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Business News なぜLVMHがティファニーを買収したのか? そして時計コレクターにとってそれが意味する事とは

約162億ドル(約1兆7600億円)の買収額は、LVMHのウォッチ&ジュエリー部門の2倍にする。

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高級ブランド世界最大手のLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)が、 ティファニー(Tiffany & Co.)を約162億ドル(約1兆7600億円)で買収することに合意したとパリで発表した。

ラグジュアリー業界の買収額としては過去最高額となる。これは、LVMHの持つ5つの部門のうち最も新しく、かつ小さなウォッチ&ジュエリー部門の収益を2倍にするものである(その他の部門は、ファッション&レザーグッズ、ワイン & スピリッツ、パフューム&コスメティックス、そしてセレクティブ・リテーリングだ)。ウォッチ&ジュエリー部門の売上高は、41億2000万ユーロ(45億3000万ドル: 約4945億円)で、昨年のグローバルの売上高468億ユーロ(514.8億ドル: 約5.8兆円)の9%を占めた。

両社は、どちらもスイス高級時計を製造しているが、- LVMHは、タグ・ホイヤー、ブルガリ、ウブロ、そしてゼニスを所有する - これが宝飾に関する取引であることは明らかである。ティファニーの昨年の連結売上収益の44億4200万ドル(約4839億8000万円)のうち92%がジュエリーによる収益であった。

75のブランドと4590の店舗を持つLVMHは、いわゆるソフトラグジュアリー製品の世界的リーダーだ。ティファニーの買収は、創業者であるベルナール・アルノー取締役会長兼CEOによるLVMHの業界での存在感を強固にする大胆な入札だといえるだろう。

ベルナール・アルノー、取締役会長兼CEO(写真提供: LVMH)。

ブランドジュエリーは、ファインジュエリー市場でも最も急速に成長しているセグメントだ。ティファニーは紛れもなくそれを持っており、1837年にニューヨークで設立された同社は、世界で最も有名な高級ブランドのひとつであることも確かだ。LVMHは、この買収を発表する声明の中で、「アメリカ発の高級ブランド」であると示した。ティファニーは、大きく三つのカテゴリでジュエリーを製造している。それぞれ、ジュエリーコレクション(2018年の売上高23億ドル: 約2500億円)、エンゲージメントジュエリー(11億6000万ドル: 約1263億7000万円)、そしてデザイナージュエリー(5億4450万ドル: 593億2300万円)だ。そして同社は巨大な宝飾小売業者でもあり、世界中に321の店舗を持つ。

腕時計は、ティファニーのビジネスのごく一部だ。今後LVMH傘下でそれがどのように変化していくのか我々は見届けたい。ティファニーは、スイスのティチーノにある施設で、主に女性向けのクォーツウォッチを製造している。時計の販売に関する詳細は情報は開示されておらず、その代わりに、フレグランス、家庭用品、アクセサリー製品らと共に、財務諸表では「その他」というカテゴリに含められている。同カテゴリの昨年の売上高は、3億6610万ドル(約3988億7000万円)だった。

アナリストによれば、この動きは、LVMHによる2011年のイタリア高級宝飾ブランドであるブルガリの52億ドルでの買収を補完するものであると述べている。ブルガリは、ブライダルダイヤモンドジュエリーのカテゴリで強いティファニーよりもハイジュエリーに強いブランドとして位置づけられている。また、LVMHと同じジュエリー産業での競合で、カルティエ、ヴァンクリーフ&アーペル、そして新たに買収したブチェラッティを保有する世界で2番目に巨大なラグジュアリーグループであるリシュモンとの競争を熾烈なものにすると予見している。

アナリストはその他にもまた、LVMHとティファニーの強固な戦略的適合性を挙げている。文化的アイコンであるティファニーがあることで、米国市場での新たな足場を同グループに与えるということだ。ティファニーの売り上げのほぼ半分(44%)は、米国地域からのものであるからだ。

ティファニーは、ブランドが広く知られている中国でも強い。中国本土には、35店舗、香港に10店舗を持つ。

アジア太平洋地域は、ティファニーが2番目に強い地域であり、昨年の売上高は、12億4000万ドルにものぼる。

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LVMHのティファニー買収が時計コレクターに意味するもの
By Benjamin Clymer

疑問: ティファニーは、パテックのリテーラーとしてあり続けるのだろうか?

この買収の噂が表面化して以来、これが時計にとって何を意味するのかが時計コミュニティの中で話されている。もっと直接的に言うならば、ティファニーと時計業界の第一人者であるパテック フィリップとの関係が変わるのだろうかということである。ティファニーは、アンリ・スターン・ウォッチ・エージェンシー社を含めアメリカにおけるパテック フィリップの最古の小売業者だ。ティファニーは、パテックの文字盤にブランド名を刻印する権利をほぼ独占的に保持しており、多くの人々が特別な魅力を感じるものだ。"ティファニーのダブルネーム"のパテックは、近年同じ小売価格で販売されているのにもかかわらず、現代の時計蒐集において特別な地位を確立しているといえる。

知っていましたか?

近年、パテック フィリップの方針により、"Tiffany & Co."のダブルネームは、グランドコンプリケーションではない時計の文字盤にしか印字されていない。つまり、シンプルなクロノグラフやパーペチュアルカレンダー以上の時計にはティファニーのダブルネームは存在しないのである。もちろんいくつかの例外はあるが、めったに見られるものではない。

ティファニーのダブルネームの文字盤の急激な需要の高まりは、パテック フィリップにとって問題を引き起こしているということは知っておく必要がある。ティファニー以外の小売業者は、彼らの上顧客の多くがその付加価値のために、ティファニーからのみ購入を希望しているという事実に不満を持っているのだ。これは、マーケットで重要な多くの優れた小売業者たちから顧客を奪っていることにつながっている。彼らの同じ時計がティファニーの刻印の有無によって中古市場での価値に差が生まれているからだ。

また、多くの時計小売業者の契約では、「所有権の変更」の条項が定められているのが一般的だ。これは、小売業者の過半数の所有権が変更された場合、ブランド側は販売契約を取り消す権利を有しているということを意味する。

これによって、パテック フィリップは、ある小売業者とその他すべての小売業者との間で生じた格差からは、抜け出すことができる。この格差は、世界的な時計の嗜好が均質化し続けるにつれ、悪化し続けていく可能性がある。

そうはいっても、パテック フィリップは、今後数年間のうちに身売りするという噂もある。同社を相当の価格で買収する手段を持っている唯一のラグジュアリーグループのひとつは、LVMHである。そのため、おそらくスターンは、将来のマージ先としてティファニーによる時計の販売を許可し続けるだろうが、それも時が経てば分かるだろう。

最後になるが、パテック フィリップとティファニーの先々の関係にかかわらず、LVMHがティファニーの持つプラットフォームを使用して自社の時計ブランドの需要をいかに創出できるのかという部分は興味深い。ティファニーとダブルネームのタグ・ホイヤー、ゼニスやウブロが間もなく登場するのだろうか? 今回の件は確かに時計コミュニティ内で多くの話題を生み出し、おそらく3つのブランドの収集価値をより高みに上げることになるのかもしれない。