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Interview ユリス・ナルダンとジラール・ペルゴのCEOパトリック・プルニエ氏がケリンググループからの独立について語る

一度独立したふたつのブランドは、再び独立することとなった。

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グッチ、バレンシアガ、サンローランなどを傘下に持つケリンググループは、今年1月21日、ユリス・ナルダンやジラール・ペルゴを傘下に持つソーウインドグループSAの株式の100%をパトリック・プルニエ氏が率いる現在の経営陣に売却すると発表した。

 2020年に70億ユーロ以上の収益を得たケリングは、今回の売却について、"...グループ内で大きな資産となる可能性があり、時間をかけて決定的な支援を提供できるハウスを優先するケリングの戦略に沿ったものである"と述べている。

 今後も両ブランドを率いることになるパトリック・プルニエ氏は、タグ・ホイヤーやLVMHグループ内で要職を歴任してきた。2014年、Apple Watchの発売準備のため、スペシャル・プロジェクト・チームの一員としてAppleに採用され、2015年にはApple UK & アイルランドのマネージング・ディレクターに就任している。

 2017年、ユリス・ナルダンのCEOとしてケリンググループに入社し、2018年、ジラール・ペルゴのCEOに就任。今年上半期に完了する見込みである売却についての発表後、プルニエ氏はHODINKEEの取材に対し、売却、両ブランドの今後の計画について、そして最近の業界動向について語った。

HODINKEE:今回の売却は、友好的な別れと発表されているようですね。

パトリック・プルニエ: (ケリング)グループは数年前から私の雇用主でしたから、間違いなくとても友好的であり、素晴らしいパートナーシップでした。ケリンググループは、ブランドに対して非常に協力的です。最近でも、ここでのオペレーションに大きな投資をすることができ、すべてをより効率的なものとし、マーケティングにも投資しています。

パンデミックによって、生産・出荷に制限がかかったことで、今回の売却へとつながったのでしょうか?

 そうではありません。ケリングにとって何が合理的か、ということです。プレスリリースにもあるように、数十億の収益企業であるケリングレベルの、クリティカルなサイズを持ちうるブランドに注力しようという意志なのです。いくつかのリソースを相互利用し、2020年には、何人かの従業員を解雇しなければなりませんでした。本当に会社の規模を適正化する必要があったのですが、まさに今がそのときです。早くも昨年から...2020年の秋に手放した人たちも含めて、再び採用を行っています。

ケリングはこの時点で完全に切り離され、所有権を保持していないのですね。

そうですね...私たちは完全に独立しています。

The 2021 Marine Torpilleur Tourbillon Grand Feu.

2021年新作のユリス・ナルダン マリーン トルピユール トゥールビヨン グラン・フー。

売却の際、資金負担をした投資家はいたのでしょうか?

 まとめ方としては、これは本当に私が主導する経営プロジェクトです。しかし、その根拠は非常に経済的なもので、財務的なものではありません...投資家たちは非常に長期的な視点を持っています。2、3年の投資に対する高いリターンを求めているわけではありません。

では、長期的な視野で、ケリンググループの他のブランドが落とす長い影とは別に、ユリス・ナルダンやジラール・ペルゴのアイデンティティを確立するために働くということですか?

 公平に見て、我々のブランドはケリンググループの影に隠れていたとは言えません。なぜなら、私たちはかなり発展した自律性を持っていたからです。業界全体は好調ですが、私たちが行った投資や仕事は、その一部しか目に見えていなかったと思います。つまり、最終消費者やプレスの目に見える形で。しかし、その努力は報われたと思います。私たちは、その年、小売業者、エンドユーザーからの信頼を取り戻しました。小売業者と言ったのは、私たちの戦略が非常に明確だからです。私たちは、ほぼ100%卸売りの会社でありたいと考えています。

 中国を中心に単独ブランドの店舗もありますが、私たちの意図は、世界の優れた小売業者と提携することであり、それはすでに実現しています。4年前、私たちはトップ15の小売業者のうち3、4社としか仕事をしていませんでしたが、今ではすべての小売業者と仕事をしています。彼らはインディペンデント・ブランドを求めていますし、それに満足しているのです。

Patrick Pruniaux and watchmakers

ブランド間の相互作用は、今後どのようになるとお考えですか? 可能な限り並行して、しかし別々の道を歩んでいくのでしょうか?

