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In-Depth ハンマーとゴングが奏でる、パテック フィリップの伝統的なミニッツリピーターの魔法について

これまでの人生で2度、幸運にも複数のパテック フィリップ ミニッツリピーターの奏でる音を聴いているのだが、そのうちの1回は興味深い状況下でのことだった。

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本稿は2016年9月に執筆された本国版の翻訳です。

パテック フィリップは一般的に、無口とまでは言わないが、家族経営の高級時計製造ブランドに期待されるような自然な寡黙さをもっている。まあ控えめだと言っておこう。しかし、ここ数年は定期的にワークショップ(教育セミナー)を開催し、パテック フィリップの腕時計や歴史を中心としたものではあるが、時計製造に役立つ、有益で一般的な情報を数多く提供している。私が最後に参加したのは、静的、そして動的なスタイルによる1日がかりのワークショップだった(私と同じような思考の持ち主なら、これはかなりエキサイティングで手に汗握る白熱したものだとわかるはずだ)。直近ではミニッツリピーターに関するワークショップが開催された。このワークショップではゴングの製造からケース構造、リピーターがどのようにテストされてからパテックでリリースされるか、あらゆる確認・検証が行われた。そう、馬の尿についても(これについては後述)。そして、そこから物語が始まった。

Patek 5074P, Selfwinding Minute Repeater With Perpetual Calendar

自動巻きのパテック 5074P ミニッツリピーターパーペチュアルカレンダー。

 チャイムウォッチの歴史の大まかな概要は、一般的によく知られている。音で時刻を知らせるのは、少なくともヨーロッパの機械式時計において最も古くから知られている方法であり、脱進機を搭載した機械式時計の初期のものは、針も文字盤もなく、鐘を鳴らすことで時刻を知らせていたと考えられている。腕時計や時計は“インパッシング”、つまり毎正時と15分毎に自動的に時を告げるか(鳩時計など)、“オンデマンド”、つまり所有者がボタンやスライドを操作することでムーブメントが作動し、その瞬間に時刻を告げるものにわけられる。

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 “リピーター”という言葉はオンデマンドストライキングのほうを意味する。最初のリピーターはイギリスで生まれ、リピーターウォッチの最初の特許は1687年にダニエル・クオール(Daniel Quare)が取得した。最初のリピーターウォッチは時、それに最も近い15分(4分の1の時間)を告げるもので、そこから徐々に精密なチャイムウォッチが開発され、ついには分刻みで知らせるミニッツリピーターが登場した。我々が知る限り、最初のものは1720年頃にドイツでつくられている。

Patek Philippe Reference 5216P, minute repeater with tourbillon, retrograde date, and moonphase.

パテック フィリップ Ref.5216P。トゥールビヨン付きミニッツリピーターレトログラードデイトムーンフェイズ。

リピーター機構がウォッチメイキングの科学的な部分であることに異論はない。そのため、設計にはより多くの理論が必要であり、製造には繊細さと正確さが求められる。だからこそこの仕事を知り、それを実践している人たちは、ほかの仕事より完璧にこなせるのだ。

– フランソワ・クレスプ(François Crespe)、『ESSAY ON REPEATER WATCHES, 1804』(翻訳:リチャード・ワトキンス)
caliber R TO 27 PS QR, Patek reference 5216P

キャリバーR TO 27 PS QR(パーペチュアルカレンダー)ムーブメント。

 パテック フィリップのミニッツリピーター製造は、はるか昔にさかのぼる。パテックのアーカイブに記録されている最初のものは1839年に誕生しており、450スイスフランで販売された(これは当時、同社が製造したなかで19番目の時計だった)。この時計はクォーターリピーターであった。最初のハーフクォーターリピーター(時、4分の1時間、そして最も近い5分の1時間、つまり7分30秒の時間をチャイムで鳴らす)は1845年に販売され、同年にはブランド初となる本格的なトゥルーミニッツリピーターも登場している。最初のパテック グラン・プチ・ソヌリが販売されたのも1845年のことである(この年はジャン・アドリアン・フィリップが入社した節目の年でもある)。それ以来、パテックは世界で最も有名なチャイム付き複雑時計を製造してきた。それらには、1910年製作のレグラ公のポケットウォッチ(ミニッツリピーターとウェストミンスター・チャイムを備え、5つのゴングでチャイムを鳴らすグラン・プチ・ソヌリ)、記録破りのヘンリー・グレーブスのスーパーコンプリケーション(2014年に2400万ドル、当時の相場で約25億4000万円にて落札されたのを目撃しており、読者のみんなと共有した)、Cal.89、スターキャリバー2000、そして最近だとグランドマスターチャイムなどが含まれている。

The Henry Graves Supercomplication, shortly before it hammered at Sotheby's for $24 milliion in 2004.

