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In-Depth NASAの深宇宙原子時計は、最後の未開拓地航行にどのような革命をもたらすか?

10年間で1ミリ秒(の誤差)だ。ざまあみろ、ジョン・ハリソン。

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本稿は2019年8月に執筆された本国版の翻訳です。

6月25日午前2時30分、ケネディ宇宙センター第39A発射施設から、巨大なロケットが轟音を立てながら空に向かって打ち上げられた。この発射施設は、宇宙への旅の出発点として非常に長い歴史を持っており、アポロ計画のサターンVロケットを打ち上げるために特別に建設された、巨大な第39発射施設の一部である。最終的に、13基のサターンVロケットが、スカイラブやスペースシャトルのミッションとともに、この発射場から打ち上げられた。スペースシャトル計画の終了に伴い、NASAは第39A発射施設を商業利用として開放すると決定し、2013年にスペースX社がテナントとして選び、20年間のリース契約を結んだ。

 第39A発射施設は現在、ファルコン9とファルコンヘビー ロケットの両方の打ち上げに使用されており、6月30日の打ち上げ(STP-2、または宇宙試験プログラム2として知られるミッション)は、ファルコンヘビー ロケットが夜間に発射施設から打ち上げられた最初のものであった。このミッションでは、壮観な光のショー(ファルコンヘビーは現在、世界で最も強力なロケットであり、サターンVを除くほかのどのロケットよりも大きなペイロード=運搬積載容量を持つ)のほかにも、非常にコンパクトで高精度な新しい原子時計の最初の軌道バージョンを含む、多くの重要なペイロードが搭載された。これが深宇宙原子時計(Deep Space Atomic Clock)であり、いずれ深宇宙探査の新時代を切り開く可能性を秘めた、新しいクラスの宇宙用原子時計の第1世代を代表するものだ。NASAは近い将来、探査機と有人機の両方が、ディープスペースネットワークとして知られる地上ステーションからの時間を要する、複雑な双方向無線送信を必要とせずに航行できるようになることを期待している。マリンクロノメーターという新しいクラスの航海用時計の発明が海上での航海に革命をもたらしたように、深宇宙原子時計が惑星間航行に革命をもたらすだろう(とNASAは願っている)。

発射台に設置されたSTP-2。Image: Bill Ingalls for NASA

 NASAのジェット推進研究所が、アメリカで最初に成功した人工衛星エクスプローラー1号を追跡するために、ナイジェリア、シンガポール、カリフォルニアに初めて移動式追跡ステーションを配備した1958年以来、NASAのディープスペースネットワークは宇宙船のナビゲーションに最も不可欠な要素となっている。現在、ディープスペースネットワークはカリフォルニア州ゴールドストーンのほか、マドリード、スペイン、そしてオーストラリアのキャンベラに、主要な追跡ステーションとして設置されている。このネットワークは惑星間空間を航行する宇宙船に無線信号を送受信し、その送信機と深宇宙探査機とのあいだの双方向通信を分析することで、NASAが宇宙船の位置と速度を決定することができるものだ。さらに、宇宙船が予定された軌道から外れていると判明した場合は、予定されたマヌーバ(ジェット燃料を使って衛生位置や姿勢を変えたりすること)と臨時の修正マヌーバの両方を行うよう命令を送信することができる。

カリフォルニア州ゴールドストーンにあるディープスペースネットワーク追跡ステーションの、70mもの電波パラボラアンテナ。


ディープスペースでの航行

 深宇宙原子時計が宇宙航行の性質をどのように変化させたかを理解するには、まず地球周回軌道を離れた宇宙船の位置をどのように確定するかについて、少し知っておく必要がある。明らかに、その時点では宇宙船を直接観測することはできなくなるため、無線伝送データから位置を推測しなければならない。

