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In-Depth クリスティーズのパテック フィリップ175周年記念オークションの内幕

これまでに集められたパテック フィリップの中で、クリスティーズがホストを務めた最も印象的なオークションを紹介する。

※本記事は2014年10月に執筆された本国版の翻訳です 。

2014年11月9日、クリスティーズはこれまで企画された中で最も印象的なパテック フィリップのオークションを主催する。100ロットのイブニングオークションは、クリスティーズの選りすぐりの逸品ぞろいであり、それだけでパテック フィリップの全貌を語ることができる。間違いなく世界中の時計収集家が固唾を飲んでパテック175周年記念オークションを見守っているだろうが、カタログがオンラインで発売され、注文した人に発送されたので、我々は個々のロットを掘り下げ、パーペチュアルカレンダー・クロノグラフからレディスウォッチまで、我々が目星をつけた時計について考えを述べることにした。ここで100ロット全てについて書くのは簡単だが、パテック フィリップの神髄を知るにはオークションカタログをご覧になることをお勧めする。本記事では、私たちが選抜したロットのみをご紹介する。

聖杯ロット(落札予想価格1億円超)

 今回のオークションの上位ロットはもうお分かりかもしれないが、私たちはそれらの感想と、それ以上に重要なこととして、撮り下ろし写真をご覧いただきたい。これらは1億円超の落札が見込まれる7本の時計だ。

初代パーペチュアルカレンダー・クロノグラフ Ref.2499 ピンクゴールド
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 前にも述べたように、Ref.2499はおそらくコレクターに珍重されるパーペチュアルカレンダー・クロノグラフであり、どんなピンクゴールド製のRef.2499も特に価値があると述べたが、マシュー・ベイン氏がオンラインで販売した320万ドルのピンクゴールド製Ref.2499(第2世代)をご覧いただきたい。しかし、第2世代のローズゴールド製Ref.2499の存在は10本確認されているが、初代ローズゴールド製Ref.2499はわずか4本しか知られていない。初代Ref.2499の最大の特徴は? 四角いプッシャーである。第2世代から第4世代までは、全て丸型のプッシャーを採用しており、防水性に優れた設計になっている。

 この時計はオークションの中で最も高い落札予想価格を叩き出しているが、オークションが終了した時に最も高価な時計になるかどうかは誰にも分からない。間違いなくそうなると思うものの、どうなるかは興味深いところだ。

2つのリューズを持つワールドタイムRef.2523 イエローゴールド製ケースにブルーエナメルダイヤル

 今回のオークションで最も関心と注目を集めた時計の一つが、このRef.2523だ。1953年に製造されたこのワールドタイムウォッチは、まさにそれに相応しい印象的な作品だ。角張ったケース、ダイヤルの白い外縁に描かれた41の都市名、炎のような形をした短針、そして魅惑的な半透明のブルーエナメルのセンターダイヤル。このブルーエナメルのセンターダイヤルのレイアウトの時計は他に2本しか知られていないが、そのうちの1本はピンクゴールドケースで、ミラノのゴッビによって販売され、2010年のクリスティーズでは270万ドルで落札された

 この時計を実際に見て、手首に装着してみないと分からないのは、そのサイズ感だ。ロットノートにあるように、“35.5mmというサイズで、ケースは過度に圧迫感があったり、派手なものではありませんが、同心円状に配置されたダイヤルのリングは、余裕のあるベゼルと相まって、手首に装着したときの存在感は同じサイズ帯の時計をはるかに超えています”。実際、その通りだと思う。

 コレクターの目に最も価値のあると映るだろうRef.2523は、中央のダイヤルにエナメルの地図が描かれたものであるように見えるが、2012年のクリスティーズにて299万ドルで落札された、北米地図が描かれたこのモデルのように、私は鑑賞用ではなく実際に身に着けるのであれば、中央がブルーのダイヤルの方が好みに合う。ただただ目を奪われんばかりである。余談だが、ホワイトゴールド製のRef.2523は1本しか知られておらず、パテック フィリップ・ミュージアムに所蔵されている。

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パーペチュアルカレンダー Ref.2497 ホワイトゴールド製ブレスレット仕様

 もし、私がこのオークションの中から価値のある時計を選ぶことができるとしたら、このRef.2497を選ぶだろう。私は白金色のケースとゲイ・フレアー社製ブレスレットに目がないので、まさに夢のような時計といえる。ケースがRef.2499に似ているのはそれもそのはず、クロノグラフのプッシャーを除けば、Ref.2497はRef.2499 と同じである。

