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Hands-On ロレックス メテオライト デイトナの復活、Ref.126519が示す完成形

現行デイトナのラインナップから、特に人気の高い1本に迫る。

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最近、HODINKEEの多くのスタッフにとって大切な存在であるロレックス “ジョン・メイヤー”デイトナのデザインについて深掘りし、その復活版として“ジョン・メイヤー 2.0”を取り上げたばかりだ。それは間違いなく素晴らしい時計であり、強烈な個性を放っている。とはいえ、Watches and Wondersで発表された8つの新作、あるいは刷新されたデイトナのなかで、私はあのモデルをベストだとは言っていない。もちろん、これはあくまで主観に過ぎない。時計に“ベスト”など存在しないのだ。だが、仮に「どれが一番のお気に入りか?」と尋ねられたら(いや、尋ねられてはいないが、私の妄想に付き合って欲しい)、迷わず「メテオライトダイヤルの復活こそがベストだ」と答えるだろう。

Rolex Meteorite Daytona

 この時計こそ、Watches and Wondersのアポイントメント時に私が最初に尋ねたモデルだった。ただ残念ながらロレックスはプレス用に展示しておらず、私は肩を落とした。しかし“ジョン・メイヤー 2.0”と同様、ロレックスは後日のプレスミーティングでホワイトゴールドとエバーローズゴールドの2モデルを披露してくれた。イエローゴールド派の諸兄には想像力を働かせてもらうしかないが、少なくとも私にとっては、WGモデルを直接見ることができて安堵した。なぜなら、スペック上ではこのモデルがロレックスのカタログにおいて群を抜く存在であると考えているからだ。

 繰り返しになってしまうが、現行デイトナのデザイン言語、すなわちセラクロムベゼルと“リング状”ではないフルインダイヤルこそが、デイトナ本来の姿であると確信している。これについては、前回のジョン・メイヤー2.0レビューで詳しく書いている。昨年までは、私の好みに合致するホワイトメタルのモデルは、ブラックのサンバーストダイヤルを備えた“ベイビー・ル・マン”(オイスターフレックス×WG)と、そのシルバーダイヤル版のみであった。

Rolex Meteorite Daytona

 ロレックスが初めてメテオライトダイヤルをオイスターフレックスブレスレットに組み合わせたのは2021年。当時は、貴金属のブレスレットとベゼルが組み合わされていた。以前、私はこのコンビネーションをやや時代錯誤だと述べたことがある。惜しくもその仕様が再登場しなかったことを嘆く声もあるが、私の視線はオイスターフレックス仕様のみに向けられている。

 この新たなメテオライトダイヤル仕様は、いわゆる“パンダ”ルックをさらに劇的に進化させた。確かにメテオライトはほかのものに比べて“見せびらかし”の要素が強いが、そのメテオライトの、ウィドマンシュテッテン構造(またはトムソン構造)と呼ばれる幾何学的な模様は、特定の隕石、“ギベオンメテオライト”に由来する。それは1838年、J.E.アレクサンダー(J.E. Alexander)大尉によってナミビアのギベオン村付近で採取され、科学的に特定された。なお、ギベオン隕石の落下範囲、“散在域(strewn field)”は幅120km×長さ390kmにもおよび、計26トン以上の物質が3万年前からおよそ5千年前の間に地球に落下したとされている。

 この隕石特有の模様は、91.8%の鉄と7.7%を主成分とする溶融物質が、宇宙空間という真空環境のなかでゆっくり冷却されることによって形成された格子構造によるものである。この素材は宝飾職人や時計師が比較的入手しやすく、さまざまな用途に利用できるうえに、非常に高い耐久性を備えている。約0.1mmの厚さまで削ることが可能で、そのあとに研磨や酸によるエッチングを施すことで、コントラストのある模様を浮かび上がらせることができる。また、ラッカー仕上げを施して異なる表情を与えることも可能だ。標準的なサンレイ仕上げと比べて優雅さに欠けるという声もあるが、私としてはこの追加要素こそが、デイトナをさらに特別な存在に引き上げていると感じる。

Rolex Meteorite Daytona

 現行のRef.126519をはじめとする貴金属製デイトナや、ロレックスの現行自動巻きムーブメントであるCal.4131を搭載するすべてのデイトナと同様、このモデルもセラクロムベゼルの周囲にメタルリングを備えている。このリングおよびベゼル上の数字と目盛りは、ケース素材と調和した仕上げとなっているが、これらはPVD(パーティクル・べーパー・デポジション=粒子蒸着)加工によって施されている。なお、18KWGケースの場合、数字と目盛りには実際にはプラチナの薄膜が用いられている。またセラクロムベゼルはモノブロック構造であり、サファイアクリスタルをしっかりと固定することで高い防水性を実現している。

