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Introducing オーデマ ピゲがスターホイールを復活させる(編集部撮り下ろし)

1990年代に人気を博したワンダリングアワー機構が復活し、CODE 11.59に新たな仲間が加わった。

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我々が知っていること

オーデマ ピゲのCODE 11.59コレクションについて、ちょっとした前置きとしていくつかのことを整理しておこう。まずCODE 11.59は、ロイヤル オークを超える何かを目指すオーデマ ピゲの明確な商業的努力として、2019年に導入されたものである。次に、その最初の時間表示のみのCODE 11.59は、“APの未来”を示すコレクションを紹介するものとしては、ちょっと退屈だった。

 今日、オーデマ ピゲはCODE 11.59コレクションの最新作、“CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スター ホイール”を発表。CODE 11.59の最初の発表から3年以上が経過し、同コレクションは30モデル以上になったが、この新モデルは独自の視点で評価できるほど、初作からかけ離れたものとなっている。オーデマ ピゲ、そしてCODE 11.59のすべての発表が人気投票である必要はないのだ。

 とはいえ、今回のCODE 11.59は今までで一番面白いかもしれない。

 17世紀にローマの時計職人がローマ法王のために考案した複雑機構を搭載し、技術的な魅力と装着時の戸惑いを両立させた大胆なケース構造を持つこの時計は、本質的に奇妙な時計と言えるだろう。この時計は“次のロイヤル オーク”でも“APの未来”でもなく、ただの時計であり、それでよいのだ。

Audemars Piguet Starwheel Code 11.59

 この新しいCPDE 11.59 スターホイールは、18KホワイトゴールドのCPDE 11.59ケースとブラックセラミックのミドルケースのなかに、ワンダリングアワーコンプリケーションを搭載。この時計は時間表示のみの機能を持つ。12個のワンダリングアワーディスクが文字盤上を文字通り“さまよい”(ワンダリング)、文字盤上部にある120°のミニッツトラックに沿って現在の時間が現在の分を指し示す。例えば、上の画像の時刻は10時36分頃だ。次の時間ディスクは、時間の変わり目に分トラックに到達する。実に直感的でエレガントな時刻の告げ方だ。回転するディスクは、中央のローターホイールに固定されており、それぞれディスクの中心にあるスターホイールでローターに取り付けられている。それゆえ、この名前がついたのだ。

 今となっては、時計製造のあらゆるものを「ロマンティック」と呼ぶのは少々陳腐だが、本機にはそれがふさわしいのだろう。ワンダリングアワーという複雑機構そのものが時代錯誤であるだけでなく、着用者に与える影響も大きいのだ。その気になれば、文字盤を横切る各時刻の上昇と下降を、実用的なムーンフェイズのように詩的に眺めることも可能だ。その仕組みも非常にシンプル。センターローターは3時間で1回転し、アワーディスクは1時間で4分の1回転(90°)する。

Audemars Piguet Starwheel Code 11.59
Audemars Piguet Starwheel Code 11.59
Audemars Piguet Starwheel Code 11.59

 税込687万5000円という価格は、突飛なものではない(例えば、カルティエが新しいペブルに640万2000円を要求するのと同じくらいだ)。確かに大金だが、1990年代のオーデマ ピゲのオリジナルのスターホイールに払う金額よりずっと高いわけではないし、ここにはもっととんでもない現代の時計製造技術が注がれている。

 ワンダリングアワーを実現するために、オーデマ ピゲはタイムオンリーのCal.4309にワンダリングアワーモジュールを追加した。文字盤上では、ブルーアベンチュリンの文字盤とブラックのインナーベゼルの上でブラックのオパーリンディスクが回転する。アワーディスクとミニッツトラックのフォントは極めて現代的で、ホワイトゴールドのセンターセコンドが装置全体の頂点に位置している。ホワイトゴールドのケースとブラックセラミックのミドルケースは、APがCPDE 11.59を発表したときに約束した複雑な構造で、エッジはベベルカットが施されている。

Audemars Piguet Starwheel Code 11.59 Case

 1991年に発表されたオーデマ ピゲのスターホイールの流れを汲むこのコンプリケーションは、17世紀にローマの時計師カンパーニ兄弟(Campani)がローマ法王のために開発したワンダリングアワー(大英博物館にある彼らのクロックの一例がこちら)を応用している。オリジナルのスターホイールは、伝統的な36mmケースで、ロイヤル オークよりもAPの超薄型パーペチュアルカレンダーと共通するドレッシーな時計だった。伝統的なプロファイルのワンダリングアワーコンプリケーションは、1991年当時も、2022年でも、ロイヤル オークに対抗するためのものではなかったのだ。

