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One to Watch スタジオ・アンダードッグは、時計を再び楽しいものにするために登場した

価値が高く、自己本位ではない若いブランドを紹介する。そしてそれは、起業を志す人々への教訓でもある。

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本稿は2022年1月に執筆された本国版の翻訳です。


オリジン・ストーリー

リチャード・ベンク(Richard Benc)氏は問題を抱えていた。ロンドンを拠点とするこのデザイナーは、過去6年間、キャラクターウォッチとミニマルなジャーマンウォッチを組み合わせたデザインに取り組んできた。5ドル(日本円で約750円)するペッパピッグ(イギリス発のテレビアニメ)のようなのキャラクターウォッチや、家電製品のように見えるようなものだ。彼はもっとクリエイティブなことができるとわかっていたが、どう飛躍すればいいかがわからなかった。

 彼はノッティンガム大学でプロダクトデザインを学び、その学位によって最初の仕事を得たが、それには成長の限界があった。昼間はキャラクターウォッチのデザインに携わりながら、ベンク氏は自分の時計に関するアイデアを夢見ていた。彼がそのデザインをオンラインに投稿すると、多くの好意的な意見とフィードバックを得た。しかし、ほかのベンチャー起業家と同様、成功のカギはローンチのタイミングである。

richard benc

 2020年3月にロンドンがロックダウンしたとき、彼は今がその時だと思った。何も生み出さずに、これ以上アパートのなかでじっとしているのが耐えられなかったのだ。「もちろん緊張していましたし、人々がそれを“理解”してくれるかどうかもわかりませんでした」とベンク氏は言うが、彼のビジョンに従うことがこれを実現する唯一の方法であった。「もし市場の要望に応じてプロセスを進めると、結局はサブマリーナーのオマージュに行き着くでしょう。私はスタジオ・アンダードッグが成功したのは、何が一番売れるかということに焦点を当てなかったからだと思います」

 最初のステップは、ブランド名を決めることだった。「ネーミングプロセスは、ゲームやフォーラムでクールなユーザー名を考えるのに似ています」と彼は言う。「しかし、いいものはいつも使われています」。彼が“スタジオ・アンダードッグ(Studio Underdog)”を希望したのは、“はるかに大きなブランドがひしめく市場で、自分の時計を実らせようとしている個人的なブランド”だからだ。では差別化するにはどうすればいいのか。そして“o”を“ゼロ”に変更した。

 こうしてスタジオ・アンダードッグが誕生した。

watermelon watch

 新参者であるベンク氏は、誰かの唯一の時計になるような時計をデザインすることはできないと理解していた。彼のデザインは日常使いするにはあまりにもカラフルだったのだ。彼らは多様性を求めるコレクターのためにあるのだ。「彼らはすでに、本格的な4つの時計から成るコレクションを持っているかもしれませんが、そのコレクションには穴が開いています。もしかしたらコレクションが完成していないのかもしれません。そんな彼らは、純粋に楽しくて遊び心のあるものを求めているのかもしれません」。そして、彼は自身の作品が大きなコミットメントになることも望んでいなかった。そのため価格を抑える必要があるとわかっていた。

four watches

我々がなぜ気に入ったのか

その賭けは成功した。ベンク氏が最初に発売した、カラフルで意外性のある4つのデザインは、発売後まもなく完売した。その遊び心と斬新なデザインは、世界中の時計バイヤーの琴線に触れ、彼はイギリス、アメリカ、中東、アジアに時計を送った。そして最近、スタジオ・アンダードッグに専念するべく彼は仕事を辞めた。

movement

 最初のシリーズは475ドル(当時の相場で約5万円)という手頃な価格だったが、これは価格重視をしたシーガル製 ST-190を搭載したおかげだ。「中国製ムーブメントのため、多くの人がそれを見て“パス”と思うかもしれません。ですがこの特別なムーブメントには、魅力的な歴史があるのです」。というのもST-190は、本質的にはスイスのヴィーナス175ムーブメントである。これは20世紀半ばにホイヤー、ブライトリング、ギャレットなど、多くのスイス製クロノグラフに搭載された、有名なコラムホイール式クロノグラフキャリバーである。現在、ST-190は60年代にスイスから中国に持ち込まれたとされる金型を使って、シーガル社で製造されているのだ。

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 “ミントチョコチップ”、“デザートスカイ”、“ウォーターメロン”、“グーフィーパンダ”という4モデルはいずれも、ST-190を鑑賞できるシースルーバックを備えている。ST-190キャリバー特有の“オープン”構造により、クロノグラフの操作を見ていて楽しいものにしてくれる。

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 そして文字盤側は非常に奇抜なデザインであり、ただ単に愉快な気持ちにしてくれる。「一番無難なグーフィーパンダが最も人気があるだろうと考えて時計を発売しましたが、初日の売り上げの50%以上がウォーターメロンで、パンダはわずか17%でした」。顧客の好みはすぐに明らかになった。大胆な色と、不遜なテーマだ。

crown with logo

 ウォーターメロンモデルは、種に似せたインデックスと緑のグラデーションで補完した鮮やかなピンクを特徴としている。この時計は、おそらくインターネットの時計コミュニティで最もよく知られるモデルだが、ナイキのスニーカーにインスパイアされた、より繊細な“デザートスカイ”モデルがベンク氏のお気に入りである。

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 最も保守的なデザインであるグーフィーパンダにも驚くべき要素がある。「絶妙な緑色のアクセントがありますが、なぜだかわかりますか? パンダはタケノコを食べるのが大好きだからです」。約8分で完売したミントチョコチップモデルのインデックスに使われている“チップ”よりもはるかに繊細である。

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 ベンク氏は、誰もが知っているもののあまり認識されていないものを利用した。現代の高級腕時計の風景は、ひと握りの見慣れたデザインのいくつかを中心に展開されている。派生的なデザインが多い世界のなか、本当に独創的なアイデアは注目に値し、特にそれが適切な価格で、単純に楽しい場合はなおさらだ。

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次に来るもの
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スタジオ・アンダードッグの最初のモデルは、ベンク氏が生産資金を調達できる唯一の方法である、予約ベースで販売されていた。彼は今後、そのビジネスモデルを過去のものにしたいと考えている。「新しいモデルを発売するなら、それが売れるという確信を持てばいいのです」

 この4モデルは今春再入荷予定である。そして、彼は潜在的な顧客にとって魅力的なパッケージを提供するアイデアを持っている。「ここイギリスで時計を組み立てたいです。れは、当初は決してできなかったことです」と述べている。彼はまた、地元で製造されたストラップをつけて、時計をよりイギリス的なものにする計画も立てている。「それはさておき、私はただ時計をつくり続けたいのです!」

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詳しくはスタジオ・アンダードッグの公式ウェブサイトをご覧ください。