 組織は本当に今のままでよいと考えており、何かを変えようという気はありません。仕事の進め方は、UN(ユリス・ナルダン)チームとGP(ジラール・ペルゴ)チームがそれぞれ別で動いています。UNチームが発売しようとしているものを、GPチームが発表当日に発見することは非常に多く、これは素晴らしいことです。ふたつのブランドはとても個性的なので、私たちはそれを望んでいたのだと思います。

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 両者にはまったく異なる歴史があり、アイコンがあります。だから、私はブランドという言葉を使いたくないのです。この言葉は、何世紀も前からある名前に対して、マーケティングのように聞こえます。だから、ブランドとはまったく別のものなのです。

 両ブランドは完全に異なる動きをします。私たちは製造のノウハウをそれぞれに持っているので、その違いを育てていかなければならないのです。ですから、私自身と、おそらく製造部門の責任者やCFOは別として、全員が専門的な知識を有しています。

Ulysse Nardin's proprietary Ulysse Nardin Anchor Escapement.

ユリス・ナルダン独自の「ユリス・ナルダン アンカーエスケープメント」。

まさに2ブランドによる高級時計グループですね。

 そうなんです。そして、立場が違えば、見方も違う。あるブランドで有効な戦略を、別のブランドに強制するようなことは決してしません。各チームに多くの裁量権を与えています。

 私たちにとってのブランドは、私たち個人よりも大切なものだと本当に思っています。私たちは、今日ここにいることを光栄に感じています。しかし、私たちの役割は、ブランドが私たちよりもはるかに大きな存在であることを確認することなのです。

高級時計製造の原理は、製品の品質、その背後にある物語、素晴らしい時計を作る人々を強調することです。「これを買えば、12ヵ月後には価値が2倍になりますよ」というような話ではないのです。

製品面で両社の方向性をどう見ているのでしょうか、製品戦略が変わるとすれば、それはどのようなものですか?

 私たちに期待すべきことは、ここ数年来と同じようなことをすることです。コレクションの違いについてのご質問ですが...大きな違いはないと思ってください。私たちは今、イノベーションと、過去にここで行われたことへのオマージュをミックスした道を歩んでいるのです。

 しかし、私にとっては、何十個もの新しい時計を発表することが重要なのではありません。一貫性のある、理にかなったものを作ることです。

私たちは誇大広告の時代に生きています。その時計にアクセスできない。Instagram、ウェイティングリスト、おそらく買えない、買える予算があったとしても手に入らないという事実によって動かされています。

 正直なところ、ほとんどのブランドはとても誠実で、どうしようもないと思っているんです。なかには、これ以上生産できない、あるいは生産する気がないから出せないというところもあります。品薄は戦略ではなく、強い需要の結果なのです。また、新しい購買層、新規参入者が多いという事実もあり、これについては素晴らしいことです。

 とはいえ、私たちはそのようなゲームに参加するつもりはありません。私たちが持つ独占性のレベル、生産し提供できる量と、お客様が期待するものとのあいだには、努力すべき公正なバランスがあると思うのです。私は、投資よりも、何が喜ばれるかを重要視しています。投資先として選ばれているブランドは、おそらく彼らが決めているわけではなく、戦略というわけでもないでしょう。たまたまそうなっただけだと思います。

 高級時計製造の原理は、製品の品質、その背後にある物語、素晴らしい時計を作る人々を強調することです。「これを買えば、12ヵ月後には価値が2倍になりますよ」というような話ではないのです。最高のコレクターは、そんなことはしないと思うんです。彼らは情熱があるから投資するのであって、リスクも取る。

Patrick Pruniaux, standing

必ずしも人前に出たくない、コレクションを人前に出したくないというコレクターはまだまだたくさんいますよね。

 そういう人たちはほとんど収入に関係なくいらっしゃいますね。なかには、リスクを取っている人もいて興味深い。「ジラール・ペルゴとユリス・ナルダンのこれはどう? メインストリームではないよね」と言ってくれる人がいると、とても嬉しくなりますね。それは「自分で考えて、ブランドに対して興味がある」ということだからです。そして、他の人が買えないときに買えた時計だから興味を持っただけという、インスタ主導ではない人たちにもよく出会います。

ユリス・ナルダンとジラール・ペルゴに共通しているのは、両ブランドとも手に取りやすい価格の時計がある一方で、高複雑度の時計や非常に高度な技術を要するハンドメイドの作品まであることです。これからも、このようなミックスは続くのでしょうか?

 両ブランドともスタートプライスは8000ドル(約92万円)前後ですから、すでにラグジュアリーセグメントに入っていますね。8000ドルから1万ドルくらいでいいんです。なぜなら、私たちのムーブメントの作り方では、それ以下にすることはできないから。私はそれでいいと思っています。学習曲線があります。ファーストウォッチであることはめったにありません。

 私たちは、マニュファクチュールという世界への第一歩を提供する一方で、素晴らしいイノベーションに貪欲な個人にも何かを提供しているのだと思います。そして、その両方を実現することが、私たちの企業理念の一部なのです。

このインタビューは、わかりやすく編集されています。

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両ブランドについてもっと知りたい方は、ユリス・ナルダンジラール・ペルゴのウェブサイトをご覧ください。