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2020年は、時計の売り方が大きく変わった。超高級時計でさえそうである。フィリップスは、かの偉大なジェームズ・マークス(James Marks)が指揮するパーペチュアルのプラットフォームにおいて、強力なリテールビジネスを展開していることは知られているところだが、ジュネーブ、香港、ニューヨークといった主要なマーケットにおいても、フラッグシップショップでの時計の販売委託、企画、売込みを継続して行っている。最高の時計が格別な価格をもたらし続けることは結果が証明しているが、来月の ポール・ブトロス(Paul Boutros)の「レーシング・パルス 」セールは、入札するかどうかに関わらず、時計愛好家なら誰もが楽しみにしているものとなるだろう。
オークションにおける他の2大プレイヤーであるクリスティーズとサザビーズは、異なるアプローチを取っており、現在オークションプラットフォームで定期的に(文字通り毎週)オンラインでセールを行っており、ときには異なるオフィスで同時に異なるセールを行うことさえある。例えば、私がこれを書いている時点では、5つ以上の異なるサザビーズの時計オークションに入札するオプションがある。ただし6番めのオークションは見ることはできるが、入札はできない。さらに7番め、8番めの時計セールも告知されているが、まだ見ることも入札もできない。
私はこれを悪いアイデアだと言うつもりはない。しかし、サザビーズはここでも引き続き好調に時計を販売しているが、時計のオークションやそれにまつわるあらゆるドラマが大好きな人間としては、ついていくのが大変だ。クリスティーズはフィリップスとサザビーズの間に位置しており、この夏には複数のカテゴリからなる大規模なセールにいくつかの高級時計を出品したが、毎年恒例の12月のNYセールはオンラインのみで開催し、11月28日には香港でインポータントウォッチセールのライブオークションを開催。非常に素晴らしい時計やかなりありきたりな時計が、このようにあちこちでいろいろな方法で販売されているため、掘り出し物の時計が提供されるかもしれないという事実をいとも簡単に見逃してしまう可能性がある。そして、それが今日ここで議論する理由である。
ホワイトゴールドのパテック フィリップ 3448
クリスティーズは、パテック フィリップの「ルビー コレクション」について多くを語っているが、その中ではもちろんルビーの文字盤のイエローゴールド リファレンス3448に触れている。私は他のものを見たことはなく、とてもクールであるのは間違いない。注目すべきは、この時計は1965年製だが、ダイヤルは1990年にパテックが製造し導入したものであるということだ。この作業は非常に重要なクライアントのために行われたのは明らかで、さらにクールなことに、ベゼルは、一段高くなったルビーのアワーマーカーを考慮して工場で改造された。非常にクールだが、これは私が最も興奮する3448ではない。それでも、日本の同僚が、このコレクションについての素敵なフォトレポートをこちらに掲載してくれた。いや、そのわずか4つ前のロットは別の3448だが、それはホワイトゴールドである。その外観は本当に素晴らしい。
3448は、パテック フィリップのヴィンテージウォッチ中でこれまでで最も着けやすく、私にとっては、最も美しいものの1つだ。直径は大きく、複雑だが、自動巻きである。これはパテック初の自動巻きパーペチュアルカレンダーで、最高の方法による現代的なヴィンテージウォッチである。また、この時計はホワイトゴールドケースの数少ないパテックのコンプリケーション・ヴィンテージウォッチの1つである。
それは世界中のコレクターが憧れている時計であり、ホワイトゴールドの3448を見つけるのは極めて難しい。一見頑丈だが、オリジナルの状態のものを見つけることは、まさに至難の業である。これらの時計は、これまで長年にわたっておよそ50万ドル(約5170万円)の値を付けているが、最高級のものが市場に出ると、いくらの値段が付くのか計り知れない。2019年6月に、クリスティーズは私が今まで見た3448 WGの中で最も素晴らしいと思う時計を売却した。時計は30万〜50万ドルで落札すると推定されていたのに対し、115万5000ドル(約1億1194万円)で落札された。この時計についてクリスティーズは、それは知られている約50本のうちの1つで、わずか25本しかない最初のシリーズの時計のうちの1つであると述べている。そして、さらに、これはおそらく世界で最もよく知られている最高の3本のうちの1つであるいう。
クリスティーズはさらに、最初のシリーズの文字盤についての詳細を説明している。例えば、初期の文字盤には刻印され、エナメル加工された文字と目盛りがあり、底部の「Swiss(スイス)」の文字だけが黒く塗られていて、これが初期の3448かそれとも後から出たものかを見極めるためのちょっとした方法となっているということなどである。文字盤の裏には「1119045」と刻まれているが、これは分解したものを見ると時計のムーブメント番号であることが分かる。クリスティーズは、時計の世界記録を破るような価格を支払うことを検討しているような人がいたなら、その人が見たいと思うであろう3448の全ての重要な部分を見ることができるような素晴らしい仕事をしている。それこそクリスティーズが、この時計の落札推定価格を93万2864~155万4774ドル(約9647万~1億6078万円)と保証していることをほのめかしている理由である。
