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August 04, 2020
Business News スイス時計業界における最悪の事態は収束したのか?

Business News スイス時計業界における最悪の事態は収束したのか?

スウォッチグループは今後6ヵ月は上機嫌だろう。しかし、FHは「これまでにないショック」からの回復は遅いと見ている。

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COVID-19が猛威が猛威を振るう3月、チューリッヒにあるヴォントベル銀行の金融アナリストであるルネ・ウェーバー氏は、今年度第2四半期におけるスイスの時計輸出額は、2019年の同時期と比べて40%減少するだろうと予測した。これは異常なほど悲観的な予測であり、ウェーバー氏はこれについて批判を受けた。

 しかし、ウェーバー氏の予測は十分に悲観的ではなかったことが判明。スイス時計協会(FH)が先週公表したデータによると、4月から6月にかけて輸出は62%減少していたのだ。

  FHと、スイスにおける2つの最大の時計グループである、スウォッチグループとリシュモングループは、6ヵ月間に渡るコロナウイルスの世界的パンデミックを経て、スイス時計業界は未知の領域に達したと悲痛なほどに明確に示した。「前例の無い」という言葉がスイス時計界隈で多く聞かれるようになった。

Richemont

リシュモンは4月〜6月期におけるグループ売上の47%減少について「前例の無いレベルの混乱」と言及した。

 「スイス時計業界は上半期、前例のない危機を経験した」。FHは声明の中で、1月〜6月期におけるスイス時計の輸出額が36%の減少である68億7000万フラン(約7578億円)であったと発表した。出荷個数は45%減少し、たった550万本にとどまった。

 リシュモンは4月〜6月期におけるグループ売上の47%減少について「前例の無いレベルの混乱」と言及した。

Table

 更に、スウォッチグループは前代未聞の節目を迎えてしまった。1983年の創業以来初めて半期赤字を計上したのだ。その額は3億800万スイスフラン(約339億円)にのぼる。

 「上半期における一時的な生産と営業の中止はスイス時計業界に厳しい結果をもたらし、その影響は長く続くだろう」とFHは警戒した。

 新たなデータは、時計業界へのこれからの被害の程度を示す最良の指標である。スイス時計の輸出は、一つを除く世界中全ての市場において減少した。(例外は小国オマーンであり、上半期の輸出は75%増加し、2年間で137%増加するという異常を呈している)その他の全てのマーケットでは、15%(2位の中国)から57%(30位のインド)まで二桁の減少が見られた。


『完全なロックダウン』

 「この減退は実際の需要の変化よりも、商品の動きにおける混乱と明らかな商品の全体的な減少を反映するものである。スイス時計の輸出は3月に急激に減少し始め、4月と5月には停止へと至った」とFHは言及した。

 スウォッチグループは、セールスと操業におけるパンデミックの影響についてのサマリーの中でその点を強調。「1月最終週での中国における深刻な減退と共に」危機は始まった、と記している。

 「世界中で行われた政府によるCOVID-19への処置は、2月時点でグループに甚大な影響を与えた。ほとんどの国々で完全なロックダウンが導入され、その時点で世界中の全ての小売店の80%に及ぶ店舗が閉店を余儀なくされ(グループ直営店とサードパーティの店舗)、Eコマースのみが部分的に利用可能であった。時計、宝石、部品の生産は最低限に抑えられ、大量の従業員に時短勤務が導入された」 

 スウォッチグループは260の店舗を閉店し、グループ全従業員の6.5%にあたる2000人の従業員をスイス国外で解雇することで「この例外的な市場状況」に対応した。購入、生産、マーケティング、そして賃料のコストを削減したが、研究開発とトレーニングのコストは削減しなかった、と述べている。

Omega

スウォッチグループは260の店舗をクローズし、市場状況に対応した。

 リシュモンの残酷な4月から6月にかけての売上は、ロックダウンした世界の寒々とした風景を定量化したものとなった。グループの売上は全体で19億9000万ユーロ(約2284億円)となり、一年前の37億4000万ユーロ(約4287億円)から減少。日本での売上は、2019年と比較して64%減少した。(南北)アメリカでの売り上げは61%、ヨーロッパでは59%、中東とアフリカではそれぞれ38%減少している。アジア太平洋地域では29%の減少に抑えられた。(リシュモンの「売買計画明細書」では、売上結果しか記載されず、四半期の利益についての情報は無い)

 4月には中国はロックダウンを解除したため、アジア太平洋地域における売上減少は少ない。スウォッチとリシュモンによると、6月時点で回復の確かな兆しを見せているのは中国本土と韓国の2つの市場のみである。


ファースト・イン、ファースト・アウト
Shanghai

FHによると、6月に「中国で非常に急激なスイス時計需要の増加が見られた」 。

 スイスにとってアメリカに次ぐ第二の市場である中国は、コロナウイルスに最初に見舞われ、そして最初に回復した国である。ひとたび中国政府が完全なロックダウンを終了すると、スウォッチグループは中国における小売店の売上の急上昇を確認した、と報告書にはある。ロックダウン中には、売上が2019年と比較して80%以上下落していたが、5月には76%の減少へと上昇し、6月には60%の減少となった 