 全体的な外観、サイズ、白金色ケースなどから、読者の多くを魅了する時計だと思う。白金系のRef.2497は、5本のうちプラチナ製が2本、ホワイトゴールド製が2本しか知られていない。当初はブラックレザーストラップ仕様で販売されていたが、その後すぐにパテック社にブレスレットを依頼したオーナーは、1953年に製造された「ダミエ(または“市松模様”)」の頭文字をとったゲイ・フレアー社のモデル「D」を入手した。

パーペチュアルカレンダー Ref. 3449 イエローゴールド製

 Ref.3449は、アンリ・スターンが大型で薄型のパーペチュアルカレンダーの需要を試すために考案したと考えられる3つの "ミニシリーズ "のひとつだ。3つの時計はそれぞれ微妙に異なるケースを持ち、それぞれがユニークな存在である。3つの中で最後のモデルであるこのリファレンスは、私が最もクールだと思う“3段ベゼルと細長いストレートラグを備え、先代よりも少なくとも1mm長い”ケースである。

 また、この時計の興味深いところは、その背景にある逸話である。この時計は1965年の夏、ジョージ・ポストンという人物がテキサス州ダラスのリンツ宝石店で購入した品だ。既に3本のパテック フィリップの時計を所有していたポストン氏は、リンツ家のメンバー(店を経営する一族)と、ニューヨークのアンリ・スターン時計代理店(通称:パテック フィリップ米国支店)の若手販売員、ハンク・エーデルマンに会いに赴いた。ポストン氏は、8500ドルの複雑機構の懐中時計か、このRef.3449を5500ドルで購入するかの選択肢を提示され、その日のうちに選ばなければならなかった。最終的に彼はRef.3449を選び(私の意見では正しいと思う)、自らの30歳の誕生日プレゼントとしたのだ。私たちが皆、これくらい幸運だといいのに、羨ましい! 裏蓋には"JAN. 3, 1966 / GEO. POSTON / JAN. 3, 1936 / + QU' HIER / - QUE DEMAIN"と、彼の誕生日、30歳の誕生日、そして楽観的で前向きなフランスの詩“私の愛は昨日よりも今日、今日より明日、日ごと深くなる”(ルイーズ=ロズモント=エティエンネット・ジェラール作)から引用されたものだ。

 ポストン氏はご存命で(編注:本記事執筆時点)、テキサス在住である。彼はこの時計の調査でクリスティーズに協力し、この時計が出品されたことに感激していると伝えられる。彼はパテック フィリップの時計だけを収集しているが、25年前にこの時計を手放した。

ロット75は1億1860万円から2億3720万円の落札予想価格である(編注:2014年11月9日に1億4350万円にて落札された)

スプリットセコンド クロノグラフ Ref. 1563 イエローゴールド製

 Ref.1563は、多くのコレクターにとって間違いなく聖杯とみなされる1本だ。わずか3本しか製造されておらず、その全てがイエローゴールド製だ。2013年、クリスティーズで157万ドル以上で落札された夜光ブレゲ数字の1本をご紹介した(クリスティーズのリンクはこちら)。以前、アンティコルムは2002年にデューク・エリントンのRef.1563をパテック フィリップ・ミュージアムに67万3500ドルで売却した。また、この作品は2010年にジャン-クロード・ビバー氏がクリスティーズから110万ドル以上で購入した。(ビバー氏のキラーコレクションについて詳しくはこちら)。

 この作品は、パルスメーター(脈拍計算尺)を備えた美しいツートーン・ダイヤルを持ち、興味深いバックストーリーも存在する。クリスティーズによると、このムーブメントは1940年にRef.1436のケースに収められて発売され、1941年6月に販売された後、1943年に現在のものにリケースされたということだ。

 パテックのパーマネントコレクションにある3本のRef.1563のうちの1本が所有者不明のまま昨年売却されたため、これがRef.1563を購入する最後のチャンスとなるかもしれない。

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第2世代のパーペチュアルカレンダー・クロノグラフ Ref. 2499 イエローゴールド製

 ここで突然のクイズ:第2世代のRef.2499と第1世代の違いは? 正解! 丸いプッシャーだ。これは、長方形のインデックスを備え、ダイヤルとケースが美しいイエローゴールド製の第2世代のRef.2499だ。