 合計6つの数値(3つは位置、3つは速度)が、任意の瞬間における宇宙船の位置と速度を示す。これらは順に、より基本的なデータである、特定の瞬間に行われた航続距離と、速度の一連の直接測定値から導き出される。地球上のディープスペースネットワークから高速探査機までの距離は、地上局と宇宙船の往復距離を移動するのにかかる無線信号の時間を計ることで算出される。速度は無線信号のドップラー効果から計算される。ドップラー効果とは、後退する宇宙船から地球に戻ってくる電波の波長を引き伸ばすことであり、既知の波長の信号を宇宙船に送ると、同じ信号が戻ってくる。ドップラー効果を測定することで、宇宙船の速度を求めることができるのだ。そして効果が大きいほど、宇宙船が地球から離れる速度は速くなる(ドップラー効果は音波に対しても起こる。救急車が通り過ぎるのを見たことのある人なら誰でも観察できるだろう。サイレンの音の高さは、音波の周波数が減少するにつれ、速度を上げながら下がっていくように聞こえるはずだ)。

 ディープスペースネットワークのアンテナは信じられないほどの感度を持っていなければならない。1975年に打ち上げられたバイキング探査機は、約16ワットの無線リターンシグナルしか発することができなかったが、ディープスペースネットワークにそのシグナルが到達したら簡単に検出できた。これは、火星の表面に点火された1本のマッチを、地球の表面から“見る”のと同じぐらいの偉業である。

カッシーニ/ホイヘンス探査機が、土星に接近したことにより撮影できた木星。Image: NASA

 JPL(ジェット推進研究所)のウィリアム・G・メルボルン(William G.Melbourne)氏による1976年の記事では、重要なポイントが簡潔に説明されている。“宇宙船と惑星は、重力運動の法則にほぼ正確に従った軌道を描き、宇宙空間を周回している。宇宙空間における宇宙船の位置と速度がある特定の瞬間についてわかっている場合、固有の軌道を計算することができる。位置と速度の値のすべての組み合わせについて、範囲とドップラー効果は、結果として生じる軌道の特徴である、独特の方法で時間とともに変化する”。

 深宇宙原子時計実験の主任研究員で、惑星間航行の専門家であるジル・シューベルト(Jill Seubert)氏は、惑星間を時速数万kmで移動する宇宙船という、針の穴に糸を通すような追跡をするための基本的な手順について、いくつか説明している。

2004年、カッシーニ/ホイヘンス探査機が土星周回軌道に入るためのマヌーバを行うという構想図。宇宙船は右に移動して、エンジンを噴射して速度を落とし、土星の重力を捕らえられるようにしている。Image: NASA and Jet Propulsion Laboratory

 「すべてをうまく機能させる鍵は、宇宙船がどのように動けるかというモデルを持っているかです。私たちには(惑星や宇宙船の)軌道力学モデルがあります。打ち上げ当日の主な目標は、宇宙船を確実に追跡できるか確認すること。宇宙船は、(モデルから)追跡できるほど基準軌道に近い軌道を描いているでしょうか?」とシューベルト氏は話す。

 「最初の問題は、打ち上げロケットがどうやって軌道に投入したかです。打ち上げロケットには噴射誤差があるので、打ち上げがどれだけ正確に正しい方向に進んだかがわかります。そこで打ち上げロケットの噴射誤差を評価します。宇宙船は熱的に安定し、パワーがプラスになるように、安定した姿勢(向き)になる必要がある。太陽電池アレイが正しい方向を向いていないと、パワーがプラスにならない可能性があるからです。それが確立され、宇宙船を追跡できるようになったら、次は操縦を心配します」

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 惑星間航行では、宇宙船の移動速度と地球からの距離を追跡データで判断する。地球もほとんどの惑星も、同じ皿の上で転がっているビー玉のようなもので、同じ基本平面で回転している。これがいわゆる黄道面である。一般的に、軌道は黄道面にあり(より具体的には、航行の目的で太陽、地球、宇宙船の位置によって定義される三角形の面にある)、地球上の追跡ステーションは、その平面に沿った宇宙船の動きと、上下の偏差の両方を評価できなければならない。後者は特に測定が困難で、航続距離データから導き出す必要があり、1億kmの距離では、宇宙船の軌道面の上下に1000kmのずれがあっても、航続距離は5mしか伸びない。しかし、地球の自転による速度測定の変動を注意深く分析することで、宇宙船の位置のコンポーネントも導き出すことができる。

 地球から宇宙船への方向は、ナビゲーターの軌道予測モデルを使用し、ラウンドトリップ無線信号から得られたデータに対してプロットすることで確立できる。モデルによって予想される一連の数値が生成され、それを実際のデータと比較。予測された位置と速度のデータと、実際のデータのセットとの差は、残差と呼ばれる。

