trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Bring a Loupe 30年代のロレックス、フィリップ・デュフォー シンプリシティ、そして「シコルスキー」チューダー プリンス 

世界中のウェブサイトから、見事なヴィンテージウォッチにスポットライトを当てる。

ADVERTISEMENT

オークションシーズンの到来はつまり、現存する最もエキサイティングな時計のいくつかがぞろぞろ出てくるということを意味する。2019年の出物は特に壮大で、歴史的に意味があり重要なものが数多くあるが、既に取り上げられているものに焦点を当てるのではなく、見落とされている可能性のあるピースを見てみようと思う。このテーマを念頭に置いて厳選したのは、アビエーション由来のチューダー プリンス、エッジの効いたシャープなモバード クロノグラフ、ロレックスのレアなRef. 2508などの、繊細ながら見事な時計たちだ。シャープな時計を好む向きには、元のオーナーの子孫から受け継がれているデニソンケースのオメガと、フィリップ・デュフォーのシンプリシティもお楽しみいただけるだろう。


1950 モバード 95M

 よき友人である著名なディーラーがかつて私に言ったように、これらの時計が若返ることはない。これを念頭に置いて、予算が許す限り最高の品を購入することが重要だ。実際、コンディションがすべてなのだ。 おもしろい経年変化にも価値があるかもしれないが、多くの場合、クリーンな時計にはより流動性があり、さらに工場出荷時とほぼ同じ形のものが見られるというのはシンプルに特別なことだ。もしもそんな時計があるというなら心から見てみたい。

 これは私のお気に入りのクロノグラフの1つで、また史上最高級なキャリバーの1つを搭載している。モバードのCal.95Mのユニークな形のブリッジはひと目で分かるもので、おそらく時計そのものよりも搭載ムーブメントがそのステータスを享受する。それとは対照的に、時間と分は波型の針で美しく表示され、ちょっとした斬新さを与えている。

 このピースの文字盤はキレイなだけでなく、そのケースも非常にエッジが立っている。ディーラーがこのような用語を使って時計を説明するのを耳にするのは、おそらく確かな保証がないときだろうが、この個体はそうではない。時計を触らなくても、照明でそれぞれに異なったファセット仕上げを強調すると、ケースのアーキテクチャが変わっていないことは明らかである。

 フィリップスは、ジュネーブ時計オークションXでこのモバードを推定価格4000〜8000スイスフラン(約45〜90万円)としている。フィリップスでのモバード クロノグラフの長年にわたる人気ぶりをみると、かなりの金額に達するに違いない。この時計及び落札の結果はこちらご覧ください。


1960 チューダー プリンス Ref. 7509 「シコルスキー」

 今、腕元の時計に目をやって、このヴィンテージウォッチを誰が身に着けていたのか、またそのオーナーのもとでどんな時間を過ごしたのかをロマンチックに想像するのも良いが、その時計の来歴を確実に知ることは、はるかに興味深いのではないだろうか。誰がそれを着けていたかに関係なく、ストーリーをすべて知ることは、私にとっては常に価値がある。だから私はこのピースに出会えてとても嬉しかった。SSケースの裏蓋にその名前が刻まれている元のオーナーを調べてゆくと、思いがけない場所にたどり着いたのだ。

 これはチューダーのプリンスだが、通常のものではない。文字盤の6時位置にあるマーカーのすぐ上に、シコルスキー・エアクラフトのロゴが黒い太字でプリントされている。イゴール・シコルスキー(IGOR SIKORSKY)というウクライナ移民によって米国に1923年に設立された同社はアメリカ航空史における先駆者であり、軍用・民間用両方のヘリコプターを製造した最初の企業でもあった。カタログには50を超える歴史的なデザインがあり、シコルスキー・エアクラフトはロッキード・マーティン社の傘下で現在でも高く評価されている。 

 元のオーナーの名前はケースの裏側に「SIKORSKY AIRCRAFT-FRED J. BOLDUSOFF-25 YEARS-4-28-56」と刻まれている。ここからが面白くなってくるところで、また不思議なことに可笑しくもある。シコルスキーでエンジニアとして25年を過ごした他にもボルドソフ(BOLDUSOFF)はちょっとした発明家でもあり、独特の視点を持っていた。ドラッグストアで購入できる小さなデンタルフロスピックはご存知だと思う。それらはほとんどがこのボルドソフが作ったデンタルフロスホルダーのデザインが進化したもので、1939年6月にコネチカットで特許を取得している。航空機エンジニアでありデンタルフロス分野の発明者が所有した時計について記事を書くとは夢にも思っていなかったが、そういうことである。

 アンティコルムは、ジュネーブで行われたオークションで、この時計の予想落札価格を1000〜2000スイスフラン(約11〜22万円)とした。 詳細は、カタログの残りの部分(かなり大規模なもの)と共にこちらからご覧ください。

ADVERTISEMENT

1955 オメガ Ref. 13322

 次のおすすめは、私たちのテーマから少し離れる。つまり次のジュネーブのオークションでは提供されないということだが、しかしながらこれはオークションウォッチである。このeBayのピースは、34 mmのオメガで、前述のチューダーと同様に、その過去がしっかり確認されている。オメガのコレクターやすべての作品を集めるコンプリート主義者なら、必ずシビれるひと品だ。

