ADVERTISEMENT
本稿は2017年1月に執筆された本国版の翻訳です。
eBayに大物が現れるのが楽しい。そして今日そのような時計が1本あった。夢のようにうまくいくこともあるが、基本はそうでないことのほうが多いため、発見までのライフサイクルを見ているだけでもおもしろい。まず、早い段階でそれを見つけた人は夢を見つけたと思い、もしかしたら8桁の時計をその何分の一かの価値で手に入れることができるかもしれない。しかしそれについて確信が持てないので、より詳しいであろう数人の友人にそれを送る。そしてそこから時計は広がり、すぐにヴィンテージウォッチコミュニティにいるかなりの割合がそれを知ることになる。本物であれば高く評価され(ただしほかのフォーマットの取引ほど高くはない)、偽物であれば、まあ、それはそこで終了し、それを見ていた人たちは自らの生活に戻る。本モデルは現在eBayに出品している、エクスプローラー文字盤を持つロレックス サブマリーナー Ref.5513と思われるものだが、後者のカテゴリーに属する。“とてもひどい”ものだ。説明しよう。
まずサブの“エクスプローラーダイヤル”とは何か。サブマリーナー 5513の珍しいバリエーションであり、ロレックス エクスプローラーのダイヤルのように、3・6・9時位置にアラビア数字が付いている。これらの時計は信じられないほど希少で価値が高く、そのほとんどは英国で生産されているようだ。いいものが売りに出されると、それはかなり大きな話題になる。我々は少し前に、オリジナルオーナーの作品をこの記事で取り上げた。しかし、エクスプローラーダイヤルを持つサブは、文字盤だけで価値が決まるため、ヴィンテージロレックスのなかで最も偽物が多く製造された時計のひとつでもある。エリック・クー(Eric Ku)氏は、さまざまな偽物エクスプローラーダイヤルについての素晴らしい考察の投稿をしている。そしてこれらの文字盤は、著名なコレクターやディーラーの手に渡っている。
ただ問題はここからだ。今日、eBbayに出品されている時計は、1965年製のRef.5513で、現在1万6000ユーロ(当時の相場で約203万円)以上で取引されている。ああ、全然違うのに。この時計が偽物だと単純に見分ける簡単な方法がひとつある。それは文字盤がマットかどうかだ。というのもマットなサブのエクスプローラーダイヤルというものは存在しない。実際、エクスプローラーダイヤルを持つサブは、すべて光沢感のあるギルト文字盤である。この時計はその比ではないし、エリック氏が掲載した素晴らしいリソースを参考するまでもない。
この記事を書く前に、私は何人かの専門家に私の推測を確認したかったのだが、そのうちのひとりがこの件に一石を投じることを口にした。この時計の文字盤は、本物の5513 メーターファーストのマット文字盤のように見えると言うのだ。つまり本物のケース、本物のムーブメント、本物のケースバック、そしてある時点で本物の文字盤だったものが、仕上げ直されただけなのだ。ではこの時計はどのあたりが偽物なのか? まあ、それは各々の偽物の定義にもよるが。これは本物のロレックスであり、文字盤自体もロレックス製のもので、オリジナルの仕上げを除いてから、トリチウムをエクスプローラー風に塗布しただけかもしれない。コレクションの世界に身を置いていない人にとっては、それほど悪いことだとは思わないだろう。しかし文字盤だけで価値が大きく左右される業界においては、ひどい時計と言わざるを得ない。
だから、このマットダイヤルのエクスプローラーサブが本物であることを望んでも、残念ながら本物ではない。そして実際、(文字盤を見る限り)それに似たものでもない。eBay Germanyでは1万7000ドル(当時の相場で約190万円)以上の価格で取引されており、25件の入札が入っている。どこまで伸びるかは誰にもわからないが、誰がそれを買うにしても1965年製のそれなりの見栄えの5513を手に入れることになり、そうなるとすぐにその価値を大幅に上回る金額で新しいダイヤルが必要になる。我々はこの時計についてeBayに連絡をして文字盤のことを伝えた。
話題の記事
Magazine Feature 大空の時を刻み続けるパイロットウォッチという矜持
Hands-On ショパール アルパイン イーグルが41 XP TTで再び極薄化を実現
Gatherings ジュネーブのWatches&Wondersで開かれた、カルティエの特別な座談会