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昨夜、何百人ものセレブリティやファッションデザイナー、編集者、そしてパパラッチが、毎年恒例のコスチューム・インスティテュート・ガラ(以下メットガラ)のために有名なメトロポリタン美術館の階段に押し寄せた。
メットガラは、私にとってファッションのためのスーパーボウルであり、またレッドカーペットの休息場所でもある。ミュージックアワードやムービーアワードのシーズンになると、ほとんどのセレブは宣伝のための広告塔となり、契約上義務付けられた衣装(と時計)に身を包み、カーペットの上を颯爽と歩くことになる。しかし今回のイベントにはもう少し個々の勢いがあって、ブランドが自身の覇権を主張しない必要があるのだ。
さて、メットガラは衣装やアクセサリーの自由度が高いのかといったら嘘になる。アンバサダーシップのほか、ブランド契約条項についても維持する必要があるからだ。結局のところ、やはりプロダクトプレイスメント(実在する企業・ブランドといった広告主の商品を使って、認知度を広めること)としては最も知名度の高い場所のひとつだ。
しかしこのメットガラでの救いは、このレッドカーペットが実際のファッションに関わるものであるということだ。毎年コスチューム・インスティテュートでは展示にちなんだテーマが設定され、参加者は思い思いの式服を身につけることができる。
メットガラは40年後半の控えめな初期の時代から、ダイアナ・ヴリーランド(Diana Vreeland)の時代には社交界の名士やファッション界の有名人が会場を優雅に闊歩し、さらに一流のセレブたちが劇場用の大仰なクチュールを着てバスルームでグループセルフィーをするような熱狂ぶりを見せる時代へと、いくぶん進化してきた。
5月1日の17時(現地時間)からスクリーンに釘付けになって、最高のクチュール、そしてもちろん最高の時計に目を光らせたいと思う。
それまでのあいだ皆さんにお楽しみいただけるよう、これまでのメットガラに登場した私のお気に入りの時計をいくつか紹介しよう。
アナ・ウィンター(Anna Wintour) パテック フィリップ Ref.2461
まずは1989年に巻き戻ってからスタート。VOGUE(ヴォーグ)編集長のアナ・ウィンターは、“The Age of Napoleon: Costume from Revolution to Empire, 1789-1815(ナポレオンの時代:革命から帝国までの衣装)”というテーマのメットガラにて、パテック フィリップのRef.2461と思われる時計を身に着けている。リファレンスを読み解くのに十分な鮮明な画像を見つけるのは、ちょっとした手探り状態から始まった。そこで友人のアーサー・フィスター(彼はまさにアーカイブ写真のマエストロだ)氏と、信頼できる同僚でヴィンテージの専門家であるリッチ・フォードンに協力を仰いで意見を聞いたところ、この時計はRef.2461である可能性が高いということで意見が一致した。
ウィンターは1995年から、メットガラのチェアウーマンを務めている。また彼女は極秘の招待客リストの背後にいて、その大切な出席者がどのデザイナーやどんな服装を着るのか決定する重要な役割を担う女性でもある。それならメットガラで大活躍する彼女が、ゴールドのパテックを手首にゆったりと掛けて身につけているのも納得。非常にシックだ。
ドナテラ・ヴェルサーチ(Donatella Versace) カルティエ ディアボロ
カルティエのディアボロを身につけたドナテラの写真を見つけるということは、基本的に(ハリーポッターに登場する)クィディッチのゲームで金のスニッチを見つけるようなものである。このモデルは、私の描くファッションウォッチのスペースと見事に交差した素晴らしい時計なのだ。
ドナテラが1993年のメットガラで着用したヴェルサーチのルックは、ファッション史の金字塔となった。キム・カーダシアン(Kim Kardashian)やデュア・リパ(Dua Lipa)も真似しているが、ドナテラのようなやり方は誰もできない。ボンデージトップにレザースカート、ゴールドチェーンの付いたロングブラックブーツはすべて、“Miss S&M”と題された、非常に過激(当時としては過激と考えられていたのだ)な92年の秋コレクションからのものだった。
今回も相棒のアーサー・フィスターの力を借りた。なぜならこの1枚だけでは特定するのに不可能に近かった。WhatsAppで何度も調べて、やっとこの完璧な小さなイエローゴールドとダイヤモンドでできたディアボロの気取らない写真を発見した。
リアーナ(Rihanna) ショパールのハイジュエリーウォッチ
さて、メットガラの女王は紛れもなくリアーナだ。レッドカーペットの上でもパフォーマンス中でも、時計を身に着けていることで知られるリリ(リアーナ)は、ジュエリーのトレンドサイクルにはあまり関心を持たずに、彼女自身の時代を超越したタイムレスな哲学を貫いているようだ。
レッドカーペットで女性が腕時計を身につけているというトピックが少しメディアの注目を集めているようだが、私自身はそれが話題になっていることすらありえない。ジュエリーでできたシークレットウォッチで厳かに時間を確認するという19世紀に流行した習慣は、もう過去のものなのだろうか?
