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Inside The Design グラフィックデザイナーのデヴィッド・カーソンはスウォッチに夢中

新しいマスタークラスのビデオのなかでキウイを身につけた、デザインアイコンへのインタビュー。

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本稿は2021年6月に執筆された本国版の翻訳です。

デヴィッド・カーソン(David Carson)氏はルールをあまり気にしない。実際、“アンチグリッド”の美学で知られるこの有名なグラフィックデザイナーは、それらを無視することで名を馳せた。レイ ガン誌のデザインやボーズのスピーカーのブランディングなど、さまざまなプロジェクトに見られる彼の美意識は、常に“なぜそうしないのか?”という問いを中心に据えている。ページを横方向ではなく縦方向にしたらどうか? 世界中のポスターをちぎった紙切れでコラージュしないのか? なぜ読みにくいタイポグラフィを使用しないのか? なぜスウォッチを両手首に同時につけないのか?

 カーソン氏の、人生と仕事に対する畏敬の念を欠いたアプローチは、彼にとって非常に有益であった。それは彼がその主題についてマスタークラスを提供する初めてのグラフィックデザイナーとなったほどである。クラス全体を通じて、彼はクイックシルバー、ナイン・インチ・ネイルズ、そのほか数え切れないほどのクライアントのための大ヒット作の背景にある考え方を説明するとき、彼の右手首には目を引く黄緑色のスウォッチを巻かれていた。我々はZoomでカーソン氏にインタビューし、グラフィックデザイナーとしての仕事、収集をしないという彼のマインドセット、そしてもちろんあのスウォッチについて語ってもらった。

HODINKEE: マスタークラスで最初に気づいたのは、その時計でした。それは何の時計ですか?

カーソン: 「これはスウォッチのキウイだ。どこで買ったか正確には覚えてないんだ。でも、スペインから帰ってくるときだったと思うよ。スペインでは家族と一緒に滞在していて、すごい美味しいご飯を食べたんだ。彼ら、食事にすごくこだわってるんだよね。そのとき“よし、食生活を改善しないと”というモードになっていたんだと思う。そしてこのキウイの時計を見て思った。キウイって体にいいんだ、もっと食べなきゃってね。それでこの時計を買ったんだ。動画のなかでつけてたのを忘れていたけど、意外とたくさんコメントをもらったんだ」

本当に明るいですね! この色は何と呼びますか? ほとんどニュートラルな明るさです。

 「普通は引かれない色だよね。ライムとイエローライムがたくさん入っている。普段蛍光色は好みじゃないんだけど、数字を使わずにキウイをうまく表現したというアイデアが気に入ったんだ」

昔からスウォッチを愛用していたのですか?

 「これはもっと大きな話なんだけど、1980年代当時、僕はこの分野に入ったばかりで、生計を立てるために教えていたんだ。ある日スイスでグラフィックデザイナー向けのワークショップがあるというチラシを見て、“おお、これは使えそうだ”と思ったんだ。というのも僕はまだ何の訓練も受けていなかったから。その説明を読んで、ただただ素晴らしそうだと感じたよ。チューリッヒの外れ、ラッパーズウィルという小さな町で3週間も過ごすなんてね。応募が必要で、送るものがあまりなかったけど、このプログラムに合格したよ。ジャン・ロベール(Jean Robert)が講師のひとりで、彼はオリジナルのスウォッチをデザインした人だったんだ。彼がどれだけ変わった時計をしているか、見るのが待ちきれなかったよ。でも実際、彼がしていたのはその当時買える最も基本的でシンプルなベージュとホワイトのスウォッチだったんだ。それがとてもカッコいいと思ったよ。てっきり、もっと派手で大きな数字の時計をしていると思っていたんだけどね。彼らはブラックダイヤルにブラックの数字、数字なし、大きな数字、グラフィックの数字を試していたんだ。そのクラスとジャン・ロベールとの1週間のおかげで、それ以来ずっとスウォッチを身につけているよ」

スウォッチをいくつ持っていますか?

 「正直、どれくらい持っているか推測すらできないよ。本当に集めるために買ったわけじゃないからね。あの人に敬意を表して買っているんだ」

特に好きなスタイルはありますか?

