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Bring a Loupe ロレックス “RCO” ポール・ニューマン デイトナ、ペンキまみれのサブマリーナー、そして美しいオメガのクロノメーター

今回も驚くべきヴィンテージウォッチをご紹介。

本稿は2020年8月に執筆された本国版の翻訳です。

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今回でこのコラムの連載が100回目を迎えることを、大きな喜びと、そして少しの驚きとともにお知らせしよう。ヴィンテージウォッチの世界で注目すべきもの、そして(記事執筆当時)入手可能なものの一部をお届けしていく。この記念すべき日にふさわしく、今週のリストは市場に出たばかりのオメガのクロノメーターや、初代ファーブル・ルーバ、そして誰もが認める至高のステンレススティール(SS)製ポール・ニューマン デイトナなど唖然とするようなものばかりが揃った。そしてそれだけではなく、画家が愛用したサブマリーナーや、イタリアの空挺部隊が着用したブライトリングにも注目してみて欲しい。


1967年製 ロレックス サブマリーナー Ref.5512
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 どうしても欲しいものがあるのでなければ、予算が許す限り最高のコンディションを選ぶのが得策だ。不動品のほうがいくらか安上がりで手に入れやすいかもしれないが、保存状態が良好なもののほうがオリジナルデザインの持ち味を余すところなく伝えられるという点で、客観的には望ましい。これは私が年老いて白髪になるまで変わらない持論である。しかし、特別な場合には、また違った考え方が必要になる。ヴィンテージ時計収集の一般的な理屈に反するかもしれないが、この最初の1本は多くの魔法を秘めている。

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 サブマリーナーと呼ばれる少し古めかしい時計についてはすでにご存じのことだと思う。さて、この時計がなぜこれほどまでに魅力的なのかを説明しよう。思い浮かんだ言葉を口にする前に、その出自について考えてみて欲しい。この時計は、画家が所有し、毎日着用していたものだ。ケース、クリスタル、ベゼル、ブレスレットが絵の具でまだら模様になっているのはそれが原因だ。さらにケースバックには“I LOVE YOU MR BOND, SHARON”という刻印もあり、パーソナルな雰囲気を醸し出している。多くの人にとって、このふたつの要素と、摩耗して補修されたダイヤルの組み合わせは、極めて危険なものに見えると思う。だが、私はこの時計にはユニークな魅力があると思いたい。

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 私は、リセールや 資産価値を気にすることなく、生涯の大半で着用され、まるで盗難にあったかのような状態になった時計が大好きだ。このような時計は決して美しいとは言えないし、簡単に売却できるものでもないが、新品が持つ美しさにはない人間味がある。貸金庫に何十年も眠っていたものとは違い、これらの時計にはストーリーを伝える傷跡があり、以前身につけていた人たちとの切っても切れない絆が刻み込まれている。私はやはり最高のコンディションのものを選ぶことをおすすめするが、これはそれとは異なる最良の選択だと主張したい。

 サザビーズが最新のオンラインセールでこのサブマリーナーを出品している。その見積もり価格は5000ドルから7000ドルに設定されており、あらゆることを考慮すると妥当と思われる。


オメガ クロノメーター Ref.2364
Omega

 次の時計の出品を見つけたときは、とてもうれしかった。まさに私が思い描くeBayの出品物であり、このコラムが推進するハイ&ローの探究心を象徴するものだからだ。保存状態のいい時計に無名の売り手、写真ではうまく伝わらないが、ひと晩中見ていたくなるような写真……。幸運なことに、偶然にもそれはめったに市場に出回らない素晴らしい時計であり、この出品されたばかりの時計を所有する絶好のチャンスであった。

Omega

 ご覧いただいているのは、オメガ クロノメーター Ref.2364だ。このモデルがオメガと時計製造全体の歴史において重要なピースであることは、すでにご存じのことだろう。その重要性の理由は、もちろんスモールセコンドを搭載した17石のCal.30T2RGにある。同ムーブメントは、このモデルに初めて搭載された。オメガはこのキャリバーでピリオドクロノメーターのコンクールで大成功を収め、その卓越した性能に全力を注いでいたことはCal.30T2RGの仕上げを見ても明らかである。私の考えでは、このリファレンスの最も魅力的な個体はSS製ケースのものであり、非貴金属からでも途方もない美しさを生み出せることを証明している。

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 ケース番号は見えないかもしれないが、これは1941年のものだと推測される。80年近い歳月を経ているにもかかわらず、この時計に見られるのはわずかな磨耗だけで、優美に時を刻んでいる。これはツートンカラーのダイヤルを見ればよくわかることで、インダイヤル内側のわずかな傷と、トーンを隔てるリングの周囲にあるわずかな粒子を除けば、傷ひとつないように見える。私がこれまで見てきた、黄ばんだり、傷んだり、研磨されすぎたりしているものと比べると、この作品にはそれだけの価値がある。

 このオメガはeBayのオークションに出品され、土曜日の夕方に終了する(執筆当時)。現在、最高入札額は4949ドルとなっている。


ファーブル・ルーバ ディープブルー Ref.59603
Favre

 このコラムを書くようになってから、より多くの時計を扱わせてもらえるようになった。コレクター仲間の手首にあるものや展示会のブースで初めて目にするものなど、記事にする前に特定の作品について予備知識を得ておくのは、当然のことながらとても素晴らしいことだ。このことを念頭に置いて、今回は私が少し前に出会った珍しいダイバーズウォッチを紹介しよう。この時計には型破りなデザインがふんだんに盛り込まれている。きっと満足のいくものだと思う。

