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グレッグ・セルシュ(Greg Selch)氏に初めて会ったとき、彼はみっつの靴箱を開いて見せてくれた。ひとつにはゼニスのヴィンテージ・エル・プリメロ クロノグラフが15本ほど、もうひとつには70年代のモバード/ゼニス/モンディア連合全盛期のモバードの時計が同程度収められていた。最後の箱には、私が特に見たかったもの、つまりゼニス デファイのヴィンテージコレクションが入っていたのだ。
Talking Watchesで談笑するコールとグレッグ。
セルシュ氏は、1960年代後半から1970年代にかけてのデファイを約40種類所有していると推定する。これらは昨年5月のTalking Watchesでコールが紹介した膨大なコレクションの一部だ。その日は1本のデファイが紹介されたが、彼のInstagramアカウント(@livingstonsatnight)を見てみると、ほかにも数十本のさまざま形やサイズのデファイが彼の個人コレクションに収まっていることがわかった。私はもっと知りたくなった。
左から順に。1970年代前半のゼニスのヴィンテージ デファイ、デファイ スカイライン、デファイ リバイバル A3642。
最近、ゼニスがデファイの歴史にスポットを当て、1969年のオリジナルモデル Ref.A3642の正確なレプリカを復刻させて、進行中のリバイバルシリーズの一部として発表することを知った。そしてリバイバルが発表された1週間後、ゼニスはさらに踏み込んで、LVMHウォッチウィークで新しいフラッグシップモデルのデファイを発表することになった。デファイ スカイラインと名付けられたこのモデルは、オリジナルのデファイウォッチを踏襲した最新のデザインを採用し、3本針のシンプルなエル・プリメロ キャリバーを搭載している。
グレッグ・セルシュ氏が所有するヴィンテージのゼニス デファイ プロンガー。
セルシュ氏ほど多くのヴィンテージのゼニス デファイの実体験を持つ人はいないだろう。今週の新作について、彼がどう考えているのか知りたかった。
そこで彼に聞いてみたのだ。彼は以下のように答えてくれた。
HODINKEE: ゼニスとはどのような関係なのですか?
グレッグ・セルシュ氏: 私とゼニスの関係は、このすばらしい会社のことを聞いたことがあるのは自分だけだと思ったときから始まりました。90年代のことですが、eBayはかろうじて存在していましたが、ヨーロッパはまったく対象外でした。アメリカ人はゼニスよりもモバードのことをよく知っていたようで、モバードはアメリカ版ゼニスだとさえ思われていたのです。私はすべてのことを理解しようとしていました。同時に私はモバードのデイトロンを発見し、最終的にはエル・プリメロに行き着きました。それが私の世界を広げてくれたのです。
ゼニスに出会ったとき、本当に自分だけのものという感じがしました。つけても、誰もそれに気づかないでしょう。みんな、それが何なのか知らなかったんです。テレビ局の宣伝用に作られた安物の時計だと思われていたんです。2000年代前半になると、人々の関心も高まってきました。
デファイのヴィンテージウォッチとの出会いは?
エル・プリメロは、本当に数が少ないんです。とあるモデルは250本くらいしか作ってないんですよ。でも、ゼニスがデファイを作っているのを知って、いろんなコンディションのものを買うようになったんです。ハンマーで叩かれたものもあったしね。それが好きだったんです。
デファイのよさは、私にとって最初のデザインが完璧だったということです。オリジナルのデザイナーは、手入れをしなくてもいいものを作ることが使命だったのでしょう。それは新しいタイプのスポーツウォッチであり、まったくオリジナルなものだったんです。
「挑戦的な時計を作り、時計に挑み、“どんな状況でも使えるか?”と問いかける」とゼニスは言っていますが、そういうことだと思います。
新しいデファイ リバイバル A3642を手にしたとき、どんなことに気づかれましたか?
オリジナルに近いと感じました。重さは本当に重要で、しっかりとそれを備えています。クリスタルの面取りもオリジナルと同じです。
分解するとどんな感じなのかはわかりませんが、オリジナルのジュエラーズサンプルケースがあるんです。それを見ると、いかにシンプルなケースデザインだったかがわかりますよ。ムーブメントを保護するために大きなラバークッションを使用しているんです。
ゼニスのデファイ オリジナルが採用した3ピースのヴィンテージジュエラーズサンプルケース。
時計の魅力のひとつは、過去と私たちを結びつけてくれることです。たとえ新品の時計を買ったとしても、それはブランドの過去や歴史と結びついています。そして、このヘリテージリリースは、さらに過去と直結しているのです。
この真新しい時計は必要な機能を備えているだけでなく、ゼニスがその影響力と創造性の頂点にあったとき、この時計が本当に革新的だったという内的満足を得ることができるのです。そして50年後、私はこの時計を身につけています。私はこうしてつながっているのです。
デファイ リバイバル A3642を見て、ゼニスがヴィンテージデファイの世界で次に力を入れてほしいところはどこでしょうか?
