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時計業界で最も希少価値の高いモダンな3本のリファレンスが、今月それぞれ異なるふたつのオークションに出品される予定である。現在の不安定な経済状況のなかでこれらの貴重な時計たちがどのような評価を受けるのか、重要な試金石となりそうだ。今回のオークションはクリスティーズとフィリップスで行われ、イエローゴールド仕様のロレックス デイトナ “ル・マン”、サイモン・ブレット クロノメーター アルティザンのチタンエディション、そして独創的なデザインが特徴のコンスタンチン・チャイキンからシンキングが出品される。これらの最新モデルがオープンマーケットに登場するのは今回が初であり、その結果は市場での評価を大きく左右する指標となるだろう。
ロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126528LN(クリスティーズ提供)
とりわけ熱い注目を浴びているのは、ロレックス デイトナ “ル・マン”のイエローゴールドモデルだ。このモデルは時計愛好家のあいだではよく知られているが、ロレックスの公式カタログやウェブサイトには一切記載されたことがない。昨年の全米オープンでロジャー・フェデラー(Roger Federer)がYGモデルをお披露目していたが、それ以降このリファレンスが目にされることはほとんどなかった。
Photo courtesy of Christie's.
このモデルは2023年に登場し、短命に終わったホワイトゴールドバージョンの後継機として、カタログに掲載されない形で2024年に生産された。WGモデルは、わずか1年にも満たない期間で生産が終了している。Ref.126528LNはブラックセラミックのタキメーターベゼルを備えており、特徴的な赤い“100”マーカーが目を引く。ケースは最新のデイトナケースのYGモデルで、裏蓋はスケルトンとなっている。最大の特徴は文字盤で、ポール・ニューマンスタイルのエキゾチックなインダイヤルを備えており、通常の12時間ではなく24時間カウンターを搭載している。この24時間表示は、伝説的なル・マン24時間レースへのオマージュである。ベン・クライマーは昨年のこの時期に WGモデルを着用し、Week On The Wristでレビューを行った。
Photo courtesy of Christie's.
このYG版のデイトナ “ル・マン” はクリスティーズが今月ジュネーブオークションに出品する予定で、エスティメートは15万〜25万スイスフラン(日本円で約2630万〜4400万円)とされている。クリスティーズによればYGのデイトナは、ロレックスCEOのジャン-フレデリック・デュフォー(Jean-Frédéric Dufour)氏が個人的に選んだ特別なVIP顧客にのみ提供されたものだという。
Photo courtesy of Christie's.
今回のオークションはYG版の“ル・マン”が競りに出される初めての機会であるが、昨年12月にはフィリップスがニューヨークでWG版を出品し、22万8600ドル(日本円で約3300万円)で落札されている。本作のオークションページは、こちらから。
サイモン・ブレット クロノメーター アルティザン チタンエディション(フィリップス提供)
次に紹介するのは、注目を浴びる若手時計師のなかでも最も将来有望とされるサイモン・ブレットのクロノメーター アルティザン チタンエディション。オークションでは今回が初登場となる。サイモン・ブレットはかつてクロノードやMB&Fでムーブメント開発を手掛けてきた経験を持ち、2021年に自身のブランドを立ち上げた。そして2023年には少量生産のクロノメーター アルティザンが即完売し、GPHG(ジュネーブウォッチグランプリ)でリベレイション賞を受賞したことで一躍時計業界の寵児となった。今回オークションに出品されるチタンエディションは、オリジナルである12本限定のジルコニウム製スースクリプションモデルに続く、60本限定生産の特別バージョンだ。
Photo courtesy of Phillips.
Photo courtesy of Phillips.
Photo courtesy of Phillips.
今回のオークションは、39mm径のこの時計が市場でどのような評価を受けるかを示す重要な機会となるだろう。マーク・カウズラリッチは2023年のWatches & Wondersでこのモデルを見て“最高の時計”と称賛し、その仕上げの美しさ、手作業によるポリッシュ、ムーブメントの構造、そしてディテールへのこだわりを高く評価した。昨年10月に行われたHouse of Craftのイベントでは、サイモン・ブレット自身がベン・クライマー(Ben Clymer)に対して、「毎日30件以上の購入希望が来ている」と話していた。そのインタビューの様子はここで視聴できる。
この時計はフィリップスのジュネーブオークションで出品され、エスティメートは7万3400ドルから14万7000ドル(日本円で約1060万〜2120万円)とされている。今回の出品は、2023年に初めてマーケットに登場したレジェップ・レジェピ クロノメーター コンテンポランのデビューを思い起こさせるものだ。
コンスタンチン・チャイキン シンキング(フィリップス提供)
時計としてこれ以上にロープロファイル(薄型で目立たないデザイン)のものはないだろう。コンスタンチン・チャイキンのシンキングは、世界で最も薄い機械式時計のプロトタイプとしてその名を冠している。このロシア人の独立時計師は、ブルガリ、ピアジェ、リシャール・ミルといった大手ブランドを凌ぎ、“超薄型時計の王者”の称号を手にした。このモデルは昨年のジュネーブ・ウォッチ・デイズで発表され、ケースの厚さはわずか1.65mmしかない。当時のレポートではジェームズ・ステイシーが、その極薄な構造を支えるために特別なストラップの開発が必要だったと伝えている。このストラップはアリゲーター(ワニ革)とエラスティックインサート(伸縮素材)、そしてチタン製の補助パーツを組み合わせ、衝撃や負荷を吸収できるよう設計されている。
Photo courtesy of Phillips.
Photo courtesy of Phillips.
Photo courtesy of Phillips.
フィリップスのオークションに出品されるこのモデルは、42万9000ドルから85万8000ドル(日本円で約6200万〜1億2400万円)と非常に幅の広いエスティメートがつけられている。ケース素材にはニッケル合金が採用されており、加えてチタン製のパランキングケースも付属する。この特別なケースを装着することで時計の厚さは5.4mmに増えるが、それでもなお非常にスリムな設計だ。さらにこのパランキングケースによって、自動巻き機構やリューズ操作が可能になり、堅牢性も強化される。詳細はこちらからチェック可能だ。
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