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Found ハミルトン フィールドウォッチ "よく似た秋の小鳥たち"を収集する

一人の男性の通販の思い出から、安くて楽しいフィールドウォッチ収集が始まった。

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時計の収集は独特の趣味であり、複雑で多様だ。幅広いブランドやジャンルの時計を所有しているジェネラリストもいれば、小型ケースのスーパーコンプレッサーダイバーズウォッチのみだとか、1983年以前に製造されたレマニア5100で駆動するクロノグラフに限ったりなど、より狭い範囲に興味をもつコレクターもいる。ミシガン州を拠点とするエンジニアであり、時計のレザーストラップ「ローバー・ヘブン」の開発者でもあるマイロン・エリクソンの場合は非常に具体的だ。特定の時代・スタイルの、33mmの手巻きハミルトンウォッチのみに絞って集めている。今回のコレクションに登場する17本の時計があまりにも似ているので、彼は「よく似た秋の小鳥たち」というニックネームをつけたが、これがまさにぴったりだと思う。

ロジャー・トリー・ピーターソンの"よく似た秋の小鳥たち”。

 「『コレクター』という言葉はあまり好きではありませんが、これらの時計に関しては実際に着けることがほぼないので、私もその一人なのだと思います 」とエリクソンは言う。彼は、有名な博物学者ロジャー・トリー・ピーターソンによる鳥類のフィールドガイドからコレクションの気まぐれな名前を取った。問題の鳥たち(ルビーキクイタダキ、アサギアメリカムシクイ、キマユアメリカムシクイなど)は、秋の褐色の羽色が非常に似ているため、バードウォッチャーを混乱させる。同様にエリクソンが収集するハミルトンも、並べるとぱっと見はほとんど同じだ。しかしよく見ると、彼ら固有の「マーキング」から見分けることができる。

 1892年、ペンシルバニア州ランカスターで設立された由緒ある、ハミルトン ウォッチ カンパニー。第二次世界大戦には、さまざまな形で世界の軍隊に時計を提供したことで知られている。1964年に初めて発表されたミリタリー仕様のMIL-W-46374によって、今ではよく知られているアイコニックなフィールドウォッチを世に送り出した。いくつかのブランドがこのような仕様の時計を製造していたが、どれも外観はだいたい同じで、プラスチック製のケースを持つものもあれば、一体型でトップローディングタイプのものもあった。

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 エリクソンの興味の対象であるハミルトンは、次のようなスペックをもつ物に限られる。軍用もしくは民間用の、1970年代から90年代にかけて製造されたステンレススティール製の手巻き腕時計で、特に重要なのは取り外し可能な裏蓋を備えていること。この最後の基準は、実用的な理由からだ。 コレクションが1ダースを超えてくると修理しやすい方がいい。そのため、コレクションの民間用時計は型番9219と9415のものに限定されている。いずれも33mmのスティールケースを採用しており、9219のケースはストラップの幅がちょっと異質な感じの11/16インチ(17.4mm)だ。ケースには固定ラグのものがあったり、穴開きラグだったり、エリクソンが言うところの「フェイク固定ラグ」のものもある。これは回転するものの取り外しはできない仕様になっている。 初期の2つの軍用モデルを除いて「小鳥たち」のケースの中のムーブメントは、全てスイスETA社製の手巻きムーブメント(Cal.2750、2801、2804)だ。

 エリクソンは「よく似た秋の小鳥たち」以外のミリタリーウォッチにも興味をもち、ジンやレマニアのクロノグラフを中心としたコレクションも所有する。しかし、彼の“謙虚なるハミルトン”への愛は、ブランドの戦いの歴史よりも深く、そのルーツは彼の時計収集歴よりはるか昔に遡る。

「小鳥たち」は全てETAの手巻きムーブメントを搭載している。

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 「私がまだ子供だった1970年代、家族でキャンプをよくしていました 」とエリクソンは語る。「アウトドア会社の通販カタログがたくさん来ましたが、愛用していたのはいつもL.L.Beanのものでした」。アマゾン以前の時代、バックパック、レインジャケット、ビーンのブーツ、そしてフィールドウォッチ等の写真が満載の、光沢のあるシーズンカタログが郵便受けに入っているのは確かに楽しかった。

 「ティーンエイジャーの頃、ディジー・デイブズという軍用余剰品の店によく行ったものです。そこは軍用品のアラジンの洞窟のようなものでした」とエリクソンは振り返る。「母が私と一緒にいて、ディジー・デイブのポケットナイフや時計のショーケースにあったのと同じ時計が、L.L.ビーンで売っていたと言った日のことを覚えています」。

1956年に初登場した「ジェットエイジ」のハミルトンロゴ。

 ブランドの提携は、時計業界では目新しいことではない。ホイヤーはアバクロンビー、IWCはSAAB、ロレックスはドミノ・ピザと提携した。ハミルトンは、その手頃な価格、アメリカらしさ、あるいはアウトドア用途の評判のためか、1970年代から80年代にかけて、ビーン、オービス、ブルックストーン等の通販ブランドと提携し、そのいくつかはエリクソンが集めた中にも見られる。これらのブランドの中にはダブルネームのものもあり、文字盤のどこかにハミルトンの名前が、オービスのものやアヴィレックスの翼の "A "と並んでいるのに対し、ブルックストーンのものはメーカーの記載がないのが特徴だ。しかし、ハミルトンのロゴがある場合、それは1956年に最初に導入された興味深いもので、スタイル化された "H "とイタリック体で書かれた社名から成る。エリクソンはこのロゴがある時代を、ハミルトンの「ジェット機時代」と呼んでいるが、これはボーイング社が初の民間ジェット旅客機707型機を発表するわずか2年前に登場したことに由来する。

