Introducing ヴァシュロン・コンスタンタン　オーヴァーシーズ・エベレスト

　各150本限定のこのオーヴァーシーズ・エベレストの新作は、基本的に現行のスティールモデルのチタンバージョンであり、グレーブルーのグレインダイヤル、ウォームオレンジのアクセント、コーデュラファブリックストラップ（グレーのラバー製クイックチェンジストラップも付属）を備える。両モデルとも、ケース、ベゼル、リューズ、プッシャーガード、プッシャーはチタン製で、ベゼルリングはSS製となっている。

　ベゼル、リューズ、プッシャーガードはビーズブラスト仕上げ、ケースはポリッシュ仕上げ部分のあるサテン仕上げ、プッシャーはフルポリッシュ仕上げと、パーツによって仕上げが異なる。これらの仕上げにより、コントラストが際立ち、文字盤の質感や色調が見事に表現されている。

　幅42.5mm、厚さ13.7mmのオーヴァーシーズ・クロノグラフ・エベレストは、ヴァシュロン・コンスタンタンの自社製自動巻きコラムホイールクロノグラフムーブメント（5200/2）を搭載する。12時間積算計と4時半位置の日付表示を備えたオーヴァーシーズ・クロノグラフは、この最もスポーティなバージョンでもまったく違和感がなく、色調とケースの洗練された仕上げには異議を唱える余地はない。

　この2種類で僕の好みはオーヴァーシーズ・デュアルタイム・エベレスト（驚かないだろうが）だ。幅41mm、厚さ12.8mmで、ヴァシュロン・コンスタンタンの自動巻きムーブメント5110 DT/2を搭載する。このムーブメントには、オレンジ色の大きなアロー針によるセカンドタイムゾーン表示、ホームタイムと連動したAM/PM表示、ローカルタイム表示と連動した6時位置のプッシャーセット式日付表示がある。デュアルタイムを実現するこの機能は、使いやすく読みやすいという点で優れており、従来のGMT（24時間表示）よりも高度で特別なものに感じられる。

　どちらのモデルもディスプレイケースバックを備え、22Kピンクゴールド製の回転ローターには、コリー・リチャーズ氏が撮影した写真に基づくエベレスト山のエングレービングが施されている。彼はヴァシュロン・コンスタンタンのサポートを受けて、2019年にエベレストの超難関ルートに挑戦した（その詳細は「The Grey NATO」のこのエピソードで聞くことができる）。興味深いことに、発売に際してブレスレットは提供されない。しかしそこはヴァシュロン・コンスタンタンのこと、作れるに違いない。もし、あなたが幸運にもこのモデルのオーナーになれたなら、ぜひ丁寧に聞いてみてはどうだろう。

　各モデルは150本限定で、ヴァシュロン・コンスタンタンのブティックのみで販売される。価格は、クロノグラフが437万8000円（税込）、デュアルタイムが371万8000円（税込）となっている。

　要するに、オーヴァーシーズ・デュアルタイム・エベレストは、難なく2021年の僕のお気に入りになったということだ。とはいえ小学生でも知っているように、自分の仕事をしなければ。2019年モデルが発表されたとき、生産する価値があると思う人はいるかと尋ねたが（返事は圧倒的に「イエス」）、コリー・リチャーズ氏がエベレストで着用した唯一無二のプロトタイプは2019年12月にフィリップス社のオークションで10万6250ドル（約1168万円）で落札され、その収益はナショナルジオグラフィック協会を支援することになった。そして今、栄光を継承するモデルと兄弟機のクロノグラフが作られたわけだが、どちらもこれ以上ないくらいクールだと思う。

　チタンは、ヴァシュロン・コンスタンタンのようなブランドとはあまり馴染みのない金属だが、それがエベレストをテーマにしたこの新しいペアでは楽しさの一部となった。型破りではないが周囲の常識を多少覆しており、その微妙な変化がまるで僕の好みに合わせて調整されているように感じてしまう。

　2019年のプロトタイプを振り返ってみると、がヴァシュロンがよりスポーティなオーヴァーシーズを作ることに失敗したり、ブランドのコアからかけ離れたものを作ってしまう可能性も高かったはずだ。しかし、ヴァシュロン・コンスタンタンらしい「手を抜かない」アプローチと細部の処理によって成功し、この時計は話題を呼んだ。彼らは、ヴァシュロン・コンスタンタンらしさを反映しながら、身につけやすく、親しみやすく、楽しく、個性的な真の高級時計を作ったのだ。

