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Inside The Design オメガのフライトマスターに現代版があったらどのようなものになるだろう

この問題を専門家に相談した。その結果をお伝えする。

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私は時計に関して最上級の言葉を使うのは苦手だ。各社のマーケティング部門はすでにそれをやりすぎている(記事「時計製造における"世界記録"の裏事情」参照)。このような時計界の悪い習慣を永続させたくはないが、もし私が史上最も興味深いパイロットウォッチは何かと聞かれたら、オメガのフライトマスター(flightmaster: そう、fはわざと小文字)以外の答えは考えられないのだ。

Flightmaster image

 フライトマスターは、一般的なパイロットウォッチを、ドレッシングをかけずに乾燥させたアイスバーグレタスのように見せてしまうほどインパクトがある時計だ。クロノグラフとGMTの両方の複雑機構を備えたカラフルなディスプレイ、放射状と円形のサテン仕上げが印象的な、丸みを帯びた見事なUFO型のケース。そして1971年に120mの防水性を誇っていたことは、現代のスポーツウォッチの開発者が恥ずかしくなるほどだ。実際、ほとんどの時計がまったく退屈に見えてしまうほどの時計。フライトマスターは、そんな存在なのだ。

 しかし、この素晴らしいデザインにもかかわらず、悲劇的なまでに短命に終わってしまった。1969年に発表され、1977年までしか生産されなかった。フライトマスターはもう存在しないし、おそらく戻ってくることもないだろう。

 しかし、もしそれが復活するとしたら? オメガは2009年にプロプロフ、2014年にスピードマスター MK IIを復活させたが、いずれもコレクターに人気の高い70年代のチャンピオン級のプロフェッショナルモデルだった。フライトマスターはまだコレクターが注目する主流の時計ではないが、それは変わりつつある。フライトマスター オンリー(flightmaster only)と言う本が出版されたとき、この時計の歴史がより多くの人に伝わり、このモデルに対する話題が生まれたが、時計の価格はまだ劇的には上昇していないため、現在ではお買い得と言えるだろう。

 この現代版 “フライティー”がどのようなものになるか。その答えを、ヨーテボリを拠点とし、時計が大好きな自動車デザイナーのデヴィッド・ビーズリー(David Beasley)氏に尋ねた。彼はランドローバー、ピニンファリーナ、BMW、日産、そして最近ではマクラーレンのためにデザインをしており、その傍ら、スリルを求めて探索的な時計デザインをしているのだ。2019年、彼は現代版のフライトマスターのさまざまなモデルに焦点を当てたデザイン研究をおこなった。

Nissan idx

もしあなたが日産 IDxを覚えているなら、ビースリー氏の素晴らしい仕事をすでにご存知だ。ダットサン510をリバイバルしたもので、私は大好きだ。

 ビーズリー氏は、自分自身へのシンプルなブリーフからスタートした。それは、エキサイティングで、70年代モデルの前向きなスピリットを的確に捉えたモダンなフライトマスターを作ることだった。「もし今、オメガがフライトマスターを発表するとしたら、どんなものであるべきか。つまり『臓器を売ってでも買いたい』と思えるようなものでなければならないと思いました」。彼は製図版の前に座る前にこう思ったという。

gold flightmaster

 魔法の材料? それはゴールドだ。1971年にゴールドで表現されたオリジナルモデルがあるが、これは私のなかで聖杯であり(記事「オメガ フライトマスター 空の高みへ:70年代の金無垢のパイロットウォッチが私の永遠の憧れである理由」参照)、ビーズリー氏にとってのミューズでもある。

 スピードマスター プロフェッショナルは金無垢で提供され、1969年の感謝ディナーで宇宙飛行士に贈呈された。ゴールドは、現在民間企業が主導する宇宙開発における「未来は明るい」という姿勢を表現するのに最適な素材だ。そこでビーズリー氏は、有人宇宙探査の次のマイルストーンである火星探査をテーマに、ゴールドのフライトマスターをデザインしたのだ。

concept art
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 「カーデザイナーである私たちは、キャリーオーバーの仕組みをうまく使うことを教え込まれています。バッテリー、ホイール、サスペンションシステム、小さなスイッチなど、モデルごとに受け継がれる多くのものがあるのです。だから、どんな大手自動車メーカーでも、キャリーオーバーの部品を巧みに使って、面白い工夫をするんです」とビーズリー氏は言う。そして、この設計思想を応用したのが、彼がフライトマスターIIと呼ぶモデルだ。

concept art

 「Z-33のケースを使えば、最小の投資コストで最大の成果が得られると考えたのです」と、ビーズリー氏は、オメガのフライトマスターの現代的な精神的後継者であるスペースマスター Z-33のことを指して語る。初代フライトマスターとほぼ同じ形状だが、そのアナログな魅力を表現することに関しては成功したとは言えない。セドナゴールドのZ-33ケースに、AM/PM表示とGMT機能を備えたオメガのコーアクシャルCal.9605の改良型を使うことをビーズリー氏は提案している。その場合、ランニングセコンドインジケーターは失われるわけだが、オリジナルのフライトマスターにも搭載されていなかったため、歴史的な前例に沿うことになる。

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 まず、興味深い点は文字盤だ。ビーズリー氏は「スーパーカーのエンジンルームを覗き込むように、ムーブメントを見ることができるピュアさ」を高く評価しているため、Cal.9605の動きを観察するために半透明のダイヤルを採用することになるだろう。

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 ビーズリー氏が構想したデザインは、これだけではない。「誰もがゴールドを選ぶとは限りませんが、典型的なカーデザインの考え方として、ひとつの製品から複数の方向性を見出すことができます」。半透明のダイヤルの代わりにキャリバーを見せるもうひとつの方法は、オメガがスピードマスター ダークサイド オブ ザ ムーン アポロ8号で行ったように、ダイヤルの一部をレーザーカットしてムーブメントを見せることだ。さらにビーズリー氏は、チタンからケースを加工し、5軸CNCマシンで余分な材料を取り除いて、フライトマスターのスケルトンバージョンを作るというアイデアも思いついた。

concept art
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 もちろん、これはひとりのデザイナーが思い描いた現代のフライトマスターのひとつの姿に過ぎない(そしてそれはとても印象的なものだ)。オメガがこのようにニッチなモデルを復活させる可能性は極めて低いだろう。しかし、ほんの数年前まで火星に行くことは不可能と考えられていたのに、今ではこれから5年以内の有人飛行ミッションの準備に入っている。このことは考慮に値する。

 火星クルーのミッションには間違いなく時計が必要だ。フライトマスター IIは完璧な選択だと思う。

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オメガについて詳細はウェブサイトをご覧ください。HODINKEEはオメガの正規販売店です。また、我々のヴィンテージショップでは、オメガのクラシックウォッチを多数取り扱っています。

Hero Image: Andy Gottschalk