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Four + One ピアニストの心に響くエレガントな腕時計

音楽家として、またコレクターとして、洗練というのはコージ・アットウッド(Koji Attwood)の得意とするところだ。

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コージ・アトウッド氏が幼稚園に通っていたころ、先生は彼に問題があることに気づいた。字を書くのも、ハサミを使うのも、靴ひもを結ぶのも苦手だったのだ。そこで先生は、手と目の連動をよくするために、ピアノを弾くことを勧めた。

 ジュリアード音楽院で博士号を取得し、リンカーンセンターで多くのソロ公演を行った現在、49歳のアトウッド氏はまだピアノを弾き続けている。ユタ大学の教授として、ほかの楽器のために書かれた曲をピアノソロ用に書き起こすことを専門としている。「この方法だと、ただ聴くだけでなく、積極的に参加することができるんです」と彼は言う。靴紐を結ぶのも苦にならない。

Koji and piano

 日本人の母とアメリカ人の父のあいだに生まれたアトウッド氏は、カンザス州の小さな町、ローレンスで育った。幼いころ、近所の人たちはアトウッドと母親が道を歩いていると、「日本人を見たことがない」と家から出てきたという。しかし、悪いことばかりではなかった。「こんなことを言うと信じてもらえないのですが、少なくとも私がいたころのカンザス州の公立学校は素晴らしく、本当に素晴らしい先生がたくさんいました」。

 そして、その一人の幼稚園の先生が、その後の彼の人生を形作る道筋を描いたのだ。彼は、音楽を外国語のように扱う鈴木式勉強法でピアノを学んだ。両親とも音楽家ではなかったが(実際、父親はピアノではなくゴルフを習わせようとしていた)、アトウッド氏には音楽的なつながりがひとつある「ひいひいおじいさんのトーマス・アトウッドは、モーツァルトに師事していたんです」。

inside a piano
inside a piano

 ピアノに目覚めたのは幼稚園の先生の影響だったが、時計は祖父の影響だった。幼いころ彼は祖父の懐中時計のメカニズムに魅了された。ピアニストがムーブメントの仕組みに夢中になるのは当然だろう。ピアノには1万個以上の部品があり、それらが組み合わさってピアノのアクション(仕組み)を形成し、それぞれのピアノの独特の「声」を作り出している。また、高級ピアノはラッカー塗装で仕上げられており、内部の機構と同じように緻密に整えられている。

 アトウッド氏のコレクションは、この外見の美しさと内面の精密さの融合を反映している。どの作品も、卓越したキャリバーに裏打ちされたエレガントな美しさを誇っている。しかし、同氏は流行り廃りを気にしない。彼は、1世紀にわたるコレクションを、ひとつのテーマでまとめているのだ。コンパクトで、洗練されていて、珍しい。ここでは、彼のコレクションから注目すべき4つの時計と、秘蔵の1冊をご紹介する。


彼の4本
クレドール GCBE993 螺鈿ダイヤル
sparkly watch

 「自分の血筋を考えると、日本製の時計を持っていないことに少しうしろめたさを感じていたんです。10代のころは持っていたんですが、それっきりで」と、アトウッド氏は言う。そこで彼は、セイコー プレザージュを調べ始め、グランドセイコーとそのスプリングドライブムーブメントに行き着いたのである。スプリングドライブは、ピアノの世界でも興味深い存在であることがわかった「ヤマハのピアノに、アコースティックとエレクトリックのハイブリッドモデル『アバングランド』があるんです。このピアノは、どちらか一方に偏らないという、日本らしい技術的な問題に対処する方法を思い起こさせてくれるのです」。

gorgeous dial
fantastic finishing

 アトウッド氏は、何かに夢中になって、それをとことんまで追求したときに初めて完成したと思えるような人物なのだ。グランドセイコーの先にあるのが、セイコーのサブブランドであるクレドールだ。手仕上げの時計に特化し、日本のクラフトマンシップの極みと魅惑の美学を体現している。そして、「螺鈿」を文字盤にあしらった美しいクレドールにたどり着いた。マーカーは手描きで、6時位置のすぐ上にある天文模様は、何度も漆を塗り重ねた素材を手作業ではめ込んでいる。

