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我々が知っていること
今年、オーデマ ピゲから発表されるであろう数多くの新作のなかで、ロイヤル オーク オフショアの30周年記念モデルほど期待されるものはないだろう。しかし、オフショアはロイヤル オークファミリーのなかでも屈指の巨体で、ゴツく、ときに奇妙で、扱いにくい兄弟として、常に独自の存在感を示してきた。しかし、それも今日までだ。
ブラックセラミックの最新作、ロイヤル オーク オフショア フライング トゥールビヨン クロノグラフと、ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMT ラージデイトという、非常にワイルドで強烈なふたつの時計が発表されたのだ。
最新のロイヤル オーク コンセプト(ROC)は、すべてのコンセプトがそうであるように、ブランドの最も未来的な時計づくりを象徴する特別な逸品だ。近年の研究開発モデルは“RD”と名づけられているが、コンセプトコレクションは長いあいだオーデマ ピゲの研究開発実験のプラットフォームとなっており、最先端ムーブメントである自動巻きCal.4407もまた、その一例といえるものだ。2019年にCODE 11.59で発表された一体型フライバッククロノグラフムーブメントCal.4401をベースに、フライバッククロノグラフ、スプリットセコンド、GMT機能、文字盤の12時位置にラージデイトを組み合わせた新ムーブメントである。
文字盤自体、ROCの真骨頂ともいえるもので、1枚のジャーマンシルバープレートから切り出された丸い開口部からは、サンドブラスト仕上げのブラックPVDカラーとロジウムポリッシュの面取りによる深みとスポーティさを感じることができる。針とアワーマーカーはホワイトゴールド製で、アワーマーカー、針、カウンター、ラージデイト、GMT デイ/ナイトディスクには夜光塗料が塗布されており、クロノグラフとGMT機能を示すレッドとイエローのアクセントが、全体をポップな印象に仕上げている。
これらすべてが、サンドブラスト仕上げの43mmチタンケースに収められ、コンセプトコレクション初の交換可能なストラップを装備している。17.4mmという大きなサイズながら、人間工学に基づいた設計により、コンセプトは視覚的にも魅力的で、APは(主張が強いとしても)驚くほどつけやすいと言っている。15万スイスフランという価格(日本での価格は要問い合わせ)もさることながら、まさにステートメントピースと呼ぶにふさわしいモデルで、年間で150本のみ製造される予定だ。
もうひとつのリリースは、トゥールビヨン クロノグラフ オフショアとしては初めてのものではないが、これまでのモデルよりも明るくカラフルなオフショアの真髄を感じられるようなデザイン上の工夫が随所に施されている。
この新作は、2021年に登場した限定モデルのオフショア(2020年にCODE 11.59で初めて登場したフライング トゥールビヨン フライバッククロノグラフCal.2952をベースとしている)からヒントを得て、さらにランクアップさせたものだ。オーデマ ピゲは、比較的控えめなデザインとカラーパレットではなく、アルマイト仕上げのグリーンインナーベゼルと、文字盤とムーブメントの構造を支えるブリッジにグリーンアルマイト仕上げのインナーリングを備えた最新鋭のセラミックケースを採用した。背面には43mmオフショアのラインナップでは初となるブラックセラミックのケースバック、裏蓋には反射防止加工を施したサファイアクリスタルが採用されており、ブラック仕上げの22Kピンクゴールド製ローターを鑑賞することができる。
ケースは、サテンブラッシュとハンドポリッシュの面取りがすべて手作業で施されている。フライング トゥールビヨンに加え、ふたつの半透明なクロノグラフカウンターがあり、それぞれを囲む黒いリングでタイミングを読み取ることができ、その下のムーブメントの仕上げをあまり邪魔しないようになっている。また、この時計には文字盤のアクセントと一致するグリーンのラバーストラップが採用されており、ケースに組み込まれたクイックリリースシステムにより、付属のブラックラバーストラップと交換することができる。
最新作のロイヤル オーク オフショア フライング トゥールビヨン クロノグラフは、なんと28万5000スイスフラン(日本での価格は要問い合わせ)で、100本限定となっている。
我々の考え
新しいロイヤル オーク コンセプトはひとまず置いておいて、オーデマ ピゲは最初の発売から30年を経て、オフショアを好きになるきっかけとなる時計を発表したのではないかと思わずにはいられない。
オーデマ ピゲの歴史的なデザインを愛する者として、オフショアのデザインを受け入れるには長い時間がかかった。別に彼らは私の助けが必要だったわけではない。“ジャンボ”が流行るずっと前から、この時計は大々的に宣伝されていたが、私はその理由をよく理解していなかった。一方、コンセプトは、なぜか自分だけの居場所を与えてくれるような時計だった。それは実験のための時計であり、写真でしか見ることのできない、クールでドラマチックなハイパーカーのようなものなのだ。