 APは90年代初頭まで、イエローゴールドやプラチナ(最終的にはローズゴールド)、ギヨシェやアラベスク彫りの文字盤など、さまざまなバリエーションでスターホイールを製造してきた。昨年、アンティコルム社は、ルビーエメラルドがベゼルにセットされたユニークなスターホイールのペアを10万ドル以上で販売した。ネオヴィンテージのカテゴリーがそうであるように、あらゆるタイプのスターホイールに対する評価は高まっている。4年前、標準的なイエローゴールドのスターホイールは8000ドルで売られていたが、今では3万ドルから4万ドルで売られることもある。

Audemars Piguet Star Wheel 1990s

12月にフィリップスがオークションに出品する1990年代のオーデマ ピゲのスターホイール。

 1996年、オーデマ ピゲはこのスターホイール第1世代を他のクラシックモデルとともに製造中止とした(さようなら、スターホイール、さようなら超薄型永久カレンダー、こんにちは、ビースト! である)。しかし同社はスターホイールを廃止したわけではなく、短期間で終了したジョン・シェーファーコレクション、そしてミレネリーでこのコンプリケーションを復活させた。ジョン・シェーファーコレクションは、アメリカの実業家(そして時計コレクター)ジョン・シェーファーが依頼した1900年代初頭のシングルクッション型ミニッツリピーターウォッチから着想を得ている。

 1990年代、同社はこの時計にヒントを得て、主に複雑時計の小規模なラインを発表した。そのなかには、クッションケースにミニッツリピーターと組み合わせた「スターホイール」の限定モデルもあった。このモデルの生産数は数十本で、ほとんどのバリエーションが10本、5本、3本の限定生産だった。現在では、このジョン・シェーファーのスターホイールは最も希少価値の高いものとなっている。2年以上前に公開された最後の個体は、10万ドルで落札された。そして2000年、創業125周年を記念して、APはミレネリーにスターホイールを搭載した限定モデルを発表した。

Audemars Piguet John Shaeffer Starwheel 1990s

AP所蔵のジョン・シェーファーコレクションのスターホイールとミニッツリピーター。

Audemars Piguet Starwheel 1990s

1990年代のスターホイール、アラベスクのエングレービングが施された文字盤。

 APは2000年以前にスターホイールを完成させたが、その影響は時計業界に残り、特にウルべルクは1997年の発売以来、ワンダリングアワーという複雑機構を目まぐるしく変化させながら使用してきた。それだけでなく、筋金入りのコレクター、そしてAP社のスタッフでさえも、スターホイールが去ってしまったことをすぐに嘆いたという。多くの人にとって、オリジナルのスターホイールは、スイスの大規模ブランドがクォーツ危機を超えて革新的な道を歩んだ例なのだ。

 確かに、スターホイールはロイヤル オークのようなアイコン的存在ではない。また、オーデマ ピゲの超薄型永久カレンダーのように、同社にとって重要なものでもない。しかし、スターホイールは、そのユニークな美しさと時間の表示方法だけでなく、時計製造の時代を象徴するニッチな存在として、コレクターに愛されてきたのだ。本格的なコレクターにとって、スターホイールはそれ自体が収集すべきものなのである。そして、コレクターが「初めて」を好む世界において、スターホイールは最初のモダンなワンダリングアワーウォッチとして、常に支持され続けることだろう。

 今日、スターホイールはAPとともに、その始まりの場所に戻ってきた。この新しいスターホイール、いや、真にはもっと広くCODE 11.59が、この時代と同じような意味を持つかどうかは、時間が経ってみなければわからない。

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我々の考え

歴史の勉強はもういいだろう。このCODE 11.59 スターホイールとそのつけ心地についてお話ししよう。私たちのCODE 11.59に関する記事のコメント欄を見てみると、共通の感情があることが分かる。ひとつは、オリジナルのリリースに遡る反射的な悪口で、今ではもう飽き飽きしたジョークだ。もっと建設的な意見は、CODE 11.59は実際に見てみないとわからないということ。正直なところ、ここで掲載するスターホイールの写真は今までのCODE 11.59と同じくらいよく撮れていると思う(それはマーク・カウズラリッチによるこの素晴らしい写真のおかげかもしれない)が、そう、やはり実際に見たほうがいい体験になるだろう。

Audemars Piguet Code 11.59 Starwheel

CODE 11.59 スターホイールと1990年代のオリジナルのスターホイール。

 私が試着したとき、APはジョン・シェーファーコレクションのミニッツリピーターなど、1990年代のスターホイールも数本用意していた。41mmという大きさの新しいCODE 11.59 スターホイールは、オリジナルとはまったく異なる装着感を味わうことができる。クラシックな時計作りではなく、アヴァンギャルドとルネッサンスの出会いだ。

