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Introducing パテック フィリップ ジュネーブで開催される'Rare Handcrafts 2021'で3つの新型リピーターを発表

リピーターに関して、パテック フィリップほどノウハウのあるブランドはない。

時計の機構にはヒエラルキーがある。おそらく最も単純なのは、シンプルカレンダーだろう。1から31までの数字を円盤状にしてダイヤルの下に貼り付け、数個の歯車を加えて1日ごとに1つずつ進めればOKだ。部品点数(価格とともに)が増えてくると、機構には時計師の実践的な配慮が必要になってくる。その最たるものがミニッツリピーターをはじめとするチャイミングコンプリケーションであり、永久カレンダーやラトラパンテとは異なり、工業化を拒んできた。インスタグラムに溢れるブルーダイヤルの時計のことを思い浮かべないわけにはいかないが、今日のパテック フィリップを歴史的に有名にし、その地位を維持してきたのは、あらゆるハイエンドで複雑な時計の製造に精通しているからだ。それは、装飾的な時計製造技術のすべてを把握しているだけでなく、複雑時計の製造に関して、どのようにアプローチするべきか、深く体系化された知識を有するということも意味している。

"リピーター機構が時計の科学的な部分であることに異論はない。そのため、設計にはより多くの理論、製造にはより多くの繊細さと精密さを必要とする。だからこそ、この機能を知り、実践できる人は他よりも完璧にこなすことができるのだ"

– フランソワ・クレスプ, 『Essay on repeater watches(リピーターウォッチについてのエッセイ)』より。1804年, リチャード・ワトキンス訳
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新しいレディスのRef.7040/250G-001 ミニット・リピーターのリピーターハンマーと調整機構。

 6月16日から26日まで、ジュネーブで「Rare Handcrafts 2021」エキシビションが開催されている。本来であれば、我々も現地に行って直接取材したいところだが、現状ではまだそこまでのことはできない。しかし、パテックはこのイベントで、スカイムーン・トゥールビヨンの新バージョンを含む数多くの新作時計を発表し、さらに3つの新しいミニッツリピーターを発表したことをお伝えしたい。それぞれが複雑時計の異なる要素を前面に押し出しているが、その中心となるのがミニッツリピーターであり、パテック フィリップといえば、このチャイミングコンプリケーションを思い浮かべる人も多いだろう。

Ref.5304/301R-001 ミニット・リピーター・レトログラード日付表示付永久カレンダー

 このモデルは、レッドゴールドで発売された2014年以来、何らかの形で我々に提供されてきた時計の最新バージョンだ。新バージョンは発売当時のものと同様に、80個のバゲットカットダイヤモンドがベゼルを飾っている。オリジナルのRef.5304は、2019年に製造中止となった。

 本機は直径43mmで、非常に緻密なダイヤルの周りにはダイヤモンドが散りばめられ、過去数十年にわたる静かで洗練されたパテックの複雑時計のイメージとは異なる。近年のパテックはケースデザインをよりデコラティブにする傾向があるが、これはまさに現代的な時計である。メカニズムに魅了されているのであれば、これ以上のものはないだろう。裏蓋からはミニッツリピーターの動作がよく見える(ハンマーとゴングは通常の場所にあり、チャイムのテンポをコントロールするガバナー機構もある)が、ダイヤル側からは通常、見ることのできないものが見えるのだ。

 ダイヤルの下にあるのは永久カレンダーで、リピーターのようなダイナミックな動きは見られないが(序曲から終曲までを本当に見たいのであれば、うるう年の午前0時を待たなければならない)、独自の魅力を備えている。伝統的な永久カレンダーの心臓部はプログラムディスクで、その段差は各月の長さを表している。上の画像の右側には、うるう年用のカムが見える。また、日付はレトログラード表示で、視覚的に多くのものが配されているにもかかわらず、パテックはダイヤルを驚くほど読みやすくしている。スケルトンやオープンダイヤルの時計、特に複雑な時計では、視認性と視覚的な娯楽性との間に二律背反的な関係があるが、パテックは5304において、トータルにその2つのバランスをうまくとっていると思う。

Ref.5374G-001 ブルーエナメルダイヤルを備えたミニット・リピーター・永久カレンダー

 複雑時計には、いくつかの異なるアプローチがある。ひとつには、5304のようなすべてにおいて最大級の視覚体験をすることができるもの。だが、伝統主義者のアプローチは、機械的な心臓部が腕ではっきり主張するような時計を避け、複雑さがほぼ個人の楽しみとなるような時計(高級時計だから、高級時計の言語を使う)を選ぶことだ。この判断には、おそらくフロイトが解明すべき何かがあるだろうが、それはまた別の機会に話をしよう。要は5374G-001 ミニット・リピーターは、間違いなく控えめなタイプであるということだ。

