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先週、アトリエ・ド・クロノメトリー(Atelier de Chronométrie)がInstagramにユニークピースを投稿したとき、私は心を奪われた。
その最新作、AdC17 ラトラパンテ(AdC17 rattrapante)は、直径39mmに厚さ13.3mmのグレーとローズゴールドの18K製ツートンカラーケースに、ゴージャスなガルバニックローズゴールドのツートンカラーダイヤルを備えた、とにかくゴージャスなモデルである。ダイヤルにはローズゴールドのバーインデックスとブレゲ数字、ローズゴールドとブルースティールの針、そしてローズゴールドのリューズとプッシャーが配されている。針、リューズ、プッシャーのローズゴールドの色調は、ダイヤルのローズよりも明らかにイエローが強く感じられる。これは時として衝突することもあるが、このモデルではうまく機能している。
本当はHands-Onで紹介したいところだが、今回は残念ながらほんのひと握りの写真で我慢してもらいたい。カスタムメイドであり、そして現在3人の従業員で構成されるこのブランドの年産10本のうちの1本であるため、私がAdC17を実際に見ることはおそらくないだろう。しかし提供された4枚の画像からでも、アトリエ・ド・クロノメトリーとこの時計を依頼したクライアントについて多くを知ることができる。ここで1歩引いて見てみよう。
今年のOnly Watchのために作られたAdC30。
同ブランドが以前発表したスプリットクロノグラフ、AdC8。
バルセロナを拠点とするビスポーク時計製造チームについて初めて取り上げたのは7年前だが、当時は信じられないというコメントもあった。そのうちのひとりはハイエンド市場が“縮小”しているなかで、高額なオーダーメイドウォッチの需要はどこにあるのかと考えていたようだ。このエピソードは、ここ数年のブームをそのとき誰も予想していなかったことを物語っている。そのあいだにもアトリエ・ド・クロノメトリーはOnly Watchのためのふたつの時計や、今年発表された初の自社製キャリバーなど、魅力的な作品を発表し続けている。
この時計に対する私の最初の感想は、AdC17の、そしてアトリエ・ド・クロノメトリー全体をさらに素晴らしいものにしているのは、ここ数週間で議論を巻き起こし、我らがトニー・トレイナによる素晴らしい記事のきっかけとなったものだ、というものだった。これはオマージュなのか? ほかのブランドによる“芸術性”の引用なのだろうか? 私はそうは思わないが、この時計がヴィンテージ趣味の持ち主によってデザインされたことは明らかだ。コルヌ・ドゥ・ヴァッシュのラグ、ブレゲ数字、ツーレジスターのレイアウトは、多くのブランドからインスピレーションを得たものだろうが、決して特定のブランドが独占しているわけではない。
コルヌ・ドゥ・ヴァッシュのラグはヴァシュロン・コンスタンタンの時計に使用されていることで知られているが、JLCも同じケースサプライヤーを使用し、コルヌ・ドゥ・ヴァッシュのラグを採用していることが多い。ブレゲ数字も、パテック(と当然ブレゲ)がクロノグラフの代名詞としているとしても、多くのブランドで使用されている。初期のパテック Ref.130を彷彿とさせるダイヤルには長めのバーインデックスと、ブロック体のローマ数字の代わりにブレゲ数字が12時と6時に配されている。ツートンカラーのケースもRef.130のバリエーションにインスパイアされたものだろう。
ルクルトのコルヌ・ドゥ・ヴァッシュ。
SS製のRef.130 パテック クロノグラフ。Photo: courtesy Patek Philippe Steel Watches by John Goldberger
ツートンカラーのRef.130 パテック クロノグラフ。バーインデックスは短め。Photo: courtesy Sotheby's
アトリエ・ド・クロノメトリーに連絡を取り、デザインプロセスについて詳しく聞いた。すべての時計は、それぞれの顧客にとって唯一無二のものであり、決して同じものは作られない。顧客は多くの場合、アイデアを持ち込んできて(なかには何も考えずアドバイスを受け入れる人もいる)、それを元に図面、2次元イメージ、3次元イメージが作られる。この場合、顧客は航空分野が非常に好きだったため、ノット単位で表示されるタキメータースケールなど独自のアイデアを提案した。デザインが固まったらキャリバーとケースの製作に入る。今は注文が多いので、納期は約3年となっている。
ムーブメントはヴィンテージのヴィーナス179をベースに、パラジウムメッキのブリッジ、ピンクゴールドメッキのホイール、SSの装飾に、ブラックのポリッシュ仕上げが施されている。センターのラトラパンテホイールはチタン製だ。
ブランドは私にこの作品の価格を教えてくれなかったが、コレクターに話を聞いた結果、おそらく6桁ドル前後であろうことは間違いない。その価値があるかどうかは、それを見る人の目にかかっている。目新しい自社製ムーブメントがあれば、もっと強い主張ができると思う。しかしデザインについては、私がオーナーになれたらと思うほど美しく仕上がっている。
ジャズの世界では、自分のバリエーションを演奏する前に、そのベースとなる曲の基本を知っておかなければならないと考えられている。ジャズのスタンダードナンバーを自分なりにアレンジしようとする前に、人々は『リアルブック(原題:Real Book)』に載っている曲のあらゆるソロやバリエーションを研究する。ポップスからロックまで、あらゆるところで内輪ネタのように登場する短いフレーズ、“リック”というものもある。偉大なミュージシャンたちでさえ、互いの演奏のソロのバリエーションを披露し合う。
私はAdC17をそのように見ている。誰かが偉大な作品の優れた部分を取り入れ、それを自分のものにしたのだ。そして、実際に見ることができないのが残念でならない。
アトリエ・ド・クロノメトリー AdC17。機械式手巻き時計、スプリットセコンドクロノグラフ。直径39mm 、厚さ13.3mm、グレーおよびローズゴールドの18K製ケース。“ヴィーナス179”をベースにした手巻きムーブメント、パラジウムメッキのブリッジ、ピンクゴールドメッキのホイール、SS製の装飾、ブラックポリッシュ仕上げのパーツ。9時位置にランニングセコンド、3時位置に30分積算計。ガルバニック仕上げのローズゴールド製ツートンダイヤルにノット表記のタキメータースケール。18Kローズゴールド製の針4本とブルースティール製の針2本。カスタムオーダーも受け付けている。
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アトリエ・ド・クロノメトリーについての詳細は、ウェブサイトをご覧ください。
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