　今回の2021年限定モデルでは、そのフォーマットを踏襲し、微妙な調整を加えた点が非常に賢明だったと思う。新色、特にブルーグレーの文字盤は、限定品とプロトタイプを区別するのにとても良い役割を果たしているが、特別感は失われていない。

　僕は以前から、ドレッシーで高級な時計で知られるブランドのスポーティな作品が大好きだ。ヴァシュロン・コンスタンタンはその好例で、この軽量のオーヴァーシーズ・エベレスト限定版は、同じ時計のスティールバージョンよりもややドレッシーさに欠けるかもしれないが、ブランドの特徴であるエレガンス、細部へのこだわり、スタイル、そして時計製造の洞察力を少しも失っていない。

　最終的に僕が言いたいのは、この時計は、意外性（ヴァシュロン・コンスタンタンの非常にスポーティなデザインとチタン製であること）とこのメゾンに求められる完成度を兼ね備えているという点で、大きな成功を収めているということなのだ。

　デュアルタイムの価格は、同シリーズのSS製モデル（ちなみにブレスレット付き）よりも約4000ドルほど高く、クロノグラフはSS製のオーヴァーシーズ クロノグラフよりも4600ドルほど高くなっているが、限定モデルとしては妥当のように思える。これは大金か？　その通り。それでもデイトナの実勢価格より安いし、僕は自分がどちらが欲しいかわかっている。

　僕のような時計の好みを持つ人には、オーヴァーシーズ・デュアルタイム・エベレストは夢のような時計に仕上がっていると思う。この冒険的な限定版の両モデルを、特別な実機で見る機会がいつか来ることを待ち望んでいる。

ブランド : ヴァシュロン・コンスタンタン（Vacheron Constantin）
モデル名: オーヴァーシーズ・クロノグラフ・エベレスト（Overseas Chronograph "Everest" ）、 オーヴァーシーズ・デュアルタイム・エベレスト（Overseas Dual Time Everest）
型番 : 5510V/000T-B923 (クロノグラフ)、7910V/000T-B922 (デュアルタイム)

オーヴァーシーズ・クロノグラフ・エベレスト

直径: 42.5mm
厚さ: 13.7mm
ケース素材: チタン、スティール
文字盤色: マットなグレーブルー
インデックス: アプライド
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 150m
ストラップ/ブレスレット :  グレーのコーデュラファブリックストラップとラバーストラップ (どちらも付随)

オーヴァーシーズ・デュアルタイム・エベレスト

直径 : 41mm
厚さ : 12.8mm
ケース素材: チタン、スティール
文字盤色 : マットなグレーブルー
インデックス : アプライド
夜光 : スーパールミノバ
防水性能 : 150m
ストラップ/ブレスレット : グレーのコーデュラファブリックストラップとラバーストラップ (どちらも付随)

オーヴァーシーズ・クロノグラフ・エベレスト

キャリバー :  5200/2
機能 : 時、分、スモールセコンド、日付表示、12時間積算計付きクロノグラフ
直径: 30.6mm
厚さ: 6.6mm
パワーリザーブ: 52時間
巻き上げ方式 : 自動巻き
振動数: 2万8800振動／時
石数: 54
追加情報: コラムホィール、ピンクゴールド製オーヴァーシーズ・ローター搭載、ジュネーブ・シール取得

オーヴァーシーズ・デュアルタイム・エベレスト

キャリバー :  5110 DT/2
機能 : 時、分、秒、セカンドタイムゾーン、 デイ＆ナイト表示、 日付表示
直径 : 30.6mm
厚さ : 6mm
パワーリザーブ: 60時間
巻き上げ方式 : 自動巻き
振動数 : 2万8800振動／時
石数 : 37
追加情報 : ピンクゴールド製オーヴァーシーズ・ローター搭載、ジュネーブ・シール取得

価格 : クロノグラフ 437万8000円（税込）、デュアルタイム 371万8000円（税込）
発売 : ヴァシュロン・コンスタンタンの直営ブティックにて販売中
限定 : 各150本