ロイヤル オークのアイコニックなデザインはもちろん、APのヴィンテージ超薄型ドレスウォッチ、13リーニュムーブメント、もしくは超薄型パーペチュアルカレンダーについて、私は1日中語り続けることができる。これらはすべて、バランスと調和に関するものだ。しかし、ロイヤル オーク オフショアのデザイナー、エマニュエル・ギュエ氏がロイヤル オークのデザインを台無しにしたと非難したことで有名な故ジェラルド・ジェンタと共通点があることを願うのは大袈裟かもしれないが、“メガタペストリー”文字盤と丸みを持った数字は、誰かがMicrosoft Wordで文字を選択して、ダサいフォントに変えたように感じられる。確かにこの時計は目立つように作られているが、それだけでいいのだろうか?
私が輝きを放っていると感じるものといえば、個人的にお気に入りだった2021年のオフショア ダイバー カーキがある。グランドコンプリケーションのスケルトン オフショアに“私を大雨のなかに連れて行かないで”という笑い話のような20m防水を持たせた大胆さもオフショアらしいものだが、私の心を打つものは何もなかった。しかし、それはAPの勝利の方程式であり、長年にわたって崩すのが難しいことを証明する祝福であり呪いでもあったのだ。
ロイヤル オーク オフショアがようやく自分のものになった瞬間のような気がする。
成長するということは、自分がどこから来たのかを知り、影響を受けたものを認めながら、特別な存在であるために奇抜である必要はないのを理解することだ。オーデマ ピゲの過去と現在の痕跡が、この新しい時計にスマートな形で反映されており、オフショアがいつも少し (またはかなり)奇抜であったことを示す適切なヒントを備えている。
確かに、ロイヤル オーク オフショア フライング トゥールビヨン クロノグラフは形式としてカタログに存在していたが、何事も最初の開発サイクルがベストでなければならないとは誰も言っていない。
2021年に発表されたCal.2967を43mmのグレード5チタンケースに収めたモデルは、CODE 11.59とオフショアのラインナップを、ムーブメントを軸として統一した。一方、デザインは文字盤の代わりに立体的なオープンワークが施され、ロイヤル オーク コンセプトのイメージをはるかに超えたものに感じられた。ムーブメント、歯車、ワンミニッツ トゥールビヨンが前面に出て、文字盤を構成するブリッジがさらに奥行きを出し、理屈抜きでカッコいいデザインだったが、あと1歩が必要だった。
私の目には、それがオフショアであることを教えてはくれなかったのだ。 APは、私がオフショアの嫌いだと思っていたものをすべて取り除いてくれた。そのおかげで、この時計は陳腐化せず、43mm×15.5mmの巨大な、強烈なまでにオーバーエンジニアリングされた、ほかのどんなアイコン的ダイバーでもあり得ないほどの存在になっているのだと、私は気づいたのだ。
オフショアに必要なのは、そのアイコニックで風変わりな個性を取り戻し、最適な場所に到達するための、ひとひらの色だけあればいいことがわかった。新しいブラックセラミックケースは、それ自体がアイコンとなっており、常に人気のあるメインコレクションであるロイヤル オークへの回帰を思わせるものだ。また、シルバーの面取りを施したブラックPVDコーティングのチタンブリッジと、ビビッドなグリーンアルマイトのインサート、ピンクゴールドの針との色のコントラストは、以前よりもはるかに大胆でオフショアらしい印象を与える。チタン製のリューズガードは、セラミック製のプッシャーとねじ込み式リューズと美しいコントラストを成している。ミリタリーに近いカラーリングは、“私はタフだ”と言わんばかりだが、”でも実は楽しいんだ”とでもいうような鮮やかさがあり、目を引くことでほかのすべての統一された要素を称える役割を果たしているのだ。
一方、APはコンセプトのサイズを“おおらかだ”と言っているが、その言葉自体が寛大で優しいものかもしれない。しかし、それこそがコンセプトの意図するところなのだ。超スポーティで未来的な時計を作るほかのブランドを見て、それから15万スイスフラン(約2180万円)という価格についてを考えてみて欲しい。この価格は、非常識な金額だが、ほかのブランドが提示する価格と比較すれば、それほど非常識な金額ではなく、驚くべき時計であることに変わりないのだ。
コンセプトは、腕につけるケーニグセグのようなものだ。高速でパワフルな外観を持ち、内部にはまるで月へ飛び立つかのような感覚のムーブメントを備えた、非常に洗練された逸品だ。ローターを支えるボールベアリングのなかに組み込まれたスプリットセコンド機構を見ることができるのは、またとない楽しみである。なぜ、目に見えない技術的成果を求めるのだろうか?
