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Letters To The Editor 古い時計修理という難問に対する学者の考え

最近我々は、ロンドンで時計の修理を試みたときの苦労について読者からメールを受け取り、この深刻な問題にフォーカスするためそれをここに発表することにした。

※本記事は2015年3月に執筆された本国版の翻訳です。

 今日の機械式時計業界が直面する最も大きな問題のひとつは単純なものだ。どうやって次世代までこれらの数百万もの時計を機能させ続けるか。スイスは時計を作る人材の雇用に何百万も投資しているが、修理のためのスタッフとその資源にはほとんど投資していないようだ。スイスの複合企業が独立した時計メーカーに部品をますます提供しなくなっている中、単純な故障を安価に修理することがかつてないほど難しくなっている。あまりに火急の課題となっているため、我が社のベンジャミン・クライマーも先月ブルームバーグ・テレビジョンに出演した際にその話題に触れたほどだ。最近我々は、ロンドンで時計の修理を試みたときの苦労について読者からメールを受け取り、この深刻な問題にフォーカスするため、今回発表することにした。

 著者は1995年にCitysearch社を創立し、マッキンゼー・アンド・カンパニーの元共同経営者、ハーバード大学MBA取得者でローズ奨学生でもある起業家のチャールズ・コン氏である。現在チャールズ・コン氏はロードス・トラストのCEOとロードスハウスの学長を務めている。彼は偶然ながらHODINKEEの読者であり時計愛好家でもあるのだ。

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 多くのみなさんと同様に、私は大きな問題を抱えている。手首に装着される複雑な仕組みを備えた機械式の機器、過去の優雅な時間を思い起こさせると同時に、宇宙時代のテクノロジーで驚かすそれに、私は深い魅力を感じている。40年代から60年代のクラシックな時計の大きさと優美さが特に好みだが、全ての年代のものを収集している。コレクションを増やしていく中で予期していなかったのは、これらの驚くべき機械に適切なサービスと修理工を見つけるという、より大きな問題が待ち受けていたことだ。

 最近私が、1960年代のブライトリング クロノマットをロンドンで修理してもらおうとしたときの経験をここに書いて、読者のみなさんの反応を伺いたいと思う。最近調子が悪く、時間が合っているときもあれば合わない日も出てきていた。そして小さなカタカタ音も聞こえる。点検と修理が必要だったため、大きな期待と共に私はロンドンに行った。オールド・ボンド・ストリートには、世界でも最も多くの著名な時計ブランド・ショップが密集している。
 だが私は失望することになった。新規オープンした広大なブライトリングのフラッグシップ・ストアには店員がたくさんいたが、修理の必要な時計を携えた客にはどの店員もあまり興味をもたなかった。ようやく捕まえた女性店員が言うには、私の時計を査定してサービスを提供するのに1年かかり、唯一提供できるサービスはオーバーホール(450ポンド)だけだそうだ。

 下の階に行くと1人だけ時計技術者がいた。彼の言うことは少しマシだった。査定に6週間、返却までに最大6ヵ月だという。彼はケースバックを開けてみて、何か明らかな問題がないか確かめることには全く興味がないようだった。時間のことを指摘すると彼は、時計業界は修理工をあまり育てておらず、イギリスでは専門の学校から毎年10名弱ほどしか卒業生はいないだろうと話した。彼によると、時計を修理してもらえるだけでも良い方だという。一部の主要メーカーは、古い時計の修理を完全に停止しているそうだ。

 ジャガーやフォードに、あなたの持っている古い自動車にはサービスを提供しないと言われたらどうだろうか。あるいはオイル交換をしたいだけなのに、提供できる唯一のサービスは完全なエンジンのレストアだけと言われたら? 車業界のように、独立した修理工場という他の選択肢があればこれはそれほど困った問題ではないかもしれない。他の街にはあるのかもしれないが、ロンドンではその件に関してもがっかりさせられた。ほとんどが簡単な仕事(クォーツ時計の電池交換かベルトの交換)しか引き受けない。もう少し複雑な修理を引き受ける最初のショップは、主要な時計会社は公式の部品を売ってくれないので古い時計を修理するのは難しいと話した。2つめのショップは、「部品の交換対応はしていない」し個別の修理は行っていないが、完全なオーバーホール(そう、ここでもやっぱり450ポンド)ならできるという。

 これはブライトリングに特有の経験ではなかった。同じ日に私は1983年製のロレックス サブマリーナーのOリングの防水性を、ボンド・ストリートのロレックス・ショップで確認してもらおうとした。結果はご推察の通り。フルサービスをお願いしない限り開けて見てもくれない(期間は6週間、そしてもう驚かないがやはり450ポンドである)。つい3年前に、メンテナンス済みであることを示すカードを持っていたにも関わらずである。昨年私は、やっと動くようになるまで1990年代のIWC スピットファイアを3度も(650ドル)送り返した。合わせて9ヵ月ほどその時計なしで過ごしたことなる。毎回なんらかの表面的な部品(欠陥のないガラスも含めて)を交換させられたが、自動巻きのメカニズムはなかなか直せないようだった。

 さて、一部の方々の癪に触るかもしれないものの、前向きな話でこのメールを終えたいと思う。友人と共に、彼の割と新しいワールドタイムを見てもらうために、ボンド・ストリートの巨大なパテック フィリップのショップに入った。彼らはそれを、地下に広がる驚嘆すべきガラス張りの時計ラボにてその場で行っただけでなく、(Oリングについての懸念を話したら)担当者はロレックスを私の手首から取り上げて、その場で洒落た空気圧装置に入れて圧力テストも行なってくれた。残念ながらテストには合格しなかったため、私は未だにロンドンでロレックスのOリングを交換してくれるところを探している。

 これは私たち全てが懸念すべき問題であり、主要な時計メーカーもきちんと対応すべき問題だと考える。このいくつかの会社は現在文字通り、毎年何百万もの機械式時計を(2014年は約2850万本)売っている。6000ドル以上のスイス時計だけでも61万5000個以上に上る。これらの新しい時計はヴィンテージよりも良い素材を使い油もよく差してあるが、それでも調整は必要だ。主要ブランドは調整設備にもっと投資するか、あるいは訓練を受けた資格を持つ独立した技術者と協力する必要がある。そうでなければ、これらの時計を所有することのコストと手間からくる苛立たしさのせいで、我々はこの趣味を完全に諦めることになるだろう。

敬具

チャールズ・コン・ウォーデン、ロードス・トラスト・オックスフォード、英国

HODINKEEでは、電子メールアドレス(contact@hodinkee.com)で編集者への手紙を受け付けています。長さに制限はありませんが、時計収集家のコミュニティに関連する問題を反映したものであることをお願いします。