 モデルが予測する値と実際の測定値のあいだには、常に何らかの違いがある。したがって、常にいくらかの残留がある。しかしそれが小さなものであり、残差の分布がランダムである場合(ランダムでない分布は、モデルが考慮していない、何らかの力が宇宙船に作用していることを示すしているかもしれない)、モデルは正確であり、宇宙船がコース上にあるということだ。最も重要なのは、宇宙船が将来どこに到達するかを知っているということ。また、必要に応じて宇宙船にマヌーバを行うよう命令を送ることもできる。そしてマヌーバが実行できたら、宇宙船は実際に目的地に向かっていると思われる場所に向かっているという確信が持てるのだ。

2011年に、カッシーニ/ホイヘンス探査機が捉えた、土星の北半球にある巨大な嵐。Image, NASA.

 宇宙船の速度と軌道に沿った位置の測定は、今日では信じられないほどの精度で計算することができる。シューベルト氏によると、距離データの誤差はわずか1~2m、ドップラー速度データは0.01mm/秒以上であり、何百万km、何十億kmも離れた宇宙船から、ホメオパシー(似た)のような強さの電波を受信してデータを収集していることを考えれば、この結果はかなり賞賛に値するという。しかし、このシステムには大きな欠点がある。宇宙船は航行データを地上のディープスペースネットワークに依存しており、さらに双方向のデータ伝送にも依存しているのだ。

 DSNが信号を送信したとき、宇宙船は信号を送り返さなければならず、そうすることで初めて軌道が計算される。マヌーバを行う場合、DSNは操縦命令を宇宙船に送り返さなければならない。宇宙船が地球周回軌道上にある場合、所要時間は通常1秒未満だが、木星周回軌道上にある宇宙船と通信しようとすると、信号はそこに到達するまでに45分、戻ってくるまでにさらに45分かかり、そのあいだに宇宙船は非常に長い距離を移動している可能性があるのだ。土星探査機カッシーニ/ホイヘンスの最高速度は、太陽との相対速度で時速10万kmをはるかに超えている。まるで、海を航行する船がクロノメーターを搭載せず、港にある時計からの時報、さらには音速でしか進むことのできない信号に頼らざるを得ないようなものだ(例えば、港には世界一うるさい大砲があるかもしれない)。それを動かすことは可能だが、正確な船内時計があるほうが、船にとっても宇宙船にとってもはるかにいいだろう。

土星の北極にある謎めいた安定した六角形の雲の形成を、カッシーニ/ホイヘンスが撮影したもの。Image: NASA/JPL

 シューベルト氏は、「時刻の基準は地球ベースの原子時計です。GPS衛星にはセシウム時計とルビジウム時計があり、GPSには十分なものです。信号の移動距離はそれほど長くなく、1秒もかかりません。しかし、それらは長期的なドリフトがあるため、アメリカ空軍からアップロードされた1日2回の修正が必要になります。信号が伝わる距離は短いのでそれほど問題にはなりませんが、深宇宙では状況が異なります。火星に行くには片道20分、木星は45分かかり、また一方通行なので、長期的に安定したクロック信号が必要なのです」と述べている。


深宇宙原子時計

 何が新しい深宇宙原子時計を特別なものにしているのか知るために、我々はNASAのエリック・バート(Eric Burt)氏に話を聞いた。時計そのものの開発責任者である彼は、自らを笑ってこう説明する。「普通の田舎の時計屋ですよ」

 「私たちの時計は、単に性能が進化しただけでなく、テクノロジーにおいても1歩進みました。この技術(イオントラップ原子時計)が最初に発明されたのは40~50年前のことですが、今のところ宇宙での時計は実現されていません。原子物理学の理論的立場から言えば、イオンをどの程度冷やせるかが問題になります。最終的な目標は常に、どのようにして時計を作るかということ。私たちは環境の摂動に対する感度が非常に低い、特定のイオンを選びました」と話した。

