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腕時計の価格別コレクションの作り方 10万円、100万円、1000万円

新しいマンスリーコラムの第1回目は、長年ロンドンで活躍する時計記者のロビン・スウィッチンバンク氏による価格帯別のアドバイスだ。

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時計収集。これは富裕層の遊びだろうか? ある程度はそう言える。お金持ちは時計を集めるものだ。昨年のフィリップスのレーシング・パルスのような記録的なオークションから騒ぎは起こったが、135のロットで計2760万ドルもの価格がついたのだから、時計の収集が富裕層のものと言われるのも分かる。

 しかし、私の子供たちがワールドカップのころにパニーニのステッカーを集めるのと同じように、収集とは相対的に見れば数のゲームだ。私は10代の頃、スウォッチを集めていた。また、自家用滑走路を持っていて、値札にバイナリーコードで書かれているようなゼロの数が多いときにしか買わないような人達にも会ったことがある。私たちはどちらも、コレクターなのだ(または、だったのだ)。

 そのことは自分が買えるものしか集められないという幻想を打ち砕くことはできないが、少し空想的な思考をしてもいいだろう。私は20年近く、ライター/編集者/希望的観測者としてこの業界をカバーしてきたが、私の願望とエージェントはめったに合意しなかった。だから、合理的に考えてみよう。この2つを両立させるための戦略があるのだ。

 例えば、コレクターの中には、デザインやブランドといった時計のスタイルに関すること、もしくは好みの機能、あるいは価値が上がると期待されるもの、などに焦点を当てることを勧める人達がいる。ダイバーズウォッチに絞るといいとか、パテックにすれば、とか。あるいは、クロノグラフ、特に「~トナ」と韻を踏んだ時計がいいと薦める人もいるだろう。これら全て試してみることは可能だし、特定の視点をもっていることは素晴らしいことだ。また、自分でルールを決めずに、好きなものを集めていくのもいいと思う。 

 しかし、あなたは収集を始めることと続けることに関して知りたくてこれを読んでいるのだと思う。そこでいくつかの分類をしよう。そこで、我々ほぼ全員にとって大きな問題となるのが、お金だ。どれだけの額を使うかということだ。

 以下、我々は10の倍数で予算を設定した:10万円、100万円、または1000万円(あなたはラッキーだ)。時計収集ライフをスタートさせるために該当のところを読んでみて欲しい。

 まず、いくつかの前提条件がある。ここで集めているのは機械式であって、クォーツ時計ではない。消耗するような主張はしない。我々は一貫して主観的だということを明言しておく。そして、小売価格は(ほとんど)常に上昇している。

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価格帯:10万円

ためらうことはない、初心者の予算だ。でも、楽しめる。

 実際のところ、このレベルではどこまで期待するかによる。メジャーブランドはここには登場しない。タグ・ホイヤーのクォーツモデルのフォーミュラー 1でさえ、ロンジンのエントリーレベルの機械式時計と同様に、現在では予算オーバーだ。

 それでも私はあまり問題視していない。なぜなら、スイス製の中でさえ、このカテゴリでまだまだ楽しませてくれるものがたくさんあるからだ。ハミルトン、サーチナ、ミドー、そしてスイス最大のメーカーの一つであるティソ(モルガン・スタンレーによると、ロレックスの2倍、年間200万本以上の時計を販売していると推定されている)が、リーズナブルな価格でスイス製の良さを提供してくれる。ハミルトンの定番、カーキ フィールド メカニカルは、色褪せないミリタリーウォッチのルックスと、ETAベースの80時間パワーリザーブをもつ手巻きキャリバーH-50を搭載し、価格は7万円(税抜)だ。初心者の時計コレクターに薦めやすい時計である。

予算を分けて早めに収集を増やそう

 このような価格帯なら、予算内で早めに収集を始められる。日本のミヨタのムーブメントを搭載した時計や、中国からきた(不当に過小評価されている)シーガルのパワーユニットを搭載した時計は、その価格を考慮すると、頻繁に期待以上のものを与えてくれる。フランスの新興ブランド、バルチックは両方のムーブメントを使用していて、たったの5万円ほどだ。

 あるいは、海峡を飛び越えて英国製を試してみるのもいい。イギリスの時計ブランド、Farerは、セリタのムーブメントを搭載したアドベンチャーウォッチ「Field」を995ドルで発売したばかりだ。スコットランドのMarloeも一見の価値がある。

 そしてもちろん、スウォッチのシステム51は、予算の残りを陽気なシンプルさで埋めてくれる。

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価格帯: 100万円

 私たちは今、宝の山に入った。この予算で強力な基盤を構築し、一時の流行に流されないようにしよう。

 使う額が大きくなるほど疑問が出てくる。そして、この価格帯で最大の疑問は、アイコン・ウォッチを1本買うべきか、それとも予算を分けて複数買うべきか、ということだ。

 私の個人的な見解では、100万円は時計コレクションを始めるには素晴らしい予算だと思う。個人の責任で使うべきといってもいい。あなたの100万を賢く使えば、いくらかのお金を稼ぐことができるかもしれない。

 そのための良い方法の一つが、ロレックスに最初の投資をすることだ。昨年の夏の終わりに発売された新しいオイスター パーペチュアル41の定価は56万5000円(税抜)だった。今買おうとしても多分手に入らない。現時点では、個人の販売者を介して中古で手に入れる方法でも、さらに10万円ちょっと(!)の上乗せが必要だ。

 次はそのロレックスに加えて、間違いのない中間層のクラシックな時計を2本紹介しよう。バランスの取れた投資には、オリスのアクイスデイト ダイバーズウォッチ(33万円・税抜)のように機能を重視したものや、よりドレッシーなものも含まれる。サーモンダイヤルのモンブラン ヘリテイジ オートマチック(25万円・税抜)がそうだ。ベースはカバーされた。