ドリームウォッチのロット(2500万円から1億円までの落札予想価格が高額な複雑時計)

複雑機構を搭載した1億円未満の腕時計のロットたちを紹介しよう。

シングルボタン・スプリットセコンド・クロノグラフ Ref.130 イエローゴールド製

 パテック製のシングルボタン・スプリットセコンド・クロノグラフは超希少だ:このモデルを含めて10本しか知られておらず、そのうちRef.130型のラウンドケースは4本しか存在しない。しかし、このモデルを特別な点は、元の所有者がウィリアム・E・ボーイング(ボーイング社創業者)であること、ブレゲ数字(アメリカ市場では非常に珍しい)を採用していること、カルティエのサイン入りでラグの下にカルティエのオリジナルシリアルナンバーが入っていること、分針に3本の赤いストライプが入っていること、そして珍しく外周にタキメーターがないこと、の5点だ。これは、ボーイングが著名な馬のブリーダーであったため、距離ではなく、タイムを測るためにこの時計を使用していたためと推測される。

 赤い3本のストライプについては、クリスティーズはロットノートでいくつか補足している。私の考えでは、これは競馬、特に有名な“クォーターポール”にまつわるものではないかと考えている。米西海岸では、当時はほとんど全ての競馬場の周回が1マイルだったので、ジョッキーも観客も自分たちがどれくらい走ったか、どれくらいの距離が残っているかを知ることができるように、距離を示すポールが競馬場の周りに設置されていた。4分の1マイルの位置にあるポールは赤と白の縞模様になっていて、これは今でも続く慣習だ。私の調査では、“クォーターポール”には、4分の3マイルが経過したことを示すために、3本の赤いストライプが描かれていることを発見した。

 残念なことに、ケースはポリッシュされており、ダイヤルはある時点で(パテックによって)数ヵ所の修復作業が施された可能性がある、しかし、全体的には信じられないほど良好な状態の個体だ。

イエローゴールド製のシングルボタンクロノグラフ

 この時計はオークションの序盤ではあまり注目されていなかったが、1920年代のパテック腕時計クロノグラフの素晴らしい逸品だ。特にブレゲ数字と縦に配置されたサブダイヤルが気に入っている。これもまたパテックにおける家宝としての性格を表している。"Walter V. Struby / 1928年12月 / Peter V. Struby / 1943年 "と刻印されており、父から息子へと受け継がれた時計である可能性が高い。

ロット34は5671万円から9074万円の落札予想価格である。

ミニッツリピーター Ref. 2524/1 イエローゴールド製

 このオークションでは1本だけミニッツリピーターウォッチが出品され、それはイエローゴールド製のRef.2524/1だ。このモデルは、イエローゴールド製のスモールセコンドを搭載した4つのモデルのうちの1つだ。ケースはエミール・ヴィシェ(当時のパテックの最高のケースメーカーのひとつ)によって作られた傑作だ。この時計は1955年に製造され、1958年に販売された。

 私が特に気に入っているのは、ムーブメントにHOXインポートの刻印があり、アンリ・スターン時計販売店(HSWA)によってアメリカに持ち込まれたことを示している点だ。さらに、HSWAのためにニューヨークの宝石商によって作られた非常に珍しい金のバックルが付属するが、その刻印には不幸にも“Patek Phillipe”というスペルミスが確認できる(編注:正しくは“Patek Philippe”)。

パーペチュアルカレンダー・クロノグラフ Ref. 1518 イエローゴールド製

 これはファールーク王(エジプト)のRef.1518だ。このリファレンスは全てのケース素材含め281本しか製造されていない珍しいモデルだが、このモデルが特別なのは、元の所有者が王族であること、ケースバックに刻まれている刻印だ:すなわち、Fの上に王冠を持ち、その頂点に三日月と星が描かれている。

セクターダイヤル クロノグラフ Ref. 530 スティールケース

 2014年9月23日にマンハセットのロンドンジュエラーズで開催されたオークションの中から厳選された時計の内覧会に出かけた際、私にとって大きな驚きの一つは、このスティール製Ref.530クロノグラフのセクター/アビエーターダイヤルを見たことだった。それはかなり大きく(36.5mm径)、信じられないほど素晴らしい作品だ。もちろんダイヤルは経年劣化していて、ケースは過去のある時点で非常に軽く研磨されているかもしれないが、それでもやはり素晴らしいばかりである。