Favre

 この時計を最後に見たのは、パンデミック前の時期に出席していたコレクターの集まりで、これを出品していた個人が納品に来たときだった。ファーブル・ルーバのディープブルーの初期型であるというこの時計は、私を大いに驚かせた。そうした経緯もあり、この時計はすぐに私の手に渡ることになった。湾曲したダイヤルの文字と、ラジウム夜光の使用を示す小さな文字が施されたこのモデルがRef.59603の初回限定品であることは間違いなく、なかなか見栄えもする。

Favre

 総合的に見てこの個体は素晴らしい状態で、ダイヤルにはブランパンやその他有名なダイバーズウォッチメーカーの名前はないが、本当にトップレベルのダイバーズウォッチである。ケースはシャープなままで、ベゼルは依然として読みやすく、ひび割れもない。しかし特筆すべきはサンバースト仕上げのダイヤルであり、最高の輝きを保っている。唯一の欠点は、10時位置のロゴの近くに少しシミのようなものがあることだが、それだけでこの時計を追い求める気が失せるほどではないだろう。

 オメガフォーラムのコレクターがこの時計を(執筆当時)希望価格2975ドルで出品している。

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ロレックス 1969年製 デイトナ Ref.6263
Daytona

 時計をしない友人とヴィンテージウォッチ市場について話すとき、私はたいていロレックスを例に挙げて、微妙なバリエーションがいかに劇的な価格差を生むかということについて説明する。赤文字1行分の値段を告げたとき、人々がどんな顔をするか想像がつくだろう。だから、会話はたいていそこで終わる。もし話が続くとしたら、おそらく名高い“RCO”ポール・ニューマン デイトナについての言及で締めくくられることだろう。これは、矛盾の価値を認識するケーススタディとして考えることができる。RCOを手にする機会はそうそうあるものではない(実際、このコラムでは2014年にこの時計を取り上げた)、 だからこそこの時計が選ばれるのは当然のことなのだ。

Daytona

 ダイヤルには“ROLEX OYSTER COSMOGRAPH”ではなく、“ROLEX COSMOGRAPH OYSTER”と印刷されている。もともとポンプ式プッシャーのケースに使用されることを想定していたが、ロレックスはのちに、このエキゾチックなダイヤルをRef.6263の初期モデルのケースに収めることを決定して“OYSTER”の文字を追加した。言うまでもなく、このバリエーションは非常に珍しい。どのくらい希少なのか? 現存するのは20本以下と推定されているので、この1本に対して珍しいという言葉を使っても差し支えないし、ヴィンテージデイトナコレクションの頂点に位置することを考えれば、その貴重さは魅力につながると考えるべきだろう。

Daytona

 このような系統の時計を追い求める場合、コンディションには細心の注意を払う必要があるが、幸運なことにこの個体はほぼ完璧であるため心配する必要はない。オリジナルのマーク1ベゼルやツリートランクのようなマーク0プッシャーがそのまま取り付けられており、このモデルの細部に至るまでがこのシリアルに合致していて、これまでに公表されたものからそれらがこの時計に関連するものであることがわかっている。もちろん、今回の目玉であるダイヤルに関してもそのコンディションは抜群で、これまで世に出てきたほかの個体よりもはるかに優れており、まさに“グレイル”の姿をした“グレイルウォッチ”と呼ぶにふさわしい。もしあなたがデイトナコレクションにおける最後の1本を求めているのであれば、私はこの時計がそれであると主張したい。

Daytona

 Wind Vintageの在庫のなかに、この“hen's teeth Daytona”が掲載されている。詳細はこちら


ブライトリング ブリガタ パラカドゥーティ フォルゴア
Breitling

 さて、大物がひと段落したところで、最後にちょっとおもしろく、比較的手に入りやすいミリタリーウォッチを紹介しようと思う。しかしそれは、名も知らぬ個人が基地内で着用する可能性がある、普通のミリタリーウォッチではない。そう、これは文字どおり、イタリアの空挺旅団隊員用の時計なのだ。つまり、国を代表して飛行機から飛び降りるときに身につけるためにデザインされたブライトリングだ。あなたはどうか知らないが私にはとてもクールに思えるし、もし共感してくれるなら、このまま読み進めてもらいたい。

Breitling

 ブライトリングは1980年代、イタリア語で稲妻を意味するブリガタ パラカドゥーティ フォルゴア(Brigata Paracadutisti Folgore、パラシュート旅団フォルゴア)のためにこれらの時計を製造した。この腕時計はパラシュート部隊が着用するために設計されたもので、過酷な状況下における機能性と視認性を両立させる必要があった。その結果、この時計はワイドなベゼルを持つ大胆な時計となり、悪条件下でも容易に判別することができている。この時計には、連隊からの手書きのカードと、その他の連隊の文書や資料が付属しており、この時計がどのような状況で使用されたかを知ることができる。

Breitling

 唯一、この時計の動力源であるクォーツムーブメントに魅力を感じない人がいるかもしれないが、これは軍用時計についての話であり、飛行機から飛び降りる過酷さに耐えるように設計されたギアであることを思い出してほしい。目的を持って作られた時計には特別なものがあり、この時計の場合は最高の精度と耐久性が要求された。つまり、この時計はツールウォッチなのだ。そして、この時計が今なお存在し、素晴らしい外観を保っているという点で、この時計が当時の任務を遂行できるものであったことは明らかだ。

 イギリスを拠点とするeBayの出品者は、(執筆当時)この作品を799ポンド(約1000ドル強)で提供している。