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January 28, 2021
January 28, 2021
Auction Report 注文販売されたF.P.ジュルヌ クロノメーター・レゾナンスとトゥールビヨン・スヴランがフィリップスのジュネーブウォッチオークションに登場!

Auction Report 注文販売されたF.P.ジュルヌ クロノメーター・レゾナンスとトゥールビヨン・スヴランがフィリップスのジュネーブウォッチオークションに登場!

時計学的にも歴史的にも貴重な2本が、ひとつのコレクションから解き放たれた。

フランソワ・ポール・ジュルヌ(F.P.ジュルヌ)の時計づくりは、長年にわたり常に興味深く高い完成度を保ってきた点で、時計業界における独特な地位を獲得してきたと私は思う。また、そう捉えて当然だろう。しかしながら、ジュルヌの時計づくりは基本的には伝統に則ってはいたものの、常にそうあったわけではなく、だからこそF.P.ジュルヌ自身の他にはない独自の方法を頑固に追求した結果、クロノメーター・レゾナンスやトゥールビヨン・スヴランのような傑作を世に送り出したことは特筆に値すべきことだ。他のブランドのための請負業を辞め、自身のブランド設立に打って出たことが“豚に真珠を与えるのに嫌気が差した”からだと語った男の面目躍如である。

 フィリップスは、ジュネーブウォッチオークションの告知をこのほど発表:第11回を数えるオークションに、歴史の一部であることにとどまらない、歴史そのものを体現する(映画のある悪役の台詞にヒントを得た)2本の時計を紹介するそうだ。問題の2本の時計は、現代の時計づくりで最も革新的なモデルの最初期の個体だ:クロノメーター・レゾナンスとトゥールビヨン・スヴランである。どちらも初期ジュルヌのパトロンで、パリの有名なジュエリーデザイナーであるロレンツ・バウマー氏所蔵の品である。いずれの時計も販売されるのは異例のことである(ジュルヌの受注販売されたトゥールビヨンがつい最近A collected Manで売れたのも同じく異例なことだ)。

 トゥールビヨン・スヴランはその構想に膨大な時間が費やされた時計である。最初のプロトタイプが完成したのが1991年で、多くの時計師であればそこで完成としただろう私は思う。1991年当時、トゥールビヨンの腕時計は常識を超越した存在であり、それにルモントワール・デガリテ(定力装置)をのせるとは前代未聞のことであった。トゥールビヨンは、時計愛好家が学ぶ基礎知識であるが、アブラアン-ルイ・ブレゲによって発明され、1801年に特許が取得された。これは、時計を垂直に立てた姿勢の、全てのビート変動を平均化することにより精度改善を目的とする機構である。
 ここでいう垂直姿勢とはリューズを上、下、右、左に傾けた4姿勢を指す-時計はそれぞれの位置でわずかに異なる速さで振動し、また水平位置の上下でもわずかに誤差が生じる。時計技術における古典的な命題とは、その誤差を最小化するよう調整することであり、トゥールビヨンは垂直姿勢時の平均ビートが、水平姿勢時と一致するよう調整可能だと理論付けられている。手仕事でトゥールビヨン機構を製作するのが至難の業とされるのは、その時方輪列にテンプだけでなく、脱進機、レバー、そしてテンプを包含したトゥールビヨン・キャリッジが搭載されるからに他ならない。

F.P.ジュルヌとトゥールビヨンの美

 F.P.ジュルヌ「トゥールビヨン」の壮大な歴史を知りたい? それならば、ベン・クライマーが執筆したリファレンスポイント:F.P.ジュルヌ「トゥールビヨン」完全版をご覧いただこう。動画のナレーションは何とフランソワ・ポール・ジュルヌ氏本人によるものである。

 ルモントワール・デガリテも豊潤な歴史を有する。基本的に、この装置はテンプに一定のエネルギーを供給することを目的とする。本質的には第二の主ゼンマイであり、時方輪列に組み込まれ(しばしば4番車に配される)、主ゼンマイによって一定間隔で巻き上げられる。これにより、主ゼンマイの動力源の低下に伴って、出力が低下することを防止するのだ。ルモントワール機構はジョン・ハリソンにより自身が製作するマリンクロノメーターに搭載するために発明され、どちらかといえばトゥールビヨンよりも稀少でエキゾチックな機構である。1991年に腕時計に対してこの機構を導入することは、ましてトゥールビヨンとの組み合わせなどマゾヒズム的狂気の沙汰であったが、まさにそれをジュルヌが実現したのだ。