リバイバル A3642は、スモークブラウンのダイヤルがとても好きでワクワクします。60年代、70年代を彷彿とさせるような未来的なルックスです。すばらしいことだと思います。でも、最近エル・プリメロでやったような、乳がん啓発のためにピンクのダイヤルのようなユニークピースをオークションに出すというのもやってほしいですね。あれはよかった。カッコイイですね。
実は今、さまざまなパーツがすでに作られているんです。ブレスレットは専用の工具があるのがすばらしいです。一日中作っていられます。このケースもそうですし、4時位置のオフセットリューズはまだ必要ないと思います。ケースを変えれば、まったく別のデザインになります。
同じ工具を使いながら、まったく別のダイヤルを使うことができるのです。あるいは、同じ工具、同じケースを使ってレトロタイマーのようなワンプッシャークロノグラフを作る方法を考え出すかもしれません。
私の意見は、新しいダイヤルでバリエーションを増やすことです。DLCコーティングとブラックダイヤルとか。カッコイイでしょう?
ゼニスには、このままの方向性で進んでいってほしいですね。彼らは私のような、こうした時計がすばらしいものであると知っている人々に敬意を表する確かな仕事をしているのです。
スカイラインもありますね。紛れもなくデファイですが、私たちがコレクションに期待するものとはまったく違うものです。あなたの第一印象はどのようなものでしょうか?
私はずっと新しいデファイが好きでした。新しいムーブメントを搭載し、オリジナルのデファイのケースデザインを踏襲するというのは、実に大胆なことだと思いました。基本的にはオリジナルと同じデザインを踏襲しつつ、より大きくした超堅牢なケースを採用しています。一方、ムーブメントにはエル・プリメロを搭載し、1969年まで遡ることができるのです。
ブレスレットがすばらしいですね。多くの新しいスタイルのブレスレットほど太くないので、実際にいい感じです。私は時々、このような新しい重厚なブレスレットが重すぎるように感じることがあります。60年代の時計は、もともとそういうものではありませんでした。当時は折りたたみ式のリンクブレスレットでしたが、新しいものはソリッドリンクになっています。また、クイックリリースで取り外し可能なブレスレットがあることも気に入っています。いつかレザーのオプションも作りたくなるだろうし、誰かがそれを考えてくれそうな気がします。
そして、あのスイープ秒針を見てください、とてもカッコイイです。とにかくすばらしい。
スカイラインは誰に向けたものでしょうか? 新しい顧客層を取り込んでいるのでしょうか? それともマニアに語りかけようとしているのでしょうか? あるいは、その両方を同時に行っているのでしょうか?
マニアと話をしようと考えているわけではないと思うんです。今の時代、マニアはそういう存在ではないと思います。この20年間、マニアの人々はずっと業界から「こうあるべき」と言われてきたと思うんです。そして、それは納得のいくものではありませんでした。だから、私のような人間やウブロやブランパンの復活を手がけたジャン-クロード・ビバー、そしてマイクロブランドが立ち上がりつつありますが、それが私たちの答えだったと思っています。私たちは業界に対して「私たちを子供扱いして、何を好きになるべきかを説くな」と言いたいのです。私たちは、自分たちでそれを定義するつもりです。業界に定義されるつもりはありません。
だから、今はほかと違うものを探しているんです。そして、ゼニスは人々がどこにいるかということに少しばかり敏感な企業のひとつだと思います。ほかの人と同じものを持つよりも自分自身を際立たせたいと考えているのだと思います。皆が同じものを持つという、そんな時代は終わりました。ただ、それほどエキサイティングなことではなかったのです。そして「新しいものをもってこよう」と言っている誰かがいるのです。
ゼニスというブランドの歴史、哲学、デザインに対する認知度を高めるために、会社としてできることがもう少しあると思うんです。名前だけとっても、皆が思っているほど知られていません。
新作について、ゼニスにやってほしかったこと、あるいはやってほしくなかったことはありますか?
どちらの時計も、本当に良い出発点になったと思います。
これらはまったく異なるものです。ひとつは1969年に作られた古いムーブメントを使っていますが、デザイン的には新しくエキサイティングなものです。もうひとつは1969年のデザインを使用していますが、そのなかに新しいムーブメント、エリートムーブメントを搭載しています。スカイラインはデザインを一新し、超高速のランニングセコンドというクールな機能を追加することで、すでに正しい方向に向かっていると思います。
A3642を復刻したといっても、オリジナルのムーブメントを復活させたわけではありません。ふたつの時計はまったく違うコンセプトのものですが、それをうまく融合させたと思います。私には完璧に見えますね。
グレッグ・セルシュ氏のコレクションから、ゼニスのヴィンテージデファイを3点。
時計愛好家は、ヴィンテージリバイバルの試みを批判することが多いのですが、あなたはゼニスの復刻版については本当に支持されているようですね。
私は90年代、ゼニスがいろいろな準備をし始めたころ、ゼニスのリバイバルを応援していました。彼らは努力しています。そして、よりよくなろうとしている。それが私たちが望むすべてです。
私は彼らの活動にとても感謝しています。自分が何者であるかを知り、自分が何を持っているかを知り、それに不安を抱くことなく、積極的に自分をアピールすることができれば、それが最も強力なポジションになるのだと思います。
Images, Tiffany Wade
時計の詳細は、ゼニス公式サイトへ。
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ゼニスはLVMHグループの一員です。LVMH Luxury VenturesはHODINKEEの少数株主ですが、編集上の独立性は完全に保たれています。
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