 以前に比べてインデックスもわずかに太くなっている。しかし、Ref.126519LNにおけるより顕著な変化のひとつは、クロマライトが充填されたインデックスが黒で縁取られていることであり、これにより旧型の116519LNや現行のYG/ERGモデルよりもスポーティな印象を強めている。

Rolex Meteorite Daytona

 ERGやYGモデルも基本的には同様の意匠であるが、WGに比べるとやや派手である。そうしたテイストを好む人には魅力的だが、私としてはモノクロームのWGに引かれる。

Rolex Meteorite Daytona

 チタンとニッケルの合金製ブレードを内蔵したオイスターフレックスブレスレットは、極めて堅牢かつ装着感に優れるラバーブレスレットストラップのひとつとして知られている。ロレックス(そして熱心なファン)は、これをストラップではなくブレスレットと呼ぶことを強調している。ブラックのエラストマーで覆われたこのブレスレットは、中央に隆起構造を備えており、オイスターブレスレットの意匠を模している。さらに内側にはウィング状の構造が設けられており、手首からわずかに浮かせることで通気性を確保し(つまり蒸れにくく)、装着時に回転しないよう固定される設計となっている。

 ブレスレットの両端はそれぞれ6種類の長さが用意されているため、たとえばアクアノートのストラップのようにカットして調整をする必要がない。さらにこのブレスレットには、必要に応じて5mmの延長が可能なロレックスグライドロック エクステンションシステムが搭載されている。

 126519
Rolex Meteorite Daytona
Rolex Meteorite Daytona

 多くの人にとって残念なことだが、重要な注意点として、このモデルはほかのブレスレットに交換ができない。というのも、ラグにはストラップ専用のエンドリンクが内蔵されているためである。

 またプラチナモデルを除くすべてのカタログ内のデイトナは、依然としてシースルーバックを採用していない。私としてはむしろ、特に自動巻きクロノグラフにおいてこの仕様を好ましく思っている。手巻きクロノグラフやスプリットセコンドクロノグラフであれば、ブリッジやレバーの複雑な構造を見せる意義があるが、自動巻きではローターがその多くを覆い隠してしまう。であればいっそのこと、美しくエングレービングを施すほうがよほど魅力的だろうと私は思っている。

Rolex Meteorite Daytona

 さて、ここで“触れにくい問題”に言及しよう(これについては前回のレビューでも取り上げた)。現行のRef.126519LN メテオライトダイヤル仕様の価格は642万4000円(税込)。これは、金の価格や関税(あるいは関税への懸念)による影響もあって、シルバーやゴールドのサンレイダイヤル仕様(577万600円)より約65万3400円高く、初代116519の発売当時と比べるとおおよそ1万ドル(約140万円)の値上がりとなっている。受け入れがたい現実だ。

 とはいえ、幸いにもこの問題は、ほとんどの人にとって現実的な問題ではないかもしれない。これはあくまで逸話レベルのことだが、ロレックスの“カタログモデル”でありながら、このメテオライトダイヤル仕様のモデルは供給数が極めて少なく、多くの正規店でも年間数本入荷するかどうかと言われているのである。実質的には宝石装飾モデルと同じような希少性だ。これは実に残念なことである。なぜならこれは非常に装着感がよく、私としては週末にゴルフ場でつけたいとすら思っているからだ(実際に所有できるかはさておき)。

Rolex Meteorite Daytona

 直径40mm、厚さ11.4mm、ラグ・トゥ・ラグで47.5mm。現代的クロノグラフとして理想的なプロポーションを備えており、72時間のパワーリザーブと日差±2秒という精度を誇る。この時計に求めるものは、もはやほとんどない。

Rolex Meteorite Daytona
Rolex Meteorite Daytona
Rolex Meteorite Daytona

 時計、特に手に入れることがほぼ不可能なものを切望するとき、私はいつもカタログ内で最高の1本はどれだと思われるかという視点で考える。多くの人にとってSS製のデイトナこそが聖杯であろう。それも十分に理解できる。しかし私にとってのランキングは明確で、まず筆頭に挙げたいのがメテオライトダイヤルを備えたRef.126519LN。これはスタンダードモデルを凌駕している。これに続くのがヴィンテージ調のスタイルが魅力的な“ジョン・メイヤー 2.0”だ。

 ちなみに、誰にも聞かれていないが、第3位はダイヤモンドインデックスを備えたプラチナ製デイトナだ。とはいえ、もし今この瞬間にどんなデイトナでも手に入れられるなら、それだけで十分幸運である。歴史、品質、そして人気。これらすべてを備えた時計は、そうあるものではないのだから。

Rolex Meteorite Daytona

 ロレックス メテオライトダイヤル仕様のコスモグラフ デイトナについて、詳しくはロレックス公式サイトをご覧ください。

Photos by Mark Kauzlarich