これはアメリカ国立標準技術研究所、時間周波数解析部門にある、地球上のセシウム原子時計、NIST-F2原子時計だ。

 原子時計は、原子が特定のエネルギー状態から低いエネルギー状態に変化するときに放出するエネルギーの周波数を測定することによって機能する。原子の任意のエネルギー状態について、この遷移は常に、非常に正確な周波数で光子を放出する。エネルギーはマイクロ波、光学、紫外線のいずれでも可能で、この3つすべてが原子時計に使用されている。例えばふたつ目は、今日ではセシウム原子のエネルギー状態の特定の変化によって定義されている。この特定の遷移は正確に、91億9263万1770振動の周波数で、エネルギーを放出する。

 原子時計の原子は真空チャンバー内に保持されているが、原子の一部はチャンバーの壁と相互作用し、周波数誤差を引き起こす原因となる。これに対処するため、深宇宙原子時計は水銀イオンを使用している。イオンは電荷を持つ原子であり、DSAC内の水銀原子が電荷を持っているという事実は、それらが電磁場によって閉じ込められる可能性があることを意味し、レートが不安定になる潜在的な原因を取り除くことができる。これをはじめとする設計の進歩により、DSACの周波数安定度は、GPS衛星に搭載されている原子時計の50倍も向上している。

地球周回軌道に投入される、深宇宙原子時計(金属製の箱の上)が衛星に組み込まれる。Image: NASA and General Atomic

 「大きな前進はイオンの閉じ込めです」バート氏。「宇宙時計は通常、真空チャンバー内にイオンの集合体を含んでおり、温度や磁気の影響もありますが、衝突によってイオンが外部環境と結合します。高周波電界で電気的に閉じ込めることで、真空チャンバーよりもはるかに小さくすることができます」。地球上の原子時計は一般的に冷蔵庫ほどの大きさだったが、深宇宙原子時計はそれよりはるかに小さく、4枚切りのトースターほどの大きさである。

 バート氏は「DSACは継続的かつ自律的に動作するようになるので、レートの安定性を評価することができます」と話す。「軌道上には多くの原子時計がありますが、今のところ宇宙にはそれほど多くはありません。ほかのほとんどは(地球からの原子時計制御信号によってレートが補正される)水晶発振器です。補正は常に時計製造の中核にあり、重力効果による赤方偏移を補正しなければいけません(重力は電磁波のドップラー効果を引き起こすため)。もしGPSシステムが相対性理論の補正をやめてしまったら...」と言い、「数秒のうちに、キロメートルの誤差が生じます」と彼は付け加えた。時計はまた、チャンバー内の原子の動きによるドップラー効果によって引き起こされる、信じられないほど小さな変化を補正しなければならない。バート氏はさらに、 「私はいつも(ジョン・)ハリソンに刺激を受けています」と話す。「私は子どもの頃から、物事の仕組みと、卓上で実験できる物理学というふたつの物事に魅了されてきました。このプロジェクトのために、私たちは本物の職人、時計職人として、アプローチを取らなければなりませんでした」


深宇宙航行の未来

 DSACが小型で低消費電力であることは、安定性に優れた原子時計を宇宙船に搭載し、地上からの修正を必要とせずに何年も確実に動作させることが、初めて技術的に可能な範囲に入ったことを意味する。現在、地球軌道上でテストされているプロトタイプの時計は、40ワット(ジル・シューベルト氏は、次世代のためにNASAとジェット推進研究所は“30ワット以下を目指している”と述べている)の電力しか消費せず、10年後には誤差が約1マイクロ秒しかないと予想されている。これにより、深宇宙航行の可能性が大きく広がる。

信じられないかもしれませんが、火星はますます混み合ってきています

– ジル・シューベルト博士、惑星間航行専門家

 「深宇宙原子時計を搭載した宇宙船があれば、彼らは船内で独自の追跡データを収集できるので、地球にデータを送る必要はありません。ディープスペースネットワークは1度に一隻の宇宙船としか通話できませんが、複数の宇宙船の音声を聞くことは可能です。アンテナを火星に持っていけば、火星にいるどんな宇宙船でも無線信号を集めることができるのです。信じられないかもしれませんが、火星はますます混み合ってきています。ミッションクリティカルなイベントの際には誰もが追跡データを求めますが、火星に信号を送るだけなら(そして特定の宇宙船のリターン信号を聞く必要がなければ)ユーザー数は影響を受けません。我々は火星に、信号を送るだけでいいのです」