 この時計は1939年に製造されたが、おそらく最も注目すべきは、この時計が初めて製造されたスティール製のRef.530であったということだろう。この時計はこのオークションの中で間違いなく私のお気に入りの時計ではあるものの、もし私がオークションの中で時計を手に入れることができるならば、ホワイトゴールド製のRef.2497に次ぐ2番手となるだろう。しかし、その時代錯誤的な、あまりにも細すぎる緑のNATOストラップについて実際にどう感じるかは自信がもてないでいる。

パーペチュアルカレンダー Ref. 3450 イエローゴールド製

 この1984年製のRef.3450は、地球上で最も新品同様に近いモデルであり、現存するモデルの中で付属品が最も完全に近い状態で揃っている。このモデルには、“オリジナルの値札、化粧箱と包み、革製の財布、現代的なカタログ「Komplizierte Uhren」、パーペチュアルカレンダーのテクニカルデータシート、スペア用サファイアクリスタル、スペアダイヤル、日付ディスク、月と閏年のディスク、ゴールド製リューズ、ラバーガスケットリング、革製ストラップ、オリジナル18Kゴールドのパテック フィリップ尾錠”が含まれる。これを探している人にとっては、「夢が叶った」とロットノートに書かれている通りだ。

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セクターダイヤル クロノグラフ Ref. 130 スティールケース

 今回のオークションの中で3番めに気に入ったのは、このRef.130で、ダイヤルはセクターまたはアビエイタースタイルだ。前のロットとは対照的に、こちらのダイヤルは素晴らしいコンディションだ。この美しさは言葉には言い表せないほどだ。

スクリューバックとラウンドプッシャー クロノグラフ Ref. 1463 スティールケース

 スティール製パテックファンである私は、このRef.1463も好みだ。Ref.1463(とRef.1563)は、パテックの唯一のヴィンテージクロノグラフモデルで、スクリューバックケースとラウンドプッシャーを搭載するため、パテックの“スポーツ”クロノグラフと呼び声が高いモデルだ。イタリア人はこのRef.1463をラウンドプッシャーのことを“TASTI TONDI(ラウンドキーの意)”と呼ぶことが多い。

タイムオンリーのロット

 こちらは愛すべきタイムオンリー(カレンダー無し3針/2針時計)の時計だ。中には“カラトラバ”と呼ばれる丸みを帯びたタイムオンリーのドレスウォッチもある。今回のオークションには、注目すべき二人の人物の時計が含まれている:ジョン・ゴールドバーガー氏とプッチ・パパレオ氏だ。

大口径のタイムオンリーRef. 530 イエローゴールド製

 タイムオンリーウォッチの主役は、おそらくこの大型でユニークなRef.530で決まりだろう。ブラックダイヤル、ブレゲ数字、36.5mm径のイエローゴールド製ケースが、腕に着けた際のカリスマ性を演出する。

タイムオンリー Ref.570 イエローゴールド製

チーズナイフの逸話で有名なジョン・ゴールドバーガー氏は、ブレゲ数字のこの素晴らしいゴールド製Ref.570を提供する。

タイムオンリー2針 Ref. 3578/1 ホワイトゴールド製

 著書『Ultimate Rolex Daytona Book』で有名なプッチ・パパレオ氏より、ホワイトゴールドにラピスラズリのアクセントと一体型ホワイトゴールド製ブレスレットが興味深いRef.3578/1が提供された。このモデルは、このオークションの中でも最も低い価格で販売される。本物の輝きを貴女に添えてはいかがだろう。

ノーチラス Ref. 3700/11 スティールケース

 このノーチラスは、おそらく地球上で最も未使用状態に近い個体という点で、他と一線を画している。手首には一度も着用されていないので、まさにNOS(新古)品だ。クリスティーズは、あまりにも完璧すぎるため、内覧会にも持参しなかったほどだ。もちろん有名なコルクボックスも含まれており、間違いなくこれまでに作られた中で最もクールな時計箱の一つである。

その他の見どころ

 カタログ全体を読む楽しみを台無しにするつもりはないが、いくつかの信じられないほど素晴らしい複雑機構の懐中時計、いくつかの素晴らしい置時計、さらにはアドリアン・フィリップによるムーブメントのブリッジデザインのオリジナルの米国特許書類(eBayでの掘り出し物だと聞く)もある。

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