステンレススティール製の腕時計"ロレックス"をお贈りします。これを使うことによって、あなたがより明確に簡単に時間を見ることができ、大変な仕事をしているときも、正確に時を知ることができるよう希望します。私はあなたが私からのこの小さなプレゼントを受け入れてくださり、これがあなたの役に立つことを願っています」

 驚くべき来歴以上に、ケースバックの製造年1956の上に驚くべきGW(博士のイニシャル)のモノグラムが刻まれ、デプロワイヤントクラスプには、サルタンのイニシャルISのモノグラムがついたクラウンが刻印されている。今までその時代のサブマリーナーにこれほど美しい彫刻を見たことがあるとは思わない - それより数十年前のパテック フィリップのグランド・コンプリケーションの懐中時計の方が相応しいだろう。この時計の独創性は、私のような時計フリークには息をのむほどだ。私はこの時計が好きだ。本当に好きだ。それはクリスティーズがロットのタイトルで述べているように本当に "特別な "ものだ。

 全てを踏まえた上であえて言うと、文字盤には明らかに摩耗があり、リューズの上には明らかにフォトショップの加工のようなものが見えるため、クリスティーズの画像部門はこの点で叱責を受けるべきだ。見てもらえば、私が何を言いたいのか分かると思う。ただし、この写真のミスは、このロットの入札結果にマイナスの影響を与えることはないだろう。

 予想価格は約6万3000ドルから10万5000ドルだ。

(次点の次点を挙げるなら、 1937年にポーランドに送られたロンジンの科学的なセクター・ダイヤルがとても気に入っている。予想価格は約3100ドルから6300ドルだ。)

 リストはこちら


5月13日:サザビーズ「インポータント ウォッチズ」inジュネーブ
トップ賞:パテック フィリップ パーペチュアルカレンダー クロノグラフ Ref. 5970 (ロット200)

 これはありふれた5970ではないし、どんな5970でもありふれたとは言えない。これはエリック・クラプトンが特注したものなのだ。この1本には、このモデルでは通常見られないような素晴らしいブレスレットが付随しているだけでなく、文字盤にブレゲ数字を搭載している。おそらく、ブレゲ数字を使って作られた5970で、公に登場したものはこれだけだ。私にとってそれは信じられないほど美しく、標準的なスティックマーカーよりも視覚的により興味深いものとなっている。

 予想価格は約12万1000ドルから22万3000ドルだ。

次点:オメガ レイルマスター Ref.2914-1 (ロット259)

 私は、初期のオメガ レイルマスターの将来性に強気だ。彼らは色々な意味で多くの物を備えている。これは、最も初期のレイルマスターに属し、ダイヤルと針はオリジナルのように見えるが、ケースは残念ながら研磨されている。それでも、これらはその存在自体が偉大な価値を提供するのだ。予想価格は約 6100 ドルから 8100ドルだ。

入札者はご用心

 サザビーズには、文字盤にひどい再仕上げをされたゴールドのクロノグラフが複数ある。これは、彼らが再仕上げされていることを知らないのか、それとも気にしていないだけなのかという疑問を投げかける。例えば、このヴァシュロンのクロノグラフRef.4178(ロット136)の文字盤には、ひどい再仕上げが施されている。コンディション・レポートにそう書かれているかと思えば、代わりに "文字盤の状態は非常に良い "とか "非常に良い1本 "とか書かれている。ここ数週間、再仕上げされた文字盤の見分け方について多くの問い合わせを受けたので、まず見てみることを薦めたい。重要なことの一つは、マーカーのすぐ外側のセコンドトラックが、マーカーと一致しているかどうかだ。このモデルでは一致していない - 55が11時位置のマーカーとずれているのが分かるだろうか? 全体的な数字は、ヴァシュロンでは見られないようなもので、ダイヤル上の「VACHERON & CONSTANTIN / GENEVE」のシグネチャーも含め、質も良くない。

 このゴールドのオーデマ ピゲ クロノグラフ(ロット143)にも同様の問題がある。レジスターの印字が少し滲んでいるように見える上、11時位置の55が大きくずれているのが分かるだろうか? また、"AUDEMARS, PIGUET "のサインも少しラフで下降しているように見える。コンディションレポートには、"文字盤の状態は良好で、わずかな経年変化が見られます"と記載されているだけだ。

 このゴールドのロンジンのクロノグラフ(ロット139)にも似たような状態だ。レジスターやセコンドトラックの印字がおかしい。極めて雑だ。これもまたコンディションレポートには何も記載されていない。

 そして、このゴールドのロレックスのクロノグラフ(ロット146)も同様だ。印字はRef.4062のレジスターを埋める必要があるし、セコンドトラックとレジスター内の数字は正しくない。他の4062と比較してみると、その違いがよくわかる。

