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The Two Watch Collection パテック フィリップ 3940とA.ランゲ&ゾーネ 1815クロノグラフを2本限りのコレクションに選ぶ

重要なことだけ。他には何もない。

※本記事は2016年8月に執筆された本国版の翻訳です。

 20年後に自分の時計コレクションがどうなっているかをよく考える。私は50代になっていて(願わくば)結婚して子どももいる。私の時計人生は次の2つのうちいずれかの方向へ行くだろう。ここ5年ほど(少し予算に余裕のある独身男性として)続けてきた集中的な時計収集と研究をますます深める方向にいく可能性もある。あるいは、他のことが優先されて(家や子供はお金がかかる)、重要な時計だけに集中して選択する可能性もある。
 今日の記事は後者に関わることだ。以前のジャックによるの2つの記事「2つの時計コレクション(こちらこちら)」に倣い、私はいつか私個人の2つの時計コレクションを選ぶとしたら何を選ぶか、そしてなぜその2つの時計を特別だと思い、最高だと信じるかを話したい。私がこう言うのは、今日紹介する2つの時計が、自分のコレクションはそれらなしでは考えられないからだ。その時計とは、パテック フィリップの卓越したパーペチュアル カレンダー Ref.3940と、A.ランゲ&ゾーネの1815クロノグラフだ。


A.ランゲ&ゾーネ 1815クロノグラフ
a lange sohne 1815 chronograph rose gold

現行のランゲ 1815クロノグラフにはローズゴールドとホワイトゴールドの2色がある。

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 まずはランゲだ。ここで1つだけ言っておくが、ダトグラフはランゲのクロノグラフの中で重要なモデルだ。だからといって、それがランゲの中で最も優れたクロノグラフだということではない。数年前、私が初めてA.ランゲ&ゾーネを知ったとき、自然とダトグラフに夢中になった。それはプラチナ製でダイヤルはブラック、ほとんどの愛好家が史上最高と称するクロノグラフ。私は愛好家たちを信じて、自分でも持ってみることにした。だが、まさに買おうとしたときに不思議なことが起きた。試してみたところ、栄光のダトグラフなのに、どうも自分の腕にはしっくりこなかったのだ。個人的な好みをいうと厚さがありすぎてバランスが悪く、ランゲはその後、ダトグラフ アップ/ダウンの直径を大きくしてケースの厚さとバランスを取ることによってこれを修正した。そこで、ランゲ友達から1815クロノグラフを見てみるよう勧められたのである。 

 コアな時計愛好家以外で 1815クロノグラフを知っている人はほとんどいない。この時計はダトグラフよりもずっと伝統的なペイントダイヤルを備えている。そしてプラチナ仕様は存在していない。ダトグラフのように、クロノグラフのシーン全体を変えたモデルとは言えない。しかし、1815クロノグラフは、ダトグラフと全く同じクロノグラフキャリバーをベースとしているため、裏蓋側から見た目(もしかしたら世界最高?)も全く同じなのだ。

a lange sohne caliber l951.5

Cal.L951.5は、裏蓋側から見るとダトグラフに搭載されているキャリバーと全く同じである。 

 1815には、ランゲで広く知られているようなアウトサイズデイトはないが、それは構わない。私は無い方がバランスがいいと感じている。おぉ、そしてアウトサイズデイトがないため、このクロノグラフはダトグラフよりかなり薄いことはもう言っただろうか? 実際丸々2mmも薄く、だからこそ、これに決めたのだ。1815クロノグラフは、それ以上のものではない。何かの記録を破っているわけでもなく、大きな変化ももたらしていなければ付加機能もなく、時計業界においてそれ以上の意味をもったりもしていない。それは伝統的なクロノグラフムーブメントの最もピュアな表現であり、私を含む多くの愛好家が単純に最高と信じるものなのだ。

