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In-Depth チューダー ヘリテージ レンジャーを実機レビュー(編集部撮りおろし)

このブランドがまだチュードルと呼ばれていた時代の名作。チューダー レンジャーは、アピールしすぎず、質実剛健だ。ヴィンテージライクな時計は2014年ごろから生まれていたわけである。

※本記事は2014年4月に執筆された本国版の翻訳です。  

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 チューダー ヘリテージ レンジャー。それは2014年のバーゼルワールドにおける、最も期待された想像以上のヒットであっただろう。チューダーは20世紀中ごろのスポーツウォッチを現代に取り入れることで評判を得てきたが、単に模倣するのではなく(例えばブラックベイやヘリテージ クロノやヘリテージ アドバイザーのように)、ハンス・ウィルスドルフ(Wilsdorf)氏自身がチューダーを動かす信念とするべきだと宣言したように、控えめかつ見た目より機能優先の実用性を大事にしながら、むしろ現代的に仕上げてきた。その時計には無意味なものはなく、高価なセラミックベゼルやばかげたサファイアケースバックもない。それは人々をひたすら幸せにする、見事にデザインされた本当に素晴らしいデイリーユース用のツールウォッチだ。1週間そこら前に、初めて記者たちに紹介された新しいヘリテージ レンジャーも例外ではなく、実際のところそれはチューダーが今までに作った中で最も忠実なヴィンテージ・トリビュートである。その理由をこれから説明しよう。

 ヘリテージ クロノとブラックベイはどちらも見事な時計だが、よりこだわりをもって見るならば、この記事はいずれかのモデルを直接的に掘り下げたものではない。ブラックベイは初期の大型リューズだけでなく、より後期のチューダー サブマリーナーに見られる文字盤とベゼルの特徴も併せ持っている。ヘリテージ クロノも同じで、これらはいくつかの異なるモデルと文字盤構成の寄せ集めなのだ。しかしヘリテージ レンジャーはウィンテージウォッチの現代版へのアップデートにおいて、愛すべき形をとっている。ここで、皆さんに注意しておかなければならないが、この新しいレンジャーを極めて特別なものにしている要素は、多くの人にとって瑣末なことだが、1960年代か70年代の時計のコレクターであれば、絶対に心を奪われるものなのだ。

 まずは文字盤だ。4ヵ所にだけ数字が配された「エクスプローラー」スタイルの文字盤は、6時位置の「Rotor Self-Winding」の文字まで1967年のレンジャーの文字盤とそっくり同じだ。それに加えて全体が本当のドーム状になっていて、ウィンテージ感がある。しかしより重要なのは、この文字盤がアプライドインデックスを用いていないことだ。今日ではアプライドは、良い時計にある種不可欠なもので、プリントインデックスは廉価品の印である。しかしレンジャーの文字盤はプリントされたものではなく、ペイントによるものだ。これはアワーマーカーが1960年代当時と全く同じ見た目であることを意味しており、現代にはありふれていて、兄弟分のブラックベイにも見られる輝くゴールドのフチもない。本当に、この上なく1960年代の文字盤そのものなのだ。まぎれもなく本当に。

 次にラグについて。ラグには穴がある。それが意味すること? 昔のように、ストラップを交換する際にペーパークリップを使ってバネ棒を押し出せるということだ。あらゆる現代的な時計はいまやラグ穴を閉じてしまっており、バネ棒を引っ張り出すのにちょっとした道具が必要だ。これもこのチューダーが備えた、重大ではないが素晴らしい些細なディテールの一つだ。

 さらに、ヘリテージ レンジャーにはブラックベイのものとどこか似通ったブレスレットが用意されているが、ある点で異なる。そのブレスレットにはエンドリンクがない。つまりブレスレットの端にはバネ棒がおさまるシンプルな直線の筒があるのみだ。これはオリジナルの1960年代のレンジャーに完全に忠実ではない。当時のオイスターブレスレットにはケースに沿った形のエンドリンクがあったから。しかし今回のものは、着けたいと思う時計全てに合った、20世紀中ごろのJBチャンピオンやゲイフレアーのブレスレットの雰囲気を現代に蘇らせている。チューダーからのとびきりクールなアイデア、明らかに私自身の考えではないが、このブレスレットをブラックベイに付けたらどんな感じだろう……。

 ヘリテージ レンジャーはストラップの選択肢も豊富で、こちらの「ブンド」スタイルもそこに含まれている。これはオリジナルのレンジャーが備えていたミリタリー/アドベンチャー感を本当によく再現していて、誰もが気に入るというものではないが、とても魅力的に感じる人々が一定数いるだろう。このストラップは良質で柔らかいカーフレザー製である。

 しかし、もし万一ブンドスタイルのストラップがお気に召さないならば、レンジャーにはシンプルなタバコ色のカーフストラップも用意されている。

 最後に、どのオプション(SSブレスレットかブンドストラップ、または通常のカーフレザー)を選ぶにしても、レンジャーにはファブリック製カモフラストラップが付属する。そう、確かに私はカモフラと言った、そのままカモフラージュ模様のことだ。冗談だと思われそうだが、これは冗談ではない。そしてもちろん、15ドルのナイロン製NATOストラップとは訳が違う。

 チューダーの時計に付属する全てのファブリックストラップと同様に、この新しい迷彩ストラップもまた、フランスでバチカンのために法衣を織っている人々が織り上げたものだ。NATOスタイルの別の迷彩ストラップをどこかで見かけたことがあるかもしれないが、それらの模様はナイロン生地にプリントされているのに対し、こちらの模様は織り込まれている。

 その品質は素晴らしく、驚くほど着け心地がいい。41mmレンジャーのラグ幅はブラックベイやペラゴスと同じらしいので、チューダーのあらゆるストラップが(その意味ではあらゆる22mmのストラップも)適合する。そして、このストラップは本質的にどのレンジャーを購入しても付いてくるおまけのようなもので、気が進まないなら着用する必要は全くない。そうはいっても、私は製品プレゼンテーションの場でこのストラップを見た途端に、チューダー内の人々がロレックス上層部に迷彩ストラップを承認するよう説得する場面に想いを馳せた……率直にいって私には信じがたい。でもクールだ。