2014年のサザビーズにて、2400万ドル(当時の相場で約25億4000万円)で落札される直前の、ヘンリー・グレーブス スーパーコンプリケーション。

 同社最初の腕時計用リピーターは、1916年にレディースウォッチとして製造されたファイブミニッツリピーター(時、4分の1時間、次に5分間隔の最も近い数字をチャイムで知らせる)であり、27.1mmのプラチナケースに収められていた。1925年に販売されたパテック初の腕時計用ミニッツリピーターは、第2次世界大戦前後に、頻繁にサプライヤーを務めたヴィクトラン・ピゲ(Victorin Piguet)の12リーニュサイズの型を使用していた。これは盲目だったアメリカ人自動車技術者、ラルフ・ティーター(Ralph Teetor)のために作られた、ティーターウォッチとして有名である(彼の発明品には、最初のクルーズコントロールが挙げられる)。1960年代と70年代のリピーター生産は、事実上停止状態にあったが、1980年代にはリファレンス3621と3615というふたつのユニークピースを製造。そして1989年、パテックはマイクロローター駆動の、パーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、ミニッツリピーターを備えたCal.R 27 Qを搭載したRef.3974を発表する。

Patek ref. 3974

パテック Ref.3974は、2016年5月のフィリップスにて、118万1000スイスフラン(当時の相場で約1億3200万円)で落札された。

 しかし、パテック フィリップがリピーターの通常生産(限定ではない)を再開したのは、1992年になってからだった。その年に発表されたRef.3939は、1992年から2010年にかけて製造され、現在もサラブレッドのハイコンプリケーションを最も控えめに着用できる時計として残っている(編集注記:2023年現在は生産終了)。2011年にベン(・クライマー)は、Only Watch(2011年)のために作られた1本だけのスティールバージョンについて紹介している。“Ref.3939はしばらくのあいだパテックのカタログに存在していたが、ゴールドとプラチナでしか入手できなかった。小ぶりなケースのなかにトゥールビヨンが隠され、文字盤はエナメル、さらに比較的目立たないリピータースライドを備えたこの時計は、究極のサイレントキラーである。普通の人には大したものに見えないかもしれないが、それは特別なものなのだ”。なおこの3939は190万ドル(当時の相場で約1億5100万円)で落札されている。

patek philippe 3939

Ref.3939 リピーターは、ハイコンプリケーションのなかで最も控えめ超高級モデルかもしれない。


パテック フィリップのミニッツリピーター製造の現状

 パテック フィリップは現在コレクションのミニッツリピーター製造において、とてもおもしろい道を選んだ。リピータービジネスを展開している多くのメーカーは(まあ今回はエキゾチックなリピーターの話をしているため、それほど多くはないのだが)、熱心に研究開発に取り組んで技術的な優位性と進歩を重視するなか、パテックは、より現代的なアプローチを示す補助的な試験技術を採用しているとはいえ、ほとんどの場合、昔ながらの方法で物事を進めている。例えば、各リピーターのサウンドプロファイルの録音は無響室で行われ、そのサウンドはパテックの社内基準を満たしていることを確認するためにデジタルで分析される。しかし、パテック フィリップのリピーターには、1世紀前の時計職人にとって衝撃的と思われるようなものは何もない(実際、パテックの時計の多くにシリコン製ヒゲゼンマイが含まれているが、今日までリピーターでは見られない)。技術的に先進的な、今日の最高のリピーターに対する興味は間違いなくあるが、パテックに見られる伝統的な手法の継承を象徴するリピーターの扱い方には、なにか深い説得力がある(パテック フィリップの本領発揮と言えるだろう)。

冷静沈着という言葉は誰もが耳にしたことがあり、それは多くの機会に適用できるが、リピーターの修理を請け負う人にとっては真に個人的な意味を持っている

– ドナルド・デ・カール(Donald de Carle)、『Complicated Watches And Their Repair』
Patek Philippe Reference 5078R