私はこの時計が2019年6月に販売された時計と比較してどうかについては言及しない。というのは、私は実機を見たものの、実際にこれを手にとって見る機会がなかったからだ。それは見た目が素晴らしく、ホワイトゴールドのブレスレットは元々この時計に付いていたものではないが、時計にとてもよくマッチしていて、本機の魅力を引き立てている。もちろん、ホワイトゴールドのパテックのブレスレットを外して、自分の好きなように身に着けることも可能だ。3448 WGは、長い間私の個人的な究極の目標であり、それを所有する機会を逸していたが、そのおかげで、私はこの美しく素晴らしい品質の時計が市場に出回るのを見るのが好きなファンの一人になった。11月28日にクリスティーズ香港で販売される(既に終了)この3448 パーペチュアルカレンダーの詳細については、こちらをクリック。
エナメル文字盤のホワイトゴールド パテック フィリップ 2526
まさにこの同じセールで、ヴィンテージパテック収集のもう一つの究極の目的、ホワイトゴールドの2526 が売られている。私が2526を愛している理由について騒ぎ立てることはしない。 もしお望みなら、4年半前からのその理由を詳細に説明したものをこちらで見ていただきたい。要約して言うと、これまでに作られた中でも最高品質の自動巻きムーブメント、最も美しいケース形状の1つ、そして運がよければ比類のないエナメル文字盤を備えているのだ。2526はどのモデルも素晴らしいが、ホワイトメタルが最高だ。私は幸運にも何年も前にその1つを購入することができたが、それはこれまで私が着けてきた最高の時計の1つであり続けている。しかし、ホワイトメタル 2526のニュアンスを理解するには、それだけでも相当の勉強が必要となる。ホワイトメタル 2526の大半は、プラチナかホワイトゴールドで、50本に満たない数が知られているが、ダイヤモンドのインデックスが付いたメタル文字盤を備えている。私はそれらも大好きで、1950年代に一世を風靡した超贅沢な感じがする。2017年に32万5000ドル(約3361万円)で販売された、この信じられないほど素晴らしいダイヤモンドマーカー付きのセルピコ・イ・ライノのホワイトゴールドウォッチを覚えているだろうか? なんとも最高だった。
私はエナメル文字盤がメタル文字盤よりも優れていると言っているわけではない。メタル文字盤の方が日常的に使えるという反対の意見もあるかもしれない。その議論にも一理ある。しかし、私は、エナメル文字盤の時計は私にとってより特別な感じがすると言いたい。なぜなら、当時、時間を表示するだけの時計にエナメル文字盤を採用する人など他にいただろうか? さらに、プラチナやホワイトゴールドの2526を見つける際には、エナメル文字盤が実際に元々その時計に採用されたものであることを確認できる、エッセンスを備えたものを探す必要がある。パテックは一時、文字盤を交換する機会を提供していた。さらには、エナメル文字盤で生まれた時計の中には、そうしたエッセンスがそうであることを明示していない場合もあり、理想的なものとは言えない(ただし悪くはない)。さらに、2526の文字盤は非常に賞賛されるようになったため、壊れたものの交換用に作られた新しいエナメル文字盤のオプションも存在しているのだ。我々は2016年10月にこのサービスについての記事を掲載した。
ここにあるクリスティーズのロットの解説には、ホワイトゴールド 2526を特別なものにしている詳細が書かれている。
「イエローゴールドが約2400本、ピンクゴールドが約360本、ホワイトゴールドが約70本、プラチナが約70本作られた。調査によると、ホワイトゴールドとプラチナでそれぞれ同じ数が作られたが、ホワイトゴールドのバージョンは、現在、プラチナケースのバージョンよりも実際には珍しい。これまでに見つかっているホワイトゴールドの個体は約20本のみで、プラチナは24本が一般に知られている」
クリスティーズは、見つかった20本のうち何本がメタルではなくエナメル文字盤であるかについては言及していないが、半分以下であると考えざるを得ず、これを見つけるのは非常に稀で、特にオリジナルのエナメルであることを確認するエッセンスが付き、文字盤に目に見える亀裂の入っていないものとなればなおさらである。
クリスティーズはここでもいい仕事をしていて、キャリバーやケースバックの内側など、2526のコレクターなら誰もが見てみたいと思う、時計の様々なアイテムを紹介している。興味深いのは、少なくともオンラインで見る限り、2526と3448のどちらにも、ケースバックの内側にメンテナンスがされた痕跡がないことである。これはオリジナル好きにはたまらない。ここでの推定価格は31万955~41万4606ドル(3216万~4287万円)となっている。これは明らかに高額であるが、これだけ珍しいものに値段を付けるのは難しい。私は、エナメル文字盤が付いたホワイトゴールド 2526が最後に公に市場に出たのがいつだったか覚えていない。5年以上前に、プラチナの個体が フィリップスで22万7000ドル(約2347万円)で 売られていたが 、5年以上も前のものを比較対象に使うのは難しいだろう。それ以来、前に述べたダイヤモンド付きの文字盤のものは、2017年に32万5000ドル(約3361万円)で販売され、見事なプラチナで、ティファニーのサイン入りの個体は、30ヵ月以上前に64万2000ドル(約6639万円)で販売された。この5年間で販売された高品質なホワイトメタルの2526は、この2つである。
セールの結果がどうなろうと、これを12年も続けてきた私は、純粋にワクワクするような時計が依然として市場に出てくるのを見て、ただただ胸躍らせてている。このパテックフィリップ 2526 ホワイトゴールドの詳細については、こちらを参照されたい。
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