 これらのブランドとのコラボレーションによる通販ウォッチを、安っぽくてキッチュなものに感じる人もいるかもしれないが、エリクソンにとっては魅力的でノスタルジックなものだ。フィルムが現像されるのを待ち、5曲目でレコードをひっくり返さなければならず、ダウンジャケットをカタログから紙のフォームで注文して数週間待っていた時代の時計だ。また、ハンティングブーツを買った店で手巻きのフィールドウォッチを買うのも皮肉っぽい流行りからではなかった時代でもあった。これらの時計は90年代初頭まで販売され、スウォッチグループがハミルトンを所有してからも続いた(ハミルトンは1970年代半ばにSSIHに買収され、SSIHは後にスウォッチグループとなった)。

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 ブランド提携の「小鳥たち」に続き、その後もさらに興味深いモデルが出てきた。オーストラリア陸軍の兵士に支給された軍用フィールドウォッチで、固定式のスキニーワイヤーストラップバーと太いアラビア数字を備えたMIL-W-46374Aのバージョンだ。その次にはアメリカ空軍用ナビゲーターウォッチのGG-W-113の2つのバージョンがあり、ケースは同じだが専属の太いストラップバーと、一つには太いインデックス、もう一つには細いインデックスが付いている。また、OSHAが義務付けたH3マーク(文字盤の発光インデックスに放射性のトリチウムを使用していると時計メーカーに知らせるためのもの)付きのMIL-W-46374Bバージョンはどうだろう。コレクションの中で最も希少なのは細い数字のフォントをもつブルックストーンの時計と、アヴィレックスだ。「これらは ‘カートランドアメリカムシクイ ’です」とエリクソンは笑う。「絶滅危惧種リストに載っているんですよ!」

MIL-W-46374 オーストラリア陸軍用(右)。

 コレクション全体をよく見ると、文字盤のフォントや秒針のカウンターウェイト、ロゴなど容易に見つかる明らかな違いもあれば、個体を識別するにはほんのわずかな違いも見つかる。オーストラリア陸軍用の時計は、ケースバックに太い矢印が付いている唯一のモデルで、国王(オーストラリアは英国連邦国の一つ)に属することを示す。後のモデルでは、小さなカーキのロゴ(ヨーロッパ市場向けと思われる)と、文字盤には三角形の代わりに丸い蛍光マーカーが付いている。また、ビーンとのコラボ時計の一つでは、ロゴの後ろに小さなアンカーを配した紺色のダイヤルのものがあり、おそらく多くの海好きの消費者にアピールするためと思われる。 最後に生産された33mmのフィールドウォッチでは、より現代的なハミルトンのロゴとデイト表示、大きめのリューズを採用し、サファイアクリスタル風防を装備した。

 これらの時計に見覚えがあるとすれば、それはほぼ間違いなくフィールドウォッチというジャンル全体の原型となっているからだろう。特に細い剣のような針、 "ミリタリー "ダイヤルの24時間マーカー、そしてもちろん、民間の通販版でも標準的に使用されたナイロン製のストラップだ。サファイアガラス、大型ケース、日付表示、自動巻きムーブメントなど、より現代的なテイストに合わせて進化したものの、ハミルトンはフィールドウォッチの原型と言うべき時計の製造を止めたことはなかった。このラインは1980年代からカーキの名前で知られている。

通販時計の「お宝」たち。L.L.ビーン、ブルックストーン、オービスと提携したハミルトン。

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 これらの時計の人気は不朽のものであり、今年、ハミルトンは最初のMIL-W-46374フィールドウォッチへのオマージュとして独自のモデルをリリースした。カーキ フィールド メカと名付けられたこのモデルは、直径がより広く受け入れられる38mmになったことを除けば、実質的にオリジナルモデルの生き写しと言っても過言ではない。 それも手巻き2801-2ムーブメントを採用している。これも「よく似た秋の小鳥たち」の一つになり得るのか?

 「いずれは手に入れると思います」とエリクソンは言うが、彼は自分の好きなヴィンテージのものを探し続けることに満足しているようだ。

 春のハイキングで見たウグイスの数を数える熱心なバードウオッチャーのように、彼が探し続けるのはいまだに見つけにくい時計だ。例えば、ブリゲード(旅団の意)と呼ばれる軍用余剰品ブランドの「フードを被った射手」のロゴが入った黒文字盤の時計のように。 非常に珍しく、たまにしか出てこない。しかし、森の中で何時間もかけて日の出のめずらしいウグイスを追い続ける人のように、エリクソンは我慢強い。そして今もなお、新しい収集対象が見つかっているのだ。

マイロン・エリクソンの「よく似た秋の小鳥たち」全17種。

 時計収集は恐怖を伴う趣味だ。偽物や合成時計という地雷を踏む可能性、コレクターコミュニティのエリート主義的な空気、時計の希少性や当然その高額な価格は、多くのコレクターを凍り付かせる。マイロン・エリクソンが彼の「よく似た秋の小鳥たち」を好む理由はまさにここにある。

 「彼らは手頃な価格で手に入りやすく、収集するのが楽しいのです 」とエリクソンは言う。「聖杯と呼ばれる時計を手に入れるのと同じくらいの喜びを、これらの時計はもたらしてくれます」と。

 バードウォッチングに例えるのは適切だろう。中には、ハクトウワシやオオツノフクロウだけを探しに出かけて、下草の中に隠れているような小さな鳥たちを通り過ぎてしまう人もいるだろう。しかし、時に最も甘美な歌声をもつのは、これら目立たない小鳥たちなのだ。

写真提供 マイロン・エリクソン