a lange sohne 11815 chronograph

1815クロノグラフの直径は39.5mmだ。

 そして、もちろん、これはA.ランゲ&ゾーネの時計だ。それがなぜ重要か分からなければ、ここ20年の歴史に詳しい多くのコレクターに聞いてみるといい。私はランゲこそが、今日最も偉大でスケールの大きな時計メーカーだと信じている。そして、同年代を生きた人間として親近感も抱いている。もちろん、私はご存知の通りヴィンテージウォッチが大好きだが、自分の生きている間に作られたり、培われてきたものも大好きである。同じ意味合いで、私がこの時計を購入したのは、他のブランドと異なり、A.ランゲ&ゾーネが素晴らしく、誠実で、顧客を尊重していることを応援したいという気持ちがあったからだ。一方で、自分が買える中で最高のクロノグラフが欲しかったということもある。幸運なことに、ランゲのクロノグラフコレクションはダトグラフだけではなかった。1815がなかったら、私はランゲを1つも買っていなかったかもしれない。


パテック フィリップ 3940 パーペチュアルカレンダー
patek philippe 3940J

1986年に発売されたパテック フィリップの3940J。

 2つの時計コレクションの2本めには、現代の古典を選んだ。1815とは違って、パテック フィリップのRef.3940 パーペチュアルカレンダーはもう製造されていない。1986年にイエローゴールドのみが発表され、その後、ローズゴールド、ホワイトゴールドとプラチナが発表された。3940はその後、最終的に5140と(2016年のバーゼルワールドで)5327に取って代わられた。それでも、3940はパテック愛好家にとってはいくつかの理由から特別な時計である。
 1つめの理由は、自動巻きマイクロローターを原動力とするCal.240-Qと36mmのケースが、真に洗練された組み合わせだからだ。そして2つめは、噂によると、3940は現在のパテックCEOであるティエリー・スターンの父、フィリップ・スターンに選ばれた時計であるということだ。 

Cal.240-Qは、今でも世界で最も汎用性の高いグランド・コンプリケーションキャリバーの1つだ。 

 1970年代まで遡るこのキャリバーは、今日のパーペチュアルカレンダーの基準からするとシンプルだが、それでもいつの世も変わらぬ名品の1つだ。それはすらりとしていて、3940の36mmのケースにぴったりと収まっている(5140に対して頻繁に挙げられる不満の1つは、ケースが大きくなったのに、大きなサイズのムーブメントが搭載されていなかったことだ。もし、A.ランゲ&ゾーネだったらできていただろうと私は思っている)。パーペチュアルカレンダー機構は、時計製造における真のグランド・コンプリケーションの1つであり、今では一般的に思えるかもしれないが、パテックが240ベースのキャリバーにパーペチュアルカレンダー機構を加えた80年代後半では、他にあまり例が無かった。

patek philippe 3940

3940の直径は36mmだ。

 3940は現代の全てのパーペチュアルカレンダー、そしてある意味では5970が発表されるまでは全てのパテック フィリップの基準となっていた。今日に至るまで、私はこれほど優れたバランスをもち、より繊細で、より優雅なパーペチュアルカレンダーが市場にあるとは思えない。さらに、3940は、私の生涯におけるパテック フィリップを代表する時計だ。現在、あるいはこれから彼らが何をするにせよ、この会社の時計製造における重要性はずっと変わることはない。

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今日における究極の2つの時計コレクション
patek philippe 3940 a lange sohne 1815 chronograph

1815と3940では、最も象徴的な2つの異なるコンプリケーションが極められている。

 1815と3940はそれ自体素晴らしい時計であり、それを否定する者を私は知らない。しかし私は、これらの時計を並べて見たとき、モダンなウォッチメイキングの完璧な例として素晴らしいのだと思っている。一方は傑出したスイスの伝統的な時計メーカー代表格であり、優雅さ、着け心地の良さと最高の機能性というデザイン精神を表現している。キャリバーは、それまで何十年もかけてスイスのムーブメントが開発されていったのと全く同じ方法で、時間と共に全体的に改良されてきた。ムーブメントは手作業で正確に、美しくクラシックで保守的な方法で仕上げられている。