 リシュモンも同四半期における非常に力強い小売売上を報告しており、オンライン販売においても3桁台の上昇を報告している。中国でのグループ総売上は2019年4月〜6月期と比較して47%増加した。

 これにより、6月のスイス時計の中国への輸出総額は急上昇した。FHは6月に「中国ではスイス時計の非常に急激な需要の増加が見られた」と報告した。驚くべきことに、6月の輸出は48%も増加したのだ。(それと対照的に、スイス時計の三大市場の残りの2つであるアメリカと香港ではそれぞれ、57%と55%の減少であった)

 政府が部分的なロックダウンを課した韓国でも同様に、5月と6月に時計売上は急激に増加した。スウォッチグループの卸売と小売の売上高を合計すると、5月には22%、6月には34%増加であった。

中国における5月と6月の時計の売上の

急激な増加は、コロナウイルスによる

ロックダウンから浮上する

他の市場の指標となるのだろうか?

 売上の急激な増加の背景にある主要な要因の一つは、世界的に旅行小売を牽引する中国の消費者が今年海外へ旅行することができなくなり、代わりに高級品を本国で購入していることだ。これにより中国での売上は増加したが、中国人旅行者に好まれる市場である日本やヨーロッパでの売上は減少した。

 スウォッチグループは、中国と韓国をコロナウイルスロックダウンから復帰した際に市場に何が起こるかの指標と位置付けている。「グループの製品の消費者需要は依然として強力である」とし、今年上半期の問題点は、「世界中の流通チャンネルの大多数が閉鎖を余儀なくされているため、この需要が満たされなかった」ことだとする。

 この中国モデルに基づいて、スウォッチグループは2020年下半期について楽観的に見ている。「世界中でのCOVID-19への処置緩和と並行して、売上と収益状況は数ヵ月のうちに急速に改善されるだろう」とグループの経営陣は確信している。繰り延べ需要に対応してスウォッチグループのブランドが新製品を市場に投入することで、「これは第3、第4四半期の生産能力の増加に繋がる」と述べる。上半期には10億ドルの約3分の1を失ったにも関わらず、スウォッチグループは「通年での好業績」を期待しているのだ。

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長期的プロセス?
Swatch Group

スウォッチグループは2020年上半期で大きな損失を出したにも関わらず、「通年での好調な営業成績」を期待している。

 業界全体をスウォッチグループよりも広く見渡すFHは、今年下半期についてそこまで強気ではない。

 「上半期の終了はサイクルの終了を示すものではない」FHは上半期についてのレポートにそう記した。「しかし、前例のないショックと平時への緩やかな回復の移行期にある」

 市場は不安定で、回復のタイミングとその強度は「未だに未知数」と認めながらも、中国でのCOVID後の売上増加は時計業界を復活させるには至らない、とFHは査定している。

 「中国で通常へと戻る最初の兆候が見られ、全ての目が中国に注がれていても、まだ回復プロセスに影響を与える多くの要因がある」とFHは述べた。「今のところ、他の市場では回復の兆しを見せていない。健康危機と政治状況の両方から悪影響を受ける香港は実質的に不景気にある」

「全体として、通常への回復は中期、

場合によると長期的プロセスとなるだろう」

– -スイス時計協会-

 「アメリカは依然としてパンデミックに襲われており、ヨーロッパは旅行小売業の急激な悪影響に苦しめられている。関係者によると、海外旅行は通常レベルに回復するまで3年はかかるだろうと言われており、時計を含む高級品の売上の長期に渡る障害となる」

 「同様に、中国における自国内での消費は増加するが、それは数年に渡って分散されるものであり、つまり他の場所で見られる減少を相殺するものとはならないだろう」

 「全体として、通常レベルへの回復は中期、場合によると長期的プロセスとなるだろう」とFHは言う。「時計輸出は2020年、通年で約30%の市場縮小となる可能性がある」それは金額においてであり、部品輸送においてはより悪化し、先月我々が報告したように、1940年代から経験したことのないレベルに落ち込むだろう。

 もちろん、「主要なブランドの間にも特筆すべき違いがある」とFHは指摘する。

Rolex

金融アナリストによれば、ロレックスを代表とする7つの「ビリオネアブランド」が嵐の中をやり過ごすのに最も適している。

 名前は挙げられていないが、7つの「ビリオネアブランド」(年間売上が10億スイスフランを超える時計ブランド)のようなビッグプレーヤーは、どんなに長く流行が続いたとしてもこのコロナウイルスの嵐を切り抜けるだろう。(これらのブランドは推定売上順にロレックス、オメガ、ロンジン、カルティエ、パテック フィリップ、ティソ、オーデマ ピゲである)

 危険に晒されているのは、スウォッチ、リシュモン、LVMHのような大きなスイス時計グループの後ろ盾がない小規模の独立ブランドである。十分に悲観的ではなかった悲観論者であるヴォントベル銀行のルネ・ウェーバー氏は、犠牲者が出るだろうと予測する。彼は6月にスイスのノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング新聞に「約600の(スイスの)時計ブランドのうち、50から100はこの危機を乗り越えることが難しいだろう」と語っている。

 念のために記しておくと、ウェーバー氏はFHと同様に今年のスイスの輸出は30%減少すると予測している。これは前例の無いことである。

画像引用元: Wikimedia Commons