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ウォッチスポッティングの世界は、いまや飽和状態にある。だからこそ我々は、その喧騒を突き抜けるような人物、場所、プロダクトだけに、貴重なインク(というかピクセル?)を費やすようにしている。そして今回の1本は、その条件を十二分に満たしている。
2025年の“TIME誌が選ぶ世界で最も影響力のある100人”に選ばれた栄誉を祝し、エド・シーラン(Ed Sheeran)が身につけたのは、あらゆる雑誌の表紙に登場した時計のなかでも最高峰といえるだろうパテック フィリップのRef.5004Aだった。ステンレススティール製のスプリットセコンド・パーペチュアルカレンダーである。このモデルはわずか50本限定とされており、多くの時計愛好家にとって聖杯リストの頂点に君臨している。5004はどのバリエーションであっても、複雑系パテックコレクションの中核となり得るが、なかでもSS製でシンプルなオビュ(弾丸)型インデックスを備えたものはまさに別格だ。この時計はパテック フィリップから正式に発表されたことはなく、ジュネーブのパテック フィリップ・サロンを通じて、顧客に直接案内されたに過ぎない。最終的に、5004Aの存在が広く時計界(およびHODINKEE)に知られるよりも前に、その全生産分はすでに完売していた。
Photographs by Adrienne Raquel for TIME
エド・シーランほどの人物であっても、TIME誌の表紙を飾り、2025年の世界で最も影響力のある100人に選出されるというのは真に祝うべき出来事である。そんな特別な瞬間に聖杯たるパテックを手に取るのは、ごく自然な選択だろう。日常的にはさりげなく見えるかもしれないが、Ref.5004Aはまさに“大舞台”のための時計である。2018年にはジョン・メイヤー(John Mayer)がこの時計をグラミー賞の場に着用し、HODINKEEのInstagramにこう投稿していた。“音楽界最大の夜にふさわしい時計……パテック フィリップ 5004A(ステンレススティール製) - JM”
パテックフィリップ Ref.5004A。Photos by Mark Kauzlarich
お気づきかもしれないが、ここにはパテック フィリップの象徴ともいえる、光沢のあるスクエアスケールのアリゲーターストラップは見当たらない。SS製ケースにふさわしく、シーランはよりカジュアルなブラックのラバーストラップを選んでいる。おそらくはステージ上でも着用できるようにとの配慮だろう。このストラップはデラグスのブラックラバーCTSストラップと思われる。このストラップをよりはっきり確認できるのが、シーランが3月15日にInstagramに投稿した1枚。ニューオーリンズの路上でザ・ソウル・レベルズと共演する様子だ。当時は、どんなに目の肥えたウォッチスポッターでさえ、この同じ時計の存在を見逃していた。
エド・シーランは間違いなく、世界有数の著名な時計コレクターのひとりであり、2023年にジョン・メイヤーをホストに迎えて出演したTalking Watchesはこれまでで最も視聴された回のひとつとして知られている。しかし、彼が5004Aを所有していると世間が知ったのは、おそらく今回の表紙が初めてだったと言っていいだろう。それがまた実にクールである。だが驚くにはあたらないかもしれない。というのも、シーランは真の“時計好き”であることを、メイヤーとの動画や2022年のベンとの対談でもしっかりと証明していたからだ。
シーランとHODINKEEの関係はそれだけにとどまらない。彼はこれまでに何度か本サイトに寄稿しており(こちらとこちら)、さらには我々とともにG-SHOCKの限定モデルをデザインしたこともある。彼が公の場に姿を現すたびに、ウォッチインスタグラム界はざわつくのだ。先月もその例に漏れず、シーランは『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン(原題:The Tonight Show Starring Jimmy Fallon)』の出演時、未発表だったIWCのブラックセラミック製インヂュニアを着用していた。
Photographs by Adrienne Raquel for TIME
TIME誌の別フォトシュートでは、シーランが彼にとって新たな1本と思われる時計を着用している姿も確認できる。アーノルド&サンのコンスタントフォース トゥールビヨン 11である。このモデルはジョン・アーノルド(John Arnold)の遺産260周年を記念して発表されたばかりの限定11本の新作だ。アーノルドは、イギリス時計史における最高峰の時計師のひとりとされており、ルイ=アブラアン・ブレゲ(Louis-Abraham Breguet)の同時代人であり友人でもあった。実際、ブレゲが製作した最初期のトゥールビヨンのひとつはジョン・アーノルドに捧げられている。
シーランが選んだパテックは、どちらかといえばメインストリーム寄りのチョイスかもしれない。しかし今回、彼は世界で最も読まれている雑誌のひとつに、さりげなくブリティッシュウォッチメイキングの粋を忍ばせてみせた。現在のアーノルド&サンはスイスのラ・ジュー・ペレ社が所有しており、さらにそのラ・ジュー・ペレは日本のシチズン傘下にある。しかしながら、アーノルド&サンの時計づくりは、いまなお英国時計製造の伝統様式に則って行われている。いずれにしても、エド・シーランが“リアルワールド”の場で真に特別な時計を、彼ならではのスタイルで紹介してくれる姿を見るのはただただ素晴らしいことだ。
Photographs by Adrienne Raquel for TIME
2025年版、TIME誌が選ぶ世界で最も影響力のある100人の全リストは、TIME.comにて閲覧可能だ。また雑誌はすでに店頭に並んでいる。
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