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ホリデーシーズンも間近に迫り、今年も終わりに近づいてきた。時計愛好家にとっては、2023年を振り返ってその年のお気に入りの時計を思い返すときが来たということだ。
これまで、バジェットウォッチ、スポーツウォッチ、ドレスウォッチ、コンプリケーションウォッチを取り上げてきたが、今日は年末のまとめとして、私が最も好きなトピックである、発表時に十分な輝き(つまり注目度)を得られなかったと思われる、もっと注目されるべき、別名2023年ベスト・スレプトンウォッチを紹介しよう。
ハブリング2 クロノ フェリックス トップセコンド(リッチ・フォードン)
ハブリング2はブランド全体として十分な関心が注がれていない。アーウィンコレクションは1万ドル以下で買える時計としては大変魅力的で、よくできた時計である。彼らが手がける最新クロノ フェリックスは、ちょっと風変わりなトップセコンドというコンプリケーションを特徴としており、これは印象的で、大変ユニークだ。
ハブリング2で気に入っているのは、アクセシビリティ(手に入りやすさ)のよさだ。これらの時計はオンラインで簡単に購入できるものではないが、欲しいと思えば手に入る。これはほとんどのカタログに当てはまることだ。トップセコンドは1960年代のモンディアクロノグラフを想起させるが、これはヴィンテージのモバードとゼニスを誰よりも愛する私にとって、同テーマはとても身近なものなのだ(この3ブランドは少しのあいだ、同じ“MZM”傘下にあった)。
ミリタリーにインスパイアされたパイロットウォッチの文字盤と針の雰囲気は、正直言ってあまり好きになれないのだが、このモデルには引かれる。ハブリング2の全体的なデザインや、ブランドとIWCとのつながりのせいかもしれないが、これは正しいと感じるのだ。トップセコンドはGPHGのプチエギュイユ(小さい針)部門でノミネートされ、最終的にクリストファー・ウォード ベル カントに敗れたが、GPHG賞にノミネートされた多くの時計は現在入手できないなかこれは入手可能である。
リッチ・フォードン、VIPアドバイザー
ロレックス GMTマスターII イエローゴールド(ダニー・ミルトン)
このカテゴリーでロレックスを選んだ私を追及する前に、話を最後まで聞いて欲しい。これは私が選んだ今年の総括のなかで、2本目のGMTである。この特別な時計をここに掲載する必要があると思ったのは、本作は少なくともこの8カ月間、最も注目されていない時計のひとつだと感じたからだ。これがWatches and Wondersで発表されたとき、私のイチオシ時計だった。イベントを前にしてほぼ正確に予測していたので、実機でそれを見たときは倍うれしかった。この時計は話題になったし、みんながそのことをしゃべっていた。ただ月日が経つにつれ、その話はささやきからほぼ完全な沈黙へと変わっていった。
さて、ここで注意喚起しておきたいのは、待望の金無垢ジュビリーブレスレットに使われている、純金イエローゴールドのGMTマスターIIには高額な値札が付いていて、小売店(あるいは二次流通市場)で見つけるのが難しいにもかかわらず、まさに純粋な時計学的興奮を与えてくれる。私の“いつか欲しい”リストに入っていて、それは2023年の重要な瞬間であった。
ダニー・ミルトン、編集長
シャネル J12 ハイパーサイバネティック(マライカ・クロフォード)
シャネルは今年、下馬評を覆すヒットを飛ばした。ロボットの形をしたプルミエール、プルミエール Xレイ、フルバゲットをセットしたJ12、巨大なピンクッションをモチーフにした腕時計、ブラックラッカーのカフ型マドモアゼル プリヴェ ブトンなどである。
今年のWatches & Wondersでは、未来的なテーマがシャネルメゾンに浸透していた。しかし、ハイパーサイバネティックは、少なくともデザイン的には、これらの製品のなかで最も興味深く最も身につけられるモデルだった。クラシックなモデルを遊び心たっぷりに進化させたこのモデルは、ほかの大手有名時計ブランドも注目しているはずだ。これにはダイヤモンドが付いているものと付いていないものがある(ハイパーではない、ブラックとホワイトのセラミック製サイバネティックはこちら)。私は“more-is-more(多ければ多いほどいい)”の美学を信奉しているので、宝石入りのものを選ぶ。
同デザインはスポーティなY2Kエンブレムをコンセプチュアルにしたもので、完璧にモダンにリミックスされている。まるでシャネルのランウェイを歩くアクセサリーのようだ。スイスのウォッチメイキングと、メゾンのデザインアトリエDNAが融合している。…私がクリエイティブな要素のあいだで影響を与えるのが大好きなことを、みんな知っているだろう?