ジャガー・ルクルト クロノグラフ(1940年代)
vintage JLC

 アトウッド氏は2年間かけてこの作品を研究し、最終的にベルギーのディーラーから金庫に眠っていたものを手に入れた。「ばかばかしいほど小さいんです。気前よく言えば、33mmくらいでしょうか。当時、文字盤によくこれだけの情報を詰め込むことができたものだと感心しますよ」。

1940 engraving

 この時計に搭載されているCal. 281は、1932年に発表されたブレゲヒゲゼンマイとコラムホイール式のクロノグラフ機構を誇るユニバーサル・ジュネーブのキャリバーだ「ピアノの練習のときや朝のコーヒータイムやなんかにこのクロノグラフを使っています。私にとってのツールウォッチですが、どこかロマンチックなところもあるんです」。

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オーデマ ピゲ ジュール オーデマ
elegant AP

 「オーデマ ピゲは素敵な時計を作っていますよね。今はロイヤル オークだけですが。90年代後半と2000年代前半のモデルは、少なくとも私にとっては、すべての条件を満たしていると思います」と、同氏は言う「ムーブメントも美しいし、ケースバックにある珍しいブリッジがすべてですよ。手巻きで、ゆっくりとしたビートを刻む。実際に動いているバランスホイールを見ることができるんです」。

 彼はこの時計をステージにも持っていくそうだ。

AP finishing
AP dial

 「演奏用に完璧なプレイングウォッチです。ちょうどいい重さなんです。適度な重量感がありながら、重すぎることもない。私にとって本当にちょうどいい。大きすぎず、小さすぎない36mm。完璧ですよ」。COVID-19は彼のパフォーマンスにも影響を及ぼしたが、最近同氏はよい目的のためにパフォーマンスをする機会を得た。「12月にカリフォルニアで演奏しました。去年亡くなった消防士の家族のためにお金を集めるためのチャリティーコンサートでした」。この時計は、そのパフォーマンスのときに彼の手首にあった。

ヴァシュロン・コンスタンタン Ref. 2794(1930年代)
wearing VC while playing piano

 「この時計は、ヒンジ式ケース、ブレゲ数字、ブレゲ針、固定ラグ、それにエナメル文字盤を備えています。ヴァシュロン アンド コンスタンタンと書かれているほど古いものです」とアトウッド氏は言う。ネットオークションで落札したのですが、ほかに入札していたのは1人だけだったそう。エナメルの文字盤にはひび割れがあり、オリジナルのストラップが付属していたが、分解されていたためつけ心地が悪かった。そこで彼は、当時を彷彿とさせるカスタムストラップを製作した。

'30s dial

 そして、アトウッド氏のすべての作品と同様に、音楽的なつながりがある。ラフマニノフやその時代の曲を練習しているときに手首を見ると、『ラフマニノフはこの時計をしていたかもしれない』といつも思い浮かべます。それくらい古いものなんですよ。この時計は、その時代とのつながりを感じさせますし、当時の時計が持つロマンティックなイメージを表現しています。ほかとは違うのです」。

'30s movement

もうひとつ
小説「Dark Side of the Museum」、ランディ・アトウッド著(コージ氏の父)
novel on piano

 「一定の時間を確保するために、学校へ行く前に練習をしなければならないというのが、私の幼少期の過ごし方でした。つまり、朝4時半に起きるということです。父は連帯感を示すために一緒に起きて、そのときに小説を書いていました」それから数年後、定年退職したランディ・アトウッド氏は、カンザスシティのアートギャラリーで広報担当をしていた頃の経験を生かした小説『Dark Side of the Museum』を出版した。

 コージ氏をモデルにした登場人物もいる。「あの小説を見ると、朝4時半に起きて、学校に行く前に練習していたことを思い出します。もちろん、学校が終わったら、また練習。それが長年の私だったのです」。

Photography by Spenser Heaps.

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本記事に登場したオーデマ ピゲクレドールジャガー・ルクルトヴァシュロン・コンスタンタンの詳細については、各社ウェブサイトをご覧ください。HODINKEE Shopでは、これらのブランドやその他のブランドの中古時計やヴィンテージ時計を扱っています。