Cal.R 27 Q、自動巻きミニット・リピーター・永久カレンダー。

 この時計が2016年に発売されたときは、プラチナケースにブラックエナメルダイヤル仕様だった。今回の新作はホワイトゴールドケースで、ブルーのエナメルダイヤルとなっている。私がプラチナ製のミニッツリピーターを愛しているのは、簡単に言うと、チャイムを鳴らす複雑機構に使用するには非常に難しい素材だからだ。密度と結晶構造が、よい音を出すのは不向きなのだ(私がこの30年間で聴いた最も音の悪いリピーターのなかには、プラチナケースのものもあったが、最もよいものもプラチナ製だった。苦労して勝ち取った勝利は最も甘いものなのかもしれない)。ホワイトゴールドにブルーエナメルダイヤルを備えたこのモデルは、伝統的なジュネーブの時計製造を強調したもので、控えめで落ち着いた美しさを備えており、自分が何を見ているのかを知らなければ、二度と目にできない時計である。

Ref.7040/250G-001 希少なハンドクラフトによるミニット・リピーター

 複雑機構を「より多く」のものとして楽しむ人もいる。この視点では、部品数それ自体がよいものであり、複雑さは多かれ少なかれそれ自体のために追求される。この考え方には共感できる。私自身、特に時計ジャーナリストとして、時々そう感じている。特にパテックのCal.89やスターのキャリバー2000を深く掘り下げたくない人などいないだろう?

 だが、結局のところ、私は一つのことが非常によくできたものを見るのが好きなのだ。ある種、時計に関するADHDのようなものかもしれないが、例えばラトラパンテのように他に何もない時計の表現の明快さは、多層構造の時計よりも爽快で新鮮だ。後者は称賛するが、前者には惚れ惚れとする。

 新作のRef.7040/250G-001は、高級時計における神秘の1つである、2011年にレッドゴールドでデビューした“レディス初”のミニット・リピーターと同じムーブメントを使用している。2013年にパテック フィリップの現行生産のリピーターを一度に聞く機会があった(ベン・クライマーがこの話を掲載した)。そのとき、レディス初のRef.7002R ミニット・リピーターは、音の明瞭さと純粋さの点で、群を抜いてトップクラスの存在であった。その時計は2017年に製造中止となったが、今回、ダイヤモンドをセットしたベゼルとフランケエナメルダイヤルを備えたバージョンで復活したのだ。

 フランケとは、旋盤加工されたギヨシェダイヤルを、半透明のエナメルで覆うエナメル技法の一種だ。ギヨシェは、10年、あるいは15年前と比べると、少しずつ見られる機会が増えた。例えば、ブレゲはギヨシェダイヤルで有名だ。ギヨシェ彫りは、非常に特殊な工作機械と、それを動かすためのかなりの手作業を必要とするという点で、興味深い工芸技術である。その機械はローズエンジンと呼ばれ、何十年も前から全く作られていない。現在、高級時計に使用されている機械の多くは、何十年も使用され、細心の注意を払ってメンテナンスされたアンティーク品なのだ。

 リピーターにとって音質は最も重要な要素だ。2011年に発売されたローズゴールドRef.7002R ミニット・リピーターは私が今まで聞いたリピーターのトップ5、おそらくトップ3の1つ(機会があればの話だが、最近では聞くことはほとんどない)だった。なぜなら、ローズゴールドはリピーターのために昔から用いられてきた典型的なケース素材であり、私はこのモデルから聞こえる音について全く心配していなかったからだ。チタンやプラチナなど、他の金属でもよい音を出すことはできるが、音色の豊かさや音量、全体的な魅力のバランスを考えると、ローズゴールドに勝るものはない。このムーブメントとモデルがこのようなの形で復活したことは喜ばしいことだ。「Rare Handcrafts Geneva」でパテックが発表したなかでは、思わず目を奪われるような技術的な作品ではないが(金持ちの叔父が亡くなり億単位の遺産を遺すような世界だとしたら)、私が最もコレクションに入れたいと思っている時計に極めて近いものである。

Ref.5304/301R-001 ミニット・リピーター・レトログラード日付表示付永久カレンダー:ローズゴールドケース、ベゼルに80個のバゲットカットダイヤモンドを使用。ムーブメントはCal.R 27 PS QR LU。直径43mm。

Ref.5374G-001  ミニット・リピーター・永久カレンダー:ホワイトゴールドケース、ブルーのグラン フー・エナメルダイヤル。ミニッツリピーター付き永久カレンダー。ムーブメントはCal.R 27 Q。シャンルベ・エナメルのムーンフェイズディスク。

Ref.7040/250G-001 希少なハンドクラフトによる女性用ミニット・リピーター: ホワイトゴールドケースに168個のダイヤモンドをベゼルにセット。ムーブメントはCal.R 27 S、ミニッツリピーター、マイクロローター自動巻き。

3つの時計とも価格は要相談、パテック フィリップにお問い合わせください。詳しくはPatek.comまで。