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Weekend Report なぜ直視しないほうが夜光が明るく見えるのか

時計のダイヤルと目の構造、特に網膜と関係を読み解く。

※本記事は2015年10月に執筆された本国版の翻訳です。

暗いところで腕時計のダイヤルを明るく見たい? それなら、ちょっと視線をずらすのがよい。

 以前、クロノスタシスという、脳がある出来事の持続時間を過大評価する現象についてご紹介した。時計や腕時計の針が一瞬止まったように見える、いわゆる「時計が止まって見える」錯視は、この神経学に基づくものだ。この記事のコメント欄で読者の方から、「時計のダイヤルを直接見ていないのに明るく見えるのはなぜか?」という質問が寄せられたが、これについても非常に簡単な答えがある。実は時計が止まって見える錯視の説明よりもずっと簡単で、目の構造、特に網膜と関係があるのだ。

 眼球は基本的にカメラのようなもので、前面にレンズがあり、これが光を集めて、見ているものの像を目の奥に映し出す。目の奥には光に敏感な細胞のシートで、光が当たると神経信号を発生させる網膜がある。この神経信号は、視神経を経由して脳の視覚野に送られ、そこで認識される(その途中、視神経は視交叉と呼ばれる部分で交差している。その真上には、睡眠を司る上顎核と呼ばれる神経細胞の小さな集まりがあり、視神経を監視している。夜間に人工照明を当てすぎると不眠になるのはこのためだ)。

 網膜には、杆体(かんたい)と錐体(すいたい)という2種類の細胞が存在する。錐体細胞は網膜の中心部に多く存在し、鋭い色彩感覚を司る。杆体細胞は網膜の中心部に分布し、グレースケール、低照度の視覚を司る(夜間に世界の色が薄く見えるのはこのためだ)。何かを直接見るとき、主に中央の網膜、つまり主に錐体細胞を使うことになるが、これは視野のほんの一部に過ぎない。

 一方、少し離れて見る場合は、光に敏感な杆体(かんたい)細胞を多く使っているので、光源が少なくても明るく見える。これは天文学者にもよく知られていることで、暗い星を見やすくするには、少し視線をそらすといいということがわかっている。人類の歴史上、最悪の捕食者は夜間の待ち伏せストーカーであったため、光量の少ないときに周辺視野に潜む何かを認識することができるかどうかは、生存に関わる問題だった。

 これで仕組みは理解いただけたことだろう。

ボーナスラウンド:自分の死角を確認する方法を紹介しよう。視神経が眼球から離れる場所には網膜細胞は存在しないが、脳がその隙間を補正しているため、普段は見えない。それを、見られるようにする方法を紹介しよう。まず、左目を閉じる。そして、両手人差し指を右目から30cmほど離れたところで合わせる。左指は動かさず、右指をゆっくりと右へ動かし始めよう。左指から15センチほど離れたところで右指の先端が消えるのがわかると思うが、それはそこ(右指の先端)から発する光が死角に当たるためである。この実験のコツは、左指に集中し続けないとうまくいかない。人間は、視野のなかで動くものには目を向けるという生得的な反射神経を持っているためだ。では、グッドラック! ところで、先日ご紹介したモンブランの時計は、暗闇で光るクールなトリックが施されているので、ぜひご覧いただきたい。