 私がこの発見をあなたと共有したいと思ったのには多くの理由がある。まず、この時計は元のオーナーの孫から出品されたものなのだ。オーナーはW.J. エンプソンという名の男性だった。彼は英国の村ガムリンゲイ出身で、第一次世界大戦と第二次世界大戦中に王立海軍航空サービスの下士官としてメカニックに従事した。私はまた売り手から、彼の祖父が鳩の有名なブリーダーで、現在も英国の鳩愛好家の間でよく知られている人物であると聞いた。彼は兵役の後、亡くなる1年前にこの時計を購入し、その後は誰も身に着けていなかったという。そのため時計は新品同様で、まさに完璧な文字盤と、厚い英国製のデニソンケースを備えている。さらに、私が遭遇した他のものとは異なり、この時計はとてつもなく完全なのだ。裏蓋を外して説明したい。 

 前述の文字盤だけでなく、針、時計がマウントされているストラップ、ストラップの端に取り付けられているブランドのバックルもオリジナルだ。さらに、この時計が入っている折り畳み式の革製の箱もオリジナルで、保護用の外箱には元のオーナーの名前が書かれている。こうした付属品があることは、極めて稀であり、しかもきちんとしたパッケージが揃っているというのは本当に特別なのだ。これは、出どころが確認された時計のもう一つのケースであり、過小評価されるべきではない。

 この時計はeBayのオークションにリストされており、 最高入札額は1475ポンド(21万円)。 その他の写真はこちらをクリックしてください。


1937 ロレックス Ref. 2508

 オークションにおける重要視ポイントが希少性だとするなら、本機をお勧めする。余裕のある人々は皆、過去数年にわたってデイトナを身に着けてきたが、それには正当な理由がある。デイトナは傑出したデザインに見合った壮大な歴史を持っているが、その前身はまさに魔法のような魅力を持つ。プレ・デイトナの価値が上がり始めるにつれて、この概念はだんだんと知られるようになったが、ロレックスがクロノグラフ製造の経験を積んできたリファレンスと比較すると、まだ「一般的な」時計である。 

 Ref. 2508の生産は2つの世代に分類することができる。多くの人は世代をケースサイズによって分類するのが一番と考えているがこれは間違いだ。初期のものはケース径37mmで、後期のものは35mmだと思っている。第2世代が、大きなケースでなかったのは事実だが、第1世代でも小さなケースのものがあるのだ。この点を考慮して、特定の時計の年代を判断しようとするときは、クロノグラフのプッシュボタンに注意を向けるのが最も簡単だ。第1世代では楕円形のプッシュボタンが取り付けられ、後に見られる正方形のプッシュボタンとは明確な違いがある。

 件の時計にこのルールを当てはめると、第1世代の小さなケースとして識別できる。近年オークションで提供されている他の多くの例と区別されるのは、ブラックのラッカーダイヤルだ。近年、これらの時計はほとんど登場しておらず、特にこのような見栄えの良い状態のものはさらに少なくなっている。象徴的なデザインとポップカルチャー的な意味について言及する価値はあるが、このような時計は同価格帯のデイトナと互角の勝負だ。

 サザビーズは、ジュネーブのオークションでこの珍しいロレックス クロノグラフを提供した。その推定価格は10万〜20万スイスフラン(約1117万〜2234万円) とされているが、最終価格は予測不能だ。詳細は、こちらをご覧ください。


2004 フィリップ・デュフォー シンプリシティ

 本コラムは、通常ヴィンテージウォッチのためのものだが、時折それから外れることがある。今週最後の時計は、現代の時計ではあるが、最も著名なヴィンテージピースと同じ手法で作られており、手作りにかなりのこだわりを持っている。そう、シンプリシティだ。この有名なフィリップ・デュフォーのプロダクトは、最近の時計史の中でも、最高級の3針時計であると多くの人に評価されている。 

 私は、みんなが知る前から知っていただとか、実はウェイティングリストに載っていたなんてふりはしない。フィリップ・デュフォーの才能については、HODINKEEという名の小さなサイトを経由して知って以来、私は魅了されてきた。 まだご存知なければ、デュフォーは真の職人であり、時計の部品をすべて自身の手作業で製造している。それは時計作りの非凡な表現を生み、ムーブメントのデザインと仕上げ技術の両方にデュフォーの熟練を反映するものだ。

 シンプリシティを購入する機会を多くの人が長いこと待っているため、通常は市場に出回るのを見ることはない。もし出るとすれば、それは通常、大々的に公表されたオークションでのみで、個人販売の市場に現れるのを見るのはちょっとした楽しみがある。注目に値するのは、別のシンプリシティがもう1本、フィリップスでオークションにかけられるということで、推定価格は15万〜30万スイスフラン(約1675~3350万円)となっている。個人的には、この時計はラッカーダイヤルの方が好みだ。

 Keystone of Beverly Hillsには、このとてつもない人気作品が 25万ドル(約2750万円)でリストされている。 完全なリストはこちらでご覧ください。