38mmのパテック フィリップ Ref.5078R、自動巻きリピーター。文字盤はエナメル製。

Patek caliber R 27 PS

ひっくり返すと、Cal.R 27 PSとある。

 簡単に説明すると、ミニッツリピーターの作業は、ほかの時計の作業とは異なる厳しさが要求されることを覚えておくといい。唯一近いのはラトラパンテクロノグラフかもしれない。クロノグラフは、メンテナンスと製造の両方に細心の注意を払う必要があるが、リピーターに要求されるような、いい音質という主観的な判断は必要としない。時計学作家のドナルド・デ・カール(控えめに言っても、大げさな表現を好む作家ではなかった)は、『Complicated Watches And Their Repair』のなかで次のように書いている。「複雑時計を修理するときには細心の注意を払わなければならないと、常に強調されてきたが、繰り返し時計を修理するときには、このアドバイスが二重に強調されることになる。冷静沈着という言葉は誰もが耳にしたことがあり、それは多くの機会に適用できるが、リピーターの修理を請け負う人にとっては真に個人的な意味を持っている。それはこれから説明する仕事をこなすのに必要なメンタリティーを、学生が練習をとおして身につけることで、自分自身が熟練するのである」

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 リピーターの主な特徴は、チャイムが鳴るテンポ、音質、音量の3つだ。パテックのリピーターのテンポは、天板のカラトラバ十字の下にある遠心調速機(ガバナー)によって制御される(シースルーバックから見えるムーブメントの部分だ)。リピーターに動力を与える別個のゼンマイ香箱と調速機本体をつなぐ直列のギアが3つあり、その先端に、重りのついた2本のスプリングアームが付いている。ホームボタンを押してリピータースライドを離すとゼンマイが巻き取られ、その巻き上げ速度、つまりチャイムが鳴る速さと遅さは、調速機の回転速度によって決まる。調速機は慣性抵抗を提供することによって、ゼンマイ香箱の回転速度を落とす。ゼンマイが回転すると2本のアームがゼンマイの抵抗に対して外側に開き、(使い古された言い回しだが)回転するフィギュアスケート選手が腕を伸ばすかのように回転速度が遅くなるのだ。

Patek repeater movement showing centrifugal governor, and tourbillon

遠心調速機は12時位置にある。S字型スポークを持つ大きな歯車は、トゥールビヨンを駆動する第3の歯車だ。

 パテックは1989年に遠心調速機を使用し始め、現在ではすべてのパテック製リピーターへ採用している。チャイムのテンポをコントロールする古い方法は、独特のうなるような音を発するアンカーを使用している。完全に無音というわけではないが、遠心調速機は常時静かだ。リピーターの調整ポイントのひとつは、調速機の回転速度にある。理想では、最後の数分が打たれている最中チャイムのテンポが著しく遅くならないよう、主ゼンマイ香箱に十分なパワーリザーブがあることだ。

Patek Philippe reference 5074P, perpetual calendar with minute repeater.

パテック フィリップ Ref.5074P、ミニッツリピーターと24時間表示を備えたパーペチュアルカレンダー。

Patek Philippe caliber R 27 Q.

パテック フィリップ Cal.R 27 Q。

 現代のミニッツリピーターのゴングは、一般的に硬化スティールで作られている。パテックウォッチのなかには、従来のゴングより1.5倍の長さを持つ、いわゆるカテドラルゴングと呼ばれるものを搭載していることがある(これまでの経験に基づくと、より深みのある豊かなサウンドを特徴としている)。現代の製造方法は比較的予測可能であるにもかかわらず、リピーターづくりはいまだ暗中模索の様相を呈しており、各リピーターの音響品質はケース、ムーブメント、ダイヤルの特性、さらにはリピーターに石がセットされているかどうかによっても異なる可能性がある。そのため、パテックは21種類のグレードからなるスタンダードゴングと、同じく21種類のグレードのカテドラルリピーターゴングを製造している。それらのゴングはひとつずつ手作業されるため、作り方を覚えるにはかなりの時間がかかる。ただパテックの時計職人たちは、特定のグレードのゴングを100個ほどつくり、そのグレードを十分にマスターしないとならないと言われており、マスターできなければ実際生産されるミニッツリピーター用のそのグレードをつくることが許されないと言われている。なおゴングの直径は、わずか0.48mmから0.6mmしかない。