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 他のチョイスとして、複雑機構、特にクロノグラフについて考え始めるのもいいかもしれない。ロレックスのデイトナは現時点では圏外だが、他のメジャーなクロノグラフではそうでないものもある。

 オメガのアップデートされたスピードマスターは、完璧なマスター クロノメーターキャリバーを搭載し、64万円(税抜)〜だ。もしあなたの地元の店からそれらの1本を提示されたら、もたもたしていてはいけない。また、タグ・ホイヤーのカレラ クロノグラフは、多くの消費者にとって多すぎるほどのモデルを出しているが、カレラ 160年 モントリオール リミテッド エディション(73万円・税抜)のようなちょっとしたものを提供することもできる。その上、他の一流の1本のために予算を残すことができる(よりハードなチューダーのブラックベイ約33万円などが買えるだろう)。

 あるいは、一本の時計に全額を費やしたいとしよう。家宝級のモデルとしては、ジャガー・ルクルトのスティール製マスター・ウルトラスリム・ムーンがあり、パネライのルミノール パワーリザーブと同様に予算内に収まっている。また、興味のある人なら、意見の分かれるゼニスのクロノマスター スポーツがちょうど100万円の予算内だと言うだろう。

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価格帯:1000万円

大金持ちの方、時計の世界は(ほぼ)あなたの思いのままだ。

 ここでは、小さくて素敵な宝の山から本格的な逸品の領域へと進んでいく。このような購買力があれば -私の職業ではないが - スイスの主流ブランドの中でも買えないものはあまりない。最高級のコンプリケーションを除いては(残念ながら)。

 明らかにパテック フィリップがここでは射程圏内だが、現在広く報道されているように、最近ディスコンになったRef. 5711スティール製ノーチラスの中古価格がこの予算をオーバーしている。率直に言ってこれには困惑するが、それでもホワイトゴールド製のRef.5172G手巻きクロノグラフを819万円(税抜)で買うことはできる。

 既に白昼夢を見ているようだ。このレベルでは集中力が必要だ。さもなければ、選択肢に圧倒されてしまう。要するに、幅広く押しも押されぬ高級時計を集めるか、あるいは、時計史に残る名品を少数集めるか、だ。

このレベルになると、集中力が必要だ。さもなければ、選択肢に圧倒されてしまう

 戦略その1は、カテゴリー別に購入することだ。例えば、カレンダーウォッチや、前述した問題のノーチラスを除けば、1970年代のスティール製スポーツウォッチに照準を合わせることができる。機能的にはシンプルだが、Ref.5711やロイヤル オークの「ジャンボ」エクストラ シン、そしてヴィンテージのIWC インヂュニアSLとヴァシュロン・コンスタンタン222モデルを中心としたコレクションには、完成度の高さがある。早期に予算を突破する可能性が高いだろうが、十万円台の価格で手に入るSLもある。しかし、ジュネーブのプラン・レ・ワットからの供給問題を考えると、ジラール・ペルゴのスリーパー、ロレアートに目を向けたり、生産されなくなった1970年代のオメガ シーマスター200(SHOMと呼ばれる)の状態のいい1本を中古サイトで探したりする方が、より迅速に満足を得られるだろう。

 戦略その2は、現在、高級時計作りのより詳細な物語を形成しつつあるインディペンデント・ブランドに注目することだろう。ただ、先走ってはいけない。 ドゥ・ベトゥーンや 、ウルベルク 、現代の時計作りの神童といわれるレジェップ・レジェピなど、生産本数が4桁に達することのないメーカーを探し始めると、もはや予算が尽き始める。結局のところ我々は、MB&Fの7万5000ドルのプラチナ製LM101がお買い得に見えるような希少なゾーンにいるのだ。そしてグルーベル・フォルセイを考えるのは忘れたほうがいい。買い取り価格はこのレベルからさらに上に数段階、といったところだ。

 戦略その3は、エリートブランドにフォーカスすることだろう。現行モデルとヴィンテージのパテック(年次カレンダー搭載のRef.5726のような中古の複雑機構のノーチラスは、Ref.5711以下の価格で手に入る)の小規模コレクションをつくることは可能だし、ヴァシュロンやF.P.ジュルヌで同様のコレクションもできる。中古のジュルヌは入手困難だが、クラッシックな 自動巻きのオクタ・リュヌようなものは500万円前後で手に入るはずだ。

 そして戦略の4番目だが、純粋な主観が許されるなら、これが私のものだ 。私はパイをスライスしよう。 毎回。少なくとも10通りの方法で。 その中で私がこの記事で挙げた時計を 喜んで所有する。 10万ドルあれば 何本も所有できる。 ブライトリングのトップタイム リミテッドエディション(54万円・税抜)は当然候補だし、IWCのポルトギーゼ・​クロノグラフなどを加えて、今はまだ誰も話題にしていない1970年代のヴィンテージ・クラシックを探しに行くこともできる。SHOMもその一つだろうし、第二世代のホイヤー カレラにも深い愛情をもつようになった。数十万円で入手可能なものもある。

 途中でモンテクリスト伯の物語を想像しながら、しばしの間、座ってコレクションを楽しむこともできた。まるで自分が手に入れたような気分になった。

ロビン・スウィッチンバンク(Robin Swithinbank)は、独立系ジャーナリスト、ライターであり、ニューヨーク タイムズ・インターナショナル、フィナンシャル タイムズ、GQ、ロブ・レポートなどに定期的に寄稿している。また、ハロッズのコントリビューティング・ウォッチエディターでもある。

イラストレーション:ラミ・ニエミ