マライカ・クロフォード、スタイルエディター
アトリエ・ド・クロノメトリー AdC22(ベン・クライマー)
小さな独立時計師がまわりでもてはやされるなか、特にアトリエ・ド・クロノメトリーは多くの人に愛されるだろうと思うだろう。しかし、彼らはそうではない。キャリバーが自社製ではないことや、技術的な革新がないことなどが理由かもしれない。ただ私は何年も前から遠くから見守っていたファンであり、彼らは私がとても魅力的だと思う、昔ながらの真に職人的なやり方で物事を進めているのだ。
今年、彼らは自社製ムーブメントを搭載した最初の製品である、“AdC22を発表した。アーキテクチャーは以前のものとほとんど同じだが、それは的外れである。彼らは自社製への一歩を踏み出す必要はなかったのに、とにかく踏み出した。そして時計そのもの、特に文字盤のバリエーションを、現在つくられているもののなかで最もクールな時計ではないと言うのだ。そう、スイスでもドイツでも日本でもなく、スペインで製造しているのだ...でもクールだと思わないか?
ベン・クライマー、創業者
ナオヤ ヒダ&コー タイプ4A(マーク・カウズラリッチ)
私たちは1年のあいだにたくさんの打ち合わせをして、そのなかでたくさんの時計を取り扱う。ただそのほとんどは、業界の動きの速さゆえ記事にはならない。特に飛田直哉氏の時計は残念なことだ。今年初めに彼がニューヨークを訪れた際、彼は新しいタイプ4Aとタイプ4A-1の時計を披露してくれた。それはこれまでで最も思慮深く、人を引きつけるようなショートミーティングであった。
2万ドル(税込286万円~)に迫るこのふたつの時計の価格に、コメント欄からは大きなどよめきが起きた。そのうちのひとつは、大幅に改良されたバルジュームーブメントがこのような高価な時計になるというアイデアにより起きた。それはシンプルなものから複雑なものまで、あらゆる時計の歴史を完全に無視しているだけでなく、これらの時計のクラフトマンシップに関するポイントも外しているからだ(エボーシュムーブメントは、現代の時計製造の歴史のなかでより一般的なものであり、史上最もコレクターの多い時計のいくつかを生み出している)。
2023年から2024年のあいだに生産されるタイプ4Aはわずか15本と、何にそんなに時間がかかっているのかと思うかもしれない。しかし時計を実際に手に取ってみると、この時計に込められた飛田氏の心遣いや職人技を感じられるだろう。ジャーマンシルバーのダイヤルには、エナメルで埋め尽くされた手彫りの数字が刻まれている。あまり目にすることがないだろう針の裏側は、軽量化と効率アップのためにくり抜かれ、一方で表側は目を引くファセット加工が施されている。ケースの仕上げも素晴らしく、ほかの時計と同様、ヴィンテージのインスピレーションを取り入れながらも、紛れもなく現代的だ。54歳にして、どうしても世に出したいと思ったものを作るために、ゼロから会社を立ち上げたという男性のストーリーもある。これらすべてが相まって、素晴らしい時計となり、今後さらに注目すべきブランドとなるのだ。
マーク・カウズラリッチ、エディター兼フォトグラファー
デ・ライク&カンパニー ミッフィー ムーンフェイズ シリーズ2(エリン・ウィルボーン)
ミン ムーンフェイズの、磁力のように引きつけられるその魅力的な星に思いを馳せたあと、私はいわば時計デザインの気まぐれというウサギの穴(超現実的な)に完全に落ちてしまった。2023年に発表された作品の中で、間違いなく最も気まぐれな作品のひとつは何だろうか? それはデ・ライク&カンパニー(De Rijke & Co)によるミッフィー・ムーンフェイズの第2弾である。
自分の偏見を自認するために伝えると、私は子どもの頃から熱狂的なミッフィーファンだった。恨むなら恨んで欲しい。しかしデ・ライク&カンパニーのミッフィーへの賛辞は、すべてを考慮すると、子どもっぽさを感じさせない。間違いなく遊び心があって魅力的なのだ。ムーンフェイズに描かれたミッフィーのキャラクターと、それ以外の装飾の少ない文字盤のバランスが、文字盤にウサギのイラストをあしらった時計としては見事な洗練度を実現している。そして小さなミッフィー自身も、(クラフトマンシップに関心のある方のためにお伝えすると)すべて手作業でラッカーが塗られているのだ。