 神話と伝説について少し話そう。まず第1に、我々はパテック フィリップから直接聞いた話なのだが、パテック フィリップのミニッツリピーターが世に送り出される前、ティエリー・スターン自らが耳を傾け、承認し、世界に公開しているという。検証プロセスには基本的な段階が4つある。まずリピーターは、それを作った時計職人によって承認を得ること。第2に、無響室に行き(反響を抑制する材料が敷き詰められた部屋。そうでなければ十分にクリーンな録音にならない)、必要なパラメータのための計算分析を受ける記録を行う。第3に、パテックの上級時計師がリピーターの音を聞き、チャイムのコンプリケーションを担当する。そして最後に、リピーターがティエリー・スターンのもとに送られる。リピーターがスターンのオフィスに到着するまでに承認される可能性は高いが、ごくまれに不合格になることもあるという。パテックによると、頻繁ではないが単なる形式的なものでもないとのことだ。パテックのリピーターの平均的な音は約60dBで、チャイムはほぼ正確に18秒間鳴らなければならないなど、一定の基本的な目標パラメータはあるが、リピーターの審査の大部分はいまだに人間の耳による主観的なものなのだ。

Patek Left to right: the references 5037, 5074, 5307, 700R, and 7002/450G

左から5037、5074、5307、700R、7002/450G。悪くない。

 リピーターが不合格になる理由はいくつかある。たとえば時、クォーター、および1分のストライキングはそれぞれ個別に評価されるが、これらがすべて調和的に動作する必要がある。テンポと音量も評価されるのだ。(ワークショップで)グループ分けされたあと、パテックが録音した3つの異なるリピーターを、ブラインドで評価する機会があった。ブラインドであっても、各リピーターの品質については驚くほどのコンセンサスが得られ、数人の参加者はケース素材まで正確に判断できていた。そして我々のグループがほぼ全員一致で不合格にした時計が1本あった。そしてその時計はスターンによっても不合格とされていたことがわかった。

 非常に興味深い点は、ケース素材が音に与える影響の度合いだ。これについては徹底的に議論した。リピーター愛好家のあいだでは、ローズゴールドが音質の面で“最高”のケース素材だとよく言われている。RGに特徴的なサウンドプロファイルがあることは事実だが、客観的な意味でベストであるとは限らない。例えば、プラチナはやや鈍く落ち着いたトーンを持つが、最高の状態だとゴールドケースからは得られないような、クリスタルのような品質を持つこともあるため、その多くは個人の好みによる。ビッグボルドーと日本酒の違いのようなものだ。後者のほうがはるかに味わいの幅は狭いが、猫のトイレを洗うのに使うような粗悪な酒もあれば、富士山の影で春に桜を見ているような気分にさせる酒があるのと同じように、そのなかには無限の多様性がある。プラチナミニッツリピーターにも粗悪なものと素晴らしいものが存在するのだ。

patek four seasons repeater

Ref.7002/450G、フォーシーズンズ シンフォニーリピーター。パテック初のハイジュエリーレディスグランドコンプリケーションである。

 もうひとつの非常に興味深い事実は、最もクリアで最も美しく響く音のいくつかは、我々が見たなかで最も小さな時計、Ref.7002/450G フォーシーズンズ シンフォニーと素晴らしい7000R レディス ファースト リピーターのふたつだったというのが、ほぼ共通のコンセンサスであったということだ。レディス ファースト リピーターの音は以前聴いたことがあったので知っていたが、フォーシーズンズ シンフォニーは聴いたことがなかった。その音は格別で、奇妙なことに、5073Pと同じくカテドラルゴングを備えたRef.5073Rの音と似ているところもあった。ダイヤモンドの存在は、サイズ、ケース素材、ムーブメントの特性を考慮する以外にも、音色に影響を与えることは間違いないようだ。

Reference 5073P, with perpetual calendar and cathedral gongs.