好きなときに好きなものを着ることに敬意を表して、2017年のテーマである川久保玲/コム デ ギャルソンのメットガラにてショパールのハイジュエリーウォッチを、2016年秋にはコム デ ギャルソンのランウェイルックを着用したバッド・ギャルを紹介しておこう。
ミニー・ドライヴァー(Minnie Driver)&オスカー・アイザック(Oscar Isaac) カルティエ タンク フランセーズ
最近のタンク フランセーズのリニューアルに刺激を受けて、私は少々フランセーズのアーカイブを深堀りしてみることにした。そして1999年にロックスタイルというテーマで、スティールのフランセーズを着用したミニー・ドライヴァー(ブラウンの髪色のグウィネス・パルトロー/Gwyneth Paltrowと並んでポーズを取っている)の写真を偶然にも見つけた。
この写真は、最近私のInstagramのフィードに絶えず現れている、90年代後半のメットガラのノスタルジーを体現している。そしてこの時計は、私たちをあの時代に連れ戻すような、物事がさらによくなるようなアクセサリーのように感じられる。
現在、タンク フランセーズはカルティエのほとんどのカタログとともに男女を問わずより広範に提供されている。また昨年のメットガラではオスカー・アイザックが18金のミディアムモデルのフランセーズを、トム ブラウンのスカートに合わせていた。とても完璧なコーディネートだったと思う。
ミシェル・ヨー(Michelle Yeoh) リシャール・ミル RM07-01とファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams) RM 17-01 トゥールビヨン
オスカー女優であり、またリシャール・ミルのブランドアンバサダーでもあるミシェル・ヨーは、ここ数年における受賞シーズンで、レッドカーペットウォッチを本格的に盛り上げてきた。実際レッドカーペットに登場するヨーの場合、どんなガウンを選んだかよりも時計の選択を先に予想する唯一の例だろう。メットガラにふさわしい華やかさを保ちながら、よりスポーティなスタイルを着こなす女性の姿は新鮮に映る。昨年、ヨーはRM 07-01をグリーンのシルクでできたプラバル・グルン(Prabal Gurung)のガウンと合わせたルックを披露していた。RMとガウンの組み合わせはもっと増えてもいいと思っている。
そしてメットガラでリシャール・ミルの話をするならば、2021年に行われた“イン・アメリカ:ファッションの辞書”がテーマのメットガラでファレルが着用したバゲットカットダイヤモンドをあしらったレッドゴールドのRM 17-01 トゥールビヨンも挙げなければならないだろう。このカップルのコーディネートをブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)やジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)のようなパロディのように見えることなく、成功を収めたことを高く評価したい。
キッド・カディ(Kid Cudi) ベン・ボーラー ベイプ×G-SHOCK DW-6900
これは私が思う究極のメットガラウォッチだ。グラミー賞ではパテックのグランドコンプリを、アカデミー賞ではロレックスのヴィンテージエアキングを見つけることほど楽しいことはないが、メットガラではファッションやアクセサリーを自由に楽しむことができる場であり、そこが魅力なのだ。ベン・ボーラーによるバストダウン(ダイヤを多く施した高価なアイテム)G-SHOCKは、一部の時計愛好家にとってはまったくもって冒涜的な行為と感じるかもしれない。しかし、これからのより広い時代の流れを考えるとダイヤモンドとピンクサファイアでできたG-SHOCKは楽しく、ファレル(Pharrell)のG-SHOCKレガシーも受け継いでおり、予想外ながら話題性の高いモデルでもある。つけてしまう気持ちはよくわかる。
Lead images courtesy of Getty.
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