 正直なところ、他のヴィンテージのゴールド・クロノグラフを全てチェックする時間がなかったが、誰がそれらを委託したのか、そしてそれらが全て同じ出所から来たものなのかという疑問が湧いてくる。これだけの再仕上げされた文字盤をメジャーなカタログで見るのはかつて無い程だし、ロットノートにそのように記載されていないのは非常に残念だ。人々は騙されないようにオークションハウスの名前に信頼を寄せているのだから、コレクターとサザビーズの時計チームの両方で、さらなる検討と見直しが行われることを期待している。

フルカタログはこちら


5月14日~5月16日:ヘリテージ スポーツオークション
トップ賞: 1980年オリンピックのタイメックス(プラス、未知のティソ)(ロット83272)

 昨年、1980年のオリンピックでアメリカ男子ホッケーチーム「ミラクル・オン・アイス」のフィル・ベルチョータが着用していたタイメックスを披露した。それは4182.5ドルで販売されたが、今回はマーク・パヴェリッチからの出品だ。ダイヤルに多くの摩耗があるが、それでもキラーウォッチに違いない。出版時のプレミアムがついてわずか500ドル強である。このロットには明らかにリューズのないティソも含まれるはずだが、それ以上の詳細や写真は提供されていない。

次点:1936年のNFLチャンピオンシップを祝してグリーンベイパッカーズのクラーク・ヒンクルに贈られたグリュエン (Lot 82861)

 グリーンベイの近くで育った私は、クラーク・ヒンクルという名前をよく知っていた。私はパッカーズが1997年に彼に敬意を表して新しい練習場の名前を付けたことを覚えているし、彼にちなんで名付けられた短い通り - ヒンクル通りをよく知っている。ヒンクルは1964年にNFLの殿堂入りを果たした。これはおそらく、オークション史上、最も重要なパッカーズのチャンピオンシップウォッチだろう。

 掲載時には7000ドル以上のプレミアムをつけて高値で落札された。


5月15日:Dr. クロット 「Important Watches, Clocks & Snuff-Boxes」 inフランクフルト
トップ賞: A.ランゲ&ゾーネ 1815 ムーンフェイズ (ロット363)

 この希少なピンクゴールドのランゲは2000年頃のもので、250本中16番の番号が付けられている。このモデルの何が特別か? これは、ムーンフェイズ表示の精度を飛躍的に向上させたのだ。カタログにはこう記載されている。「時計愛好家を魅了するのは、何よりもまず、ランゲの設計者が1000年先まで正確にムーンフェイズ表示を計算した精度の高さです。エンジニアたちは、月が地球の周りを約29日で回ると仮定した従来のムーンフェイズ計算に満足せず、実際の天文条件に合わせようとしました。それは天文学上の月の正確な時間に基づいています。つまり、29日12時間44分3秒です」

 同じような大きさの7つの星を持つ「北斗七星」が金のアップリケで描かれている。中央に位置する星「ミザール」の隣には小さな「アルコール」(アラビア語ではサドル)があるが、これは古代、視力を測るための試金石として親しまれていたものだ。つまり、「1815 ムーンフェイズ」は、非常に大きな天文時計と同じ計算原理に従っているということだ。これほどまでに素晴らしいものはないと思わないだろうか? 他にも、3時、6時、9時の位置に星のマーカーがあるのも特筆すべき点の一つだ。 直径36mmというサイズに不満を持つ人もいるかもしれないが、私は全く気にならない。

予想価格は2万0900ドル~2万7600ドルとなっている。

次点: ブランパン BUND(ロット302)

 全てのブランパンは、1975年頃にドイツ海軍のために特別に作られたファンキーなフィフティ ファゾムスを含め、数年の間に注目度と価値の両方を高めた。三角形の印だけで目盛りのない大きな黒のベゼルが特徴的なこの時計は、当時のダイバーズウォッチでは見られない面白いビジュアルをもつ。このブランパンの予想価格は800ドルから2000ドルだ(おそらくそれ以上の価格になるだろうが)。

フルカタログはこちらのPDFとオンラインで。


5月19日:ボナムズ「Watches and Wristwatches」inロンドン、ナイツブリッジ
トップ賞: オメガ シーマスター300 イギリス海軍用 (ロット206)

 カタログをめくっていて、このイギリス海軍用のシーマスターを見たとき、私は茫然としてしまった。固定ラグと文字盤上の円の中にTの文字をもつこのモデルは、ロレックスのミルサブに相当するオメガのモデルである。ミルサブよりも数年早く作られたシーマスターの針は非常に人気があったようで、イギリス国防省が軍用サブマリーナーのオーダーをするにあたり、ロレックスに同じ針を依頼した。この1本は使用されていたように見えるが状態はよく、蛍光はベゼルとダイヤル上で均等に完璧に経年変化を遂げている。これがどのように取引されるか見るのは興味深い。これはリアル・ディールになりそうだ。