 薄いベゼルとデュアルカーブのCODE 11.59のクリスタル風防(横から見ると、まるで目の錯覚のようだ)によって、新しいスターホイールではダイヤルが非常に大きく感じられる。そしてAPは、そのすべての面積を有効に活用している。文字盤は、CODE 11.59のタイムオンリーモデルのオリジナルコレクションのように、プレーンで退屈なものではない。アベンチュリンダイヤルは、惑星の動きからヒントを得て開発されたワンダリングアワー コンプリケーションと見事に調和している。ワンダリングアワーのディスクは、まるで地球に情報を伝達する衛星のように上空を浮遊し、まさに星間飛行のようなイメージだ。アベンチュリンは光によって紫色に変化し、夜空のように(あるいはモンタナの夜空を想像して)写真では捉えきれない輝きを放つ(文字盤の動きを動画でご紹介しよう)。90年代のオリジナルスターホイールには秒針がなかったが、原理主義者の私はこのCODE 11.59にも秒針がないほうがいいと思った。

 ホワイトゴールドとセラミック製ミドルケースの組み合わせは特に印象的で、APはスターホイール用にセラミック製リューズも追加している。CODE 11.59は3ピース構造のためか、写真では装着時よりも厚く見える(厚さはわずか10.7mmなのだが)。確かに大きいのだが、ケースに圧迫感はなく、構造(特に中空ラグ)や面取りされたエッジなどのディテールがケースを分断し、さらに重要なこととして、装着性が向上されている。また、ストラップは写真で見るよりもずっと上質だ。キャンバス地のように見えるがそれ以上に質感が高く、丈夫なラバーでコーティングされている。レザーストラップのCODE 11.59もいくつか試着したが、私はこのキャンバスとラバーの組み合わせの方が好きだ。

 さっきも言ったように、ここにはいろいろなものがある。アベンチュリンの文字盤とセラミック製のミドルケース、そしてワンダリングアワーを備えた3ピースのCODE 11.59ケース、これらすべてのディスクが、ワンダリングアワーというコンプリケーションと17世紀のローマ教皇庁に由来するという歴史を重ね合わせて、うまく機能しているのだろうか。

Audemars Piguet Code 11.59 Starwheel

 先日、あるアーティストとおしゃべりしていたら(自慢話という自覚はある)、どんなにシンプルな絵でも、どんなに難解な絵でも、「エントリーポイント」が必要だと説明してくれたのだ。私は、時計は芸術だなどと主張する人間ではないが、このアーティストのアイデアを反芻せずにはいられなかった。現在時刻を示すアワーディスクが、他のディスクを横切る前に自然に私の目を引きつけ、その下のアベンチュリンをちらりと見て、それからこのケースは一体どうなっているのかと考えようとするのだ。CODE 11.59スターホイールで起こっていることは、実はすべて連動しているのかもしれない、と思わされた。

 前回のCODE 11.59の(複雑な)リリースのあと、ローガン(・ベイカー)が仮説(オーデマ ピゲ CODE 11.59コレクションはどのように進化を続けているのだろうか?)を建てたように、CIDE 11.59は複雑機構のためのプラットフォームとして使うのが最適だろう。伝統的な機械式時計の複雑機構だけでなく(ワンダリングアワーはそれほど複雑ではない)、ケース作りや素材、さまざまなものを組み合わせて、何を採用するかということだ。

 1990年代のAPのジョン・シェイファー・コレクションについてはすでに述べた。当時、APがあの伝統的なクッションケースに複雑でモダンな時計製造を突きつけることは「革新的」だった。しかし、今ならどうだろう? もちろん、ヒットするだろう。カルティエがここ数年、プリヴェコレクションで行っていることを見ればわかると思う。いわゆるピュリストたちは、あの限定版のペブルのアグレッシブな価格設定にはほとんど触れずに、それを絶賛している。しかし、APがCODE 11.59で試みていることは、より挑戦的なことだ。メーカーとしても、いわゆるコレクターである私たちにとっても、より挑戦的だ。もっと、もっと、複雑なのだ

 CODE 11.59スターホイールは、ロイヤル オークを超えるAPの未来なのだろうか。もちろん、そうではないし、そうであると主張するものでもない。しかし、APがそのような未来を見出すとしたら、それはスーパーヒーローやサウンドボードの世界ではないだろう。それはスターホイールが象徴するような時計作りのなかにあるのではないだろうか。

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基本情報

ブランド: オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)
モデル名: CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スターホイール(Code 11.59 by Audemars Piguet Starwheel)
型番: 15212NB.OO.A002KB.01

直径: 41mm
厚さ: 10.7mm
ケース素材: 18kホワイトゴールドベゼル、ラグ、ケースバック; ブラックセラミック製ミドルケース
文字盤色: ブルーアベンチュリンダイヤル、ブラックオパーリンアルミニウムディスク、18Kホワイトゴールド針
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ラバーコーティングストラップ、ホワイトゴールド製ピンバックル

Audemars Piguet Starwheel caliber 4310

ムーブメント情報

キャリバー: Cal.4310 (Cal.4309ベース)
機能: ワンダリングアワー、分、秒
直径: 32mm
厚さ: 6.05mm
パワーリザーブ: 70時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 4 Hz (2万8800/時)
石数: 32
追加情報: 合計パーツ数261個


価格 & 発売時期

価格: 687万5000円(税込)
限定: なし 

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Audemars Piguet Starwheel Code 11.59
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