カートゥンウォッチにしてはちょっと高い? そうだ。ムーンフェイズ機能自体もしかしたら少し読みにくいかもしれない? これもそうだ。ミッフィーのキャラクターは、繊細でありながらも間違いなくかわいいだろうか? これもそう。この最後の事実こそ、これまでの不満を打ち消すのに十分だ。もし誰か、二次流通市場で本モデルを手に入れられる場所を知っている方がいたら、お気軽にご連絡を。真剣な問い合わせのみ受け付けよう。
エリン・ウィルボーン、コピーライター
AnOrdain モデル3(トニー・トライナ)
私はAnOrdainを最もエキサイティングな時計メーカーのひとつだと思っている。手に取りやすいクラフトマンシップのブランドは、すべての時計のなかで最も魅力的な物語のひとつであり続けている。だからこそ何年にも続くウェイティングリストがあり、新規注文さえ受け付けていないのだ(近々変更されるらしい!)。
今年、AnOrdainはモデル3を発表した。まったく新しいケースデザインだが、ストーリーは文字盤から始まる。モデル3は、ヴァシュロン、バーバリー、レベッカ・ストラザーズなどのボックスを作ってきたメソッド・スタジオ(Method Studio)の手彫りの木箱にインスパイアされた、波打つエナメル文字盤が特徴だ。パターンが文字盤に型押しされ、AnOrdainに属するエナメル職人が、手作業でエナメルを塗り、質感のある文字盤へと変えていく。
偏見があるかもしれないが、5月、AnOrdainはHODINKEEとコラボレーションした限定モデルで、新型のモデル3をデビューさせた。典型的なHODINKEE流であり、手彫りのサンバーストパターンが施された落ち着いたグレーダイヤルを特徴としていた。
だが新しいAnOrdain モデル3が本当に優れていると信じているし、ウェーブパターンを引き立たせるために明るいエナメルを選んだというブランドの意向が大好きだ。モデル3に限らず、私がAnOrdainについて最も評価しているのは、ブランドが大きな関心を集めているにもかかわらず、ルイス・ヒース(Lewis Heath)氏とチームがここ数年にわたってゆっくりと成長してきたことだ。クラフトマンシップが損なわれないようにすることに重点を置きながら、ゆっくりと着実に成長してきた。この事実は決して軽視されるべきではない。
トニー・トライナ、エディター
ショパール アルパイン イーグル ケイデンス 8HF(ジェームズ・ステイシー)
あまり注目されていないものが欲しい? ではハイビートでフルチタンのアルパイン イーグルはどうだろう? さらに限界レベルのものが欲しい? アルパイン イーグル ケイデンス 8HFは当初、2021年11月に異なる文字盤処理(ゴージャスなグレー文字盤)で発表された。そのときは注目しなかったが、ショパールが2023年の新しいバージョンを発表した際、この変わり種のアルパイン イーグルが提供するミックスが大好きだったので心に留めておいた。チタン、スポーティなブラック/オレンジの文字盤加工、41mm径のサイジング、そして5万7600振動/時(8Hz)で時を刻むオートマチックムーブメントだって? ショパールよ、僕とマニアックな話をしよう。
僕はアルパイン イーグルの37mmバージョンのほうが好みであることは認めるが、このように繊細で特殊なフォーマットのためであれば譲歩もできる(2021年リリースのグレーダイヤルと2023年リリースのブラックダイヤル、どちらを選ぶかは難しいだろうが)。なかにはショパールの自社製Cal.01.12-Cを搭載。約60時間のパワーリザーブがあり、5万7600振動/時という猛烈なスピードで時を刻む。
この時計はただ関心が注がれていないだけではない。手首に装着すれば、本当に注目されなくなるのだ。アルパイン イーグルコレクションの、静かでワイルドな逸品。いつか自分のものと呼べるものを手に入れたいところだ。
ジェームズ・ステイシー、リードエディター
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