Ref.5073P、パーペチュアルカレンダー。カテドラルゴング付き。

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 あぁそれと、冒頭で挙げた馬の尿について、これはミニッツリピーターの歴史において実は重大なことだ。聞いた話では、リピーターを製造するための企業秘密のひとつが、ゴングの最終的な焼き入れを古きよき時代の特殊な液体で行われたということ。文脈を整理すると、鋼を焼き入れ・焼き戻しするためにエキゾチックな物質が使われたという話があり、最高級のダマスカス鋼に至っては人間の血まで使われたとされている。

 私はニューヨークにいるパテックのマスターウォッチメーカー、ローラン・ジュノーに、この時計学上の迷信の可能性について尋ねてみたが、それは真実だと彼は言った。尿にはアンモニアが含まれているため、何世紀にもわたって、鋼の焼き入れに好んで使われてきたと判明したのだ。また窒素が含まれたアンモニアには窒化と呼ばれるプロセスがあり、これは鋼のケース硬化表面として知られるものを生成する。もし私の言っていることが信じられないなら、European Journal of Material Sciences誌の『アルミニウム合金材料の硬度特性改善のための窒化に及ぼす人および動物尿の影響(The Effects Of Human And Animal Urine On Nitriding For Improved Hardness Property Of Aluminum Alloy Materials)』を読んでもらえればと思う(鋼の窒化についても掲載されている)。

Left to right: references 5216P, 5074P, 5539 (hand wound repeater only) 5216R, 5078R, and 5078P (both self-winding, minute repeater only).

左から、Ref.5216P、5074P、5539(手巻きリピーターのみ)、5216R、5078R、5078P(いずれも自動巻き、ミニッツリピーター)。

 もちろん、リピーターの本質は、知的な満足感や視覚的なエンターテイメントだけでなく、ほかでは得られない独特の聴覚体験を提供することにある。間違いなく今回の時計の物語のうち、ひとつの録音もないまま終わりを迎えたことにがっかりしているだろう。ところが、幸いなことに我々は読者のみんなと再びを共有するために、とても素晴らしいものを用意した。2013年当時のパテック フィリップのミニッツリピーターコレクションをすべて収録した。過去にタイムスリップして、本当に素晴らしい演奏をここからもう1度聴くことができる。

 新しいもの、よりよいものが常に流行語となっている時計の世界において、このような昔ながらの時計づくりがまだこのレベルで行われているのは素晴らしいことだ。新しい道を切り開き、時計学を発展させることは決して悪いことではないが、絶対的にクラシカルな方法と材料から何が得られるかを今日まで見たことは、ほかでは簡単には得られない、最高の時計製造の歴史とのつながりをもたらしてくれる。

 そしておまけとして、私が参加したプレゼンテーションには含まれていなかった、パテックのチャイムコンプリケーションのひとつ、パテック175周年を記念してつくられたパテック フィリップ グランドマスター・チャイム、Ref.5175Rを独占動画で紹介しよう。そうそう、もしここまで見て(聴いて)きてまだ耳が疲れていないのであれば、ヘンリー・グレーブスのスーパーコンプリケーションを実際に使ってみたときのビデオもご覧になってはいかがだろうか? そう、その音もここから聴くことができる。

掲載した時計

  • Ref.7000R、Cal.R 27 PS。レディス ファースト リピーター。RG製、33.7mm径、35万スイスフラン
  • Ref.5216R、Cal.R TO 27 PS QR。トゥールビヨン付きリピーター、レトログラードデイト、パーペチュアルカレンダー。RG製、39.5mm径、69万5000スイスフラン
  • Ref.5216P、Cal.R TO 27 PS QR。トゥールビヨン付きミニッツリピーター、レトログラードデイト、パーペチュアルカレンダー。プラチナ製、39.5mm径、71万5000スイスフラン
  • Ref.5078Pおよび5078R、自動巻きCal.R27 PS。ミニッツリピーター、グラン・フー・エナメル文字盤。RG製、38mm径、34万スイスフラン。プラチナ製、36万1000スイスフラン
  • Ref.5307P、手巻きCal.R TO 27 PS QI。ミニッツリピーター、トゥールビヨン、瞬間パーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、デイ・ナイト表示。プラチナ製、41mm径、79万5000スイスフラン
  • Ref.7002/450G、自動巻きCal.R 27。フォーシーズンズ シンフォニー限定モデル、WGにダイヤモンドとサファイア(合計1194石、6.9カラット)。34.7mm径、49万スイスフラン
  • Ref.5074P、自動巻きCal.R27 Q。ミニッツリピーター、24時間表示付きパーペチュアルカレンダー、カテドラルゴング。42mm径、58万2000スイスフラン
  • Ref.5073R、自動巻きCal.R 27 Q。ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、カテドラルゴング、ベゼルとラグに103個のバゲットダイヤモンド(合計4.33カラット)。42mm径。 64万スイスフラン