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今日において、一部のレクタンギュラーウォッチが注目を浴びているようだ。特にカルティエのタンクやジャガー・ルクルトのレベルソなどがその中心であることは間違いない。だが、世界大戦下の兵士たちの働きによって近代においてラウンド型がその牙城を築く前は、長方形の腕時計が世界中で人気を得ていたのだ。
古参のディーラーに聞けば、80年代にはパテック フィリップにハミルトン、ロンジンなどのレクタンギュラーウォッチがコレクターのあいだで流行していた話をしてくれると思う。熱狂的な愛好家は、毎日のように異なる形状の時計を買い漁っていた。アール・デコ調でエレガントな時計は、グラマラスで古きよきハリウッドをほうふつとさせる魅力を醸し出していた。しかしまもなくして、ロレックスのバブルバックやスポーツロレックス、そしてラウンドケースの台頭が始まったのだ。
ロンジンは1910年代にレクタンギュラーウォッチを作り始めた。1920年代までには、ケースやダイヤルのデザインは数種類にも及んでいた。私のお気に入りはロンジンの“Zulu Time”で、第2時間帯を示す時針を備えた小型のレクタンギュラーウォッチだ。ロンジンは、この時計が現代的な(そして丸い)ロンジン スピリット Zulu Timeのインスピレーション源になっていると語っている。
1997年以来、ドルチェヴィータはロンジンのレクタンギュラーウォッチを代表するコレクションとなっている。ロンジンはドルチェヴィータコレクションにおいてこれまでにさまざまな時計を発表してきた。そして多くの場合、セクターダイヤルやローマンインデックス、または華美な装飾が施された針など、アール・デコ調のデザインを取り入れてきた。
今年、ロンジンは新たなコレクションとなるミニ ドルチェヴィータを発表した。従来のコレクションと比べると、わずかに異なるシェイプをしている。単に小ぶりなだけでなく、既存のドルチェヴィータのようなアール・デコ調の段差をなくすことでよりスムースな曲線を描いているのだ。ステンレススティール製ケースのサイズは横21.5mm × 縦29mm(厚さ6.75mm)となっており、ムーブメントにはクォーツを採用している。また、ロンジンは新しいドルチェヴィータで11のバリエーション(ダイヤモンドをあしらったものとそうでないものがある)を用意した。そのなかでもとりわけ素晴らしいのが、コントラストを効かせたシルバーダイヤルにペイントで施されたローマンインデックス、そしてくぼんだスモールセコンドを特徴とする1本だ。
今回のリリースにおける最大の見どころは、バタフライクラスプを備えた新しい5リンクのブリックスタイルブレスレットだろう。価格に対してしっかりと作られた快適なブレスレットであるだけでなく、レクタンギュラーウォッチの起源を語るにふさわしい、ちょっとしたアール・デコ調のタッチも宿している。
今回のドルチェヴィータのアップデートは、その独自性の一部を取り去り、よりタンクらしく見せるものだ。ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawerence)がミニ ドルチェヴィータのキャンペーンを担当していることから、女性向けの時計であると受け取れる。またブレスレットを追加することで、同様の時計との競争力を高めてもいる。
ドルチェヴィータは、ここ数年でよく見られるレクタンギュラーウォッチの最新作にほかならない。この4面構造の人気は、世界でもっとも売れている時計であるアップルウォッチのおかげもあるだろう。しかしカルティエのデザインが人気を博したことで、各ブランドは曲線的なデザインにこだわらなくなったようだ。今年のWatches & Wondersにおいてジャガー・ルクルトはレベルソに焦点を当て、新しいスモールセコンド、トリビュート・クロノグラフ、そしてレベルソ・トゥールビヨンを発表した。小規模なブランドならImpossible Watch Co.による大胆なステップの“アール・デコ”と、英国ブランドフィアーズ(Fears)の“アーカイバル 1930”が私のお気に入りだ。
これらの時計はすべて1920年代と1930年代にかけてのアール・デコにインスピレーションを得ている。新しいミニ ドルチェヴィータでこれらのデザインのエッジをなめらかにするという商業的なアピールは理解できるが、ラウンド型でない時計の人気が続くことにより、ブランドがより大胆なシェイプへの挑戦を続けることを期待したい。これらのブランドのアーカイブには、ラグに段差が設けられた彫刻のようなケースが数多く存在しており、現在私たちが目にするシンプルなプレス加工のケースよりも構築的である。
一方、アール・デコ調のヴィンテージ ロンジンが欲しいなら、同ブランドはその選択肢も用意している。ブランドのコレクターズコーナーを覗いてみると、スクエアやレクタンギュラーフォルムの時計が驚くほど豊富に展示されている。ヴァシュロン、JLC、そしてそのほかのブランドもまたヴィンテージウォッチの調達、修復、販売に近年力を入れており、こうしたブランドがその歴史を受け入れているのを見るのは喜ばしいことだ。ミニ ドルチェヴィータは筋金入りの愛好家にとって、特別に刺激的なモデルではないかもしれない。だがロンジンは、この時計を同社の歴史的なレクタンギュラーデザインの文脈に組み込むことに成功したのだ。
ロンジン ミニ ドルチェヴィータ。横21.5 × 縦29mm(厚さ6.75mm)のSS製ケース、または38個のIF-VVSトップ・ウェッセルトン・ダイヤモンド(合計0.456カラット)をセットしたケース。クォーツ式のCal.L178を搭載。サファイアクリスタルの風防に、3気圧防水。2種類のシルバーダイヤルに、ミント・グリーン、アイボリー・ホワイト、セレーネ・ブルー、ブロッサム・ピンクで展開。24万5300円(税込)〜。
HODINKEE Shopは、ロンジンの正規販売店です。新作ロンジン ミニ ドルチェヴィータの詳細については、Longines.comをご覧ください。
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