 「そうだね、これってすごく主観的なことだよね。何かが完成したって感じたり、うまくいってるとわかるのと似てるんだ。僕はただ、自分の直感を信じている。でも、たぶんいままで見たことないような、ちょっと変わったものが好きなんだよ。なんだキウイだって? ただ色であれコンセプトであれ、僕を“おっ、これはおもしろい!”って思わせるものでなきゃダメなんだ。いろんな色や形の時計をつけてきたけど、最近はそれぞれの腕にひとつずつ、2本の時計をつけているよ」 

ほとんどブレスレットのような扱いですね。

 「確かに。よく人に“なんで2本も?”って聞かれるけど、僕はいつも“まあ、いいじゃないか”って答えるんだ。あるとき空港で急いでるときに、手にしてた時計を見て、“これはいい。持っていないやつだ”と思ってそのままもう片方の手につけたんだ。あとで入れ替えようと思ってたけど、結局そのまま両手に時計をつけるのに慣れたから変えなかったんだ」

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心に残っているお気に入りはありますか?

 「分からないけど、ジャン・ロベールがつけているのを最初に見たとき、これ以上地味なものはないと思った。大きくて白いフェイスの赤いのがあって、僕はあまり赤が好きではないけど、あれは目立っていたね。変わったサイズにはあまり引かれなかったな。サイズがどんどん大きくなって、いろいろな素材にも手を出し始めたけど、僕はあの流れには乗れなかったんだ。ただ少し心に残っている哲学があった。それは表面上は意味がなさそうなことをやる、っていうのだ。そして、僕の仕事のほとんどに共通する哲学は“なぜそうしないのか? ってことだろうね。どうしてそれをやれないの?」

スウォッチはあなたのグラフィックデザインの考え方に、何らかの影響を与えましたか?

 「ああ、そうだろうね。何度も言うけど、正式なトレーニングを受けていないから、僕は“してはいけないこと”をすべて学ばなかったんだ。だから、常に自分にとって意味があることをやってきたんだよ。それであとから誰かが言うかもしれない。“ああ、このルールを破った、あのルールも破った”と。誰が言うの? どうしてダメなのか? なぜ文字を中央の端に置けないのか? 僕の場合、グラフィックデザインの教育を4年間受けていたら、やってはいけないことをすべて学んでしまって、それが逆に痛手になったかもしれないね」

あなたの考える、優れたデザインの時計とは?

 「見た目を楽しめて、見るたびに気分がよくなり、それを腕につけているほうが、つけていないよりも腕がよく見えると思えるものだ。これは本当に主観的なことで、ファッションって言うのは嫌だけどある意味でそうなんだよね。好きな色だったり、とても珍しいものだったりする。年月を経て、僕はいつもちょっと変わった、予期せぬ時計に引かれるから、その時計についてコメントをもらうことが多いんだ」

時計に関しては、形よりも機能を重視しているという話をデザイナーからよく聞くような気がします。あなたはそうではないのですね。

 「いや、まったく。これで問題ないね」

スウォッチを身につける前、時計とはどのような関係でしたか?

 「いい質問だね。記憶にないんだ。たぶん、サーフィンをするときにもつけられる防水時計が必要だっただけだと思う。グラフィックよりも実用性を重視してたんだよ」

時計は決まった場所に保管していますか?

 「いや、どこにでもあるけど、特に決まった場所はないな。デスクトップの上とか、バックパックのなかとかでも見つけることがあるよ。そういうふうには見ていないんだ。自分をコレクターだとは思っていなくてね。だいたいボックスは保存しないし。保存したほうがいいって言われてるけどね」

モノを大切にしないのは健全なことだと思います。

 「僕が雑誌レイ ガンの新しい号を制作するとき、毎回新しいCDをたくさん買って、それを聴くことがその号の体験になっていたんだ。時計でも同じようなことが起きることがあると思う。新しいフェーズが始まるんだ。新しい時計を手に入れたし、引っ越したり、新しい仕事が始まったりして…」

ある意味で時間の目印になるわけですね。

 「うん、まさにそのとおりだよ」

時計をデザインしたことはありますか?

 「正直、長年スウォッチから声がかからないことに少し驚いているよ」

いまからでも遅くありません。

 「実は1、2年前に、彼らの仕事をたくさん手がけている代理店から時計デザインの話が来たんだ。正直なところ、そのときメールにアクセスできなくなってしまってね。何週間も返信ができなくて、その話は自然と消えていったんだ。だから、実際には1度もデザインしたことはないんだ。まだチャンスはあるね」

このインタビューは、長さと明瞭さのために編集されています。

Photos courtesy of David Carson.

リズ・スティンソン(LIZ STINSON)は、AIGA発行の“アイ オン デザイン”の編集長です。彼女のデザインに関する記事は、“ワイアード”、“カーブド”、“ギズモード”、“アーキテクチュラル ダイジェスト”、“ウォール・ストリート・ジャーナルマガジン”にも掲載されています。

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