 もう一方の時計は完全に現代的だ。ムーブメントは元々統合された1つのものとしてデザインされており、その後アウトサイズデイトを取り除くことで小さくなった。それはザクセンの名工たちが、自分たちの技能を余すところなく発揮できるように、意図的に、また不必要なほどふんだんに立体的なのだ。パテックの240-Qは高くキュッと締まっていているが、L951.5は長く流れるようだ。リッチでエモーショナルなクロノグラフキャリバーはスイス製で、控えめだが優秀なパーペチュアルカレンダーのキャリバーはドイツ製と思いたくなるだろう。しかしそうでは無いのだ。

3940のムーブメントの厚さはわずか3.8mm。

1815クロノグラフのキャリバーは厚さ6.1mm。

 これらの2つの時計はそれぞれとても素晴らしいので、グループにまとめるのはばかげていると思えるかもしれない。しかし別の意味で、この2つは隣り合うべく作られたものだ。これらは私と同時代に存在する最も重要な2つの高級時計メーカーの、最も純粋なデザインを明確に表現している。一方は厚く、一方は薄い。一方は手巻きで、一方は自動巻きだ。一方は秒単位で時間を示し、一方は閏年を知らせる。

patek philippe a lange sohne movement finishing

1815の仕上げは華やかで、3940の仕上げは控えめだ。

 それだけでなく、両方の時計は素晴らしいコストパフォーマンスを見せている。これらは両方とも非常に高級で、完全に手作業で組み立てられ、手仕上げされた時計で、今よりももっと高く売られていても誰も驚かないだろう。安いとはもちろん言えないが、高級時計の収集家が最高級の時計を吟味する相対的な世界では、1815クロノグラフと3940ほどコストパフォーマンスの高い高級時計を他の一流ブランドで見つけることは難しいだろう。

first series patek philippe 3940

3940にはいくつかのダイヤルバリエーションがある。これは稀な“ファーストシリーズ”のダイヤルだ。

1815 chronograph gold

このダイヤルバリエーションは、ホワイトゴールドかローズゴールドのケースとの組み合わせから選べる。

  1815クロノグラフはローズ、そしてホワイトゴールドから選ぶことができ、価格は605万円(税抜)である。プラチナのダトグラフ・アップ/ダウンは991万円(税抜)だ。プラチナの方が、アウトサイズデイト付きのゴールドより386万円高いことになる。もっと明確にすると、ローズゴールドのダトグラフ・アップ/ダウンは834万円(税抜)であり、この時計はプラチナより157万円安く買えて、デイトは無いものの、同じクロノグラフメカニズムを手に入れることができる。パテックの5170G(現在は生産終了。当時の税抜価格は856万円)と比較すると、1815はなんと251万円も安いが、両方とも同じくらい価値が高いと思う。

 3940に関しては? 5004と5940の値段は跳ね上がったが、3970と3940は値上がりしていない。それらは以前から変わっていない。まともな3940Jなら3万ドル台後半、まともな3940GかRなら4万ドルから5万ドル前半、そして3940Pなら5万ドルから6万ドル前半で入手できる。比較のために、全く同じムーブメントを使った現代のパテックのパーペチュアルなら、ゴールドで9万ドル台、そしてプラチナなら10万ドル以上支払うことになる。

3940と1815はそれぞれのメーカーの、最も魅力ある時計では無いかもしれないが、最高のものかもしれない。

 3940と1815は完璧ではないが、しかし、それに極めて近い時計である。実際、それぞれの時計がその機能を最高に果たしていながら、市場の最高値からは程遠い値段で入手できる。3940と1815はそれぞれそれ自体として偉大であり、一緒ならより素晴らしく、もしあなたが2つの世界最高の時計メーカーの最高の時計製作技術を味わいたいと思うなら、この2つをぜひお勧めしたい。この2本が価値のあるコレクターズアイテムとして、将来的に高い人気を博すことになるだろうか? それは私には分からないが、しかし時には、ただ偉大な時計であることだけで、コレクションに加える、あるいはそれだけをコレクションとする価値があるのだ。

パテック フィリップのRef.3940は、Madison Fine Time / A.ランゲ&ゾーネの1815クロノグラフはA.ランゲ&ゾーネ NYCに協力を得た。