コンセプトの魅力の多くは、全体的なデザイン言語からきている。サンドブラスト仕上げのチタン、未来的なツートンカラーの文字盤、ワイルドなムーブメントなど、手首に軽く、かつ骨太なデザインを持つ新しいロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMT ラージデイトは、強烈なクールさを備えている。これ以上言うことはない。今年こそは実物が見られることを願うばかりだ。
どちらの時計も、APが最も得意とするところ、つまり信じられないほど複雑で、信じられないほどクールなものを作ることによって、供給を大きく上回る多くの需要を生むことを示している。そして、そのうちのひとつの時計は大きな成果を与えてくれるかもしれない。なぜなら、ここ最近のなかで初めて、最新のロイヤル オーク オフショア トゥールビヨン クロノについて、“このオフショアを実際に見ることができたらいいな”と、改めて考えている自分に気がついたからだ。もし、ここからオフショアの30周年が始まるのであれば、2023年はおもしろい年になりそうだ。
基本情報
ブランド: オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)
モデル名: ロイヤル オーク オフショア フライング トゥールビヨン クロノグラフ&ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMT ラージデイト(Royal Oak Offshore Selfwinding Flying Tourbillon Chronograph&Royal Oak Concept Split-Seconds Chronograph GMT)
型番: 26622CE.OO.D062CA.01(オフショア)、26650TI.OO.D013CA.01(コンセプト)
直径: 43mm(オフショア)、43mm(コンセプト)
厚さ: 15.5mm(オフショア)、17.4mm(コンセプト)
ケース素材: ブラックセラミック(オフショア)、チタン(コンセプト)
文字盤: オープンダイヤル、ブラックPVDコーティングされたチタンブリッジとグリーンアルマイトのアクセント(オフショア)、ブラックPVDのオープンワークシルバーダイヤルディスプレイ、ブラックインナーベゼル(コンセプト)
防水性能: 100m(オフショア)、50m(コンセプト)
ストラップ/ブレスレット: ラバーストラップはグリーンとブラックの2色、クイックリリースメカニズム付き(オフショア)、ブラックとグレーのインターチェンジャブルラバーストラップ、チタン製三つ折れ式APフォールディングクラスプ、追加のブラックインターチェンジャブルラバーストラップ(コンセプト)
ムーブメント情報
キャリバー: 2967(オフショア)、4407(コンセプト)
機能: フライング トゥールビヨン、フライバック クロノグラフ、時・分表示(オフショア)、フライバック クロノグラフ、スプリットセコンド クロノグラフ、GMT/24時間表示、時・分表示、スモールセコンド、ラージデイト表示(コンセプト)
直径: 33.6mm(オフショア)、32mm(コンセプト)
厚さ: 8.4mm(オフショア)、8.92mm(コンセプト)
パワーリザーブ: 約65時間(オフショア)、約70時間(コンセプト)
巻き上げ方式: 自動巻き(ともに)
振動数: 2万1600振動/時(3Hz/オフショア)、2万8800振動/時(4Hz/コンセプト)
石数: 40(オフショア)、73(コンセプト)
価格 & 発売時期
価格: 28万5000スイスフラン(オフショア)、15万スイスフラン(コンセプト)、ともに日本での価格は要問い合わせ
発売時期: 2月発売予定
限定: あり。100本限定(オフショア)
詳細は、オーデマ ピゲのウェブサイトをご覧ください。
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