  2300ドルから3900ドルの予想価格だ。

次点:ロレックス エクスプローラー Ref.1016 (ロット211)

 1980年代のロレックス エクスプローラーの最後の数年は、蛍光が今日でも白のままであるのに対し、1967年頃から1980年代初頭までのマットダイヤルの1016は、クリーム色から黄色がかったトーンになっている。このように、80年代後半のエクスプローラーは、ヴィンテージとモダンが並置されたような面白い外観をしているが、このモデルはあまり出回っていない。これは非常にクリーンで、研磨されていないように見える1本だ。デイリーウォッチとして持ってみたい気がする。

 3900ドルから5400ドルの予想価格だ。。

(次点の次点として:チューダー アドバイザー(ロット210)は、研磨もされていないようで、素晴らしい文字盤を持ち、関連するハミルトン&インチズの箱と販売レシートが付属している。予想価格は1200ドルから1900ドル) 

フルカタログはこちらから。


5月21日:ヘリテージオークション「Watches & Fine Timepieces」inニューヨーク
トップ賞: パテック フィリップ パーペチュアルカレンダー Ref. 3940P (ロット56279)

 3940はまさにオールタイムクラシックだ。それがベン・クライマーが持った最初のパテックであったことは驚くべきことだろうか? この3940Pは非常に独創的であり、スペアのブラックダイヤルまで含まれていることは注目に値すると思った。残念ながら純正の木箱には使用感があるが、それでも、これは非常に誠実なオリジナルの時計を得る良い機会だ。

 これは公開時にプレミアム付きで2万7500ドルの高額入札があった。

次点: オーデマ ピゲ "ジュール オーデマ"クロノグラフ Ref.25859

 今までこの時計に非常に注目していたとは言えないが、カタログで目に留まった。直径39mmのスティールケースに映える黒のダイヤルが気に入った。オリジナルの箱やタグ、ブックレットが付属しているのもいい。また、価格も本当に目を引いた。公開時に3750ドルだったのだ。

 フルカタログはこちらから。


入札者がオークションで注意すべきこと

 Auctionataのオークションがいくつか控えているが、偽物や問題のある時計が横行しているため、私は避けることにした。あなたがエキスパートで大丈夫と思うならいいだろうが、そこには提供された時計を評価するための適切な専門家が現在のところいないように見える。多くの読者がAuctionataでの購入について後悔していると我々に伝えてきたし、カタログには問題のある時計を載せ続けている。5月6日と5月7日のセールを見て、問題のある時計をひと通り紹介すると、このブライトリングは完全な偽物のように見える。私の理解では、ブライトリングはヴィーナス200をベースにしたダトラを製造したことはなく、この時計にはシリアル番号とリファレンス番号がない。文字盤もひどい。

 ユリス・ナルダンには、ジャガー・ルクルトのポラリスやホイヤーのBundeswehrsなどの偽物を作っていた人物が作ったと思われる偽の(最近作られた)の文字盤があり、ケースも偽物で、ムーブメントも偽/または作り直しと思われた。不思議なことに、ムーブメントには45分積算計が付いているというが、文字盤には30分しか表示されていない。

 最近作られた偽の文字盤とケースを持つ、フェイクのモバードのミリタリーウォッチもあった。ケースバックのエングレービングがいかに笑えるかもチェックしてみて欲しい。

 偽の文字盤ギャレットがあり、おそらく部品から組み立てられたフランケン・ウォッチだろう。

 再溶接されているように見えるギャレットもあるが、もちろんそれは言及されていない。

 トリコンパックスで、笑えるほど交換されたセンターセコンドの針があるが、それは言及されていない。

 他にもいろいろあるが、率直に言って、そんなことに時間を費やしたくはない。全ては、あなたがこういった場所で入札する前に知っておく必要があるということだ。


注目すべきセール:オメガ スピードマスター2915-2

 初期のスピードマスターRef.2915がオークションに出てくるのは、いつでも特別だ。Vespercoは今週、リストにアップしてから1時間以内に売れた素晴らしい2915-2を提供した - 驚くべき結果と信じられないほど速い落札だが、それだけ需要が旺盛であることを示している。ちなみに、Matthew Bain, Inc.もまた、信じられないほどの2915-1をリストに挙げ、最近売れた。どちらも素晴らしい時計だ。購買者を祝福したい。 

 これらのオークションの中で、あなたの一番お気に入りや、次に好きなものは何だったろうか? 結果を聞くのを楽しみにしている。