 しかしながら、その時計が販売されるのは数年先のことであった。時計製作の資金を捻出するためにジュルヌが借用したのはブレゲのアイデアであった:souscription(仏語で“サブスクリプション”の意)システムによる注文販売とは、購入者は注文時に前金を支払い、納品時に残金を支払う仕組みである。こうして最初のトゥールビヨン・スヴランは20本だけが製作され、今回フィリップスに出品されるのは14本目の個体にあたる。

興味深いディテール:トゥールビヨン・スヴランは製造番号が文字盤に記載される;クロノメーター・レゾンナンスとは異なる点だ。

 最初期のクロノメーター・レゾナンスは、彼の初期のファンに支えられスヴランのデリバリー直後にリリースされ、F.Pジュルヌはトゥールビヨン・スヴランを購入した顧客向けに注文販売方式でリリースしたのだ。クロノメーター・レゾナンスは、2000年にジュルヌが製作を開始したその種の最初のモデルであった‐再びジュルヌは二人の天才時計師アンティド・ジャンヴィエとアブラアン・ブレゲからインスピレーションを得たのだった。いずれも共振現象を研究した点で共通する人物だ。

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 クロノメーター・レゾナンスは2つのテンプを持ち、共振効果が発生することによって調整が機能する―一方のテンプによるビートの変動は、もう一方のテンプによって相殺される現象を応用した機構だ。レゾナンス機構をもつ腕時計は前人未到の領域であったため(そのため、当時存在した稀少なレゾナンスは、現在ではほとんど残っていない)、クロノメーター・レゾナンスが当時の目利きの大きな関心を惹きつけたことは言うまでもない。この特別な時計(シリアル14番のトゥールビヨン・スヴラン同様)はプラチナケースに、ミドルケースとラグがゴールド製であることからフィリップスによると“おそらく一点物”とされている―確かに私が見てきた中で最も高尚な雰囲気を放つツートンの時計である。

 これほどの稀少性をもつ時計を委託することはコレクターにとって非常に稀な出来事であり、出品物について公に語ることは重要である―しばしば、彼らは表舞台を避け、時計そのものに語る責任を負わせるものだ。しかし、ロレンツ・バウマー氏はフィリップスのアーサー・トゥーショット氏と膝を突き合わせ、F.P.ジュルヌとの馴れ初めと所有に至る経緯を語っている。

 これらの時計の予想落札価額は、予想通りではあるが、クロノメーター・レゾナンスが8万~16万スイスフラン(約900万~1800万円)、トゥールビヨン・スヴランは9万~18万スイスフラン(約1010万~2020万円)と見積もられている。オークションは6月27日(土)、ジュネーブのHôtel La Réserve(ホテル・ラ・レゼルブ)で開催される。

初代の、ロジウムメッキの真鍮製ムーブメントを搭載するクロノメーター・レゾナンス;後に、F.P.ジュルヌは金無垢でムーブメントを製作することを採用した。

 初代クロノメーター・レゾナンスは2代目の登場と共に今や歴史となった。しかし、この時計は、トゥールビヨン・スヴラン同様、現代時計学の重要な瞬間に存在し、その一部となり、我々が今日独立時計師に対して抱く、非常に特別なビジョンに向かって熱心に、そしてひたむきに追求するイメージに一役買っている。
 ジュルヌの初期の仕事は、顧客を喜ばせるだけでなく、新世代の若い独立時計師たちに信念を貫く勇気と、独自の厳しい基準で時計づくりを追求する道を拓いたのは間違いない。そのような重要な時計を実際に所有する機会はほとんど恵まれず、その性質上ほとんどの時計愛好家の手には届かないだろう。しかし、購入の検討余地がある人々にとって、これらの時計は、時計製作が探検すべき素晴らしき新世界であった頃を思い出させてくれる、かけがえのない遺産なのである。

詳細はF.P.ジュルヌの公式サイトまで。画像提供はフィリップスのアーサー・トゥーショットとHODINKEEより。ジュネーブウォッチオークションⅪのカタログは5月28日よりオンラインで公開。ジュルヌの注文販売に関する詳細な記事はフィリップスのこちらから