混み合ってきている火星。2015年、赤い惑星で自撮りをするキュリオシティ・ローバー。Image: NASA/JPL

 この技術は、地上の探検家の方向を決めるのに役立つGPSネットワークの構築など、ほかの世界の有人探査を促進するのにも利用できる。

 「宇宙船のコンピュータは、リアルタイムでナビゲーションを行うように設計することができます。もうひとつの興味深い応用例は、GPSよりも安定した時計を持っていて、それを火星や月に設置できるのであれば、GPSのような機能を構築してはどうかということです」とシューベルト氏。「このような時計技術があれば、これはシステムの実現に向けた1歩となります」

 やはりここはHODINKEEである。エリック・バート氏との話し合いの中で必然的に疑問が生じた、商業的に実現可能な原子時計腕時計の可能性について議論をした(捕捉イオン物理学の世界的な第一人者にこんな質問を毎日できるわけではない)。

ニュー・ホライズンズ探査機のアンテナ利得。この探査機は冥王星まで到達し、現在は太陽系外縁部の探査を行っている。時速5万8500キロで打ち上げられ、地球を離れた人工物としては史上最速となった。

 「まあ10年前に、チップサイズの原子時計という大きな飛躍がありました。問題は市場を確保することです。お金を払ってくれる人さえいれば、ほとんど何でもできますが。長期的な最大の問題はレートの安定性であり、電力使用量はかなり小さくできます」 と述べた。技術的なハードルはまだあるが、原子時計の腕時計が技術的に実現不可能なものではないことは確かだ。インターネット上で原子時計の時刻が日常的に利用できるようになったときに、そのような精度を求める市場が存在するかどうかはわからない。腕時計に搭載されるチップスケール原子時計の開発が、深宇宙原子時計のように現実的な考慮に基づいていなければ、おそらくかなり高価で非常にニッチな製品以上のものにはならないだろう。クォーツウォッチはすでに年差±1秒の精度に達しているなど、市場は混み合っている。技術的には手の届く範囲にあるにもかかわらず、チップスケール原子時計を搭載した時計は、実現しないかもしれない。

2015年、ニュー・ホライズンズ探査機が撮影した冥王星。探査機は52億5000万kmを9年半かけて移動した。IAUが何と言おうと、冥王星は惑星だ。

 一方、現在進行中の深宇宙原子時計の実験は、太陽系より広範な無人探査、そして最終的には有人探査を可能にするために必要なツールの準備をするだろう。それはまさに人間の好奇心と人間の創意によって推進される人間の取り組みであり、そのなかで航行の進化という驚くべき物語は、不可欠な要素なのである。

 「ディープスペースナビゲーター(深宇宙航行士)は、本当に素晴らしい肩書きです。ペンシルベニア州立大学の学部生だったとき、自分がSTEM教育を受けた人間であることは知っていて、なんでも興味があり、なんでも得意でした。自分の情熱を見つけるのは難しかったですが、3年生のときに初めて火星探査機がパラシュートで火星に着陸し、膨張式のクッションが展開されるのを見て、今まで見たなかで最高にカッコいいと思いました。そして“火星にロボットを送りたい”と思うようになったのです」

 「子どもの頃、私は旧世界の探検家たちに夢中でした。人間が地球の多くを探検してきたことを知って非常にがっかりしましたが、火星でなにか新しいものを発見するかもしれない。これが私なりの探検家としてのやり方なのです」

この記事の情報とリソースを提供してくれたジル・シューベルト氏、エリック・バート氏、そしてNASA/JPLに感謝します。深宇宙航行の基本の多くは、ウィリアム・G・メルボルンの論文、『Navigation Between The Planets』(サイエンティフィック・アメリカン誌)により引用しています。この話は1976年のものですが、シューベルト博士によれば、基本的なことはあまり変わっていないとのことです。詳細については、NASA/JPLの記事をご覧ください。また、“NASAの深宇宙原子時計について知っておくべき5つのこと(Five Things to Know about NASA’s Deep Space Atomic Clock)”もこちらからお楽しみいただけます。ファルコンヘビー ロケットを予約したい? 料金表はこちらからチェックしてください。